11、天使からのプレゼントー3
ジュリの母が帰宅すると、勿論部屋は真っ暗。
その真っ暗な部屋の明かりを付けると、そのまま疲れたようにソファーの上にドッと座った。
そして、部屋の戸棚の上に置いてあった、ジュリと自分とのツーショット写真を見つめた。
『だってお母さん、昔から私の事全然相手にしてくれなかったじゃん』
ジュリの14歳の頃、母は見事天使総裁へのし上がった。
しかしそれとは反対に、家庭内は一気に冷え込んでいた。
「ジュリ!あんた何この成績!」母は、ジュリの成績表を見て、どやしつけた。
「・・・」
「ちゃんと立派な天使になってもらわないと困るの。死んだお父さんだってそう思ってるはず。天使総裁の子供らしく、ちゃんと勉強して」
「・・・」
「黙ってたら何もわからないでしょ!」
「天使になんかなりたくない・・・」
「なに?もう一回言いなさい」
「私、天使になんかなりたくない!」ジュリはそう言うと、涙をポロポロと流した。
「ジュリ!」
「結局お母さんだって自分の立場ばかり言ってる。私はそんなのを仕事にするのは嫌だ。だいいち、今さらグダグダ言わないでよ!」
「・・・」
「だってお母さん、昔から私の事全然相手にしてくれなかったじゃん」
「ジュリ・・・」
ジュリはそう言うと居間を飛び出して、自分の部屋の中へ閉じこもってしまった。
次の日の朝、ジュリの母は天使界の出口にいた。
すると秘書が慌てふためいていた。
「一人で行かれるのですか?」
「そうよ。百聞は一見にしかず。人間界に行って自分の目で実態を見てくる」
「やめてください。危険です。SPを連れて行って下さい」
「人間が私の命なんて狙うわけないでしょ」
「でも・・・」
「うるさい!」
そう言うとジュリの母は、翼をひろげて大空を飛び立った。
ジュリの母にとってそれは15年ぶりの人間界行きである。
ずっと天使界にいて、出張と言えばほとんどが天界。
上の世界にはよく行くが、下の世界へ行くのは本当に久し振りの事であった。
ジュリの母が15年ぶりにみた東京。
それは恐ろしい程の変わりようだった。
「ええ!六本木にあんな大きいビル!なにあれ???」
六本木ヒルズの事である。
「ええ!あそこ汐留????あの国鉄跡地にビルがたってる!」
汐留シオサイトの事である。
「うそ!お台場が・・・あのゴーストタウンが?」
15年前のお台場は、世界都市博の中止の爪あとのように、ゴーストタウンと化していた。
「ええ!品川も全然変わってる!どういう事???そうだ!ジュリアナ東京っまだあるのかなあ・・・」
あるわけがない・・・。
ジュリの母は東京の街に降り立つと、早速、浮遊霊の実態を調査しだした。
所々にいる浮遊霊。その数の多さを見て愕然してしまった。
「これで8体目だ。浮遊霊ってこんなに多くなってるの・・・」