フォーエバー・フレンズ -123ページ目

10、熱い想いー4

「そしてその中でも問題なのは、天使界へ行く事を拒否する魂がいる事です」

するとジュリの母は反論しだした。

「それは当人の自由です。一人一人の意見を聞いていてはキリがありません!」

「違います、魂を天使界へと導く。それは天使の義務です」

「自由です!」

「いえ、自由ではありません。司祭、どうでしょうか?」

ジュリがそう言うと、天界司祭は落ち着いた口ぶりで話し出した。

「人間とはひたすら修行を積む生き物であります。死後天使界へと行き、人生の総括を行う事を拒否するものは、修行を怠っているのと同じです。またそのような者に対して天使は全力で取り組まなければなりません」

その言葉を聞いて、母は黙り込んでしまった。そしてジュリはひたすら話し続けた。

「天使法第十八条には 『天使総裁は人間界の魂の善悪を公正に判断し、天使界へと迎える環境作りをする責務がある』と書かれています。さらにこんな事も書かれています『

それを怠った総裁に対して、全ての天使は天使議会において辞任を要求する事が出来る』と・・・だから私は今、法律に基づいてこの壇上にいます」

すると母が反論しだした。

「ジュリさんのおっしゃる事はよくわかります。しかしその浮遊霊達をすべて導くには、多額の予算が必要なのです。それと浮遊霊自体が有害なのでしょうか?それに拒否する魂の為に、大量に天使を導入するのが果たして効果的なのでしょうか?どうお考えですか?」


しかしその母の意見にジュリは真っ向から反論した。


「例えばある人が殺人を犯したとします。そしてその人は死後、本来なら地獄へと行かないといけません。しかし天使界に行くことを嫌がり、それを見逃したとします。そしたらその人は一生罪を背負う事はありません。予算が無いからと言ってそんな事を放置していてもよいのでしょうか?」

「・・・」

「私の友達のレナは、池上という殺人犯を天使界に送る為に、小さな体なのにその人と格闘まで演じました。そして寮のおばさんは、私に天使の道というものを教えてくれました。彼女達の強い正義感、勇気。なのに無断で統計を取ったという理由だけで、彼女達は今、留置場にいます・・・もし私達が天使界の法を犯したと言うのなら、殺人犯の魂を放置しておくのは犯罪ではないのですか?」

ジュリの言葉に、議場はしーんと静まり返った。

「それだけではありません。木下真澄君や、松井恵理菜さんのように、この世の中に未練を残した魂を、拒否するからと言って結局放置していますが、私たち天使はもっと死者の魂と向き合わなければいけないのではないでしょうか?拒否する魂を説得しないといけないと思います」

「・・・」

「私の友達に、喜多嶋菜月さんと言う人がいます。菜月さんは3年前、子供を助けようと思って、通り魔事件の犠牲になってしまいました。そして彼女は今、脳死状態です。脳死状態の為に、生霊とみなされ、浮遊霊となっています。本来なら天国に行く身であるはずが、天使法が理由で浮遊霊となっています。そんなのおかしいじゃないですか?・・・そしてここに署名もあります」

そう言うと、ジュリは壇上から、エミの募った署名を各天使に見せた。

「こんな問題ばかりあるのに、私たち天使は何もしないで、ただただ魂を運ぶだけなの?言われたままの事をしているだけでいいの?上ばかり見ていていいの?」

ジュリはわけもわからずに涙がこみあげてきた。

「もしも・・・もしも翼が、空から人を見下す為にあるのだったら、そんな翼私はいらない」

ジュリの母は何も言えずに、下を向いていた。全くの正論であり、反論の余地すらなかった。

しかし、決してジュリの言うように手を抜いていたわけではない。巨大な組織を動かそうと思うと、どうしても思い通りには動かないものである。総裁になってからは、そのジレンマとの葛藤する毎日だった。ジュリの母も他と同様にしがらみだらけの天使だったのだ。