フォーエバー・フレンズ -140ページ目

7、孤高のフィギュアスケーター2

その日の晩、寮に帰ると、早速『検索王レナ』がインターネットで『松井恵理菜』について調査しだした。


『松井恵理菜。2004年10月11日死亡。享年16歳。世界ジュニア優勝を経て、2003年GPに参戦する。可愛いルックスで、早くからメディアで取り上げられ、シーズン初戦を圧倒的大差で優勝。しかしその後突如スランプに陥り、その年の秋、通っていた心聖女学院の校舎内にて首吊り自殺をした』


「ええ!ジュリ!これって・・・」

「心聖女学院・・・私達と同じ高校・・・」

二人はその画面を見つめると、フリーズしたかのように固まってしまった。




ジュリとレナが通う学校、心聖女学院。

それは120年の歴史を持つカトリック系女子高であり、生徒達の親は各界の著名人が多く、都内でも有名なお嬢様学校である。

120年の歴史を持つ校舎は、明治の洋館のような建物であり、中に入るとまるでその時代にタイムスリップでもしたかのような気持ちになる。


そんな校舎の中を、ジュリとレナの天使二人組は、肩を並べて歩いていた。

彼女達の行き先は校長室。そう、松井恵理菜についていろいろと聞きたかったからだ。


校長室へ入ると、上品なスーツに身を包んだ校長先生が、二人を迎えてくれた。

「ああ、松井さんかあ・・・」

レナはその校長の言葉を聞くと、食いつくように質問を始めた。

「詳しい事知ってますか?」

「ああ、知ってるよ。かわいそうな子だよ」

「かわいそうな子?」

「うん。とにかく親が厳しくてね。フィギュアの英才教育とかで。学校の送り迎えも親が車で毎日やってたよ」

「そうなんですか・・・」

「うん。だから家、学校、練習場、この3箇所を車で移動するだけで、それ以外は何処にも行けなかったんじゃないかな」

「ええ!そんなの耐えられない!」ジュリはその話を聞いて唖然としてしまった。

人間は天使とは違い、行動は自由だと思っていた。しかしそんな人間界にも、天使界より厳しい監視のもとに生きる者もいた。

「校長、その恵理菜さんのお墓って何処にあるの?」ジュリがそう尋ねると、校長は目を閉じ首を横に振った。

「ないんだよ」

「ええ?死んで7年も経ってるのに???」

「松井さんの親がお墓を作らないんだ。ずっと自分の側に置いておくと行ってね」

校長の話を聞いて、二人は呆気にとられた。

まさかそんな歪んだ愛情があるとは・・・・。




放課後、ジュリとレナの二人は、広尾の町を歩いていた。

すると突然レナが話し出した。

「ねえ、ジュリ」

「何?」

「今から恵理菜さんの家に行ってみない?私、恵理菜さんをお墓にも入れないで、側に置いて置くなんて間違っていると思う」

正義感の強いレナは、またしても行動をおっぱじめようとしていた。

「ええ!今から?」ジュリはレナの恐るべき行動力に唖然とした。

しかしレナはきっぱりと「うん」と言って、大きく頷いた。

「だめだよ。私、バイトだもん」

「そっかあ・・・じゃあ私一人で行ってみるよ」

「ええ?レナ一人で行くの?」

「うん。大丈夫だよ。感情的になったりしないよ」

「でも・・・」

「大丈夫、大丈夫」

レナはそう言うと、バスに乗るために駅とは逆方向へと歩いていった。

「大丈夫かな・・・」

ジュリは心配そうな表情で、レナの後姿を見つめ続けた。

まさに思い立ったら即行動のレナだった。




ジュリがバイト先に到着すると、またしても恭介は「ちょっと出掛けてくる」と一言だけ言って出掛けていった。

「またか」

恭介はあいも変わらず、夕方4時になったらお出かけする。

そしてしばらくすると、いつものように菜月がやって来る。

考えてみたら、この一ヶ月の間ずっとこのサイクルだ。

菜月と出会って1ヶ月。

未だ菜月に影がない事を突っ込めないでいる。

しかし、菜月はとても優しくて、いつのまにか何でも話せるお姉さんになってしまった。

幽霊である事。

それはいずれ菜月が自分の口から話してくれるだろう。

そう思って、ジュリは菜月と接していた。

「ふ~ん・・・松井恵理菜かあ」

「菜月さん知ってる?」

「うん。かわいい子だったよ。ジュニア時代は天才とか騒がれていたんだけど、シニアになってから急に調子を落として。それでその年の秋に自殺しちゃったんだよ」

「そっかあ・・・かわいそうなんだね」

「でもね、勿論死んだ事は可哀想だったんだけど、現役時代はもっと可哀想だった」

「えっ?でも有名選手だったんでしょ?」

「うん、そうなんだけど。でも、とにかく連日マスコミに追われていた。トリノオリンピックの金メダル候補だって」

「そうなんだ・・・」

「うん。それだけ期待されていたの。GP初戦でいきなり優勝したもんだから特に」

「そっかあ・・・がんじがらめだったんだあ」