フォーエバー・フレンズ -130ページ目

9、伝えたかった言葉ー2

3年前の2月26日。


「キャー!」


あちらこちらから悲鳴が鳴り響く品川駅。日本刀を持った残虐な男は、まわりにいた人をことごとく斬り捨て、やがては小さな子供達の行列へと襲い掛かった。それを見た菜月は、なんと果敢にもその男へと飛び掛って行った。

「やめてえ!」

そして両者は数十秒の間もみ合いとなった。

「逃げて!みんな逃げて!」

その菜月の声に、児童たちは「わあ!」と叫びながら、四方八方へと駆け出していった。

そして菜月は、その男ともみ合いの末に、突き飛ばされてしまった。

「おらああ!」

その男は異常と言うような眼差しをしながらそう叫び、手に持っていた日本刀を菜月に向けて一気に振り降ろした。

その瞬間、菜月は駅構内の床の上にドカッと倒れこんだ。

「やめて・・・やめて・・・小さな子を殺さないで・・・」途切れそうな声でそう言いながら、やがて菜月はゆっくりと目を閉じた。


その後男は、警察官に追い詰められ、自分の持っていた刃物で首を刺し自害した。

そして日本刀で切られた菜月は、すぐさま救急車で搬送された。


救急車は、サイレンを鳴らしながら、品川の街を走り続けた。

「心肺停止!心肺停止!」救急隊員は無線のマイクを片手にもちながら、そう叫んでいた。

そして別の隊員は、必死に菜月の救命措置をしていた。


「本当にかわいそうで・・・」校長先生はそう言うと、涙をポトリと落とした・

「あの・・・菜月さんは死んだのでしょうか?」

「いや・・生きているんだ・・・」

「えっ?」

「脳死状態になってしまったんだ・・・かわいそうに・・・本当にかわいそうに」校長先生はそう言うと、黙って窓の外を見つめた。




寮へ帰ると、レナは早速インターネットで、その事件の事を検索し出した。

「品川駅ブランク殺人・・・と」レナはそうつぶやきながらキーワードを入力すると、カチッと音を立てて、検索ボタン部分をクリックした。

すると画面がパッと切り替わった。

「あ、あった!これだ!『品川駅構内無差別通り魔殺人事件』」

「どれどれ」ジュリはそういいながら、食い入るようにその画面を見つめた。


するとそこには悲惨な光景が映し出されていた。

品川駅前に並ぶ、パトカーや救急車。そして構内に残された血痕。救急車に搬送される、怪我人達。

あまりにもの無残なその光景に、二人は思わず息を飲んでしまった。

これが人間のなせる事なのだろうか?

「ひ、ひどい・・・」ジュリはその悲惨な光景の画像を見ながら、思わず絶句してしまった。




次の日、お店は休みだった。

しかしジュリはどうしても菜月の事を確認したく思い、学校が終わると品川駅で途中下車した。

目的地は、品川救急病院。

そこは菜月が入院している病院である。


病院の総合案内所で菜月の事を聞くと、受付係りの女性は「5112号室です」と至って事務的に案内してくれた。

エレベーターで5階へ上がると、キョロキョロとあたりを見回しながら、菜月の入院する5112号室を探した。

するとその部屋は、通路の一番奥にあった。


『喜多嶋菜月』


5112号の病室の入口の液晶画面には、菜月の名前が小さく表示されてあった。

「ここだ・・・」そう言いながらジュリは、病室の扉を恐る恐る開いた。

するとそこには、ジュリの想像にもつかないような光景があった。

「菜月さん・・・」

あちらこちらに管を通され、人工呼吸器等によってかろうじて生きている命。

それが菜月の正体であった。

その悲惨な菜月の姿を見ると、ジュリは思わず目に涙を浮かべ、やがては涙が止まらなくなってしまった。

「菜月さん・・・菜月さん・・・」そう言って顔を覆うと「ジュリさん・・・」と背後から声が聞えてきた。

ジュリが涙目で後ろを振り返ると、そこには菜月が立っていた。

「菜月さん・・・」

「そう・・・これが今の私の姿なの」