フォーエバー・フレンズ -156ページ目

4、拒否する魂ー2

次の日の放課後、ジュリとレナはいつものように仲良く下校していた。

「人間界にそんなに浮遊霊っているの?」ジュリが不意にそう言うと、レナは「いるよ。通学してたら、絶対に見るもん」と淡々と言った。

「そうなんだ・・・」

するとレナは突然指を差して「あっ、あの人浮遊霊だよ」と言った。

「えっ?どこどこ?」

「ほら、あの人」

ジュリがレナの指差す方を見ると、そこには少し強面な中年男性が立っていた。

「ええ?普通の人じゃん」

「よくみてよ。あの人だけ影が無いでしょ?」

「うん?どれどれ?」

冬の眩しい太陽の光が降り注ぐ大森駅、駅前商店街を歩く人達には、みんな影があった。しかし何故かその中年男性だけには影がなかった。

「本当だあ・・・」ジュリはそう言うと、マジマジとその中年男性を見つめた。

「じっと見ちゃダメだよ。寄ってくるよ」

するとその中年男性は、二人の視線に気付いたかのように寄ってきた。

「きゃあ!来たあ!」

そして二人の側へやってくると、まじまじとレナとジュリの姿を見つめながら話し出した。

「あんたら、オレの姿が見えるのか?」

「は、はい・・・」ジュリは恐る恐るそう言うと、持っていた通学鞄を抱きかかえるようにした。

すると中年男性は「あんたらは天使か?」と聞いてきた。

「いえ、霊感が物凄く強くて」

「そうか、誰にも見えないと思って安心してたんだが、見える人には見えるんだな」

「あの・・・おじさんはどうしてここにいるの?何故あの世に行かないの?」

「あの世に行きゃ、地獄行きの裁判を受ける事になるんだ。わざわざ地獄に行くのに、誰が進んで行くもんか」

「え、じゃあ、おじさんはこの世で一体何をしたの?」

「オレ?オレは殺人をやったんだよ」

「殺人???」その言葉を聞いて二人は震え上がった。

「そうだよ。23年前に多摩川幼女連続殺人事件というのがあったんだけど、本当はあれ、オレがやったんだよ」

「えええ!!!」

「たまたま近所に変質者っぽいオタク野郎がいてさあ、結局そいつが逮捕されたんだけどな」

「そんなあ・・・」

「世の中嘘ついたもんが勝ちだよ」

そう言うとその中年男性はカカカと高笑いをしながら去って行った。

レナとジュリは寮に帰ると、早速パソコンを開けてみた。

検索キーワードは『多摩川 連続殺人』。

「あ、あったあった」レナがそう言ってマウスをクリックすると、画面上に事件の概要が表示された。

『多摩川幼女連続殺人事件』

1988年、東京都大田区の多摩川河川敷にて、3人の幼女が連続して殺害された事件。

被害者は横川真紀ちゃん(当時4歳)川野辺しのぶちゃん(当時6歳)小村弥生ちゃん(当時5歳)の3名である。

犯人は品川区在住の無職、牧達也(当時27歳)。

彼は日頃から幼女の体に興味を抱いていた。

その証拠として牧の自宅から『児童ポルノ雑誌』が発見された。

「へえ・・・こんな事件があったんだあ・・・」レナはそう言うと、画面を下へとスクロールして行った。

『裁判の経過』

被告の牧達也は、裁判では打って変わって無罪を主張。

1995年に、最高裁で上告が棄却され、死刑が確定。

2003年、死刑執行。

「ええ!死刑!!!!」

二人はそう言って驚き、目をまん丸くさせた。

その日の夕食、寮母さんとレナとジュリの3人は、その話で盛り上がった。

「そんなの絶対に許せない!」レナがそう言うと、ジュリも「そうだよ!」と言って、怒りを露にした。

しかしそんな二人とは対照的に、寮母さんは黙々とイタリアンパスタを食べていた。

「大体、何もしていない人が死刑になるなんて、そんなのあんまりだよ」ジュリはイタリアンパスタを口に含みながら、モゴモゴと言った。

すると寮母さんは突然口を開いた。

「別に珍しい事じゃないよ。よくある事だよ」

「そ、そうなの?」

「だから言っただろ。人間なんて嘘つきだって」

「でも・・・人が死ぬんだよ」

「そんな悪事は、天使界の裁判で始めて判明する。それで無実の罪で死刑になった人には恩赦という制度がある」

「恩赦?」

「生まれ変わる際に、次の人生は才能やチャンスを与えられて産まれてくる。例えば一流スポーツ選手とか、美人モデルとか」

「それじゃあ、本当に悪いことして、死後、天使界に行こうとしない人はどうなるの?」ジュリのその問いかけに、寮母さんは淡々とした表情で「お咎めなし。一生浮遊霊」と言ってのけた。

「そんなのあんまりじゃん!」

「だから言ってるだろ!浮遊霊なんて力ずくでも連れてけって!」

寮母さんはそう言って、ドンとテーブルを叩いた。

「ほんと口の悪いババア・・・」

ジュリが真っ暗な部屋のベッドに寝転びながらそんな事を言っていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「はい」ジュリがそう言うと、パジャマ姿のレナが部屋の中へと入ってきた。

「どうしたの?」

「ジュリ、私、この事件の事もっと知りたいんだ」

「そうなの?」

「うん、それに間違って死刑にされたしまった牧って言う人の事も知りたいんだ。私達あと数ヶ月で正式な天使になるじゃん。私、人間の事もっと知っておきたいの」

真面目なレナは、この幼女連続殺人事件にもの凄く興味を引いていた。そして「ねえ、今週の日曜日に、その牧っていう人の事調べてみない?」と言って誘ってきた。

「い、いいけど・・・」