いくらウィンブルドン開催中とはいえ⁈

 

今年初のテストがカウントダウンに入った。

メンバーリリース直後にすこしだけ呟いてメンバー会見(オンライン)に参加したが、この顔ぶれ皆さんどんな受け止めを?

 

ちなみに、冒頭の写真だが、イタリアは試合前日練習をほぼフルオープン(日本は公開15分)。その内容も、写真のテニスあり、セパタクロー風のキックのみのお遊びバレーなどなどを、ラグビー以外のメニューを笑顔で終えた。取材に応じたラマロ主将は、まだ準備時間が不十分なことを明かしたうえで、日本代表が強化に1か月ほどかけてきたという認識も口にしていた。

 

この試合のメンバー、先週の顔ぶれを比べると、職業柄せっかちな思考・行動パターンの習慣が抜けないこともあり、来年の10月の33人をどうしても意識してしまうのだが、エディーは6月のメンバー会見でも、こんなコメントをしているね。

 

「去年70%くらいまでいったので、この夏は80%くらいまでメンバーを固めたい」

 

確かに8割方決まりかけている印象だ。

先週の「XV」戦と今回のテストの顔ぶれを眺めると、メンバー固めに関するエディーの思考が反映されているようにも感じている。「現状で」という前置きは必要だが、誰がファーストチョイスで誰がセカンドチヨイスかが、この2試合のメンバーリストからも読み取れるのではなだろうかなどと思いを巡らせる。

 

この2試合の顔ぶれだ。

 

  vマオリ    vイタリア

①    岡部     →岡部

②    原田     →原田

③    竹内     →竹内

④    ハアンガナ  →ホッキングス

⑤    ストーバーグ →ディアンズ

⑥    下川     →ガンター

⑦    コストリー  →下川

⑧    ララトゥブア →コーネルセン

⑨    北條     →齊藤

⑩    伊藤     →伊藤

⑪    ブルア    →石田

⑫    李      →廣瀬

⑬    ライリー   →ライリー

⑭    植田     →植田

⑮    松永     →松永

 

 

先発15人中8人が継続出場になる。

手前味噌になるが、先週の試合については、こちら参考に。

かなり〝特定のポジション〟についてしか書いてはいないけどね。

 

 

 

 

今回のイタリア戦。幾つかのポジションはコンディション理由の選考もあるだろうが、上から順番に眺めていこう。

 

先ずフロントロー3人は前週と変わらず、2列目は逆に全替え。ここ興味深い。フロントローは、期待されたオペティのフランス移籍もあり、この3人への評価がかなり堅いように見える。岡部&竹内のコンビは、国内屈指の機動力。そして、江見との「2」争いが過熱していくだろう中で、今のところはエディーの評価が高い方がスターターを掴んだ。

 

2列目については、エセイさんが名古屋で若干痛んだのが悪い影響がないといいのだが、いずれにせよ今週末の2人がファーストチョイス。マオリ戦の2人はとりあえず桜のジャージーでの試運転を果たし、これからトップ2を追うことになる。〝新参コンビ〟が〝府中コンビ(一部ウェリントン)〟に近づいていけるか。追う側の、背の高い方のマイケルは#6という選択肢も一つのアピールポイントではある。エディーも好きな副業=マルチポジションで実績があるのは、現状の顔ぶれだとこのマイケル、今回#8でスターターのジャック、そしてエセイ。これがアドバンテージになるか、現状セカンドロープロパーの他のメンバーに〝チャレンジ〟を求める可能性も含めたレースが始まる。

 

この2列のポジション争い。数年前には願いもしなかった高さになってきた。エディーも第一期HC時代が終わる2015年RWCの最終戦後に、これからテコ入れが必要なポジションとしてLOの手薄さを強調していたが、今回のメンバーだとハリーが208㎝、ワーナー201㎝、ベンチのマイケル202㎝と一気に摩天楼化している。この3枚の〝壁〟に、2列にも空中戦以上に機動力が求められれば、今回#8 で先発する195㎝のジャックが絡んでくることに。

 

理想をいえば、もう一枚、局地戦で強烈なバトルを武器にするルアンさんがナショナルサイドに加わることが出来れば、さらにパンチのある編成になるのだが。ここは、キャリー、フィジカルファイトでも進化を続けるワーナーの成長次第で、ルアンへのニーズが変わって来るかも知れない。若き代表スキッパーが期待通りの成長曲線を描けば、怪我も多く、超速には決して向いてない〝局地戦〟エキスパートは必要なくなるかも知れない。

 

3列に関しても、ワークレート、フィジカリティーという評価でのベンさん&下川甲嗣は、昨シーズンの起用法をみても、かなりスターターとしての評価を勝ち獲っている印象だ。ここは従来、対戦相手やコンディション等状況次第で入れ替わりが多いエリアでもあるが、絶対的なスピードを求めればティアナンが浮上して、そこに6番としてのエセイ、No8とFL両睨みでのマイケルに、後で触れるワイサケらが絡んでくる。FW8人もだが、ピッチに立つ15人全体を束ね、ゲームの方向性を失わせないためならマイケルもまだまだ捨て難い。勿論一選手としての存在でも。

 

だが、今回のベン、下川、ジャックのスタートとマイケルのベンチは、現状のプライオリティーを物語っているようにも思える。もう、15か月後に迫るものの、マイケルにとっても「代表枠」という戦いの中でレースの中で、どこまでプレゼンスを見せ、生き残るかの勝負になってきている。

 

ちなみにティアナンのベンチからの起用は、まず3列のセレクションが最優先なのは間違いないが、ベンチメンバーの6-2スプリットにも伏線はある。BKの控えはSH橋本くんとSO兼FBグリーンの2人。つまりTBのプロパー不在というユニークな布陣でもある。そこで、WTBのベンチ要員を兼ねるのがティアナンだ。ニールさんの説明だ。

 

