1、 決められた運命ー4
そして数日後、いよいよ旅立ちの日の朝がやってきたのだ。
ジュリは目覚まし時計で目を覚ますと、家に母親がいないことを確認しはじめた。
そして、母親がいない事を確認すると、早速身支度を開始しだした。
「えへへ。これであのクソババアともしばらくお別れ。よかった、よかった」
そんな事を言いながら、セッセと旅の準備をした。
そして全て準備を終えると、颯爽と我家を飛び去って行った。
そんな時、天使界総裁室に一本の電話が入った。
「ええ、娘を人間界へ?いいえ許可してません。はい。はい。いえいえハンコなんて押してませんよ。ええ???」母はそう言うと、電話を切った。
「あの、クソガキ・・・」
天使学校では、ジュリへの留学説明が行われていた。
「ジュリさん。人間界での禁止事項を説明します」
「はい」
「まず、人の運命を変えるような事をしては行けません」
「はい」
「それと自分が天使である事を、人間に知られてはいけません」
「はい」
「人間界の男性と恋愛してはいけません」
「は、はい」
「学問に励む事」
「はい・・・」
「むやみやたらと外出しない」
「は、はい・・・」
先生のそんな説明を聞いていると、ジュリは段々と元気が無くなってしまった。
すると先生は急に顔が優しくなった。
「まあ、そんなにガチガチ監視する気もありません。但し、1と2、つまり人の運命を変える事と、自分が天使であるのがバレる事。これだけは絶対にやってはいけません、大変な事になります」
「あの・・・大変な事って?」
「この世から消えてしまいます」
「ひえ!」
「え~そして・・・」先生が次の説明を始めようとすると、別の教員が教室の中へと入ってきた。
そして先生にヒソヒソと耳打ちをしだした。
その瞬間ジュリは、咄嗟にいやな予感がした。ひょっとして母親が、自分の留学の事をかぎつけてしまったのではないかと。
そして、こっそりとその教室を抜け出して行った。
先生同士のヒソヒソ話しが終わると、先生は「ジュリさん」と言って、向かいの席を見つめた。
するとそこにはもうジュリの姿は無かった。
「あれ、もう行っちゃたの?う~ん・・・羽田空港には近寄るなって言おうと思ってたのに・・・ジェット機にでも当たったら大変・・・」
天使界にある人間界への入口には、検問所があり、常時警察官が見張っている。
ジュリはそんな物々しい雰囲気の中、留学用パスポートを検問所の警察官に見せた。
「うん。行ってよし」
そう言われると、ジュリは少しオドオドしながら人間界の入口の方へと歩いて行った。
するとその時、検問所の電話が突然鳴り出した。
「えっ?ジュリ?はい、今検問所を・・・ええ!!!」
その言葉を聞くとジュリは咄嗟に走り出した。
「キミ!待ちなさい!」
しかしジュリは、そんな警察官の制止をも振り切り、そのまま大空へ向けてダイブした。
「あ・・・」警察官は、大空へと飛んでいったジュリの姿を見つめて、呆然とした。
初めて天使界の外へと出たジュリは、優雅に大空を飛び続けた。
そして「気持ちいい!」と言いながら、クルリと一回転した。
段々と日が落ち、あたりは暗くなってきた。すると雲の切れ間から、光が見え出した。
「あれが人間界だ」
ジュリの目の前に現れた、無数の美しい光。
東京タワー、スカイツリー、六本木ヒルズ、ディズニーランド、レインボーブリッジ。
そこは人間界の文明の先端。
今も昔も美しく光り輝く大東京。その美しい東京の夜の光に、ジュリは胸躍らされた。
「東京だ。これが私の住む町・・・」
ジュリはその東京上空の空気を、深呼吸するかのように大きく吸い込んだ。
そして「人間界の皆さん!よろしくお願いします!」と言うと、その美しく輝く東京の街へと急降下していった。