F9の雑記帳 -96ページ目

「滅私」


(↑ちょっと表紙がよれているなあ…。)


 羽田圭介「滅私」(『新潮』2020年9月号所収)を読み終えた。

 読んでいる途中で相変わらず羽田圭介の小説は読みやすいなと思いつつ、物を持たない生活をしている主人公冴津と過去に付き合っていた女性の弟との(ある出来事がきっかけで付き合わざるを得なくなった)関係、加えて恋人の時子(←最終的には別れる)により少しずつ変わっていく主人公冴津の様子等を興味深く読み進めていったが、最終盤でまさかの展開が待っているとは思わなかった。日野、良い味出しているなあ。そして、ほぼタイトル通りだとは思わなかった…。加えて、タイニーハウスや新刊の発売記念イベント、主人公冴津が主催するサイトのコミュニティーメンバーとのやり取り、主人公冴津の祖母が暮らす老人ホーム、ごみ屋敷…、それらの描写が読んでいて細かく具体的でとても興味深かった。どれだけ取材しているのだろう。読書中は半分小馬鹿にしていた主人公冴津製作のアート作品「創造と破壊」も読み終えて時間が経つにつれてだんだんリアルに感じ出したし…。

『巨星』



 ピーター・ワッツ『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』(嶋田洋一訳、創元SF文庫)を読み終えた。

 以前(←今年になってからです!)某書店で見つけて「僕はSFが読めない」と言う自分自身に貼ったレッテル(?)に対する挑戦として購入して読み出したのだが、かなり時間が掛かってしまった。仔細は書かないけれど、人の言う事を聞きすぎるのも良し悪しだなあ。くどいが、鉄は熱いうちに打て、か…。

 個人的には収められている11篇の小説はどれも面白かったが、下敷きにした作品が分からなくても十分楽しめる「遊星からの物体Xの回想」、知性を持った雲の存在等童話的色彩を持っていると感じた「乱雲」、展開が予想外な「付随的被害」が個人的には印象に残った。一方、表題作の「巨星」および「島」はそれ程興奮しなかった。意外だなあ。

「裸婦」




 小暮夕紀子「裸婦」(『文學界』2020年9月号所収)を読み終えた。

 読んでいて、主人公の女性と彼女の母親の関係の描写に少し引いてしまった。父親とは随分違う態度を取るなあ。しかも、よく怒るし。そして、幼馴染みの伊っちゃんこと井口伊吹に対する感情の描写も読んでいて嫌な気持ちになった。彼の父親の不倫についても書かれていたりもするのだが、小説にあるような怒りの感情が沸き上がるなんて…。もっとも、彼女が彼女自身をそれ程好きじゃないからこその感情なのだろうが。ただ、最後の(母親が温泉の石造りの湯船の中で姿が見えなくなる)場面は怖かった。中盤の主人公の(母親が漏らした一言がきっかけで現れた黒い手の)思い出の描写が効いているに違いない。