フォーエバー・フレンズ -146ページ目

6、新しい道に向かってー1

高級マンションの中の公園で、楽しく遊ぶ家族連れ。そして久々に会った父親。

しかしその側には、何故か母親の姿は無く、見知らぬ中年女性の姿があった。

真澄君は悲しそうな目で、父親と見知らぬ女性の姿を見つめていた。

「真澄君・・・」

ジュリがそう言うと、真澄君は今にも泣きそうな顔をしていた。




その後ジュリは、真澄君のお父さんと、公園のベンチで話した。

「そうかあ、さっきインターホンを押したのは君かあ。てっきりマスコミの人かと思ってさ」

「はい。真澄君の事を知りたくて・・・」

「どうして真澄の事を?」

ジュリはその返答に困ってしまった。

そして咄嗟に「あの・・・学校で交通安全の事やっていまして、それで・・・」と言って嘘をついた。

「そうかあ・・・まあ、あんな目には絶対に遭わない方がいい」真澄君のお父さんはそう言うと、寂しげに晴れ渡る冬の青空を見上げた。

「やっぱり悲しかったですか?」

「そりゃ悲しいよ。赤ちゃんの頃からずっと可愛がってきたしね。ある日突然いなくなるんだ。この心の痛みは本当に辛い事だよ」

ジュリは、そんなお父さんの話を黙って聞いていた。

「でも・・・死への悲しみというのは時間が解決してくれる。でもああ言う事故ってのは身内じゃなくて、外野が騒ぐんだよ」

「外野?」

「真澄が死んだ当日、マスコミや弁護士が沢山来たよ。こっちは悲しんでいるのに・・・裁判に訴えて巨額のお金を取るから、弁護士に雇ってくれとか、マスコミはマスコミで、真澄の運動会や入学式の写真をよこせだとか言われてねえ」

そう言う真澄君のお父さんの顔は、とても寂しげだった。真澄君の死を悲しむ親族に、外野の騒ぎっぷりは容赦なかったようだ。しかし最後に父親は「悪いのは俺だな・・・」と一言。

「何故ですか?」

「その後、交通事故防止の講演会をやってくれだのなんだのって・・・いつの間にか自分は死んだ真澄を利用して、お金儲けをするようになっていったんだ」

「そうなんですか・・・」

「真面目に働いても安月給。でも、講演会を一回やれば、沢山のお金が入ってくる。そんな事をやってたら、真面目に働く意欲もうせてしまって、仕事も辞めてしまった。それにどんどん生活も派手になってしまって・・・いつのまにか高級車にまで乗るようになってしまった。もともとそんな甲斐性もないくせしてね・・・」

真澄君のお父さんは、自分の愚かさをひたすら話し続けた。

「家庭内も最悪になった。月給25万の安月給で、大森のボロアパートに住んでた頃は、妻と喧嘩なんてした事もなかった。そんなのが巨額の慰謝料なんて手に入れたもんだから、今度はその使い道で争うようになってしまった・・・突然巨額のお金を手に入れてしまったもんだからおかしくなってしまったんだ」

ジュリはひたすら黙って、真澄君のお父さんの話を聞いていた。

すると真澄君のお父さんは「もう何も考えたくないんだよ」と言って、下を向いた。

「考えたくない?」

「もう別れた妻の事も真澄の事も考えたくないんだ。オレはオレで、今は新しい家庭がある。これからはその事だけを考えて生きたいんだ」

「そんな・・・」

「もちろん心の片隅にはいつも真澄の事はある。でももう全て忘れて、一からやり直したいんだ」真澄君のお父さんは、寂しそうにそう言った。

するとジュリは「あの・・・真澄君のお母さんは、今どこにいるのですか?」と聞いてみた。

「ああ、今は川崎に住んでるよ」




電車に乗って帰路へとつく、ジュリと真澄君には言葉はなく、ただただ悲しげに外の景色を見つめていた。

ジュリも、自分がどうしていいのかがわからなかった。

一応、現在、母親が住んでいる住所を教えてもらったが、果たして真澄君が今の両親の現実を見る事が、本当に良い事なんだろうか?

真澄君は目に涙を浮かべながら、車窓に映る夕暮れの多摩川の景色を見つめていた。


次の日、ジュリはアルバイト先で、一人留守番をしていた。するとまたしても菜月が姿を現した。

「ジュリさん」菜月はそう言って、いつものように美しい笑顔でニコリと笑った。

「菜月さん・・・」

「今日は焼かないの?」

「うん。今日は結構売れ残ってるから・・・それに私、今そんな気分でもないんだ」

「どうしたの?」

ジュリは少しためらいながらも、菜月に真澄君の事を話してみようと思った。

きっと同じ霊の菜月なら、いいアドバイスをくれるのでは?

「実は・・・」


話を一部始終聞いた菜月は「う~ん」と言って、しばらく悩んでいた。

「菜月さん、どうすればいいと思う?」

「とりあえずジュリさんだけ、そのお母さんに会って来たら?」

「私だけ?」

「ジュリさんだけで行けば、その真澄君て子が傷つくこともないと思うし」

「まあ、そうだよね・・・」

「それに、みんながみんな、そんなに冷たいわけじゃないと思う。きっと真澄君には伝えたい言葉だってあると思うよ」

「そっかあ・・・じゃあ来週行ってみようかな」

「でもジュリさんて本当にいい天使ね」

「私、見習いだよ。それに落ちこぼれだよ」

「そうかなあ。ジュリさんみたいな天使が、沢山いてくれたらいいと思うんだけどなあ」

「そんな事ないって。本当は私、天使なんかになりたくないんだ」

「どうして?」

「なんか規則規則でつまんなくて。私には向かない。それに私、もっと自由に生きていたいんだ。出来る事なら違う道に進んでみたい」

「あはは、人間も同じだよ。しがらみだらけ」菜月はそう言うと、珍しく口を大きく開けて笑った。