F9の雑記帳 -13ページ目

「彗星 その他の短篇」(3)


 『MONKEY vol.36』(柴田元幸責任編集、スイッチ・パブリッシング)の特集(「オーイン・マクナミーという謎」)の中の「彗星 その他の短篇――オーイン・マクナミーの11本」と題されてまとめられた11篇の短篇小説のうち、3篇の短篇小説を読みました。
 以下に、感想(めいたもの)を書いておきます。

・「ロード・ワイフ」:運送業を生業とする主人公コイルと、偶然出会ってしまった女性ナディア・ハムザ。一晩限りで終わるはずの2人の関係は、コイルの出来心から緩やかに繋がっていくのですが、コイルの行動や心理がいちいち身に沁みました。また、最後の場面も暗いけれど詩的で良かったです…。

・「クロテン」:この小説の主人公は、地域での評判が良くなかったノラの葬式に出席するために、故郷に戻ってきた女性リリアン。彼女がかつて妊娠した際のノラとの思い出を中心に書かれているのですが、終盤の現在の彼女自身について思いを巡らす部分と、山で迷子になった男の子の話題から喪失について考える場面は、読んでいてやや寂しい気持ちになりました。

・「クオ・ヴァディス」:この特集のための書き下ろし。ジョン、両親からは彼との結婚を反対されているルース。この小説は主にルースの視点で、ジョンとの関係が書かれているのですが、読み進めるうちに彼女の彼に対するひたむきな思いが伝わり、胸が熱くなりました。きっと、僕はこんなふうに人を愛せないだろうな…。

「彗星 その他の短篇」(2)


 『MONKEY vol.36』(柴田元幸責任編集、スイッチ・パブリッシング)の特集(「オーイン・マクナミーという謎」)の中の「彗星 その他の短篇――オーイン・マクナミーの11本」と題されてまとめられた11篇の短篇小説のうち、4篇の短篇小説を読みました。
 以下に、感想(めいたもの)を書いておきます。

・「ライムキルン・ロード」:牡蠣養殖場で働きに来た主人公のヴィクトル、英語がうまく話せないリリー、二人の日常生活の描写の中で、鳥や飛行機と言った飛行に関連した事柄が出てくるのが読んでいて興味深かったですが、最後の場面で人生について考えろと作家から言われたように感じました。

・「彗星」:(母ジューンから聞いていたように)最後には翼をつけて天使になってしまった主人公のカースティと、娘を亡くし更にカースティが亡くなるのを受け入れざるを得なかったへーガン、二人の交流の描写を読んでかなり息苦しくなりました。あと、エディのカースティに対する行動に対して怒りを覚えました。まあ、(小説の終盤で)逮捕されるのですが、それも当然なのかもしれないですね。

・「リガの北」:コワフーズ(美容師)のサラが、淡々としている中に優しさが感じられる態度で(主人公である)アルドラに接しているのが、個人的には良かったです。ただ、(小説の中にははっきり書かれていないものの)サラが男を殺してしまう展開が待っているなんて思いもしませんでしたが。

・「死体花」:まず、小説の題名(ショクダイオオコンニャクの別名)から内容がまるで分からないのが素敵に思えました。そして、この小説が行方不明になった十七歳のローナ・ドネリーを中心にして進みはするものの、短篇小説なのにそれだけでは済まさない所に面白さを覚えました。しかも、小説の終盤になって大幅に過去に遡るとは想像できませんでした。

「彗星 その他の短篇」(1)


 先日発売されたばかりの『MONKEY vol.36』(柴田元幸責任編集、スイッチ・パブリッシング)には「オーイン・マクナミーという謎」の特集があり、その中で「彗星 その他の短篇――オーイン・マクナミーの11本」と題されて11篇の短篇小説がまとめられています。

 今回、「彗星 その他の短篇――オーイン・マクナミーの11本」の11篇の短篇小説のうち、4篇の短篇小説を読んだので、以下に感想(めいたもの)を書いておこうと思います。

・「ノース・ロード」:主人公の職場(魚工場)の状況の描写よりも、信仰に熱心な職工長のベアードや(相当な危険人物だと後で分かる)ジョン等の登場人物達の人物設定が強烈で何だか面白かったです。

・「北へ歩く、家へ帰る」:この小説はまさにタイトル通りの展開(と私は思います。)なのですが、叔母といとこの家に向かう主人公のエレンよりも、彼女との出会いは偶然だったにも関わらず最後まで付き合おうとするタムの方が最終的に好きになりました。また、朝から晩まで歩き続ける女性の存在に幾分恐怖を覚えました。

・「ひたすらライオンである」:人の飼っているライオンは気に入らないのに、自分が飼っている鰐は大事に育てるなんて…。ドーカス・ウィルソン夫人がの行動の一つ一つが(この作家の詩的な部分と相まってなのかどうかは分かりませんが…。)強く印象に残りました。

・「馬」:〈ライツ〉と言う家、石油基地の名前にちなんで名付けられた〈ヴォー〉等も(個人的には)それなりに印象的でしたが、MS(多発性硬化症)がある主人公ヘレンや周囲の描写から染み出た寂しさが、読み進めるにつれて身に食い込んでくるように感じました。