フォーエバー・フレンズ -162ページ目

2、アルバイトー5

一週間後、段々と、このバイトが板についてきたそんなある日、恭介はジュリにアルバイト代を手渡した。

「えっ?もう給料日?」

「ああ、一週間に一度支払う事にするよ。買いたいものもあるだろうから」

「あ、ありがとう」

「それとオレ、これから4時から6時の間、席を外すからしっかりと留守番頼むよ」

「うん。わかった」

そして恭介は普段着に着替えて、お店を出て行った。



夕方の5時になると、お店はとても静かになる。

晩御飯前にワッフルを食べる人間なんて、そうはいないからだ。

そんな静かな店内で、一人レジの前に立っていると、なんとなく体を動かしたくなってくる。

「掃除でもするかな」ジュリはそう言うと、モップで床を拭き始めた。

すると店の奥の客席に、一人ポツンと座っている女性がいる事に気がついた。

年の頃は、20台半ば。切れ長の目がとても美しく、そしてぽってりとした唇。真っ白い肌。

とにかくとても美人である。

その美しい女性は、寂しそうにガラス越しに見える、窓の外の景色を見つめていた。

「あれ?お客さんいたかなあ・・・」

そう言うと、ジュリはその女性に近づいて行った。

「あの・・・」

「えっ!」その女性はジュリに声を掛けられ、少し驚いていた。

「あの・・・何か飲みますか?」

「わ、私?い、いえ・・・あの・・・」

女性はどういう訳か、声を掛けられただけでパニックになってしまった。

そんな姿を見ると、少しかわいそうに見えてしまったのか、ジュリは「コーヒーでも飲みます?ご馳走しますよ」と言って、コーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ出した。

そしてテーブルの上にコーヒーをトンと置くと、その美しい女性は黙ってその紙コップのコーヒーを見つめた。

「はい、砂糖とミルク」ジュリはそう言うと、テーブルの上にスティックの砂糖とミルクを置いた。

「あ、あの・・・」女性は不意に喋りだした。

「なんですか?」

「あなたは何者?」

その女性の言葉に、ジュリは驚いた。

あんたこそ何者だ?と思っていたからだ。

「私?私、ジュリと言います。ここでバイトしています」

「そう・・・ジュリさんて言うの・・・」

「あの・・・あなたこそ何者ですか?」

「私、菜月って言うの」

「菜月さんというのですか?よくここに来るのですか?」

「ええ、たまに・・・」


すると、お店の電話が急に鳴り出した。


「あ、電話だ。菜月さん、ちょっと待っててね」そう言うと、ジュリはレジの近くの電話のところへと走っていった。

「はい、ええ。今、店長が留守なもので・・・はい、それじゃあ携帯にでもかけてもらえます?090―6715―・・・」


電話を終えると、ジュリは再び客席へと戻ってきた。

するといつの間にか、菜月はいなくなっていた。

「消えた・・・」

テーブルの上を見ると、全く口を付けていないコーヒーと、一冊のノートが置かれていた。

そしてそのノートの表紙には『菜月のワッフルレシピ』と題名が書かれていた。

「なにこれ?」

ジュリはそのノートを手に取ると、不思議そうな目でそれを見つめた。