「コストリーはハイブリッドの選手で、去年のウェンブリーでの南アフリカ戦でもWTBでプレーしています。北半球のイタリア相手だとFWがかなり厳しい戦いになる。そこで我々が圧倒したいので、こういうベンチになりました。もちろんFWでの控えではあるのですが、状況で必要になればBKでの起用も考えて準備しています」

 

ティアナンのWTBも楽しみな一方で、そういう展開にならないことも願いたいものだ。

 

バックローのメンバリングに話を戻すと、ここまでエディーの下でプレーしてきた顔ぶれを考えれば、昨秋の代表加入直後からウルトラフィジカルなゲームでのタイラーの存在感は素晴らしかったが、コンディション不良だ。ここはこの先に期待するしかない。本来は、タフなFW戦でもレベルを上げているアズーリ相手でも、日本代表という組織の中でどう機能、否、チームにプラスをもたらすかという観点からタイラーを試したいゲームではあったが…。そこに、セカンドローに続き理想をいえば、グラウンドレベルのボールへの仕掛け人、仕事人として、熊谷のラクランを加えたいところだ。すこし手薄なリンクプレーヤーとしても重要に思えてならない。

 

 

試合采配はNGだが、ようやく指導はOKのエディーも前日はいつもどおり

 

 

ジャックの#8に異論はないが、固定というメンバリングではないだろう。正直「不動の8番」は欲しいところだが、現状を見渡せばゲームプラン、メンバリングで〝日替わりエイト〟のまま来年10月までいく可能性も。先に触れた3列のほうのマイケル、ワイサレらが、バックロー3人、バックファイブ5人の兼ね合いで誰が最適かを争うことになる。勿論、パワーハウスとしてのテビタの復帰も可能性はあるが、〝いいコンディション〟をキープするのが条件だろう。マオリ戦で8を背負ったワイサレは、常に球際に居るワークレートで個人的には非常に買っているバックローではあるが、ブレークダウンへの参加回数等を踏まえてブラインドFLがベターチョイスにも思える。

 

エイトマンに関しては、個人的には、スピードとワークレートに優れた2,3列が多いこのチームでは、先に触れたルアン同様に、すこしパンチ力のある選手がいてもいいのではと時折思う。マフィが所属チームでも国境線でもジャパンを離れ、後継として期待されるテビタも先ほど触れた通りの現状だ。怪我の多さへの懸念と、やはり〝パワーハウス〟という役回りであってもエディージャパンでは持久力が求められる(かなりワガママな要求ではあるが)。書いても意味のない願望ではあるが、どこかに浦安のヤスパーのような8番がいないもんか…。

 

そして、ようやくBKに。SHは、こちらも「かなり」投資の意味合いでのマオリ戦の北條くんから、今回は帰国したばかりのファーストチョイスの#9 を投入してきた。

 

太平洋を跨いで帰国したワーナー、ユーラシア大陸を越えてきた齋藤直人の先発起用に関して、代行HCのニールさんは、こんな評価を語っている。

 

「彼らはキープレーヤーですし、ワーナーはハリケーンズで優勝して、個人では3年連続で優勝を経験しているとこともあり勝ち方を知っている。齋藤直人もヨーロッパの強豪トゥールーズで今回チャンピオンになりました。そして、この2人は代表でのプレー経験もあり、キャプテン経験者でもある。そんな経験値が、若手のメンバーには非常に大事なことですし、メンバーに選ぶ決断に迷いはなかった。直ぐ最近までラグビーをしていたこともあり、代表に合流してからの練習でも素晴らしい成果もでていたので、今回に起用になったのです」

 

これまでも何度か触れてきたが、チームの中ではこの夏からは「勝ちに拘る」というコンセンサスが固まりつつある。来年10月からの逆算で、もう投資や選手の経験値を上げていくという時間ではないということだ。今回のワーナー、齋藤直人のスターター起用も、こんな思いが反映されている一面もあるだろう。同時に、プロプレーヤーとしてなら、所属クラブでのゲームからナショナルチームでの活動で、大陸間を跨ぐ移動もエクスキューズにならないというマインドセットの部分もある。

 

SHのセレクションに関しては明確な部分と、流動的な要素がある。コンディションなどに大きな変化がなければ齊藤直人、負傷離脱の藤原忍の1、2番手争いはほぼほぼ確定事項。その3番手に誰が入るのかが、この先の焦点になる。

 

名古屋で先発した北條くん。スキルや、ボールを持って走るという面ではポテンシャルのある選手。言い換えれば、相手と正対した状況では強みを持つ。だが、名古屋でのパフォーマンスを見ると、日本代表で#9として求められるものはまだまだ磨き込みが必要だと明らかになった試合でもあった。決定的にブラッシュアップが必要なのは密集からの攻撃的なキックだ。とりわけ中盤からのパントは、敵陣でゲームを進めるための大前提として重視されるスキルだが、理想の〝落としどころ〟へのコントロールがまだまだなのは露呈した。他にも理由はあったかも知れないが、ハーフタイムでの交代はやむを得なかったように思える。

 

その一方で、マオリ戦でインパクトを残したSO伊藤龍之介とのコンビネーションは悪くなかった。伊藤のほしがるテンポのある流れの中でボールを供給していたのは〝いい点数〟をあげたい。幸いなのは「足りないもの」が明白だったこと。ここをスキルアップすれば、十分〝3人目〟を狙える位置に立つ。

 

そして今回ベンチに入った上村樹輝が、それこそどこまで輝くか。彼がベンチから出て行く展開になればだが、〝3番手レース〟の有力候補の桜のジャージーでのお手並み拝見でもある。この#9のメンバー争い。思い切りギャンブルをすれば、来年秋の33人のスコッドに2人しか選ばないというやり方もある。個人的には勿論3枠でと願うが、3番手は33人外のバックアップ、時差の無いフライトで合流可能な日本に置いておくという思い切った選択で、他のポジションに1枠を割り当てるというマジックもある。正攻法でいけば、今週末の#21 に、現在選外となっている昨季までのメンバー、そしてエイジレベルの若手が候補となるのだが。

 

