『暴力と武力の日本中世史』

本郷和人『暴力と武力の日本中世史』(朝日文庫)を読みました。
ブックカバーと題名に惹かれて近所の書店で買い、読み終えるのにやたらと時間が掛かってしまいましたが、章立てや文章の端々から著者の歴史学に対する姿勢が窺え、皇国史観や網野善彦への言及も含めて(中世史はまるで門外漢な僕なのですが)読んでいて気持ちが良かったです。
そして、章立ても第一章の「朝廷と幕府の暴力の骨格」から終章の「自己を見つめ直すための、中世史の構造」まで特徴的で凄く新鮮でした。
しかし、「日本史という学問がここ数年、若い方にまったく人気がない」(4頁)とは想像もしていませんでした。もしそうであるなら、確かに本の中でも実践されていますが、「史実を着実に解析した上で、『小さな物語』を構築していく」(16頁)事から始めるしかないのかもしれないと思いました。
「ステンドグラス」

主人公には母親の頸動脈の近くにスタンドグラスの破片が刺さっているのが見え、時間の経過とともに見え方が変わっていったのが面白かったです。まさか、最終的には「くすんだ岩石のように」(168頁)までなるとは…。
また、母親以外の家族や主人公の友達も特徴ある人達で、読んでいて楽しかったです。終盤に出てくる谷口さんも主人公に影響を与えるキーパーソンだからか、非常に印象に残っていますが、個人的には(登場する場面はそれ程多くないですが)主人公の父親が良いアクセントになっていたな、いい味出していたなと思いました。
あと、場面場面の切り換えが上手く映像的で、語りが非常に魅力的でした。今回は、本当に読む前に巻末の「執筆者紹介」(「お笑いコンビ『Aマッソ』ネタ作り担当」とはっきり書いてあります。)を読まなくて良かったと思いました。別にファンだから買った訳ではないのですが…。
『九夜』

ベルナルド・カルヴァーリョ『九夜』(宮入亮訳、水声社)を読みました。
題名に惹かれたのと、桑名市立図書館の新刊図書の棚にあった事、更にブラジル文学は殆ど読んだ事がなかったため、2月末に借りてきて読んだのですが、主人公である“私”が2001年5月1日の朝、新聞記事で1938年8月に自殺したブエル・クエインの名を見つけ、“私”が彼について取材する過程を描くのが小説の大筋なのに、それとは別に冒頭から断続する(ブエル・クエインの友人となった技師マノエル・ペルナの手紙による)書簡体での語りや、“私”のブエル・クエインの足跡を辿ったり、関係者の子供達に取材をする様のリアルさとは別に、読み進めれば読み進めるほど曖昧さが増していく様に感じられて、読み終えた後何とも不思議な味わいの本だなと思いました。
ただ、(ブエル・クエインの死の原因が不明なまま結末を迎えた事も含めて)その曖昧さこそが「事実、経験、実在の人物に基づいてはいるが、この本はフィクションである」(235頁)この小説の魅力かもしれないのですが…。
