フォーエバー・フレンズ -161ページ目

3、菜月のレシピー1

ジュリは寮に帰ると、早速、今日起こった不思議な出来事をレナに報告した。

「ええ!じゃあ本当に消えたの?その菜月って人」レナは目を大きくさせながら、驚いていた。

「うん、でね、私、レジの前で電話に出ていたんだけど、あの店、レジの前通らないと外には出られないのね」

「うんうん。そうだよね」

「だから一体、いつの間に出て行ったのかなって・・・」

「ジュリ、それってひょっとして霊じゃないの?」

「ううん。生気があったもん。絶対に霊じゃないよ」

「そっかあ・・・でも、変な話だよね」

「それでね、机にこんなもの置いていったんだよ」そう言うとジュリは、菜月が置いていったレシピノートをレナに見せた。

「何これ?『菜月のワッフルレシピ』?」そう言うとレナは、そのノートを一枚一枚めくっていった。

すると一階から「ご飯だよー!」と寮母さんの大きな声が聞えた。

「はーい」

今日の晩御飯は、ちゃんこ鍋だった。

グツグツと煮込んだタラや肉団子。

少し塩の利いたダシ。

まさしく寮母さんの得意料理であった。

丸々と太った寮母さんの、ちゃんこ鍋を食べる姿は、まるで相撲部屋の力士のようだった。

そして3人は、そのちゃんこ鍋を仲良くつつきあった。

「おいしいね」レナがそう言うと、ジュリも「うんうん」と言ってうなずき、美味しそうにその鍋を食べた。

恭介は一人自宅マンションのソファーの上で、ウイスキーをロックで飲んでいた。

そして、テーブルの上に置かれた菜月の写真を見ながら、3年前の出来事を思い出していた。

そう、いつも喧嘩だった・・・。

「菜月、いつまでこんな不採算な店やってるんだ」

「ごめん・・・」

「もうやめろ」

「でも!」

「採算の合わない事なんてやる必要がない。今すぐやめろ」

「やめろって・・・ちょっと待って!仕入れ値をまけてもらうようにするから!」

「だめだ。大人しく家の中にいろ。菜月は働く事は向いてない」

「恭介!私の夢なの!ワッフルのお店は私の夢なの!」

「そんな事言ってるから、ダメなんだ。世の中そんなに甘くない。誰がお金を出してると思ってるんだ」

「お願い!お店を続けさせて!」

そんな菜月の涙ながらの訴えも、商社マンで数字にシビアな恭介には、偽善者の戯言にしか聞こえなかった。

そして菜月は涙を流しながら、残酷な言葉を恭介に言い放った。

「恭介のやっている仕事は、人を不幸にする・・・」

「なんだと」

「だってそうじゃない。M&Aやってリストラして、その功績で自分の所得にしてる。そんな仕事、どれだけの人が喜んでくれるの?一体どれだけの人を幸せにできるの?」

「菜月・・・」

「私は確かに、お金儲けは出来ていないかもしれない。でも私の作ったワッフルを喜んで食べてくれる人がいる。私の作るワッフルを食べて、生きがいを持ってくれる人がいる」

その言葉を聞いて、恭介はしばらく黙っていた。

そして「菜月・・・わかった・・・オレはお前の為にここまでやってきた。なのにそんな事を言うなんて・・・菜月、もう別れよう」そう言うと、恭介は一人そのマンションを立ち去っていった。

大学時代からの仲。

お互いがそれぞれに夢を持って生きていた。

しかしいつの間にか恭介は、目の前に立ちはだかる肉強食の世界で生きる事となり、菜月はそれとは間逆に、人と幸せに生きる道を望んでいた。

そしてそんな二人の間に出来た溝は、年々と大きくなっていった。

ウイスキーを入れたグラスを、カランカランと音を立てて回すと、そんな菜月との思い出が込み上げてきた。

「菜月・・・」

恭介は悲しそうな顔で、そう言った。