「IBDP高校から日本の医学部医学科へ」を実現するためのロードマップ
知っておくべき現実:IBDPから医学科合格は「偏差値」では測れない

の連載第5話です。

 

5. IBを活かすとは

「IBを利用して医学部に合格する」という発想は、IBというプログラムを合格のための“道具”にしようと苦戦することになり、結局全てにおいて良い結果が得られません。

具体的には、本人の興味や希望を無視して、医学部受験の定番科目やCAS、EEなどを打算的に選択し、個性が消えてしまいます。そうなると、合格ラインすら見えず、混乱するだけです。このような姿勢では、どうしても学力や成績の向上ばかりに目が向きがちです。結果的に、他の受験生とまったく変わらない内容になり、学力で多少の差をつけられたとしても、医学部の選考者の視点から見れば個性や魅力を感じられません。浅い課外活動や志望動機に陥るリスクが高くなります。

IBDP選抜における大学受験では、学力だけが評価されるわけではありません。それにもかかわらず、学力に偏った考え方では、失敗してしまうでしょう。

医学部は明確に、「IBが育むべき内側の成長(好奇心、探究心、自ら問いを立てる力)」を重要視していると明記しています。

一方で「一般受験でも通用する学力を身につけたうえで、IBでの学びを活かして総合型入試に臨む」という姿勢は、まったく異なります。

ここでの「IBでの学びを活かす」とは何かを簡単に整理しましょう。具体的には以下のようなことです。

IBDPの理科科目や研究過程で学んだ深い理解を、志望理由書や面接で自分の言葉で語る

CASや自主的に取り組んだ活動を通じて得た気づきを、医師としての志と結びつける

TOKやEEで鍛えた批判的思考力を、小論文や面接での問いへの答え方に反映させる

さらには、自分自身やグループで行った研究とその論文を提出して、その評価を圧倒的な差にしていくことが重要です。

IBDPでは、CASとEEは必須ですから、成績と合わせて一定以上の質のものを仕上げることは当然求められます。しかし、それに加えて合格のために必要なことは、たった一つです。

それは、「最終スコアの高さ」ではありません。最終スコアは、志望大学が定める最低基準点で十分です。必要なのは、自分自身で行う研究と、その論文です。わかりやすく言えば、自分で何かに主体的に取り組み、それをレポートとしてきちんとまとめ、できれば何かの機会に発表して実績として残すことです。

レポートは論文形式で英語と日本語でまとめるか、あるいは日本語の要約を準備します。

その論文の質が、入試において非常に大きな差を生みます。これらはいずれも、「IBを利用する」のではなく、「IBを生きる」中で自然と身についた力を、入試という場で「活かす」ということなのです。

 

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では、なぜこれがそれほど重要なのでしょうか。

授業での学習がよくできることは、医学科の選考においては「当然」のことと見なされます。国内の一般入試で勝ち上がる生徒は、それぞれの学校でトップクラスの成績を収めている生徒です。そのような生徒たちの中で争われる医学科受験では、学校の授業や科目の成績や得点は「最低限やっておくべきこと」とみなされています。

幸いなことに、IBDPの場合はその特殊性から、最終的な得点にあまり意味を見出していない大学がほとんどです。実際、最終得点の高い順に合格者を出しているわけではなく、それによって入学後の実績に差がないこともわかっています。つまり、大学は「さらに何か別のもの」を見ているわけです。そして実際に、大学側もそのことを明言しています

また、「一般受験でも合格できる学力をつける」という考え方に対して、「それではIBの良さが活かせなくなるのでは」と感じる方もいるかもしれません。

おっしゃる通りです。できる生徒であれば両立に挑戦してもよいでしょう。しかし、一般受験対策を並行して行うことはかなりの負荷がかかり、どちらも中途半端になってしまうリスクがあります。もし両立が難しいのであれば、できることに集中するべきです。つまり、IBDPそのものに集中することです。

なお、一般受験対策自体は決して「IBの学びを軽視する」という意味ではありません。むしろ、IBという高度なプログラムに取り組みながら、同時に日本の大学入試に対応できる基礎学力を維持する。これは、決して簡単なことではありませんし、両立させることができる生徒というのは高い学習能力と自己管理能力があるという証になります。さらにその上でしっかりと課外活動を行う生徒もいて、周囲から「天才」と呼ばれることもあります。

