フォーエバー・フレンズ -148ページ目

5、少年の思い出ー4

寮に帰ると、すでにレナがデートを終え帰宅していた。

そしてジュリが居間に入ると、部屋の隅のパソコンでインターネットを開くレナの姿があった。

「レナ、デートはどうだった?」

しかしそんなジュリの問いかけも無視し、レナはひたすらパソコンのマウスをカチカチと操作し続けた。

「ねえ、レナ。レナったら」

するとレナは、パソコンの画面を見つめて「ジュリ見て。ここに真澄君の事故の事が載ってるよ」と言った。

「えっ?どれどれ?」ジュリはそう言うと、そのパソコン画面を食い入るようにして見つめた。



『大森飲酒運転児童死亡事故』


2007年3月7日 東京都大森付近の交差点にて、第一京浜を横断中の木下真澄君(当時9歳)が、酒酔い運転の大型トラックに引かれて死亡した事故。

トラックを運転していたドライバーからは、呼気0・25mg以上のアルコールが検知され、その場で危険運転致死罪の現行犯で逮捕。

後の診断で、そのトラック乗務員は、アルコール依存症であった事がわかった。


2009年 東京地裁は、加害者の運送会社側へ、1億5千万円の賠償を命ずる判決を出した。



「1億5千万円!」ジュリはそう言って、驚きながら画面を見つめた。

「この事故、かなり波紋が大きかったらしいの。でね、これで飲酒運転の罰則が更に強まったらしいんだけど、実はね・・・」

「何々?何なの?」

「この真澄君の両親、この事故の後、ずっと飲酒運転事故防止の活動をやっていたんだけど、1億5千万円のお金を受け取った事でかなりバッシングされたらしいんだ。これ当時の2ちゃんねるだよ」そう言ってレナはもう一つの画面を開いた。

するとその2ちゃんねるの青々とした画面に、恐ろしい内容の書き込みがなされてあった。



『子供の命と引き換えに1億5千万もらえりゃ最高だよ。本当はこの親、国道で自分の子供の背中を押したんじゃないのか?』



『子供を放置していたのに1億5千万円貰うなんて。どんでもないDQN親だ』



『オレ、一生懸命働いても正社員になれない。なのにこの親、一当て1億5千万円。まさしく宝くじ』



さらには真澄君の両親の似顔絵風の絵文字が描かれてあり『子供なんてまた作りゃいい。宝くじ当選だ!』と言うセリフまで付け加えられていた。


「ヒドイ・・・」ジュリはそう言って、その2ちゃんねるの画面を真剣な眼差しで見つめていた。

「これって・・・」

「匿名だからって言いたい放題。本当ヒドイよね」レナはそう言うと、あまりにものムゴさに耐えられなくなり、その2ちゃんねるの画面を閉じた。


人間とはいつもヒガミ根性というものを持ちあわせ、何かが起こるとその満たされない不満を、何かにぶつけようとする愚かな生き物である。

ネット社会。

それは匿名という名の下に、人間の本音というものが渦巻く世界である。

そしてそこから発せられた本音は、容赦なく当事者を傷つける。

人間は天使ではない。

天使と悪魔の二面性を保ちながら、そのバランスで生きていく不思議な生き物。

それが人間である。