1、 決められた運命ー5
それからジュリは、東京上空をひたすら飛び続けた。
「ええと、天使の寮はここらへんのはずなんだけど・・・」そんな事を言いながら、地上にあるはずの寮を探していた。
すると突然、フラッシュのような眩しい光に照らされた。
「えっ?」そう言ってその光の方に目をやると、なんとジャンボジェット機がこちらへと飛んできたのである。
「キャーーー!」
ジュリは、その大型旅客機をなんとかかわした。
しかし、そのままジェット気流に巻き込まれてしまい、グルグルと、きりもみ飛行のようにまわりながら墜落していった。
「キャア!!!た、たすけてえ!!!」
恭介は、今日もお店でワッフルを焼いていた。
店員は恭介以外には誰もいない、たった一人のお店だ。
このお店のオーナー兼シェフとなって、3年になろうとしていた。
夜8時、お店の後片付けを終えて、電気を消し、そしてセコムで扉をロックすると、お店の前に佇み、美しい冬の空を見上げた。
そして「帰るか・・・」と言って、恭介は歩き出した。
するとその時・・・。
「きゃあああ!」と突如、天からの叫び声がした。
「な、なんだ!」
恭介は、あたりを見回したが、何も見当ら無い。
そして咄嗟に空を見上げた。
すると、空から翼の生えた女性が、グルグルと回りながら落ちてくるではないか。
「えっ?天使???」
その翼の生えた女性は、そのままお店の屋根の上へと墜落し、そしてその瞬間、ドン!ガラガラガッシャン!と物凄い音がなった。
恭介は一体何が起こったのか、さっぱり理解ができなかった。
そして、ひょっとしてけが人がいるのでは無いかと思い、咄嗟にお店のロックを解除し、店内へと入って行った。
「いたたた・・・」ジュリはそう言って、自分のお尻を押さえた。
そしてあたりを見回すと、そこはなにやら厨房のような場所だった。
天井を見上げれば、ポッカリと開いた大きな穴。そこからは冬の星座が見えていた。
「やっちゃった・・・」
すると、入口の扉がガチャンと開いた。
「ヤバい!」
ジュリは人が来ると思い、咄嗟に自分の背中の羽根を折りたたんだ。
恭介は厨房へと走ってやってきた。すると厨房にジュリが倒れている事に驚いた。
「大丈夫か?」
「あっ、はい、だ、大丈夫です」
「ど・・・どうして空から???」
「う、ううん。なんでもない」
「救急車呼ぶから待っててくれ」そう言うと、恭介は携帯電話を取り出し、119番をした。
「あ、い、いいです。大丈夫です!」
「いや、何かあったら大変だ。そこ座ってて。あ、すみません。けが人なんです。空から降ってきて。えっ?いや、本当なんですよ。空から落ちてきて、はい。20歳前ぐらいの女の子で・・・」
『自分が天使である事を、人間に知られてはいけません』
「やばい・・・医者はまずい・・・天使ってバレる・・・」
恭介が必死に119番で状況説明している合い間を見計らって、ジュリはこっそりとその場を抜け出していった。
「本当ですよ。空から降ってきたんです。信じてください!」恭介は携帯片手にそう言って、あたりを見回した。
するとジュリはいつの間にかいなくなっていた。
「消えた・・・・」恭介は呆然となって、持っていた携帯電話を床に落としてしまった。
そして、天井を見上げるとポッカリと空いた大きな穴があった。
「一体何が起こったんだろう・・・」
ふと床を見ると、一枚の白い羽根が落ちてあった。恭介はその白い羽根を拾うと、それをじっと見つめた。