フォーエバー・フレンズ -159ページ目

3、菜月のレシピー3

夕方6時になると、『天使のワッフル』は急に客足が多くなる。

帰宅途中の人が、愛する家族の為、そして自分へのご褒美の為に、ワッフルを買い求めにやってくるからだ。

ジュリは、手際よくワッフルを紙ケースに入れ「ありがとうございました!」と丁寧に深々と頭を下げる。

そんなジュリの姿を見て、恭介は感心していた。素行こそあまり良くはないが、とても働き者だった。

そして夜8時前、いよいよ閉店と言う時、恭介はふとジュリに話しかけてきた。

「ジュリ、オレに何か隠しているだろ?」

「へっ?」

「オレに隠している事があるだろ?」恭介はそう言うとニヤリと笑った。

ひょっとして天使である事がバレてしまったのかな・・・。

それとも菜月さんの事・・・。

するとジュリは再び、ドカッと土下座をついた。

「どうかお許し下さい。この事はどうぞご内密に!」

「内密って、もう知ってしまったんだから無理だろ」

「そこをなんとか!」

「あのなあ。ワッフル食べたなら、食べたって言えよ。一つぐらい食べたって別に怒らないよ」

「へっ?」

「ストロベリーケーキ食べただろ?ちゃんと在庫カウントしてるんだからな」

「あ、ご・・・ごめんなさい・・・」

ジュリはホッとしたが、恭介は意外に細かい男だなとも思ってしまった。

ケチな奴だな。

そんな事を思いながら、ジュリはお店の外の看板を片付けていた。

そして看板をお店の中にしまうと、店長が店の奥でパソコンをカタカタと操作している事に気が付いた。

「店長、何してるの?」

ジュリがそう言うと、恭介は「ああ、来てごらん」と言って、ジュリを手招きした。

そして、恭介のノートパソコンの画面を見てみると、そこには沢山の数字やグラフが画かれていた。

「何これ?」

ジュリがそう言うと恭介は「原価計算だよ」と言って微笑んだ。

「原価計算????」

「そう。つまりワッフル一個売って、どれだけの利益が出るかって事」

「ふ~ん」

「今日ジュリが、1個だけ盗み食いしただろ?」

「まだ根に持ってるの?謝ったじゃん・・・」

「違うよ。一個食べられてしまうと、このストロベリーサンドの原価計算が狂ってくるんだよ」

そう言うと、恭介はマウスをクリックした。

すると画面には『ストロベリーワッフルケーキ』の原価表が出てきた。

「このデーターを元に、経費の分析をするんだよ。例えばイチゴが高いようだったら、仕入ルートを変えるとか、売れ残りが多いようだったら、作る数を減らすとか、逆に店舗経費が高いようだったら、電器器具を省エネ型に変えるとか」

「ふ~ん」

「まあ一日一個は食べてもいいよ。でもそれは試供品と言う扱いにするから、ちゃんと伝票は切ってくれ」

「お店って結構大変なんだね」

「まあね。まあ前のオーナーもこれぐらいやってくれてたらよかったんだけどさ」

「前のオーナー?」

「あ、いやいや。なんでもない」

寮に帰ると、既にレナは晩御飯を済ませていた。

そして居間で、テレビを見る寮母さんの前で、ジュリは一人ごはんを食べていた。

「ねえ、おばさん」

「なに?」

「天使って事がバレると、消されちゃうんだよね」

「そうだよ」

「誰にバレるとだめなの?」

「人間にだよ」

「でも、それって人間にバレても、天使界に通報がいかなきゃいいんじゃないの?」

「違うよ。人間にバレた時点で、天使は自然に消えてしまうんだよ」

「ええ??それ本当???」

「当たり前だろ。人間がどうやって天使に通報するの?」

晩御飯を食べ終えると、ジュリは自分の部屋のベッドの上に寝転がって、ひたすら考え事をしていた。

どうして菜月さんに、自分が天使って事がバレても消えないんだろう?

それに菜月さんは、どうして私が天使と言う事を知っていたんだろう?

菜月さんはやっぱり霊なのかな?

いや違う・・・。

菜月さんには生気がある。

それにどうして店長に菜月さんの事を内緒にしなきゃいけないんだろう?

わからない・・・。

ふと机の方に目をやると、その机の上には『菜月のワッフルレシピ』が置かれてあった。

ジュリはベットから起き上がり、そのレシピノートを開いてみた。

すると、とても綺麗な文字で、図や写真を折り混ぜながら、事細かくワッフルの作り方が書かれてあった。

『メープルワッフル。強力粉80g 薄力粉60g メープルシュガー35g・・・・ワッフルメーカーで約2分焼く。ラズベリーソースを(図2)のようにかけ、最後に粉砂糖を振り掛ける』

「ふ~ん」

ジュリは唇を尖らせながら、そのレシピノートを見続けた。

そして「ちょっとやってみようかなあ」と言い、そのレシピノートをパタンと閉じた。