大切なのは、自分がそのような「両立できる生徒」であるかどうかを早めに見極め、どこにどれだけ集中するべきかを考えることです。学校もある程度は見極めてアドバイスをしてくれます。しかし、IBDPの1年目にはまだ十分な情報が得られていないため、結果的に「とりあえず一般受験対策に参加しておく」ように勧められる生徒もいます。

 

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つまり、一般受験対策は、IBDPの「逃げ道」ではありません。できる生徒がさらに上を目指すための「手段」です。そのため、「医学科受験のためにIBDPコースに進学する」というよりも、「IBDPコースに進学し、さらに余裕があるからこそ、一般受験でIBDP入試を行っていない大学も視野に入れる」という姿勢が望ましいのです。

それは普通に考えると非常に困難で、それを行うと偏差値教育に嫌気がさして、さらに偏差値教育に不満があり国際バカロレアの高校に進学したという理由が崩れてしまいますから要注意です。

次回は、さらにIBDP生の実例からみる
6. 不確実性の中で、確かなものを積み上げる
です。

今回は

「IBDP高校から日本の医学部医学科へ」を実現するためのロードマップ
知っておくべき現実:IBDPから医学科合格は「偏差値」では測れない

の第4話です。

 

4. 「目標」と「現実戦略」のバランス

ここで、「国際バカロレア(IBDP)を利用して医学科を目指す」つまり、「「医学科に合格しやすいだろうと考えてIBDPコースを選択する」という考え方はやめたほうが良い」について説明します。

まず、結論を言えば国内の国際バカロレア校(IBDPコース校)において一番安定して安心なのは「一般受験と総合型入試で合格できるように学習していくこと」と考えられています。

このように聞くと、「『手段としてIBを活用するな』と言いながら、『一般受験の学力をつけてIB特別選抜にいどめ』とは矛盾している」と感じる方もいるかもしれません。

 

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でも、この二つは決して矛盾していません。むしろ、表裏一体だと考えています。

とはいえ、これは非常に難しい道のりです。なぜなら結局は一般受験で合格する学力を身に着ける必要があるからです。そうなると、あえてIBDPコースである必要がなくなります。むしろ、一般受験対策だけに集中できる環境である普通科高校の方がよほど現実的です。

IBDPコースに入学すれば自動的に学力が高まるのではありません。実際にはIBDPコースのハードな勉強についていくための学習と、同時に平行して一般入試問題対策を行うという必要がでています。これは、普通の高校生には想像できない状態になります。

つまり、そのようなことができる生徒は、普通科高校から一般入試枠(共通テスト+前期日程)で東大に合格できるレベルの生徒だといえます。

では、IBDPコースから医学科に入学することは、それほど難しいのでしょうか? 

 

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答えは、「研究実績や校内成績、課外活動の実績が十分に求められる水準を満たしていれば、合格は可能です」となります。

つまり、合格できますが、それは、IBDPコースに入ったから容易に合格できるという意味ではありません。

IBDPの最終スコアがそれほど高くなくても合格しているという事実を、「偏差値が低くても合格できる」と受け止めるのは誤りです。合格するための条件が、一般入試とはまったく異なるからです。

そもそも、IBDPコースに関しては、親や塾、学校ですら情報が少ないのが現状です。卒業生の実績も乏しく、何をどこまでどう取り組めばよいのかがわかりにくい環境です。そのような中で、「医学科に進学したいからIBDPコースを選ぶ」という考え方自体が、すでに矛盾していることに気づかれるでしょう。

 

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それでは、現在IBDPコースに在籍している生徒はどうやって医学科に進学すればよいのか? と思われるでしょう。

その道筋は、少しずつ明確になってきています。すでにIBDPコースを卒業して医学科に入学した学生や、卒業した学生も存在します。ただし、あまりに年度が離れている場合は参考になりにくいため、たとえば2年前に医学科に入学した学生の指導やアドバイスは非常に役立ちます。IB塾などで家庭教師として登録している学生もいます。もちろん、大学医学部が公式に発表している情報も重要です。また、実績のある高校では、情報をしっかりと分析し、対策を始めています。

