フォーエバー・フレンズ -121ページ目

11、天使からのプレゼントー1

3月8日、菜月の容態が急激に悪化した。




突然お店の電話が鳴りだし、ジュリはあわててその電話を取った。

「はい、天使のワッフルです」

「こちら品川救急病院です。ご主人様はいらっしゃいますか?」

「あ、はい。ちょ、ちょっと待ってください」ジュリはそう言うと「店長!病院だよ!」と言って、恭介を呼んだ。

すると厨房の奥から恭介がやってきて、その電話をとった。

「はい代わりました。喜多嶋です。はい、はい・・・そうですか・・・わかりました・・・」

恭介の表情は一気に曇った。

そして電話を切ると、恭介は黙って天井を見上げた。

「店長どうしたの?」

ジュリがそう問いかけても、恭介はずっと黙っていた。

「ねえ、聞いてるじゃん」

「菜月が死んだ・・・」

「えっ?」

「菜月がさっき死んだらしい」

「うそ・・・」




二日後、近くの葬儀場で、菜月のお通夜が開かれた。

ジュリは受付窓口係をしていたが、通夜に訪れる人達のあまりにもの多さに驚いた。

菜月に助けられた、小学生達。

天使のワッフルの常連客。

大学、高校の同級生。

それは生前誰からも愛された証拠である。

人間の価値と言うものは、死んでから初めてわかるものである。

そんな菜月は、大勢の人達に見送られながらこの世を去って行った。


お通夜が終わると、ジュリは受付の後片付けをしていた。

そして少し伸びをしながら「ああ、疲れた」と言った時、背後から「ジュリさんごめんね」と声が聞えてきた。

振り返ると、そこには菜月が立っていた。

「菜月さん・・・」

「ごめんね。大変な事させて」

「いいの、いいの。まかせといてよ。それと、一週間ぐらいしたら、エミちゃんが迎えにくるから、葬式が終わったら、行きたいとこにでも行ってきたら」

ジュリがそう言うと、菜月は首を横に振った。

「ううん。何処にも行かない。恭介の側にいたいの」

「菜月さん・・・」

「彼には私の事が見えないと思うけど、でも恭介の側にずっといたいの。私のたった一人の愛する人・・・」菜月はそう言うと、寂しげに下を向いた。


ジュリが葬儀場の中に入ると、恭介は一人椅子に座り、正面の菜月の葬儀写真をみつめながら、日本酒をコップ酒で飲んでいた。

「店長・・・」

「ジュリ、いろいろとありがとう」

「ううん。私、こんな事しかできないからさ」

恭介は少し酔いながら、菜月の写真を見つめた。

「オレさ、菜月を殺した犯人より、もっと憎い奴がいるんだよ」

「もっと憎い奴?」

「そう、オレは自分が一番憎い・・・」

「ど、どうして?」

「生前泣かしてばかりいて、今になって愛情もってどうするんだよ」

「・・・」

「誰がそんな事されて嬉しいんだよ。オレが菜月の立場なら絶対に言ってやる。お前調子いいんだよってさ・・・」恭介がそう言うと、ジュリはそんな荒れ気味の恭介に何も言えず、ただただ黙っていた。

すると菜月が、ジュリの隣にやってきた。

「恭介・・・」

そう言うと菜月の目から、涙がこぼれ落ちた。




翌日は晴天だった。

そしてその晴れ渡る青空のもと、菜月は大勢の人達に見守られながら、葬儀場を去っていった。


晴れ渡る青空。それはまるで菜月の美しい笑顔のようだった。


これで菜月は一週間後に、あの世へと導かれる。

天使法の改正が、ようやく天使界でも取り上げられるようになり、まるでそれが決まるのを待っていたかのようだった。

天使法が改正されれば、きっと菜月のような脳死状態の魂をあの世へと導けるようになるはずである。