#10は2戦連続のスターターとなった21歳に再び注目だ。散々奉ったので、詳細はリンクを貼ったコラムをご参照を。前週よりさらにステージが上がった相手との〝本気〟のゲームで浮上するだろう課題も含めて、どこまでインパクトを残せるか。彼が再びテンポのあるゲームメークが出来るかは、ジャパンの目指すアタックがどこまで出来ているかのバロメーターという観点からも興味深いのだが、先ずはラインを引き上げ、石田、植田、ディラン、もしかしたらティアナンといったスピードランナーを生かせるか。土曜日の観戦で注目したいエリアでもある。

 

10番の〝本チャン〟枠は2~3人。これはFBを中心とした他ポジションとの兼ね合いで人数が決まる。第2期エディージャパン発足から、ここまで両ポジション兼務の選手を呼んでいる現実を考えれば、兼任を含めた2.5人程度の枠が適切かとは思うがいかがなものか…。

 

そう仮定すれば、エディーが現状ナンバーワンSOと明言する承信を軸に考えれば、この先のパフォーマンス次第ではあるが伊藤龍之介で2枠は埋まる。勿論ここから21歳の「10」が評価を下げる可能性もないわけじゃないが、持っているアタックセンスを買えば、残り0.5枠を小村くん、15兼務の松永らも候補にレースが進むことになる。

 

前週から入れ替えてきたインサイドCTBは、まだ僅か5キャップだが、昨秋のツアーでの練習も含めて経験値を積んだ廣瀬を抜擢してきた。もしかしたら、現状での選択肢としてやむを得なかったのかも知れないが、注目したいのはまさに〝インサイド〟としての仕事ぶりだ。

 

これ、チ―ムやコーチの考え方次第という部分もあるのだが、「CTB」という括りは「どうかな」と感じるケースは少なくない。インサイドCTBに関しては、ボールとBKラインのドライバーとしての役割を重視し、アウトサイドにはWTB、FBと同様にフィニッシャー、フィニッシュに繋がるランナー、ラインブレーカーという役回りで論じた方が、その求められる資質が明確になる。

 

勿論、インサイドCTBも攻撃の起点作りや、防御ラインに仕掛けるランも役割の一つだが、これも過去に何度も書いてきたことなのだが、インサイドCTBではなく「セカンド・ファイブエイス」と呼んで、#10=ファースト・ファイブエイスとの連携や役割分担で、その資質を考えたほうが適切なチームはかなりあると感じている。

 

今回の廣瀬くん起用で興味深いのは、彼が東福岡時代からゲームを動かしていく選手として見せた資質を、若い八幡山の後輩の隣で輝かせてくれるのではないかという期待感だ。前週の試合で伊藤龍之介自身が口にしていた「ボールを持ち過ぎた」という課題や、それ以外のゲームメーカーとしての1つ1つの判断の中で、セカンド・ファイブエイスとしていいサポートが出来れば、この才能溢れる若き司令塔をさらに輝かせる期待も高まるのだが。

 

この八幡山での4年—1年の関係だった10番とのコンビネーションについて、試合前日練習後に取材に応じた廣瀬くんは、こんな話をしている。

 

「一つリュウに言っているのは、前回の試合でマイナス面を気にし過ぎていた。持ちすぎだとか、そこは正しいが、そこに拘り過ぎないこと、自分のアタックが効いていることをポジティブに捉えて欲しい。初めてのテストマッチ、ティア1との相手で、リュウが今まで経験したことのないことも絶対に経験するし、そこをしっかり僕がコントロールしながらやっていきたい。アタックはリーグワンの選手にも引けを取らないので、そこ楽しんでやってほしい」

 

 

 

 

廣瀬くんの目には、この若き才能が思い切りよく、伸び伸びと自分のプレーが出来れば、十分に力を発揮出来るという感触があるのだろう。廣瀬くん自身もまだまだ自分のプレーを着実に履行する事が最優先事項という立ち位置ではあるが、#10の後輩が名古屋から宮崎へ戻ってからの数回のセッションでも、2人の連携やら、その連携からディランたちをどう走らせるのか、生かすのかの創意工夫はしているだろう。そんな準備が、スターターが確定する、いまや世界屈指というレベルに達しているアズーリのミッドフィールダー2人をどう崩せるのか、或いは封じ込まれるのか。想像するだけで胸躍る対峙が待っている。

 

おそらく6月の名古屋でのゲームを分析すれば、アズーリが小さな21歳をかなり潰しにかかる恐れは十分にある(そこを狙わずとも、2年前のように簡単にねじ伏せられる最悪のシナリオもあるが)。そこも、初めての「テスト」の大きな試練になるが、まずは経験値を上げていくことからスタートだ。

 

ミッドフィールダーのセレクションをみれば、リーグワンではまだまだエンジンが掛かり切っていなかったディランは、名古屋ではかなりコンディションを取り戻してきた。ここから注目ポイントは、エディー体制から呼ばれ始めながら、コンディションの問題でまだ本領を見せ切ってないサミソニが、どこでブレークするのか。同時に今回は廣瀬が担うインサイドで〝ドライバー〟として機能する素材も欲しいところだ。個人的には、地味だがスキルフルなラン、パス、タックルが魅力の相模原のほうのヴァイレアがお薦めだが、若手代表合宿を怪我理由で辞退した後はお呼びがかからない。

 

この先のサバイバルは、代表離脱中の中野、シアサイア、トレスコに戻って来た池田という〝常連〟が絡んでくるが、勿論、怪我で代表リスト止まりの府中のロブ、船橋のリカスは十分に〝圏内〟の存在だ。もう一枚ディラン級がいればといいうのは欲張り過ぎか。

 

アウトサイドBK3人を見ると、新たな〝補充〟は石田吉平の復帰のみ。ヨーロッパからやって来きた相手は、ジャパンがさらに取り組んでいこうとするハイボールを使ったゲームでは、胸を借りるには最適な相手。ジャパンキラーでもあるWTBイオアネはフィジカルを武器にした力強いランで、若いFBバーニは190㎝台という高さを武器に日本に挑んでくる。マオリ相手には空中戦での強さを証明した植田、そして昨秋、ハイボール対応も含めて攻守にポテンシャルを見せながら戦線離脱した石田くんがどこまで渡り合えるかも、この先へ向けたキック戦術における重要な指針になる。