ここで話がループするようですが、高校側の対策の一つとして、共通テスト対策の補習を導入し、その内容を医学科に合格できるレベルまで引き上げるという方法があります。その理由は明確です。つまり、高校側は在校生の保護者を満足させたい。そのための最も効果的な対策がこれだからです。

同時に、保護者には理解されにくい対策も行われています。それは課外活動や研究です。実際にIBDPを活用して医学科に合格した生徒を分析すると、こちらが重要であり、共通テスト対策は必ずしも必要ではないことがわかります。共通テスト対策は、実際に共通テストを受験する場合以外には役立っていないのです。

 

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しかし、保護者の理解は異なる場合が多いです。保護者は、研究や課外活動を「勉強とは別のもの」と感じがちです。そして、それに打ち込んだ結果、不合格になると「勉強が足りなかった」と感じてしまいます。実は勉強ではなく、課外活動の内容や質が不足していたとしても、そこに理解を示すことは非常に難しいのです。

その理由は、保護者自身がIBDPをよく知らないからです。もちろん、子どもの進路を調べる中で国際バカロレアやIBDPについて調べたことはあるかもしれません。しかし、本質を理解しているとは言いがたく、その後のIBDPを利用した大学入試について具体的に理解している保護者はほとんどいません。

IBDPコースに関する情報は少なく、多くの情報は曖昧です。一部の信頼できる情報は有料ですが、その数百円の情報入手費用さえも支払っていないのが現実ではないでしょうか。大学入試のプロセスに関してはさらに情報が少なく、信頼できると思われる情報も、個人の感想にすぎない場合があります。塾や学校も経験が浅く、人数が少ないにもかかわらず毎年変化するIBDP利用入試の環境に、本気で対応できていないのが実情です。

このような状況の中で、どうやって医学科に合格すればよいのでしょうか。その問いに対する答えは、ただ一つです。

「IBを利用する」のではなく「IBを活かす」ということです。

 

👇先行して全話公開のnoteのページリンクです。

 

次回第5話は
5. IBを活かすとは
です。


「IBを利用して医学部に合格する」という発想は結局全てにおいて良い結果が得られません。という話になります。


 

今回は

「IBDP高校から日本の医学部医学科へ」を実現するためのロードマップ
知っておくべき現実:IBDPから医学科合格は「偏差値」では測れない

の第3話です。

 

3.【「一般入試受験+総合型選抜受験」は矛盾している?】

一見すると、まったく異なる二つの入試対策を同時に進めるのは無理があるように思えます。ところが、高校の立場から見ると、この組み合わせこそが「安定した実績を残す方法」だとされています。その理由は、意外とシンプルです。

まず一つ目。一般入試で通用する学力があれば、総合型選抜(IB特別選抜など)がうまくいかなかったとしても、別のルートで勝負できます。たとえ医学部医学科をあきらめざるを得ない状況になっても、他の学部の国立大学や有名私立大学に合格できる可能性がぐっと高まります。つまり、一般入試の学力は“保険”の役割を果たすのです。

二つ目は、国際バカロレア(IBDP)の特性に関係します。IBDPは最終的な得点の確実性が低いため、高校としては「もしIBの成績が思うように伸びなくても、一般入試でカバーできる」という予備的なカリキュラムを用意しておきたくなります。これも安定志向の表れです。

ただし、ここには「一般受験レベルの基礎学力があれば、IBDPの高スコアも自然に取れるようになる」という、少しの思い違いが混ざっていることも事実です。

実際には、IBDPコースに入るために厳しい選抜をしている高校の場合、生徒の元々の学力が高いため、何をやってもある程度結果がついてきます。結果として、一般入試対策を同時に行っても成立してしまうのです。

しかし、選抜をそれほど厳しくしていない高校では話が違います。無理に一般入試対策を入れると、IBDPの成績が下がるリスクがあります。そうした学校では、IBDPの授業やカリキュラムに専念させる方が確実です。もちろん、希望者には選択制で一般入試対策を用意する必要はありますが、全員に強いるのは逆効果です。

ここで大切なのは、限られた時間の中で一般入試の基礎学力を伸ばせる生徒は、もともとIBDPの学習も効率よく理解し、アウトプットできる力を持っているからこそ、良い成績を取れるという点です。つまり、「一般受験の勉強をすればIBDPの成績が良くなる」という直接的な因果関係があるわけではありません。あくまで、どちらもこなせるだけの地力のある生徒だから両立できる、というだけの話です。

