フォーエバー・フレンズ -173ページ目

1、決められた運命ー1

「お母さん、どうして私は天使にしかなれないの?」

それはジュリにとっての、子供の頃からの疑問であった。

そしてそんな質問に、決まって母親は「これは決まり事だから」と一言だけ言う。



決まり事。

それは一体誰が何処で決めたんだろう?

そして何故それを守らないといけないのだろう?

そんな疑問をいつも抱えこみながら、ただ歳月だけが過ぎていった。



ジュリは18歳。

決められた通りに天使学校へと通い、そして決められた通りに今年の春、正式な天使になろうとしていた。



目覚まし時計の音が鳴り響く、ジュリの部屋。

朝が苦手なジュリは、布団の中に潜りこみながら、その目覚まし時計の位置を手探りで確認し、やっとの思いで音を止めた。


「ふあああ・・・学校行きたくない・・・」



今日もまたジュリにとって、退屈な一日が始まろうとしていた。



ジュリは、あくびをしながら階段を下りると、一人台所へと向かった。

すると母は既に仕事へと向かっていた為か、台所には誰もいなかった。

ジュリは朝食のパンを頬張りながら、窓の外の天使界の景色を見つめた。

天使界には曇り空というものが無く、この窓から見える景色はいつも青々と晴れ渡る美しい空だった。

ここは人間界の住む地上から、上空およそ3万メートルの世界。

天使界。

それは死んだ魂が一度はここへと運ばれ、そして人間界での総括を行うところである。

つまりこの場所で、天国行きや地獄行き、もしくは生まれ変わりの判断が下される訳である。

窓の外には、今日も天使に連れてこられた死者の魂たちが、沢山浮遊していた。

「しかし・・・毎日毎日よくこんなに人が死ぬもんだな・・・」ジュリはそう言いながら、朝食のパンを食べ続けた。



朝食を食べ終えると、ジュリは翼を広げて天使学校へと飛んでいった。

今日も一日退屈な授業を受ける事となる。

それはジュリにとって、何よりもの苦痛タイムだ。

天使学校の授業内容は主に天使界の法律についてであり、天使界の掟と言うものを徹底的に叩き込まれる。

そして教壇には、今日も堅物の『天使法』の教師が熱弁を振るう。

「え~いいですか。天使法第27条、第6項目。ここに人間の死について記載がされております。これによると死とは、心肺が停止した状態の事を言います。ですので心肺が停止しておらず、浮遊する魂を生霊といい・・・ん?」

天使法の教師は、何かに気付いたように、振り返った。

すると、ジュリが居眠りをしていた。

「ジュリさん!!!」

「ふあ・・・」

ジュリは法律の先生のキンキン声で、目を覚ました。





昼休み、ジュリはいつものように一人木陰でパンを食べていた。

すると先輩のエミが飛んでやってきた。

「ジュリ」

「あっエミちゃん」

エミはジュリより一年上の先輩で、今年から晴れて正式な天使となったばかりである。

「はい、人間界のおみやげ」

エミはそう言うと、ファッション雑誌『cancan』をジュリに手渡した。

「ありがと」ジュリはそう言って、そのファッション雑誌を受け取ると、早速ページを見開いた。

するとエミは不思議そうな顔をした。

「なんでこんなの見たいの?天使はこんな服着ちゃいけないんだよ」

「わかってる。でも憧れるの。大体、天使ってダサくない?白い服しか着れないし」

「まあ確かに・・・」

「音楽はオルガンだけだし、映画も無いし。ああ、人間界っていいなあ。いろんな服着れるし、音楽も最高だし。ねえ、今度JUJU落としてこれない?」

「人間界の音楽は禁止だよ」

「お願い。ナイショでダウンロードしてきて」

「う~ん。時間があったらね。でも内緒だよ。禁止なんだからね」

「わかってるって。ところでどう?天使の仕事」

「う~ん・・・あんまり・・・変な人多いし・・・」

「そうなの?」

「うん。この間なんてね。亡くなったおじさんの手引っ張って空飛んでたら、いきなり後ろから抱きつかれるんだもん」

「キモ・・・」

「でしょ?もう死んでるじゃんって、つっこんでやった」