 

ハイボールの可能性を試すという観点では新鋭・上ノ坊駿介の不在が惜しまれるが、まずは勝ってチームを勢いづけたいネーションズシリーズ開幕戦は、松永拓朗に天理の先輩としての威厳を見せてもらうことにしよう。

 

今後を見通すと、なかなかフルスロットルに入り切れないジョネ、同じく怪我の矢崎と復帰が待たれるスピードスターもいるが、残す15か月は怪我も大きなマイナスポイントになるだけに、グラウンドパフォーマンス以外の影響による泣き笑いもあるかも知れない。このポジション、本大会ではあまり〝投資組〟は必要ないが、代表トレスコを離脱した武藤航生、現在グルジアで苦闘する内田真之甫という思い切りの良さが武器の2人を、どこかでテスト出来ればという願望だ。勿論、2人供2031年を見据えてではあるが…

 

最後にすこし、数字上のおはなしも。

 

先発メンバーの総キャップ数は234(1人平均15.6)。実はコレ、昨年の開幕戦(vsウェールズ)の244(平均16.2)を下回る。数字上は、来年へ向けて経験値の上乗せが不十分とも捉えられる。エディーが以前に語ったように、ワールドカップ決勝に進むようなチームは600、800というキャップ数=経験値が必要と解釈すると、やや物足りないものでもある。

 

この数字にすこし〝いたずら〟があるとすれば、通算100キャップに近づくリーチマイケルの存在が影響する。現在のキャップ数は98。そして、今回はベンチスタートになるのだが、そのマイケルが昨季開幕戦はスターター入りしているのだ。このマイケル枠を踏まえて、去年のウェールズ戦をマイケル抜きの14人の平均キャプ数で換算してみると11.2という数字になる。一人のレジェンド選手で、総キャップ数も大きく変わるレベルじゃ、所詮まだまだ経験値は高くないという解釈も出来るのだが、実際には僅かではあるが経験値が上げてきている。23人全員では平均11.4キャップから16.0ともなる。

 

経験値での勝負になれば、まだまだ世界のトップ10クラスには及ばない桜のジャージーではあるが、その〝幼さ〟の中で、伊藤龍之介のように輝き始めた原石も出てきている。まさに「発掘」から「磨き上げ」の工程に入りつつある桜の15人が、どこまで6ネイションズ勢という強化・進化のためには最良の〝砥石〟との接触で、さらに輝きを増していけるのか。土曜日17:40の薄暮のキックオフを待つことにしよう。

 

「33人」のセレクションを意識した文章になったため、紹介できなかったものを書き足しておこう。

 

先ず、試合前日に取材に応じたワーナー。ハリケーンズでの活躍で、オールブラックスの可能性に触れ始めた〝強欲〟NZメディア、世論に対して「日本」という思いを語っているが、この日も、その理由をこう語っている。

 

「日本で高校に行って、色々学んでいろんなチャンスを貰った。高校を卒業した後も、リーグワンの試合に出る前に代表の経験をして、(ここでも)いろんなチャンスを貰った。それを、ただ捨ててNZ(代表)でプレーするというのも、勿体無いなと思います」

 

嬉しい話しじゃないか。ワーナー個人のことを思えば、NZでの挑戦は、日本では見られない光景を目にする大きなチャンスかも知れない。それを封印してまで、日本での〝恩〟を大切にする。あのポテンシャルをみれば、奇蹟に近い選択をしてくれたと感じてしまう。

 

イタリア戦については、2年前の経験と現状分析でFWのフィジカル勝負と見据えるワーナー。ウェリントンで鍛えたコンタクトエリア、ボールキャリー、タックルで世界10位との真っ向勝負に備える。

 

そして、アズーリで前日取材に応じたベテランWTBイオアネの言葉も印象深い。こちらの聞き方が悪かったのだが、本来、彼がハットトリックでジャパンを粉砕した2023年の対戦について聞こうとしたのを、24年のゲームについての言及にはなった。それでも、このチームの進化の鼓動を感じさせるコメントになったのが興味深い。

 

 

長らくトライゲッターとしてアズーリを支えてきたモンティ。母

国でのW杯を花道という思いを語ってくれた。因みにこの写真に

は写ってないが、左耳の手前には「愛」のタトゥー。聞きたい事

多くそこには触れなかったが、日本メディアからの質問ナシ…

 

 

「2年前の試合は、丁度イタリアのラグビーが変わっていく、どんどん成長していく起点のときだったと思います。あのときのチームがあって、今のチームがあると思う。あそこから比べるとイタリア代表は大きな成長を遂げていると思うし、若手も沢山入ってきている。その組み合わせで今回いい準備できていると思う。HCのゴンサロについては、まず彼自身のスタッドフランセHCでの知見経験を、沢山イタリア代表に持ち込んでくれて、それが我々の成長の要素になっていると思います。前任のキアランが、イタリア代表のラグビーをぐっと押し上げてくれたのだが、ゴンサロがさらのディテールの部分を伸ばしていると思う。なので、イタリア代表の戦い方そのものが、より細かいところが引き上げられている」

 

やり取りの中で「自分にとってスペシャルでエキサイティングな大会になる」と語った母国オーストラリアでの来年の祭典を、「キャリアを母国で終えれたらいい」と代表での最後の舞台になるだろうとも語ってくれた。アズーリが、まだまだ〝6か国のお荷物〟だった頃から、いまの躍進までを知る男だからこその深みのあるコメント。今日のハットは御免被りたいものだが、その走りは楽しみでならない。

 

 

 

もう一つのフットボールの大一番が片付いてからということで、すこし遅めのアップにはなったが、尾張での今季最初の〝代表〟戦について。

 

