フォーエバー・フレンズ -143ページ目

6、新しい道に向かってー4

その日の晩、ジュリが寮へ帰ってくると、寮母さんは黙々と鳥のから揚げを揚げていた。

そしてジュリがそのまま台所に入ると、昨夜の気まずい雰囲気は払拭されていなかった。

「おかえり・・・」

「ただいま・・・」

ジュリは無愛想に一言だけそう言うと、自分の部屋へ上がろうとした。

誰がこんな奴と話すもんか。そんな事を思っていると、寮母さんは「まちな」と言って声を掛けてきた。

「なに?」

「悪かったよ」

「えっ?」

「悪かったよ」

なんと寮母さんはジュリに謝罪をした。

「な、なんだよ?急に」

「私が言いすぎたよ」

「なに?き・・・気持ち悪いよ」

「私もこの歳までいろんな事があったの。だから人の言う事なんて100%信じる事は出来ない。人に裏切られたり、嘘をつかれたり・・・とにかくいろんな事があった。だから私はこんな風にひねくれてしまったのかもしれない。私は神様じゃない。神様じゃないから間違いもある」

「おばさん・・・」

「人を思って言ってるつもりが、誤解を生む時だってある」

そう言うと寮母さんは、黙々とから揚げを揚げ続けた。

「好きにしな。あんたがそこまで一生懸命やるんだから、その真澄って子はちゃんと答えてくれるはずだよ」

「おばさん・・・」




数日後、ジュリはいつものように夕暮れの大森の町を歩いていた。

そして近所の公園前に差し掛かると、背後に気配のようなものを感じた。

その気配が気になってジュリが後ろを振り返ると、なんとそこには真澄君がニッコリと笑って立っていたのだ。

「真澄君・・・」

「えへへ。この間はゴメン。あんな事言って」

真澄君はそう言って笑いながら、頭をポリポリと掻いた。


公園のベンチに二人腰掛けると、真澄君は少し寂しそうな目をしながら、夕焼け空を見上げた。

そんな真澄君を見て、ジュリは何も言えなくなっていた。

すると真澄君は突然口を開いた。

「お姉ちゃん、ポケモンって知ってる?」

「ポケモン?」

「うん。僕、ポケモンが大好きなんだ」

「そ、そうなの」

「でね、僕はポケモンのグラードンが好きなんだけど、お父さんにグラードンを描いてって言ったら、難しくて描けないって言われて・・・。でも、お父さんピカチュウだけは描けたんだよ。それで画用紙にいつもボールペンでピカチュウの絵を描いてくれたんだ。僕はいつも、お父さんの描いたピカチュウに色鉛筆で色を塗っていた・・・」

ジュリは寂しげに語る、真澄君の顔を黙って見つめていた。

「お母さん、クッキーをよく焼いてくれたんだ」

「クッキー?」

「うん。ポケモンクッキー。美味しいんだけど、食べるのが勿体無くて・・・食べずに机の中に入れてたら、よく怒られた」

そう言うと真澄君は寂しげに笑った。

そして、頬に一筋の涙がこぼれた。

「もう一度、お父さんの描いたピカチュウが見たかったんだ・・・もう一度お母さんの焼いたクッキーが食べたかったんだ・・・」

「真澄君・・・」

真澄君の目からはポロポロと涙が流れ出し、やがては止まらなくなってしまった。

ひっくひっくと、ひたすら泣き続ける真澄君。そんな真澄君を見ると、ジュリも、もらい泣きするかのように、思わず涙を流してしまった。


そしてしばらくの間、二人は沈み行く夕日を見つめていた。

すると真澄君は、寂しげに口を開いた。

「お姉ちゃん・・・」

「なに?」

「僕・・・天使の世界に行くよ」

「え?」

「あの世に行くよ・・・お父さんも、お母さんも新しい道に進んでるんだから、僕も新しい道に進む」

「真澄君・・・」

「ねえお姉ちゃん。天使の世界に行ったら僕はどうなるの?」

「多分、生まれかわると思うよ」

「そっかあ・・・それじゃあ今度は事故に遭わないように、注意しなくっちゃね」

「そうだよ。大切に生きないとダメだよ。折角生まれてきたんだから」

「うん。今度は100歳まで生きるよ」真澄君はそう言うとニコリと笑った。