F9の雑記帳 -54ページ目

『WILDERNESS AND RISK 荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード』


 ジョン・クラカワー『WILDERNESS AND RISK 荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード』(井上大剛訳、山と渓谷社)を読みました。
 先日近所の図書館で見かけた際、“WILDERNESS AND RISK”と英題をそのまま残している事と表紙に惹かれ、著者についてまるで知らずに借りて読んだのですが、この本に収められている10の文章は初出の時期を見てやや古いと感じたりはしたものの、“荒ぶる自然と人間をめぐる”と言う副題の通りの興味深い内容ばかりで、読み終えた後に個人的には読んで良かったと思いました。
 そして、この本の中では活火山の近くでの生活に対する「火山の下で生きる」や洞窟内での過酷な調査についての「火星への降下」、登山中の器具の不完全な使用から生じた死亡事故に関する「転落のあと」、北極圏の土地の状況やそれらについて書かれている「北極圏の扉」、年老いてもなお登山を止めない男について書かれている「穢れのない、光に満ちた場所」も印象的でしたが、麻薬常習者等に対する荒地療法での死亡事故について書かれた「愛が彼らを殺した」が本当に強烈で、読み進めるにつれてとにかく悲しくなりました。
 しかし、本当に大雑把な内容紹介、感想で申し訳ありません…(←一体僕は誰に謝っているんだ?)。

『偽悪病患者』



 大下宇陀児『偽悪病患者』(創元推理文庫)を読みました。
 この本を仕事帰りに立ち寄る本屋で購入した時は作家についてまるで知りませんでしたが、収められている9篇の小説(及び2つの評論)はどれも興味深く面白かったです。
 もっとも、この本が“短篇傑作選”を謳う以上、それは当然なのかもしれませんが…。
 以下に強く印象に残った小説(及び評論)の感想(めいたもの)を書いておきます。
・「偽悪病患者」:この本の表題作。往復書簡の形式でこの小説は進んでいくのですが、最後の最後で思わず大声を出してしまいそうでした。ああ危なかった…。
・「毒」:子供の無邪気さがこの小説の中で起きた殺人未遂事件の内容及び背景を照らし出している気がして、面白さと同時に怖さも覚えました。
・「情獄」:友人に宛てた遺書の形式で進んでいくのですが、主人公の友人の死因の意外さに驚いたり、主人公の心理や物語の展開に惹きつけられているうちに読み終えてしまった…、読後感はそんな感じです。また、終盤の(後に主人公の妻となる)潤子が突如豹変して語り出す場面が特に印象に残りました。
・「魔法街」:街で起きる怪現象に驚きつつ読み進め、最後に殺人事件の犯人について詳しく分かるのかと思っていたら分からないまま終わってしまい、読み終えた後若干気持ち悪かったです。また、続編があっても良いかなと思いました。
・「灰人」:この本に収められた小説の中で、展開やテンポも心地良かったからでしょうか、個人的には一番面白かったです。また、この小説の中で起きる事件の犯人が自分の想像外だったりと驚かされる事も多く、読んでいて楽しかったです。しかし、犬のルルウはいい味出ているなあ…。
・「探偵小説不自然論」:作家の主張はもっともだ、現在においても主張の大部分は通用するんじゃないかと思いました。

「それだけの理由で」



 二瓶哲也「それだけの理由で」(『文學界』2023年3月号所収)を読みました。
 久しぶりにこの作家の小説を読みましたが、主人公の(父親が自殺した過去も含めて形成されだだろう)他人に対する口の悪さや屈折した態度は良く分かるなあと思いつつ、大学時代の同級生からの連絡から始まる物語を読み終えました。
 そして、主人公程強烈ではないものの、主な登場人物である(主人公の大学時代の友人である)清田睦美や、最後は自殺を選ぶ生野太一や坂上愛子の人物設定が中々際立っていたり、(終盤には辞めてしまう)主人公の勤務先である介護施設での出来事の描写がなかなか強烈で、読んでいて印象に残りました。
 あと、主人公と清田睦美が良い関係になれば良いな、この小説の続きは読んでみたいなと個人的に思いました。