本来は、例の北中米での喧噪も踏まえて、簡単にゲームに触れておこうという趣旨。本格的にはイタリアとのテストからの腹積もりだった。書き進めるとあれやこれやとくっついてきそうな欲望を押さえつつ、こんな分量のものに。それこそ「アレコレ」を遮断して「10番」に特化して、行数を抑え込んだ(つもり)。

 

多くの方が、良し悪しは置いておいて、観戦して感じるものではあるだろうが、やはり21歳の新鋭司令塔のパフォーマンスには、心が動かされた。なので、あまり〝変化球〟ではなくド直球のおはなしだ。

 

 

 

 

本来は6月10日のエディーによるメンバー会見から、構想の中にあったコラムのネタが、ワールドカップ前年というシーズンに、エディーが何をチームに求め、強化のための上乗せをしていくのかだった。

 

この観点から、非常に興味深かったものの一つがSOをどうするのか。

 

コラムで紹介した通り、エディーが10番に期待するものは「当たり前」のものでもある一方で興味深い。この言葉を聞きながら、では世界のトップチーム、選手の中で、エディーの唱える「10」として最適な人材は誰なのか? こんな自問をしてみると、そう長い時間をかけずに一人の男の姿と名前が浮かんできた。

 

サシャ・ファインバーグ=ウンゴメズル

 

泣く子も吹っ飛ばされる南アフリカ代表スプリングボクスの次世代スターと期待される司令塔こそ、理想の10番だ。

 

だが、残念ながら日本にはサシャはいない。〝ボカ〟と比べるのも僭越ではあるが、それじゃ〝日本のサシャ〟は誰なのか――。そんな思いを巡らせる。本物と比べると承信だとすこしオーソドックスか、山沢拓也だと個人技に走り過ぎか…。などと勝手に名前を浮かべては消す中で、多少の〝先物買い〟ではあっても、この名前に行き着いた。

 

伊藤龍之介

 

まだまだ若いし、172㎝、77㎏のサイズもテストラグビーでどうなのか? こんな脳内の〝反論〟を浴びながらも、その選択に迷いはなかった。世界ランキング12位あたりを徘徊して、なかなかトップ10内には入って行けない。そんな立ち位置の国で、もしサシャのようにプレー出来る10がいるとしたら、足りない物も沢山含有していてもおかしくない。

 

確かに、この名古屋でのナイトゲームでも、コンタクトエリアではまだまだひ弱さも露呈した。だが、それ以上に、コラムでも書いた通り、相手防御ラインと正対して前へ仕掛け、アタックラインを引っ張り上げることが出来る司令塔って、実はそう居るもんじゃない。

 

コラムで記したライリーへの狙いすました「アウト」へのパス、そして数回見せたCTB李智寿とのシザースも、一見すると「教科書通り」で片付けられるプレーではあるが、この若き10番の振る舞いには〝スペースをどうクリエートするか〟、言い換えればレシーバーのためにどうスペースを作り出すか――という意図が盛り込まれているのが興味深い。

 

自身がどう動くかで相手防御がどう釣られるかをしっかり認識し、履行出来るか、もしくは出来ないか。その違いで、パスを受けた選手の可動範囲が大きく異なるケースがある。伊藤龍之介が名古屋の夜にみせたいくつかのプレー(パス)から伝わるのは、こんなアタックラインを生かそうという、ボールと選手のドライバーとしての姿勢であり非凡なる能力だ。

 

しっかり自分へマークを引き付けスペースを作り出し、閃光の如きボールを放つことで「ただのパス」になるか「キラーパス」になるかが変わってくる。XVの挙げた全5トライ中3本をアシストして、1本はトライへの起点となったという結果は、この21歳がいかに「仕留めのパス」、「〝仕留め〟を生み出すパス」が出来る10番かという一つの証明でもある。

 

とはいえ、持ち上げ過ぎは禁物だ。コラムでも触れた通り、まだまだテストラグビーに足りない物がこの才気あふれる21歳にも沢山ある。本人には怒られるかも知れないが、まだ〝日本のサシャ〟ではなく、おそらく〝八幡山のサシャ〟、もしかしたらあの夜で〝世田谷のサシャ〟くらいになったかも知れない。これからのテストでも物足りなさや、場合によっては失望させられるプレーがあっても不思議ではない。それでも、あの名古屋市瑞穂区で、この〝ルーキー〟が演じたものは称えて余りあるものだった。

 

初めての、そして未知の舞台で21歳の大学4年生が演じた80分。これが、いつか〝伝説の始まり〟と語れるようになれば、この国のラグビーにとっての救いにもなる。

 

▲快足にハードタックルも魅せるWTB内田くん。ルックスもなか

かだが、そのポテンシャルを世界の舞台でどこまで開花出来るか

 

 

週始めの6月16日に湾岸エリアを東へ遠出をしてきた。

目的地は千葉県長生郡。

未来の桜の戦士がジョージアへ飛び立つ前の合宿がお目当てだ。

 

改めてFIFAワールドカップの関心度を再認識させられたのは、この日の千葉の山奥くんだりまで来た記者の数。いわゆる「新聞記者」という括りでは「0人」。新聞各社から、見事なまでに〝取材対象外〟だと突き付けられた。ラグビー惨敗である。

この業界出身者としての基準では仕方のないことではある。勤務していた時代以上に記者数も潤沢とはいえないであろう中で、〝北中米案件〟のために国内外で人手が必要な状況は間違いない。房総半島の里山まで書き手を1人出すことも意味がないという判断だ。もちろん上記した「記者」以外に数名の取材者はいたのだが、なんとも寂しい限りだ。U20というタグビー強化には重要な世代の〝ワールドカップ〟でも、この有様だ。ここは、彼ら大学生ではなく、実質上国内の「楕円景気」を引っ張り上げる役割を担う、シニア代表の関心度がモロに影響していると考えていいだろう。

 

で、記者数とラグビー人気の能書きはほどほどにして、参加メンバーの中で真っ先に話を聞きたかったのが、WTB内田慎之甫くん(筑波大2年)だった。

 

