フォーエバー・フレンズ -139ページ目

7、孤高のフィギュアスケーターー3

時同じくして、レナは松涛(しょうとう)にある松井恵理菜の自宅にいた。

角界の著名人の自宅が多く点在するこの松涛は、渋谷区にある超高級住宅地であり、美しい建物が多く立ち並ぶ。

その一角にある松井恵理菜の家は、黒を基調とした北欧風の家で、松涛の中でも際立って大きかった。

とにかく物凄いお嬢様であった事には、間違いない。

「恵理菜は子供の頃から、フィギュアスケートがとても上手くて・・・」

そう言う恵理菜の母の目は、何か生きがいをなくしてしまったような目であった。

「高校2年生の秋に、学校に迎えに行った時、いつまでたっても恵理菜が校舎から出てこなくて、それで先生に探してもらったら、体育館の地下室で首を吊って・・・」

「そうですか・・・」

「恵理菜は私のたった一つの生きがい・・・それがあんな事に・・・」

「・・・」

レナはそんな恵理菜の母の言葉を聞くと、胸を詰まらせた。

しかしその後・・・。

「恵理菜はイジメを受けていたの」

「そ、そうなんですか?」

「ううん。そうに決まってるの。それ以外にあの子が死ぬ理由なんて何処にもない」

「・・・」

「私、学校がイジメを認めるまで、恵理菜の骨をお墓には入れない。ずっと私の側に置いておくの」

「でも!」

「そうじゃないと、恵理菜は浮かばれない」

恵理菜の母はそう言って、涙を流した。

結局、頑なにそう主張する恵理菜の母親に何も言えず、レナは家を後にした。




日が段々と落ちてきた平和島。

天使のワッフルのお店の中に、ジュリと菜月は二人きり。

そしてジュリは、今日も菜月にワッフルの焼き方を伝授してもらっていた。

「ねえ、菜月さん」

ジュリはおもむろに話し出した。

「何?」

「人間て自由じゃないの?」

「基本は自由だよ」

「じゃあ、みんなどうしてがんじがらめなの?」

「う~ん・・・人間は一人で生きていけないから」

「一人で生きて行けないから?」

「そう、一人で生きて行けないから、沢山の人とともに生きて行かないといけない。だから沢山の人のしがらみの中で、がんじがらめになる。たとえ好きな事を始めても、そこに沢山の人の考えがうごめくからこそ、がんじがらめになる」

「ふ~ん・・・ねえ例えばだよ、好きなフィギュアスケートを始めたとするじゃん。そしたらがんじがらめになるの?」

ジュリのその質問に、菜月をゆっくりと頷いた。

「そう。最初は好きな気持ちだけで始めたとしても、上手くなればコーチやファンがつき、やがてはその人の為にも勝たなければいけなくなる」

「じゃあ、趣味だけでやればどう?」

「うん。趣味だけなら楽だと思う。でもね人間は趣味だけでは生きて行けないの。働かないといけないの」

「うん・・・だよね・・・」

「食べていく糧をみつけると、そこには沢山の人のしがらみがあり、そしてがんじがらめになる。これは宿命なのかも」

菜月はそう言うと、寂しげな顔で、厨房の天井を見上げた。

するとお店の入り口のセンサーがピコピコと鳴った。

「ヤバッ!店長が帰ってきた。菜月さん、隠れて・・・」

ジュリがそう言って振り返ると、菜月は既に消えていた。

「な・・・菜月さん・・・また消えちゃった・・・」ジュリはそう言って、その場に呆然とたたずんだ。

すると恭介が厨房へと入ってきた。

「ジュリ、どうした?何呆然としてるんだよ」

「う、ううん・・・なんでもない」