5、少 年の思い出ー2
日曜日の朝、早速ジュリは真澄君を引き連れ、ご両親の情報集めを始めた。
「真澄君の住んでた家ってどこ?」
「あそこの角曲がったトコ。103の部屋」
「へえ近いじゃん」
周りの人には真澄君の姿が見えない。
そんな真澄君と話すジュリは、まわりの人から見れば、独り言を言い続ける奇妙な女子高生に見えていた。
「あ、あれだよ!あれが僕の住んでた家だよ!」真澄君はそう言って、一件のアパートを指差した。
そこはライトグリーンの2階建てのアパート。決して新しいとは呼べず、どうみても築30年以上はたっているような古い建物であった。
「ねえ、お姉ちゃん。どうやって探すの?」
「う~ん・・・片っ端から聞き込みしてみる」そう言うとジュリは、まず101号室の呼鈴を鳴らした。
ピンポ~ン♪
「はい・・・」
扉の向こうから、何やら若い男性の声が聞こえてきた。
そしてガタッと扉が開くと、大学生ぐらいの男性が姿を現した。
「はい」
「あ、あの・・・」
「うん?なにかな?」
「4年前までこのアパートの103号室に住んでた、木下さんという方を探しているんですけど・・・」
「4年前かあ、そんな前の事なんてわからないよ。オレここに引っ越してきたの2年前だから」
「そうですか・・・それじゃあ昔からここに住んでる人っていませんか?」
「う~ん、近所づきあいしないしなあ。それにこのアパート学生が多いから、結構出入り激しいんだよ。卒業したらみんなすぐ引越しちゃうし」
「そうですか・・・」
その後もジュリは聞き込み捜査を続けた。しかし先程の男性が言った通り、大学生が多いせいか、昔から住んでいる人はほとんどいなかった。
仮に4年前に住んでいたとしても『付き合いが無い』もしくは『話した事がない』と言った感じだった。
片っ端から聞き込みをしたが、結局このアパートの住人は、誰一人として真澄君の家族の行方を知らなかった。
「だめかあ・・・」ジュリはそう言って、真澄君とともに公園のベンチに座って青空を見上げた。そして「ねえ真澄君、誰か他に知ってる人っていないかな?」と真澄君に聞いてみた。
「う~ん。トモ君のお母さんなら知ってるかも」
「トモ君?」
「うん。僕の友達だよ。家はここから歩いてすぐだよ」
「行ってみようか?」
「うん」
そして二人は、そのトモ君の住むアパートへと向かった。
真澄君の友達であるトモ君の家。4年前、真澄君は、よくトモ君の家に遊びにきていた。
しかし・・・。
トモ君の家があった場所には、なんと10F建ての大型ワンルームマンションが聳え立っていた。
「ええ!トモ君の家が無い!」真澄君はそう言うと、思わず目をまん丸くさせながら驚いてしまった。
「マンションになっちゃってるね・・・」
そう言うとジュリは、その大型マンションを見上げながら、ガックリと肩を落とした。
夕暮れ時、ジュリは真澄君とともに大森の町をトボトボと歩いていた。
「だめだね・・・」ジュリが寂しげにそう言うと、真澄君は「うん」と一言だけ言って下を向いた。
すると二人の前に、一件の古い駄菓子屋が現れた。
「おばあちゃん・・・」
真澄君はそう言って、その駄菓子屋のおばあちゃんの顔を見つめた。
年の頃・・・80歳・・・いや90歳???とにかくかなりの高齢だ。
「知ってるの?あのおばあちゃん」
「うん、でもおばあちゃんはきっと僕の事忘れてるよ。そんなに行かなかったもん。たまにトモ君と一緒にここでお菓子を買ってただけだもん」
するとジュリは「わかんないよ。とりあえず聞いてみようよ」と言って、その駄菓子屋の方へと歩いていった。