フォーエバー・フレンズ -164ページ目

2、アルバイトー3

『ガールズバーひまわり女学園』


セーラー服を着たかわいいジュリの姿に、お客様であるオジサマはもう夢中。

そしてカウンター越しで、お客様に水割りを作るジュリ。

「ねえねえ、ジュリちゃんて趣味は何?」

「う~ん。音楽聞く事。西野カナが好き。オジサンの趣味は?」

「オジサン?オジサンはセックスが趣味かな。ジュリちゃんは何人ぐらい経験あるの?」

「ええ、ないよ~」

「またまたあ、何人か経験あるんでしょ?」

「あはは・・・」

ジュリは、ただただその場のノリにあわせて笑っていた。



この変態・・・。



そんな事を思いながら・・・。



しかしその反面、こんな楽にお金儲けのできるいいバイトは無いとも思ってしまった。



その後ジュリは、その変態オジサンを店前まで見送った。

「有難うございました」

「ジュリちゃんまた来るよ~」

「は~い」

そう言ってジュリは、手を振ってオジサマと別れた。

すると今度はお店の店長が、チラシと上着をもってやってきた。

「ジュリちゃん。お店暇になってきたから、今度は路上でチラシ配りやってよ」

「チラシ配り?」

「そうそう、早く早く」

そう言うと、店長はジュリに上着のコートとお店のチラシを手渡した。


「ガールズバーいかがですかあ?」

ジュリはそう言いながら、夜の新宿の雑踏に立って、道行く人にお店のチラシを配り続けていた。

「ガールズバーいかがですかあ?」

「ガールズバーいかがですかあ?」

すると一人の男性がそのチラシを受け取った。

「君は・・・」

なんとそのチラシを受け取ったのは、恭介だった。

「あー!!!」

ジュリは恭介の姿を見て、思わず絶叫してしまった。







京急線の車内は、酒に酔った人たちのアルコールの臭いが充満していた。

そんな車内の中、二人は窓の外に見える東京の夜景を見つめていた。

京急線は、電子オルガンのような音をたてながら発進する。

ジュリと恭介は、なんとなく気まずそうに、その電車に乗っていた。

結局ジュリは、恭介に連れられて、あのガールズバーを後にしたのだ。

「ダメだろ?高校生のくせに、あんなところでバイトしたら」

「だって、知らなかったもん」

「普通わかるだろ?」

「知らないもん」

「ところで、何であんなバイトしてたんだ?」

「お金が欲しかったから」

「だったら普通のバイトしろよ」

「普通のバイトって?」

「例えば・・・ウチの店だってバイト募集してるし・・・コンビニやファミレスだってあるし・・・」


そして二人が大森駅を降りると、時刻は既に夜の一時になっていた。

そんな真夜中の大森の町を、二人は肩を並べて歩いていた。

「別に送ってくれなくてもよかったのに」

「もう一時だぞ。何かあったらどうする?」

今日は満月の夜。

真冬の月は、大都会東京の空でもとても美しく、真っ暗な大森の町とともに二人を照らした。

「ねえ、聞いていいかな?」

「なに?」

「店長ってさ、ワッフル焼くのが好きでこの仕事始めたの?」

「いや。別に好きじゃなかったよ」

「じゃあどうしてこの仕事してるの?」

「う~ん・・・運命かなあ。ワッフルを焼くのが自分の運命なのかな・・・」

「運命?」

「そう、つまり避けては通れない道って事」

「それは、自分がやりたいと思ってやる事と違うの?」

「違うよ」

「そんなんでいいの?」

「やりたいと思って始めた事も、やがてはやらなければいけないものになるんだよ。みんなやらなければいけないという物に縛られているんだよ」恭介はそう言うと、ニコリと笑った。

そして夜空を見上げた。

「でもね、お客さんが幸せそうにワッフルを食べている姿を見るのは嬉しいよ。そんな姿を見たら、オレ少しはこの世の中の為に役に立っているのかなって思うんだ」

「そうなんだ」


ジュリの夢見た人間界とは、自分の好きな事、そして自分の好きな道を選べる世界であった。

しかし人間界の実態とは、ジュリの夢見ていた世界とは少し違っていた。

そう、この恭介のようにたとえ好きではなくとも、運命だと思って生きている者だっている。


それは、天使の世界とあまり変わらない事であった。