 

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ここまで読んで「なんだかややこしい」と思われたかもしれません。もう少し噛み砕きましょう。

総合型入試(IB特別選抜を含む)では、基礎学力に加えて「人間性」や「志」が評価されます。特に医学部医学科では、この部分が非常に重視されます。問題は、こうした評価は極めて予測しにくいということです。どれだけ準備をしても、当日の面接や志望理由書の評価がどうなるかは蓋を開けてみないとわかりません。

しかし、過去にIBDP利用入試からの入学者が毎年1、2名いる大学医学科においてはその合格者の人物像が固定されているとわかってきています。はっきりといえば、それは誰でもわかることができます。まず、募集要項に記載されています。募集要項の項目はまるで標語や単なる宣伝文句ではありません。一般入試とは違いIBDP利用入試というかなり特殊な入試方法を利用して入学させる生徒にたいして、大学は理想を追いかけています。また、その理想像が存在するのがIBDP生です。現在では過去に合格実績のある高校内においてはかなりしっかりと合格予想がなりたっています。これは、しっかりとした高校の場合、進学関係カウンセラー(担当教師)によって分析され、生徒や保護者に伝えられています。

例えば、令和8年度(2026年度入試・2026年4月入学)入学として2名の国立大学医学科合格をだしたIBDP高校がありますが、実績は始まったばかりで、合格した理由の分析は曖昧ですが、現時点でその結果が実ったとされ、次年度の対策に役立てています。

もし「IB特別選抜だけ」を狙って、一般入試に対応できる学力が伴っていない状態だったらどうなるでしょうか?IB特別選抜がうまくいかなかった瞬間、ほかに頼れる入試ルートがほとんどなくなってしまいます。これは高校にとって大きなリスクです。また、IBDP利用入試を行っていない大学を志望することができなくなります。

なぜなら、一部の国際バカロレア高校をのぞいて、IBDPコースのある高校は常に「合格実績」を求められているからです。進学実績が悪ければ、学校の評価が下がり、翌年の生徒募集にも響くと考えます。

 

 

そのプレッシャーの中で、高校は「多少生徒に負担をかけても、追加で学習させる」という選択をします。結果として、矛盾をはらみながらも「一般受験+総合型」という安定志向のアプローチが生まれるのです。高校がこの方法を“安定”していると感じる本当の理由は、生徒の負担よりも、学校としての実績を確実に残すことの方が優先されるから、に他なりません。

しかし、実際のところIBDPを利用した入試は、年々導入大学が増えています。また、試験日程も大学ごとにバラバラなので、同じ年度内に複数の大学を受験することが可能です。

そのため、たとえ受験先を医学科に限定したとしても、複数の大学に出願できます。さらに、医学科以外の学部を併願する場合には、かなり余裕をもって大学合格を勝ち取ることができるでしょう。

ただし、次の注意点があります。

国立大学の場合、もし先に「医学科以外の学部」に合格してしまうと、原則として同じ大学の医学科を受験できなくなる可能性があります。

また、どこかの大学に合格して入学手続きを済ませてしまうと、後からそれを取り消すことはできません。

つまり、「国立大学の医学科だけ」を目標にしている場合は、他の学部との併願について、かなり慎重に考える必要があるということです。

 

 

塾が発表する内容に、2つの国立大学医学部医学科に合格して1つを選んで入学したという宣伝文句も見かけますが、これは非常にグレーな行為なので、自己判断のもとにおいて受験活動を行いましょう。

しかし実際は、国際バカロレア生にとっては一般入試だけの生徒と比べて受験回数の面では多少多めなチャンスがあります。つまり、IBDP生は医学科受験にたいして特別不利益があるということはありません。合格可能性を事前予測することがまだ難しいことが、念のため一般入試対策をしておこうという行動に結びつきます。

次回は
4. 「目標」と「現実戦略」のバランス
です。

 

👇では先行して連載の全ての記事が読めます。

 

久しぶりの連載です。

今回は

「IBDP高校から日本の医学部医学科へ」を実現するためのロードマップ
知っておくべき現実:IBDPから医学科合格は「偏差値」では測れない

の第2話です。

 

第1話は👇から。今はまだ無料で全文読めます。

 