先ずは、本番の日本戦情報だけお伝えしておこう

 

■ジュニアワールドチャンピオンシップPool B日本代表試合日程

月,日 現地(日本)   対戦相手(開催地)

6.27 15:30(20:30)  ニュージーランド(クライン)

7. 2      20:30(25:30)  イタリア(同)

7. 7      15:30(20:30)  スコットランド(同)

 

👇メンバーについては、ここいらへんで

 

 

 

〝桜の蕾たち〟は、既に20日に決戦の地へと飛び立ち臨戦態勢に入っている。

で、名前を挙げた内田くんは、既に佐賀工高、そして昨季の所属大でも、如何なくそのスピードを見せつける存在だが、わざわざ山奥まで出向いて話を聞きたかったのは、先の遠征で行われたNZU(ニュージーランド学生代表)との最終戦でのパフォーマンスだった。

 

チーフスの本拠地FMGスタジアムを決戦の舞台に用意してもらった一戦では、18分のキックチェイスから、かのミルズ・ムリアイナの甥で、既にハイランダーズとも契約する天才肌のNZU#10ミカに走り勝ち、ルーズボールを浮かせてSO丹羽雄丸くん(同志社大2年)のトライアシスト。自身も2トライと持ち味の快足も如何なく見せたが、それ以上に、サイズに似合わない所謂「えぐいタックル」で何度もデカいNZUメンバーに突き刺さっていた。

 

「デカい相手に低いタックルいって、いい場面もあったが、下にいっても上(上半身)で繋がれちゃってピンチになる場面も多かった。そこはチャンピオンシップへ向けて課題で、ボールを殺しに行くタックルがもっと出来たかな思います。大学の試合では弾かれてしまう場面も多いが、NZUがフィジカルに任せたアタックをしてきたので、いい感じでタックルには入れました」

 

ご本人は、決して満足していないのだが、確かに多くの好タックルの後に相手にボールを繋がれるシーンが何度もあったが、そこはNZ本場仕込みのオフロードの巧みさと組織防御のマターにもなってくる。この大学2年生のタックル自体の質は悪くはない。17分の自陣レッドゾーンでの右サイドを崩してきた相手への一撃や、23分のラッシュアップして相手WTBを仰向けに倒すプレーなど、大きな相手の懐に入り込むような低さとパックの強さが光る。167㎝、73㎏というサイズを考えれば、インターナショナルのステージでコーチから関心を持たれるのは容易ではないが、一見するとハンディキャップと思える〝小ささ〟を武器に出来ていると感じさせた。

 

勿論、いいタックルとスピードの「正当な理由」も持つ。

オンラインの観戦でも、その鍛えあげられたマッシヴさが芸術的な領域の太腿が印象に残った。これが、あの初速から一気にギアをトップに上げる加速力を生み、低く鋭く突き刺さるタックルの源泉だろう。その尋常ではない加速力で、防御の1歩目2歩目が遅れて、結果的には抜き去られている。本人も「下半身、背中の筋肉が大事だと学んで、そこを大事にして鍛えてきた」と自己鍛錬の効果を実感する。

 

スピードに関しては、高校、大学と正確なスプリントタイムを計測していないため、自分自身では分からないというが、50m5秒台クラスの足を持つ。本人は「レベル違い過ぎますよ」と苦笑したが、見た目の印象では筑波の先輩でもある福岡堅賢樹の領域のフィニッシャーだ。

 

大分のスクールで小1から楕円球を追い、父親の母校でもある佐賀工、関東の強豪・筑波大とキャリアを積んできた。初めて挑む〝大会形式の国際舞台〟へは「ここで活躍出来ないともっと上のカテゴリには呼ばれないと思うので、自分のスピードだったり、小さくても戦える自分の強みを見せていきたい」。自分のリミットまで持ち味を発揮する舞台が近づいている。

 

U20ジャパンを率いる大久保直弥HCは、この快足ランナーについて「日本のチェスリン・コルビなれる存在」と評価する。シニア代表を見ても、ようやく怪我からの復調を感じさせるジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)、昨秋のヨーロッパ遠征でも負傷離脱まで攻守にインパクトを残した石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)と同じ系譜の〝コンパクトWTB〟が存在感を見せる中で、その後を継ぐランナーとして注目の存在だ。トレーニングスコッドとして宮崎に呼ばれる武藤航生(横浜E)も含めて、この若いアウトサイドBKたちが、この先どこまでトップチームに食い込んでいけるか。こんな観点からでも、ジョージアでのパフォーマンスが楽しみだ。

 

 

 

 

上記した名前に加えて「若手」という括りで考えれば、シニア代表のスコッドとして初めて宮崎に入った22歳のFB上ノ坊駿介、23歳のWTB植田和磨(ともにコベルコ神戸スティーラーズ)ら才能を発散させるアウトサイドがふつふつと浮上してきている。ここはJRFUおよびエディーの中期的な思惑が上手く実を結ぼうとしている(一部には「若手投資よりもいまのベストを選ぶべき」という不満も聞こえるが…)。当然ながら、この顔ぶれの中から最終的にジャージーを掴む者、掴めない者も出て来るだろうが、彼ら20代前半の才能が、自分の持ち合わせた能力をどこまで磨き上げることが出来るかは、これからの日本ラグビーには欠かせないテーマだ。

 

もう一人、自身を磨き上げる存在としてこの〝山奥〟で話を聞いておきたかったのはPR本山佳龍くん(静岡ブルーレヴズ)。先日のコラムで話を聞いたこともあり、「その後」のご自身の感触を知りたかった。途中出場したNZU最終戦では、最初のスクラムこそ上手く組めなかったが2度目のセットはしっかり相手に重圧を掛けてPKを獲得するなど、すこし〝お兄さん〟の、サイズのある相手ともしっかりと組み合えていた。8分のラインアウトからのモールでもドライブの軸となりトライを生み出すと、33分の敵陣22mライン手前での空中戦ではモールでいいエッジを作り出してゴール前まで25m近くを押し込んだ。

