フォーエバー・フレンズ -160ページ目

3、菜月のレシピー2

翌日、ジュリは放課後、渋谷の街へと繰り出した。

その目的は・・・。

そう、あの黒いコートを買うためだった。

「ニッヒッヒ」

ジュリは電車の中で、不気味な笑みを浮かべていた。

そしてそのお店に行くと、そのコートはなんと11,980円!

なんと8千円も安くなっていたのである。

「ええ!安い!どうして???」

すると店員のお姉さんが「1月ですから、これからはもう春物の季節なの」と言って笑った。

「まだこんなに寒いのに?」

「そうよ」

人間界の女性向けの洋服は、季節を先取りして売り出される。

冬物は秋に買い、春物は冬に買う。

年がら年中同じ服を着ていたジュリにとって、それはとても不思議な事であった。

何はともあれ4割引の価格で、ジュリはその黒いコートを見事ゲットしたのだ。

「えへへ、ラッキー」そんな事を言いながら、ジュリはバイト先へとやってきた。

すると恭介が「あ、ジュリ、待ってたんだ。オレちょっと出かけるから、留守番よろしく!」と言って、走ってお店を出て行った。

「あ・・・店長・・・いつも夕方何処に行ってるんだろう?」

いつものようにガランとした夕方のお店。

そして一人レジに立つジュリ。

すると妙にお腹が空いてきた。

そんな時、ショーケースの中に並べられたワッフルケーキに目が行った。

そして「ひとつぐらい食べてもいいよね」と言うと、ジュリはストロベリーワッフルケーキと、カフェモカを手に持って、物陰でモグモグと食べだした。

「おいしい・・・本当においしい」

あまりにもの美味しさに感激してしまった。

すると「あの・・・」という声が、レジの方から聞こえてきた。

「はっ、はい!」

ジュリは口元についた生クリームを手でぬぐいながら、レジの前へと現れた。

すると、カウンターの向こうに立っていたのは、菜月だった。

「菜月さん!」

「こんにちは」

菜月の笑顔はとても美しく、そしてとてもミステリアスだ。

それは同性のジュリから見ても、思わずウットリとしてしまう。

そして二人は、お店の客席に座って話していた。

「あの・・・菜月さん。この間ノート忘れていましたよ」

「そう・・・」

「カバンの中に入れてますから、今持ってきます」ジュリはそう言うと、ロッカー室に向かおうとした。

すると菜月は「いいの・・・」と一言だけ言った。

「えっ?」

「ワッフル作りの勉強に役立てて欲しいの。あのノートを見ながらワッフルを作ってみて」

「でも私、コートとかいろんなものが欲しくてこの仕事を・・・ワッフル作りなんて」

「何かをする為に、ジュリさんはこの世界に来たんでしょ?」

「えっ?」

「天使の世界から」そう言って、菜月はニコリと微笑んだ。

「えええええ!!!!」

ジュリは気が動転して、もう訳が分らなくなってしまった。

『自分が天使である事を、人間に知られてはいけません』

そんな天使界の掟を思い出したジュリは、おでこが床にくっつく程に土下座をつきだした。

「お願いします!私が天使である事はどうぞご内密に!」

「誰にも言わないわよ。でも私のお願いも聞いてほしいの・・・」

「へい!何でございやしょう!」ジュリは気が動転して、時代劇のようなセリフを吐いてしまった。

「このお店の店長に、私のことは話さないで欲しいの・・・」

「承知しました!」

ジュリはそう言いながら、おでこを床にくっつけて、ひたすら土下座をついていた。

するといつのまにか、あたりが静まり返っている事に気がついた。

そしてふと顔を上げると、誰もいなくなっていた。

「あれ、菜月さん?また消えた・・・」

しばらくジュリは呆然としていた。


「なんで天使ってバレたんだろう?・・・」