フォーエバー・フレンズ -163ページ目

2、アルバイトー4

ジュリは無事、天使の寮へと帰った。


すると・・・。


「なにやってんの!このバカ!」と、いきなり寮母さんのカミナリが落ちてしまった。

「ひえ!」

「門限も破って、挙句の果てに夜の街でバイトして。あんたはバカか!」

「な、何で知ってるの???」

「ちょうど新宿にいた天使からタレコミがあったの!誰かしら見てるんだからね!」

「ご、ごめんなさい・・・」

「とにかく、今回の事は天使界には内緒にしといてあげる。でも次やったら強制送還だからね」

「はい・・・」

「返事が小さい!」

「はい!」

「行ってよし!」


そんなこんなで、ジュリはやっとの思いで寮母の怒りから解放された。

そして居間を出ると、廊下で「・・・ったく、あのオニババア」と捨て台詞のように言った。

すると背後から「何か言った?」と声が聞えてきた。

なんと寮母は、居間から首だけを出して、ジュリを見ていた。

「い、いえ!なんでもないです!」







翌朝の日曜日、ジュリは朝10時に目が覚めた。

そして起き上がると咄嗟に財布の中を覗いてみた。

すると財布の中には、昨日のバイト代と、元々あったお金と合わせて、なんと21,000円ものお金が入っていた。

「やった。これであのコートが買える」そう言うと、思わずガッツポーズをしてしまった。

そして「よし、渋谷に行くぞ!」そう言った瞬間、寮母さんが部屋へと入ってきた。

「な、なに?」

「あんた、そのお金何に使うの?」

「えっ?コートを買おうと・・・」

「あんた何考えてるの?そのお金であのワッフルのお店に、何か買って、持って行きなさい。お店の天井に穴開けといて。しかも逃げて。普通なら警察行きだよ?」

「でも、修理できるお金もないし・・・」

「気持ちの問題。あんたにできる事をやりなさい」

そう言うと、寮母さんは部屋を出て行った。





ジュリは寮を出ると、冬の青空を見上げた。

そして「ああ、またあのコートが遠くなってしまった。もう夜のバイトも出来ないし・・・世の中って甘くないなあ・・・」と言ってうなだれた。


大森駅の方に向かって歩いていると、駅前の洋服店の店頭に、グレーのマフラーが売ってあった。

「あ、これかわいい・・・」そう言うと、ジュリはそのマフラーを手に取った。



昼前の『天使のワッフル』は、朝の為か客足はまばら。

お店が混むのは、14時~16時のティータイムか、18時~20時のサラリーマンの帰社時間。

なので恭介は、黙々とお店の床にモップをかけていた。

するとお店の扉が、開いた。

「いらっしゃいま・・・」

恭介がそう言いかけると、なんと入口の前に立っていたのは、ジュリだった。

「ど、どうも・・・」

「やあ、ジュリさん」そう言うと恭介は、少年のような笑顔で微笑んだ。

「あの・・・これ、この間のお詫び」

ジュリはそう言うと、グレーのマフラーを恭介に見せた。

「お詫び?」

「ほら、私、天井に穴開けたじゃん。お金無いから弁償できないし・・・」

「ああ、そんな事か。もう忘れたよ。あはは」

恭介はそう言って笑うと、ジュリからもらったマフラーを首に巻いてみた。

そして「似合うかな?」とジュリに聞いた。

するとジュリは少しだけ微笑んで「うん、似合うよ」と言った。

「ありがとう。大切に使わせてもらうよ」

「ねえ」

「うん?なんだ?」

「バイトってまだ募集してるんだよね?」

「ああ、まだしてるよ。時給が安くて誰も来ないんだよ」

「私、やらせてもらってもいいかな?」

「えっ?本当にやってくれるの?」

「うん、私、欲しい物が一杯あるんだ。だからお金が欲しい」

「そっか。わかった。がんばってね」

「うん」


こうしてジュリは、この『天使のワッフル』で働く事となった。

お店の看板には、天使の絵。

そしてユニフォームは、真っ白な調理服。

その姿を鏡に写してみると、天使界にいる時の自分とあまり変わらなかった。

そして、その白い衣装に納得が行かないのか、ジュリは「う~ん」と言って首をかしげた。