フォーエバー・フレンズ -144ページ目

6、新しい道に向かってー3

寮へ帰ると、またしても寮母さんのカミナリが待ち受けていた。

「だから言っただろ!」

「ひえ!」

「人間の親子の縁なんて薄いって!そんな事も知らないで子供の心傷つけて!」

「でも!」

「でもじゃない!会わせたあんたが悪い!」

「でも真澄君は両親に会って、それで天使界に行くって言ってた」

「うるさい!そんな薄っぺらい正義感もって善人ぶるな!」

いつもならここでひるむ。しかし今日のジュリは、いつもとは何かが違っていた。

「なんでそんなに頭ごなしなの!」

なんとジュリは目に涙を浮かべながら、寮母さんに食って掛かった。

「はあ???」

「この鬼ババア!」

「なに?もういっぺん言ってみな!」

「何度でも言ってやる!この鬼ババア!」

その瞬間、寮母さんはジュリに吹っ飛ぶ程の平手打ちを食らわした。

思わず自分の頬を押さえるジュリ。すると、なんとジュリは泣きながら「このやろう!」と言って、果敢に寮母さんに飛び掛って行った。



そして二人は大乱闘となってしまった。







寮母さんとの数分の格闘の末、ジュリはかつての曙のようにコテンパンやられてしまった。

そして畳の上に倒れながら、ワンワンと泣いてしまった。

「このガキ!甘いんだよ!」寮母さんが捨て台詞のようにそう言うと、ジュリは泣きながら、ゆっくりと起き上がった。そして「私・・・お父さん亡くしてる・・・」と言って、涙をポロポロと流した。

「うん?なに?なんだって?」

「私、お父さん子供の頃に亡くしてるけど、今でもお父さんの事想っている。今でも会いたいと思ってる。大好きだったから・・・だから私、真澄君の気持ちがわかる・・・なのになんで、おばさんはそんな酷い言い方しかできないの?なんでそんなに力ずくの物の言い方しかできないの?おばさんは本当に天使なの?悪魔みたい!」

そんなジュリの涙の訴えを聞くと、寮母さんは何も言えずに下を向いた。そしてジュリは部屋から飛び出して行った。







自分は間違った事をしてしまったのだろうか?



ジュリはそんな事を考えながら、バイト先でせっせとワッフルを焼いていた。

そして時折味見をしてみた。

するとほんのりとメープルの甘い味が、口全体へと広がった。

「おいしい・・・」

最近なんとなくこのワッフルを焼くのが、好きになってしまった。

「私、天使辞めたいなあ・・・ずっとワッフル焼いていたいなあ・・・」

そんな事を言っていると、恭介が真横にやってきた。

そしてジュリの作ったワッフルを、一かけら味見すると「うまい!本当に美味いな」と言った。

するとジュリは突然にように話し出した。

「ねえ、店長」

「なんだよ」

「店長って子供いるの?」

「いないよ」

「じゃあ結婚は?」

そのジュリの問いかけに、恭介はしばらく黙り込んだ。

そして「してるよ・・・」と一言だけ言った。

「じゃあ、聞いていいかな?」

「なんだよ」

「もし奥さんが亡くなったとするじゃん。そして奥さんがお化けになって会いたいと言ってきた。そしたら迷惑かな?」

「え・・・」



恭介はジュリのその言葉を聞くと、3年前の出来事を思い出してしまい、思わず黙り込んでしまった。







六本木ヒルズにある丸栄商事。

そこはかつて、恭介が在籍していた会社である。

美しい事務所。

そこはエリートと呼ばれる者達が集うところである。

恭介が一生懸命にデスクワークしてたその時、机の上に置いてある電話が突如鳴り出した。



「はい、喜多嶋です」

「もしもし、喜多嶋さんですか?」

「はい、そうです」

「こちら、品川警察署ですが、喜多嶋菜月さんのご主人様でよろしいでしょうか?」

「はい・・・」

「奥様が、品川救急病院へと搬送されました。今すぐ来てもらえますか?」

「一体何が起こったのですか?」

「詳しい事情は、病院でお話致します」

恭介は不安になりながら、その電話を切った。







「ねえ店長、聞いてんじゃん」

そのジュリの声に恭介はハッと我に帰った。

「奥さんがお化けになって出てきたら迷惑なの?」

「いや・・・迷惑じゃないよ。きっと自分にも伝えたい事があると思う・・・」

「伝えたい事?」

「うん」

そう言うと恭介は寂しげに話し出した。

「人間って本当に勝手な生き物でさあ、いなくなってみて、初めてその人の価値というものがわかるものなんだよ」

「そうなの?」

「うん。距離が近いと相手の嫌なところばかり見えてしまって、ついつい辛く当ってしまい、そしていざいなくなってしまうと、あの時ああすればよかった、こうすればよかったって後悔して・・・でもそう思った時、その人は既にいなかったりするんだよ。人間は本当に勝手な生き物さ・・・」

そう言うと恭介は寂しそうに笑みを浮かべた。