フォーエバー・フレンズ -155ページ目

4、拒否する魂ー3

日曜日。

ジュリとレナは、品川の方へと向かっていた。

「ねえ、レナ。どうやってその牧って言う人の事調べるの?」

「うん。ネットで調べたんだけど、実はその牧って言う人ウルトラマンが好きだったみたいなの」

「ウルトラマン???」

「そうそう。いわゆるマニアって奴」

そう言うと、レナはパソコンから引っ張り出した牧の写真をジュリに見せた」

ボサボサの長髪に、やせこけた頬。青白い肌に、センスの悪いめがね。

ジュリはその写真を見て思わず「キモッ!」と叫んでしまった。

「それでね、品川にウルトラマンの専門店があるの。そのお店に牧って人、よく通っていたらしいんだ。まずそこに行ってみようと思う」

品川にあるウルトラマン専門店。

ここはいわゆる、この世界で『オタク』と呼ばれる人達の集うお店である。

ショーケースに並べられた、無数のウルトラマンの怪獣人形。

「こんなの何処がいいんだろう?」ジュリはそう言いながら、不思議な顔でその怪獣達のフィギュアを見つめていた。

そして、そのお店の店長に会う事が出来た。

「達也君は人殺しなんて出来る人間じゃないよ」

お店の店長の第一声はそれだった。

そしてボサボサの髪の毛をポリポリと掻くと、フケがポロポロと肩の上へと落ちていった。

その姿を見て、レナとジュリは思わず鳥肌がたってしまった。

しかしそんな二人を気にする事もなく、店長はその牧達也について話し続ける。

「達也君の事は子供の頃から知ってるんだけど、彼は小さな女の子なんかに興味はなかった。彼はあくまでウルトラマンが好きなだけ」

「じゃあどうしてあんな事に?」レナは食いつくようにその店長に聞いた。

「たまたま、事件のあった夜に、達也君が河川敷の堤防を通っただけだよ。でもあの河川敷は達也君の帰り道なだけだった」

「それだけ???」

「気持ち悪い男が歩いているって通報が入って・・・河川敷歩いていたら、いきなり交番に連れて行かれた」

ジュリとレナは興味津々に、その店長の話を聞いていた。

「そして家宅捜索した時に、部屋からこんな雑誌が出てきたんだよ」そう言うと、店長は一冊のロリコン雑誌を出した。

「ひえええ!」二人はまたしても鳥肌がたってしまった。

「部屋にあったこの雑誌が一つの証拠となってしまったんだ。これで達也君は幼女に興味があったって事に・・・でも違うんだよ」そう言うと店長は、その雑誌の中からとあるページを開いた。

『ウルトラセブン スペル星人』

「スペル星人?」レナは不思議そうな顔で、その雑誌に載っている怪獣の姿を見つめた。

「この怪獣は、僕達マニアの間では高値で取引されている。あの時、スペル星人の特集をたまたまこの雑誌でやってたんだよ。達也君はこれが見たくてこの雑誌を買った筈なんだ。なのに彼はいつのまにかテレビや雑誌で『ロリコン』とか『変態』とか言われるようになってしまったんだよ」

「そうなの・・・」

「それでいつの間にか彼は、まわりから殺人鬼と呼ばれるようになってしまった。でも僕は彼が死刑になった今でも、犯人じゃないと思っている」店長はそう言うと、込み上げる涙をこらえるかのように、天井を見上げた。

「達也君は、警察に言いように言いくるめられて、自分がやったとウソの自供をしてしまった・・・」そう言うと、その当時のスポーツ新聞や週刊誌を、テーブルの上にドカッと置いた。

『変態牧。部屋から児童ポルノ雑誌押収』

『ロリコン。オタク。異常な性癖』

『牧達也の少年時代。イジメによって歪んだ性格に』

『タックン惨め。27歳で童貞』

「ただ単に、ウルトラマンが好きで静かに暮らしていた達也君の事を、マスコミはこんな風に記事を書きたてたんだ。さらに中学時代の同級生までインタビューして『地味だった』というのを『ネクラ』と書き、『ムッツリスケベ』だったのを『歪んだ性』と書き・・・」

どれもこれもが、彼を無茶苦茶に罵っていた。それは、メディアと言う力のリンチであった。

それを見るとレナは「ひどい・・・」と言って、思わず涙ぐんでしまった。

「裁判で僕は、このスペル星人の事を話したけど、裁判官は笑うだけで証拠として取り扱ってくれなかった。所詮僕達は、この世の中から気味悪がられているオタクなんだ・・・小さな女の子の殺人や通り魔事件の犯人はオタクだと決め付けてるんだ」

こう言った事件が起きると、必ずどんな青春時代を歩んだか?という事が取り上げられる。

そして特に仲良しでもなかった同級生が顔を隠しながらテレビに出て、目立たなかった子と発言する。するとメディアは、暗くて気持ちが悪い奴のように放送する。

そしてこのイメージを裁判官が抱いたまま、裁判というものが始まるのである。

人間の世界は、メディアと言うものが善悪を決めているとても恐ろしい世界だ。