 

この1年は、高校日本代表合宿での怪我から、前半の半年はリハビリ、後半はようやく実戦復帰してゲーム勘を掴みつつあると感じたが、本人は「フィジカル面でもスクラムでも通用する場面もあったが、ボールキャリーで高くいってしまうと持ち上げられたり、そこからボールを奪われたりしたのを肌身で感じた。そこを改善していきたい」と実戦での感触を話している。内田くんも同じだが、ジョージアで結果を残すことも十分に重要な一方で、それ以上にこの経験を自身の成長の糧として、さらにシニア代表でも活躍出来るプレーヤーとしてU20カテゴリーから先へ進むことが最も重要だ。

 

 

 

 

 

NZU戦のパフォーマンスで、この2人に加えて印象に残ったのは、CTB福田恒秀道(帝京大1年)、SO丹羽くん、そしてこのツアーから主将を担うNo8坪根章晃くん(帝京大3年)あたりだろう。西野誠一朗山崎大雅という慶應義塾LOコンビのワークレートも、流行りのオフザボールでのエフォートとしては興味を惹くものだった。

 

福田くんに関しては、父・恒輝さんが早稲田大SO時代に取材してきた経緯もある。当時の、この伝統チームの中では、あまり型に嵌らない発想とプレーが印象的な司令塔だった。そんな個性に惹かれて、記事にする以上によく話をした選手だった。その型に嵌らなさもあり、就職した社会人の強豪は早々にチームを離れてしまったが、ポジションこそ1つズレるものの息子は父にも通じるスキルフルなミッドフィールダーとして高校、大学、そしてユース代表として存在感を発揮している。

 

サイズは、今のインターナショナルでは決して恵まれないが、NZU戦では意図的にSOの位置でボールを持つアタックが多い中で、パスを受けながら前に出れるプレーぶりが印象に残った。本人は「父からは、タッチフットとかでの抜き合いなどで学びはあります。相手と正対しながら前に出るのは、ジャパンでの攻め方として、相手の内肩(ウイークショルダー)にしっかり仕掛けるのは教えてもらってきた」と振り返ったが、この福田くんの動きが、アタックラインを引っ張り上げて、日本らしい攻撃的なラグビーを作り出していた。こういうボールもラインもドライブさせられるCTBが居ることで、先に触れた内田くんら快足アウトサイドがスピードを発揮出来るラグビーが見せられれば、27日に開幕する大会も面白い。

 

丹羽くんは桐蔭学園時代にゲームメーカーとして注目した存在だったが、西の伝統校に進学したこともあり、なかなか大学でのプレーを観られなかった。オンラインながらNZU戦で久しぶりにプレーを観たが、フラットパスを使いながらラインを動かし、自ら相手防御のギャップに仕掛ける目敏さは高校時代から変わらない。話を聞くと、「紺グレ」のチームではポジション争いでなかなか苦戦を強いられているようだが、まだ2回生や。このハミルトンでの試合も、いい仕掛けをしながらコンタクト後にボールを奪われるなどのミスもあったが、ここはこの先のゲーム勘と国際経験の上乗せで十分補える部分。U20で国際ステージでの経験値を上げ、〝何か〟を掴んで、西の古豪、そして若手が浮上しつつあるシニア代表での10番争いへも進んでいってほしい才能だ。

 

坪根主将についても、開始早々からストロングキャリーを見せて、NZUレベルのサイズとフィジカルには十分戦えることを証明した。生涯初のスキッパーに、本人は「しゃべるタイプじゃないので、背中で、プレーで見せてくれと言われています」と控え目に語ったが、饒舌なタイプではない一方で、南半球からの映像からはプレーで引っ張るタイプのリーダーとしての仕事は十分果たせていると感じた。「NZ遠征では、体は大きいけれど1個1個のスキルの部分では日本の低さであったりスピードは効くと思った。一人ひとりがそこをしっかり出来れば、チームは更によくなる」という。格上ばかりのジョージアでの〝本番〟で、どこまで前へとボールを運び、チームを引っ張れるか。将来へ向けた試金石になる。

 

NZU戦では個々の選手がそのポテンシャルを輝かせた部分があった一方で、地面のボールへの絡み方、ボールが止まった時の反応の速さとモーション・スキルの的確さは、流石に〝オープンサイドの産地〟に一日の長があった。それがU20ジャパンのポゼッションを低下させることに繋がった。さらに、密集サイド、所謂チャンネル0から1にかけてのエリアを簡単に突破されて、一気にインゴールまで持っていかれる失点が目についた。

 

ここは、とあるチーム関係者の指摘で納得したが、今の国内大学レベルのラグビーでは、インターナショナルレベルでは当たり前の密集サイドでのねちっこいフィジカルな攻防がそこまで多くないという傾向がある。いいテンポ、流れでボールが出れば大きくボールを動かす選択肢も多いため、NZUが仕掛けてきたエリアでの防御に若干の淡白さがあったのだという理屈だ。

 

このチャンネル0-1での防御破綻は坪根主将も「ラックサイドを崩されたのが多かった。FWで負けているのは事実です。そこは鍛えていきたい」と指摘する。ジョージアでの本番では、対戦相手はNZU戦のビデオやU20ジャパンのサイズを観れば、明らかにこのチャンネルに仕掛けてくる。NZU戦であからさまになった〝宿題〟を、本番キックオフまでにどこまで修正して臨めるかも鍵を握ることになる。

 

そのジョージアでの戦いを考えると、坪根主将が初戦のNZに関しては、かなり分析も進み、ゲームプランも選手の中に落とされていると語っている。いきなりプール最強の相手との対決にはなるが、2015年W杯の南アフリカ戦、7人制の16年リオ五輪NZ戦に倣って勝負どころに置いていい。最初に当たる最強の相手こそ、本気で倒しに行くべきターゲットだろう。例に挙げた「歴史的金星」の時は、周到過ぎるほどに技術面、戦術面、メンタル面で勝つべき正当性まで掴んだ上で臨んだ試合だった。今回も、この1年以上に及ぶU20のキャンペーンの全てを賭けるようなキックオフまでの準備が出来れば、動かないはずの山も動く可能性はある。