👇noteでは先行して全文公開です。

 

それでは、今日の第2話を続けます。

 

2. 倍率も実質無意味「狭き門」の本当の意味

IB特別選抜の倍率を公開している大学は限られていますが、募集人員2名に対して応募者が数十名というケースも珍しくありません。単純計算すれば、倍率は10倍を超えることもあります。

この数字だけを見ると、「とても狭き門だな」と感じるでしょう。でも、ちょっと考えてみてください。この倍率には、そもそも出願条件を満たしていない人は含まれていません。 つまり、最初から「一定以上のIBスコアと、指定された科目構成」という厳しいフィルターを通過した者だけが、この倍率の中にいるのです。つまり、この倍率のさらに倍が感覚的には一般的な倍率にあてはまります。

医学部のIB特別選抜に限って言えば、「とりあえず出願してみた」という層はほとんどいません。出願する時点で基準点を超えるプレディクテッドスコアがあり、相当に覚悟と準備を整えた生徒だけがエントリーしています。そんな集団の中で競争するわけですから、一般入試のような倍率と偏差値を見比べた合格予測といった考え方は、そもそも通用しないんです。

倍率が高かろうが低かろうが、自分が大学の求める人物像に合致しているかどうか。そこだけが意味を持ちます。

「それなら、IBから医学部を目指すのは、あまりにも不確かな賭けなのか」と不安になった方もいるかもしれません。

確かに、医学部医学科国際バカロレア特別選抜だけに照準を絞ることは、リスクが高いと言わざるを得ません。

募集人員の少なさ、評価軸の多様さ、年度ごとの変動、これらを考えると、「IB特別選抜一本で勝負する」という戦略は、決して安定したものとは言えません。

医学科を目指すのであれば、一番安定して安心なのは、一般受験と総合型入試で合格できるように学習していくこと。それを進学校のIB高校では目指す傾向にあります。

これは矛盾していますが、一般受験でも合格できそうな学力がある場合は、安心して総合型受験対策を行い、総合型で合格を狙うとうことができます。

しかし、一般受験を行う勉強をしていくと、あきらかに課外活動が現象します課外活動の時間に一般受験対策の勉強を行う必要があるからです。つまり、医学科の場合は天才タイプの生徒しか受験できない・合格できないとなっていきます。

実際、医学科に合格するためには天才である必要がないにも関わらず、高校の指導方法からそのような選別が行われてしまいます。

そのことをもう少し説明していきます。

次回は
3.【「一般入試受験+総合型選抜受験」は矛盾している?】
です。

 

しばらく準備していました。ようやく掲載できます。9回かそれ以上の連載になります。

日によって、章によって長い短いがありますが、全体で18,000.字程度になります。

「IBDP高校から日本の医学部医学科へ」を実現するためのロードマップ
知っておくべき現実:IBDPから医学科合格は「偏差値」では測れない


「IBDPから医学部医学科に合格する」

これは、実際に実績があるからこそお伝えできる話です。

ただし、その道のりは、一般的な医学部受験の常識ではちょっと測りきれない部分があります。中でも特徴的なのが、「偏差値」と「倍率」という二つの指標がほぼ意味をなさないという点です。

今回は、この「偏差値が意味をなさない」という現実を説明しながら、IB(国際バカロレアコース)から医学部を目指すうえで、本当に大切な視点をお伝えします。

そしてその「心構え」と、今回お伝えする「現実的な戦略」のバランスをどう取っていけばいいのか、そのあたりを少しずつ見ていきましょう。

 

 

1. 偏差値は関係ない。では、何が関係するの?

現在の自分の偏差値を知るには、偏差値がわかる全国模試を受けてみることが確実です。その偏差値から、大学の偏差値を比較して、通常の一般入試であれば合否到達点が分かります。もちろんぎりぎりの得点であれば合格は難しいかもしれませんが、ある程度偏差値的に超過している場合は、その大学への合格が確実な偏差値的学力があることとみなされます。

偏差値がわかる生徒の場合「偏差値が高い生徒は、比較的IBDPの結果もある程度良い」。これは間違いないと思います。基礎学力が高いことは、IBというハードなプログラムでも大きなアドバンテージになります。

