フォーエバー・フレンズ -231ページ目

17、メジャーへ(2)

昭和風情のアパート - 写真素材
(c) ジュアンナ写真素材 PIXTA


真は、川崎の自宅に帰った。

「ただいま」

「おかえり、真」

「おにい、おかえり」

茜と理子に出迎えられると、真は自分の部屋に入って学生服を脱ぎだした。

すると茜が、部屋へと入ってきた。

「出してきたの?」

「いや」

「そう・・・」茜は少しだけホッとした。

本当は真に学校を辞めて欲しくなかったからだ。

でも茜のアルバイトと、真の親からの仕送りだけでまかなっている遠山家の台所事情を考えると、どうしようもなかった。

「茜、俺11月まで学校にいたいんだ」

「そうなの?」

「実はさ、今日阪神のスカウトがやってきて、俺を指名するかもしれないって言われた」

「うそ!真、それって凄いじゃん」

「かもしれないだぞ。指名されない事もある」

「どういうこと?」

「なんか会社で会議ってのがあってさ、それで俺の指名を反対されたら終わりなんだとさ」

「そっか・・・」

「指名されるって期待してて、すっぽかし食らう事なんてよくある話だよ。それに大学生や社会人だっているしな。ドラフト結果が出るまで、俺しばらく学校行きながら、また居酒屋でバイトするよ」

真はそう言うと、部屋着に着替えた。

すると茜が「バイトしなくてもいいよ」と言い出した。

「んなわけいかねえよ。茜に食わしてもらってばっかりじゃ・・・」

「バイトなんてしなくていいから、野球の練習して」

「何言ってんだよ」

「練習しなきゃ腕が落ちるでしょ。ドラフト会議までしっかりと練習する事。お金は私がなんとかする」

「茜・・・」

「私にまかせといて」

茜は、真にやりたい事をやって欲しかった。

子供が生まれてくる事で、真が全てを辞めてしまう事がつらかった。



そしてその翌日、真は仁科先生を通じて、高野連にプロ志望届けの手続きを行った。

それからグラウンドでは真と、プロ入り確実視と言われる陽一とが毎日練習をしていた。

そしてある日、夕暮れ時二人は練習を終えると汐入駅まで一緒に帰った。

「陽一、お前プロ志望まだ出してねえのか?」

「うん」

「なんでだよ?」

「別にドラフト会議までに出せばいいんだろ。焦ってださなくてもいいじゃん」

「事は急げって言うだろ?」

「急がばまわれともいうだろ?」

そんな事を話していると、あっと言う間に汐入駅に到着した。

「陽一、じゃあな」

「ああ」

二人は別れた後、陽一は一人ヴェルニー公園を歩きながら考えていた。

陽一は真と違って、本音を言えばあまりプロ入りには積極的ではない。

経済上の都合で本当にやりたい六大学野球は不可能だった。

しかし社会人野球に行くぐらいなら、プロに行った方がよいとも思っていた。

だが、陽一はプロ野球があまり好きではなかった。

例えば抑えのピッチャーは1イニングしか投げないとか、シーズン終盤の消化試合になると、首位打者達成や最優秀投手達成の為に試合を休むとか、金の力にまみれたFAとか・・・とにかくファンを全く無視した事をプロ野球の球団は平気で行う。

陽一はそんなプロ野球の体質が嫌いだったのだ。

そして、そんな職場で働いて行ける自信もいま一つなかった。