フォーエバー・フレンズ -115ページ目

12、春ー1

菜月は無事、天に召された。

そして東京の街には春がやってきた。

寮で昼食を食べながら、ジュリはずっと考え事をしていた。

すると寮母さんが、食堂の中へと入ってきた。

「ジュリ、留学期間は過ぎただろ?」

「うん」

「いつになったら帰るの?」

「うん・・・そうだね・・・」

ジュリはあれからずっと悩んでいた。

天使の世界に帰ろうか、帰るまいか・・・

そして昼食を食べ終えると「いってきます」と言って、アルバイト先へと向かった。


アルバイト先へ到着すると、恭介は今日も一人黙々とワッフルを焼いていた。

「店長、お疲れ様」ジュリがそう言うと、恭介は「ああ、おつかれ」と言って、いつものように黙々とワッフルを焼いた。

お店の制服に着替えると。ジュリは早速レジの前に立った。


毎日のようにやってくるお客様。

自分の開発したワッフルを買ってくれるお客様。

時には「ジュリちゃんの開発した天使のワッフル美味しい」とまで言ってくれる人までいる。


人から喜んでもらえる仕事。

美味しさとは人の心を癒してくれる。


給料は時給750円と、都内の給与水準としては決して高くはない。

でもジュリはそんな仕事に、やりがいを感じていた。

しかし、季節は春。

留学期間はとっくに過ぎてしまった。

それどころか、天使学校の卒業式の日が間近に迫っている。

そんなジュリは、毎日悩んでいた。


夜8時になると、突然恭介が「ジュリ、今日はご馳走してやるよ」と言ってきた。

「えっ?何処に行くの?」

ジュリは恭介の急なお誘いに、少し驚いた。

すると恭介は「いいとこ」と一言だけ言うと、いつものような少年の笑顔をみせた。




ジュリは寮母さんに遅くなる事を電話で告げると、そのまま恭介とともに電車に乗って出かけて行った。

「ねえ店長、何処行くの?」

「内緒」

そして二人は品川駅を降りると、そのまま山手線に乗った。

そして渋谷駅を降りると、今度は地下鉄に乗った。

これはジュリの通学と全く同じルートである。

何処行くんだろう?

そんな事を思いながら、ジュリは不思議な気持ちで、恭介についていった。

そして二人は、麻布の一軒のフランス料理店の前へとやってきた。

「ここだよ」恭介はそう言うと、お店の扉を開けてジュリを先にお店の中へと通した。


恭介はワインを飲みながら「昔菜月とよく来たんだ」と言って笑った。

「そうなんだ。素敵なお店・・・」ジュリはそう言いながら、少し緊張気味に、美しい店内を見渡した。

そして前菜がやってきた。

美しい皿の上を、野菜のカラーとドレッシングで彩る前菜。ジュリは恐る恐る、その前菜に口を付けた。

「おいしい・・・」ジュリは最初の前菜を食べて、思わずそう言ってしまった。

そして「ねえ、どうしてこんなところに連れてきたの?」と言うと、恭介は笑いながら「卒業祝い」と一言だけ言った。

「卒業祝い?」

「そう、だってもう卒業だろ?」

「ま、まあそうなんだけど・・・」

すると恭介は小さなプレゼントを、ジュリに手渡した。

「何これ?」

「プレゼントだよ。今まで一生懸命やってくれて有難う」

「えっ?」

「今まで一生懸命働いてくれたお返しだよ」

「えっ、でも私・・・」

「そろそろ田舎に帰りな」

「田舎?」

「そう、ジュリの産まれたとこ」

「・・・」ジュリは恭介のその言葉を聞いて、思わず黙り込んでしまった。


ひょっとして天使である事がばれたのか?