Distance~時を超え距離を超えた二人の物語 -9ページ目

第81話~つのる想い

秋がやってきて乾いた風がより吹くようになった。

みきはひろと故郷への思いが深くなっていった。
なんの変わりのない毎日だった。

「ひろ 帰りたい…」
『うん 待ってるよ』

しかし、みきにはまだ子供のことを思うと心配で、もう少しそばにいてやりたいと思っていた。

ひろはより一層多忙をきわめる仕事に心身ともに疲れきっていた。

「疲れたよ」
『辞めてこっちにきたら』
「そうはいくか…」
『面倒はすべて私がみてあげるから』
「うん…」

今まで世話になった人達を裏切るわけにはいかないと思った。
行ったとしてもいずれは二人、故郷に帰る気持ちだったからだった。

今は無理をしないで、
二人が暮らせる日が来る時を待つしかないと思っていた。

しかし…

第80話〜オジさんとオバサン

『ねえ、私、どこか変えた方がいいところってある?』
「いや。ないなあ」
『なにか一つくらいはあるでしょう?』
「今のままでかわいいよ」
『ええーっ?こんなトシでかわいいだなんて』
「いいじゃんかよ、オレがそう思ってんだから」

『たとえば、髪型とか服装とか‥‥なんかないの?』
「ああ、あえて言うならもっと明るい服を着た方がいいかなあ」
『うん。やっぱりそうよね』
「それくらいかな」

『かわいいって、オジサンは若い子の方がいいんでしょ?』
「なに言ってんだ。トシなんて関係ないんだよ」
『うそおっしゃい!』

「ばかだな、かわいいオバサンが好きなオジサンだっているんだい!」
『オバサンって!言ったな!』
「うはは」

第79話〜真実の愛

長い時間をかけてやっとまた、
二人の気持ちが通じ合うことができた。

しかしまた、離れて暮らすことになってしまった今‥‥

どうしてこうもうまく行かないのだろうと、
何度運命的なもの、神様を怨んだりしたことか。

もしかしたら二人の思いは本当のものなのか‥‥

ふたりの遠い距離はもしかして、
それを長い時間かけて確かめ合うための、
今は試されているのではないかとさえ思う。
自分を見つめ、相手を見つめる時間なのかもしれない。
そしていつしか一緒に暮らすための準備期間かもしれないと。

すべてのことがクリアーになって、
やがて暮らせる日がきたらそれは、
ふたりの気持ちに何の躊躇いも偽りもない、
真実のものであると。

「おまえたちの気持ちは本当なのか?」
「本当に一緒になりたいのか?」

神様もふたりの天使もそれを見極めている時期なのかもしれない‥‥

「誓います。二人の気持ち、すべては本物です」






第78話〜花にのせて

今年もみきの誕生日の前日、ひろは花屋に入った。

 『誕生日の花を贈りたいのですが』
 
 「はい、どのようなものにしたら良いでしょう?」
 
 『そうですねえ‥‥きゃー!可愛い!ってやつをお願いします』
 
 「あはは(笑)きゃー!可愛いっていうのですね」
 
 『そうです(笑)あとはお任せします』

いつも、どこの花屋も愛想の良い店員に恵まれて
こんな調子で花を注文する。

昨年は、みきの誕生日をふたりで祝った。

みきをびっくりさせてやろうといつも、
ひろはみきの目の前に突然、花束を差し出す。

目にはいっぱいの涙が溢れていた。 

今年はそれぞれに生活があって一緒に祝うことができないが、
今夜みきのもとへ花が届くことになっている。
それをみきは知らない。

 「みき 誕生日おめでとう 必ず迎えにいくから」

メッセージの記入欄にひろはそう書いて
花屋を後にした。

そしてクルマの中からメールを送った。

 「明日は誕生日だな。
  今年は一緒に祝うことができないけれど、来年は一緒に祝おうな」

 『うんラブラブ










Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-誕生日の花

第77話〜バレンタインデーの夜に

ひろの広島滞在中、二人はいつも離れなかった。

山間の温泉へ行った。
原爆ドームも見に行った。

夜の繁華街を手を繋ぎながら歩いた。
大きなスーパーマーケットに買い物にも出かけた。
カラオケでは熱唱しあった。

そして毎晩、ふたりは抱き合った。

 「帰っちゃうの?」
 『うん‥‥』
 「帰らないでよ!」
 『オレだって帰りたくないさ』
 「ほんとにまた帰るの?」
 『荷物をまとめに一旦帰る』
 「本当に?」
 『ああ。ちょっと時間がかかるとは思うけれど‥‥』
 「待ってるから」
 『うん』

帰る前夜はバレンタインデーの夜、
ふたりはチョコレートの交換をした。
シャンパンを傾け深夜までこれからの夢を話し合った。

 「オレは必ず、みきを迎えに来る」
 『うん』
 「誓ったことは、必ず実行する」
 『うん‥‥でも‥‥』
 「でも?なんだ?』

 『そうして期待してて、
  結果が違ったら辛いからあまり考えないで待つの』

ひろは少しショックだった。言い返せなかった。
自分のことを信頼してくれていないか、
なにを今さら‥‥

しかし、これはきっと、
今までのみきの経験がとすぐに逢えない時間が
そんな気持ちにさせているんだろうと思った。

 「オレは必ず‥‥誓うよ」

ひろはそういってみきの手を握りしめ、
自分の胸にその手を当てた。

翌日、二人は空港ではなく駅で別れた。

みきが空港からだと、
その帰り道が辛くなってしまうだろうと思ったからだった。

ひろを乗せた空港行きのリムジンバスが見えなくなるまで
みきはずっと見送っていた。

 「また来てね。楽しい5日間だったよ」
 『待ってろよ』

ふたりはまた、
それぞれの生活に戻って行くのだった。





 


Distance~時を超え距離を超えた二人の物語-朝のテーブル