フォーエバー・フレンズ -122ページ目

10、熱い想いー5

結局、ジュリの母への総裁辞任要求は否決され、続投が決定された。

ほとんどの天使が恐くて手を上げられなかったのである。

しかし、ジュリに同調する天使も数名いた。

211対18、棄権1

今までなら、230対0であっただろう。

でも今回、ジュリの母の続投に異義を唱えるものが、初めて出てきたのである。

数こそは少ないが、これはとても大きな一歩であった。


そして最後に天界司祭のスピーチが行われた。

「ええ・・・総裁にお願いしたい事。まず天使法改正に着手していただきたい。法律とはその時代にマッチした公正なものでないといけません。特に脳死とはデリケートな問題であり、それにきっちりと対応できるようにして下さい。それと犯罪者はよくよく調査してください。天使界に行けば、その人の人生がどんなものであったかがわかります。なのでもっともっと死者の魂の心に食い込んで行くように指導してください。そして最後に・・・」

司祭はそう言うと、着席するジュリを見つめた。

「ジュリさん」

「はい」

「あなたはまだ正式な天使じゃない。だけど、留学先の人間界で素晴らしい仲間と巡り合えて、いろいろな問題点と言うものがわかったんじゃないのかな?」

「は、はい・・・そうです・・・」

「世の中には完璧なものは無い。だから解決できない事も多い。でもあなたのように、熱い想いでぶち当たる事。その気持ちはこれからも忘れないで下さい」

「はい。ありがとうございます」ジュリはそう言うと、起立して司祭に深く頭を下げた。

「それと総裁」

「はい、なんでしょうか?」ジュリの母は、さっと起立した。

「私は内政干渉する気はないが、留置所に入れられているジュリさんの友達を出来れば釈放してあげてもらいたい。彼女達は、別に悪事をたくらんで人間界の統計をとった訳じゃない。浮遊霊をなんとかしたいと言う正義感でやったんですよ。だから釈放してあげてほしい」

「はい。ただちに」そう言うと、母は深く礼をした。


レナと寮母さんはすぐに釈放された。




特別警察院の建物から二人は肩を並べて出てきた。

「レナ!おばさん!」ジュリはそう叫んで、駆け出していった。

「ジュリ!」レナもそう言って、泣きながらジュリのもとへと駆け出していった。

そして二人はしっかりと抱き合った。

「レナ、有難う・・・本当に有難う・・・」

「ううん・・・私こそ本当に有難う・・・」

二人はそう言って、すすり泣いた。

すると寮母さんが「いやいやまいったよ。まさか逮捕されるなんて思ってもいなかったよ」と言って笑った。

「おばさん・・・」

「いやあ、20年ぶりの天使界か・・・なつかしい」そう言って寮母さんは、晴れ渡る天使界の空を、満面の笑みで見上げた。


涙一つ見せずに、シャバの空気を吸って喜ぶ寮母さん。

その姿はなんとなくヤクザっぽく、そしてなんとなくかっこよかった。


その後3人は、天使界の出口の前にやってきた。

「ええ!レナ帰るの?」

「うん。実は昨日で留学期間終わりだったんだ。調査に夢中で忘れていたの。だからお家に帰るよ」

「そっかあ・・・寂しいなあ・・・」

「なんで?どうせまた学校で会えるじゃん」

「まあ、そうなんだけどね」

「私ね、最初天界に行きたかったんだけど、選考に落ちちゃって。でも今は人間界に行けて本当によかったと思うんだ。私たちが相手にするのは人間の魂なんだよ。だから人間をもっと知らないといけないんだ。今回、少しでもそれを知ることができてよかった。それにジュリやおばさんと出会えたし本当によかった」

「私もだよ。レナと出会えてよかった」


そしてジュリとレナの二人はしっかりと握手をした。

すると寮母さんが「ジュリ、そろそろ行くよ」と言った。

「おばさん飛べないのでしょ?警察の人に送ってもらったら?」

「降下だけなら大丈夫。さすがに上るのは重くて無理だけどね」

「そうなんだ」

「そうなんだよ」寮母さんはそう言ってニコリと笑った。


「じゃあねレナ!」ジュリはそう言うと、ニコリと笑って手を振った。

「うん!またね!おばさんもね!」

「ああ、天使になったらいつでも遊びにおいで。またちゃんこ鍋つくってあげるよ」

「うん。おばさんのちゃんこ鍋大好き!」


そしてジュリと寮母さんは翼を広げて、再び人間界へと降下していった。


しばらく二人で空を飛んでいると、ジュリはふと思い立ったかのように喋りだした。

「おばさんいいの?20年ぶりの故郷なのに、こんなにすぐ帰って」

「いいよ。どうも天使界はかたっくるしくてね。人間界のほうがいいよ。あんたこそどうなんだい?」

「どうなんだいって?」

「お母さんと仲直りできそうかい?」

「わからない。あの女強情だから」

すると寮母さんは突然笑い出した。

「ははは」

「な、なんで笑うの?」

「あんたも強情だよ」

「ええ!私はあんなクソババアとは違う」

「ははは、でもねえ、いつまでたっても親は親。子は子。どこかで仲直りする道は、しっかりと作っとくんだよ」