でも、ここで注目したいのはその逆なんです。

偏差値があまり高くなくても、IBDPを活用して国立大学医学部医学科や私立大学医学科に合格している生徒が確かに存在します。

なぜそんなことが可能なのか。嘘や誇張ではありません。偏差値には不十分な生徒、つまり偏差値を知る為に受けた模試では不十分な成績の生徒が、偏差値的には無理そうな医学科に合格できています。

この理由は大きく分けて三つあります。

 

👇インター校も受験があります。それは日本の学校の受験とは異なります。

 

【理由1:IBDPには「偏差値」という概念がそもそも当てはまらない】

国内の一般的な高校受験や大学受験では、偏差値はある程度有効な指標です。同じカリキュラム、同じ試験形式の中で、相対的な位置を示してくれますから。

でもIBDPコースは事情が違います。IBDPを提供している学校は、国内の一条校IBDP高校、国内インターナショナルスクール、私立学校のIBDPコース、海外のインター校、海外の現地校など、実にさまざま。

よく、「国際バカロレアコースの生徒のライバルは世界中にいる」と言われるゆえんです。

日本の一条校や私立校などでは偏差値を指標利用したり、一般受験対策を同時にする学校もあるので、IBDP生徒の偏差値を確認する為に模試を受けさせることがあります。この場合、通常の授業の後や週末を利用して、一般受験対策の補講を行っています。あまりに偏差値が低い状況は悪い噂をうむので、ある程度高い偏差値がとれるように対策して模試を受けさせます。これは、生徒の勉強に過度の負荷を与えてしまいますが、学校としての方針と言えます。

しかし、インター校や海外の学校では日本の「偏差値が分かる模試」を受けていない生徒が多くいます。国内の国際バカロレア校でも同じです。そもそも国際バカロレアのカリキュラムは通常の日本のカリキュラムとは学ぶ内容が異なりますから、その内容に基づいた模試を受けてそのカリキュラムにおける偏差値を知る必要がないわけです。

その生徒が医学科に合格すると、高校時点での偏差値は「不明」という状態です。つまり、合否と偏差値の間に明確な相関関係も見出すことができないのです。

 

 

【理由2:IB特別選抜の評価軸が、偏差値とは別の次元にある】

医学部のIB特別選抜では、IBDPの最終スコア、志望理由書、面接、小論文などが総合的に評価されます。ここで問われるのは、「いかに高いスコアを取ったか」という一点だけではありません。最終スコアに3点の差があっても合格できない生徒がいます。つまり、他の受験生より3点以上スコアが低い生徒が合格しています。

面接官が見ているのは、その生徒がIBDPというプログラムの中でどのように学び、どのように成長し、どのような問いを抱えてきたのか、そういう「過程」や「人間性」です。

IBスコアが39点でも40点でも、その1点の差よりも、志望理由書に込められた熱意や、面接での受け答えの深さ、さらには高校(高校相当学年)における活動や研究内容のほうがはるかに大きく評価を左右します。

これは、偏差値という「相対的な学力指標」では絶対に測れない領域です。

大学によって合否基準がかなり変わることは確かです。同じ「国立大学」大学群の中でも、その大学によって合格者の特徴が異なります。

しかし、明確に言えることは、IBDPの得点が高い順番ではないことです。つまり、IBDPの得点を偏差値のように置き換えて考えることは無意味です。もちろん、基準点が設定されているため、最低でもその基準点を超えないかぎり、仮合格でも最終的には「辞退者」扱いで表記される「不合格」になります。基準点は大学によってまちまちですが、現状35点以上が必要です。低いと感じる人もいるでしょう。しかし、結果的にその合格者の経歴はすばらしく、大学入学後の実績も学内で話題になっています。

 

【理由3:IB生の「母数」が小さく、合格実績が個別性質に依存する】

IB特別選抜を実施している医学部の募集人員は、各大学若干名(2名程度)ととても少ないです。そのため、合格実績から「何点取れば安全か」といった統計的な傾向を読み取ることが難しく、むしろ「その年の応募者の中で、誰が最も大学の求める人物像に合致しているか」という、個別性の高い勝負になります。

こうなると、「偏差値が高いから合格できる」「偏差値が低いから不合格」という図式は、最初から成立しないわけです。

次回は
「2. 倍率も実質無意味「狭き門」の本当の意味」
です。

👇では先行して全9章の全記事が読めます。