フォーエバー・フレンズ -172ページ目

1、決められた運命ー2

学校が終ると、外は夕暮れ時になっていた。

そしてジュリは翼をひろげ、天使界の夕暮れの空を優雅に飛んでいた。

「風、ちょー気持ちいい」

そんな事を言って飛んでいると、突然ピピーッと警笛が鳴った。

すると下のほうから天使界の警察が飛んできた。

「キミ!速度違反!」

「ええ!」

なんと天使界には、法定飛行速度と言うものがあった。飛行中の事故も少なくないのである。

そしてジュリは、切符を切られてしまった。

「これで何点目だ?」

「4点です・・・」

「こんどやったら一ヶ月の飛行停止だからな」

「えー!どうやって学校いくの?」

「歩け」警察は捨てセリフのようにそう言うと、優雅に飛んで去っていった。

「うざ・・・」



家に帰ると、勿論誰もいない。

天使界の総裁である母の帰りは、大体夜の10時ぐらいだからである。

そして母親が帰ってくるまで、ジュリはソファーに寝転がり、IPODで西野カナの音楽を聴く。

ぼんやりと見つめる天井。

西野カナの美しい歌声・・・。

「キミって♪キミって♪・・・」と思わず口ずさんでしまう。

そんな事をしていたら、いつの間にか眠りについてしまった。







天使界の総裁室。

総裁とはこの天使界において、総理大臣の事を意味する。

ジュリの母親はその総裁室で、今日も黙々と関係省庁からの書類に目を通す。



『ここ数年の間、人間界を離れる事を拒否する魂が増加している。日本国だけでもその数およそ3万と言われ、天使界へ行かない魂は、浮遊霊となって人間界に蔓延る。もしそれを、無理矢理、天使界へと連れて行こうとすれば、暴行をはたらく者もいる。これは一種の社会問題であり、早急に対策を練る事が必要とされる』



「ふ~ん・・・天使界に行くことを拒むねえ・・・勝手にすればいい・・・生まれ変わってもう一度苦労するのが嫌とか、もう一度死ぬのが嫌とか、そんな馬鹿な事言う甘ったれの言う事なんて聞いてられない」

そう言うとジュリの母親は、その報告書類をクシャクシャと丸めて投げ捨てた。

すると秘書が、総裁室へと入ってきた。

「総裁」

「なに?」

「実は・・・娘さんがまたスピード違反で・・・」

「また???」

「はい。こんなつまらない事で、次期総裁選が不利になるようだと困りますので・・・」

その言葉を聞いて、母はため息をついた。

そして「わかりました。娘にはよく言い聞かせます」と言って、総裁席を立った。







浅い眠りの中、ジュリは幼き日々の夢を見ていた。

「ジュリ」

「お父さん!おかえり!」

ジュリはそう言って、父親の胸に飛びついた。

すると父親は、小さなキティーちゃんのキーホルダーをジュリに手渡した。

「何これ?」

「人間界で流行っているんだ。キティーちゃんて言うらしい」

「へえ。かわいい。ねえねえ、人間界ってどんなところなの?」

「う~ん・・・いろんな人がいるし、いろんなモノがある。映画、音楽、食べ物。人間というのは、生きてる間に楽しむ生き物なんだ」

「人間て楽しいの?」

「ああ、楽しいと思うよ」



そんな優しかった父は、ジュリが3歳の時に病気で急死してしまう。

天使は死ぬと、跡形も無く消えてしまう。なので死体というものが無い。

ある日突然消えてしまった父親。ジュリは呆然となった。

「お母さん、お父さんは?お父さんいつ帰ってくるの?」ジュリが涙ながらにそう言うと、母は「もういないの。お父さんは天に召されたの」と言って、幼きジュリを抱きしめた。


「いやだあ!うわああん」