フォーエバー・フレンズ -233ページ目

16、ゴールドメダル(4)

校歌斉唱が終わると、選手たちは一斉に3塁アルプススタンド前へと駆けていき、応援席に向かって礼をした。

歓喜の渦が巻き起こった港南学院応援席は3000名の大応援団。

陽一は滅多に泣かない男だった。

しかしその大応援団を見ると、陽一は感極まって涙をポロポロと流し、やがて号泣しだした。


キャプテンとしてのプレッシャー。

一流選手としての孤独。

つらい事も一杯あった。

泣きたい時もいっぱいあった。

出来て当たり前。

できなければ批判を一杯受けた。

辞めたいと何度も思った。

しかし、今この3000人の大応援団を前にして、陽一は始めて思った。

ここまでやってきて本当によかったと・・・。

陽一の男泣きであった。


「陽一・・・」

陽一の号泣する姿を見ると、恵も涙が溢れ出し、やがて周りの目も気にせずに「陽一!」と叫んでアルプス席の階段を駆け下りていった。

陽一は、泣きながら階段を駆け下りてくる恵に気付いた。

「恵!」

「陽一!」

恵が階段を下りてフェンスに手をやると、陽一もフェンスの側へと駆け寄ってきた。

そしてフェンス越しに二人は、涙目で見つめあった。

「恵・・・やったよ・・・やったよ・・・俺やったよ・・・」陽一はそう言いながら涙した。

「よかったね・・・ここまでやってきて本当によかったね・・・」恵の瞳からもポロポロと涙が流れ落ちた。

「恵・・・今まで本当に有難う・・・」

「ううん・・・私だって夢を見させてくれて有難う・・・」

そのまま二人は、フェンス越しに顔を合わせたまま、子供のように泣いた。


文麿は大応援団の中の弥生の姿を見つけた。

すると弥生は、ダンボールの紙で作ったプラカードを見せた。

『OKです I❤ふみまろ』

「本当かよ!」文麿は両手でガッツポーズをした。

弥生は涙目で白い歯を見せて、ニッコリと笑った。


少し興奮が冷め、甲子園の観客は少しずつ帰っていった。

そして陽一は、旧友の堀場へ挨拶をしに、仙台学園のベンチへと行った。

二人は報道陣のフラッシュも気にする事なく、グラウンドを見渡しながら話した。

「いやあ、まいったよ。あそこでホームランだもんなあ・・・」

「たまたまだよ」

「いや、その『たまたま』をあの場面で起こすのが、実力って奴だよ」

「そうかなあ」

「そうだよ。お前やっぱり何かあるよ。何かをする為に生まれてきたんだよ。俺はそう思うな」

陽一は黙って甲子園の空を見上げた。

「悔しいなあ・・・もう一回やりたいよ・・・」堀場は甲子園の空を見ながらそう言うと、笑顔で「もしプロで会えたら、その時は勝負だ」と言い、陽一に向かって拳を突き出した。

「ああ。勝負だ」陽一も笑顔で、堀場に向けて拳を突き出した。


試合後、港南学院のロッカールームは、いまだ興奮が冷めやらなかった。

しかし、ロッカールームには陽一の姿がなかった。

陽一はユニフォーム姿のまま外へと駆けていったのだ。

球場から出てきた観客達は、ユニフォーム姿で駆け抜ける陽一の姿を見て驚いた。

しかしあまりにもの俊足で、追いかける事も出来なかった。

人ごみの中、陽一が向かっていったのは、港南学院高校の野球部関係者のバス乗り場。

そう、陽一は恵のところへ向かっていったのだ。

恵はこれからバスに乗ろうとしていた。

すると「恵!」と叫んで、陽一が駆けてきた。

「陽一・・・」

陽一は、恵のもとにたどり着くと、はあはあと息を切らした。

「陽一、どうしたの?」

陽一はニコッと笑うと、恵の肩に優勝の金メダルをかけた。

恵は自分の肩に掛けられた金メダルをじっと見つめると、すぐさま顔を上げ陽一の顔を見て微笑んだ。

すると陽一は、あろうことか沢山の人がいる前で恵を抱き上げた。

「キャッ!」

そして周りの目も気にせずに、恵を抱き上げたままその場をグルグルと回った。

「恵!やったよ!優勝だよ!」

「やめて!はずかしい!みんな見てる!」

しかし陽一は、笑顔のままその場を回り続けた。

「陽一!やめてえ!」


こうして陽一達の夏の熱き戦いに、幕は降りた。