 

全ては準備と彼ら自身の決意にかかっている。

 

 

 

昨日の出来事で既に「旬」ではないが、リヨンのおはなしを少々書き残しておこう。

 

曇天の湾岸をぶっ飛ばして東へ。

船橋・栄町の〝怪物〟オペティ・ヘルの移籍会見を覗いてきた。

 

縦・横・奥行きと相変わらず分厚い「立方体」に、柔和な笑顔での登壇が、なんとなくオペティの移籍への本音を物語る。

 

大きな理由はスクラム。

「フランスのレベルの高いリーグで成長を目指したい」と更なる進化を求めての決断だという。数年前から日本以外のさらにハイレベルなリーグでの挑戦は頭の隅にはあったという。チームやエージェント、さらに仲間からの誘いを認めているが、「まだその当時は、僕自身にそこまでの実力はなかった」と説明する。この発言からも判るのは、スピアーズとジャパンでの進化があったからこそ、結果的にオペティを海外へと後押しすることになったということだ。

 

そのジャパンでのプレーが〝ショーケース〟となり、海外強豪クラブの目に留まることになったのも間違いない。本人、笑顔で詳細は語らなかったが、複数海外クラブからのオファーがあったことは認めている。その中で、繰り返しになるが、スクラム強化には最適という判断で、フランスが誇るグルメタウンでのプレーを選んだ。

 

受け入れ先のクラブにも少々触れておこう。

 

スピアーズの公式リリースでは「LOU」。通称、略称だが、先に書いたように所謂リヨンだ。正式名称は「リヨン・オランピック・ウニベルシテル」。創部は1896年と、パリに次ぐ大都市のクラブに相応しいが、実力的には歴史のほとんが〝中堅〟という印象だ。この日の会見でも、スピアーズ関係者と「オタク(クボタ)が強くなり始める前の位置づけくらいかな」なんて雑談をしていた。現時点でのフランスTOP14でも、14チーム中11位という実力だ。

 

この順位を考えると、オペティにとってポジティブ要素は「プレー時間」だ。トゥール―ザンを退団した齋藤直人は、世界最高峰の#9と同じチームでプレーすることで、自身の成長を目指したが、プレータイムという観点では苦戦を強いられた。「学び」か「プレー時間」か――。この議論に正解はないが、自分が何を求めて強豪クラブに挑むかによってその価値は変わるものだ。

 

個人的には、より高いステージでプレーするなら、いかに長くピッチに立ってプレー出来るかは、選手個々が得るものを考えると相当価値のあるものだと感じている。もしオペティが、他の名立たる強豪クラブ以上に、リーグ11位のチームでプレータイムを稼げるとしたら、その恩恵はかなり大きなものになるだろう。まぁ、その成長が、オペティをさらなるフランスの強豪や、プレミアシップなどでの挑戦へと後押しするなら、日本代表とスピアーズにとっては大きな損失になるかも知れない。それでも、数シーズンとはいえ日本でインパクトを残した選手が、さらにステップを上がって行けるとしたら、その選択肢を尊重するべきだろう。個人としては、信条的にも心情的にも「個」を優先するべきだという価値観だ。

 

リヨンのハナシに戻るが、23年RWCでは、9月28日にトゥールーズで日本vsサモアの一夜明けで、そこそこ強行軍でこの町を訪れ29日のNZvsイタリアを観戦した。残念ながら試合会場のPO=パルク・オランピックはサッカーの本拠地だが、完成10年あまりの6万級スタジアムは壮麗な建造物ではあった。ただし記憶に焼き付くのは、試合後の〝事件〟だ。

 

主催者側からは、遅い時間帯に中心地までのメディア用シャトルバスがあるというインフォメーションがあったが、予定の時間を過ぎても一向にバスはやってこない。イタリアンのベテランジャーナリストも同じ〝罠〟にかかっていたが、そもそもフランス人の話を100%信じるのは間違いなのだ。だがそれでも、ご丁寧にメディアインフォメーションにも書かれていたことだ。そんな状況の中で、日付も変わった時間帯になり、既にスタジアム内外もゲームの後始末、清掃のするスタッフ程度しか残っていな状況になった時に、数名の帰宅しようとしたWR(ワールドラグビー)、組織委スタッフと遭遇。状況を説明すると、諸々連絡をとった挙句に、「どうやらシャトルはないようだ」と説明するのと同時に、「申し訳ないので、俺たちの車でホテルまで送るよ」と思わぬ提案をもらった。

 

おそらくホスト側としても、メディアに「噓の説明をされた」と書き立てられるのは得策ではないという思惑もあったのだろう。深夜のリヨンをかなり懇切丁寧に降りたい場所まで送り届けてくれた。実はこのリオンのNZ戦翌日はアルゼンチンの〝事前偵察〟も兼ねてvsチリを取材する魂胆だったため、深夜のリヨン駅で時間を潰して朝イチの列車でナントに向かう計画だった。そのため、ホテルではなくリヨン駅まで送ってもらい、始発を待ったのが事の顛末ではあった。

 

かなり脇道に逸れてしまったが、スタジアムのハナシに戻ろう。

ラグビーは、やや小ぶりなスタッド(ドゥ)ジェルランが本拠地ではあるが、それでもキャパシティは4万超となかなかのもの。観戦し易さでは、むしろこちらの器のほうがベターかも知れない。願わくは、オペティがリヨン人の不確かな情報で深夜~未明に路頭に迷うことがなければいいのだが…。

 

そして、ファンは気になるオペティの移籍の詳細だが、結論から書くと完全移籍になる。府中のワーナー、原田のような、いわゆるレンタルで日本国内での契約を継続しながらの挑戦ではないのだ。代理人マターということもあり、本人はあまり詳細には触れなかったが、2年契約というよりはむしろ1プラス1、つまり2シーズン目はオプションないし要相談という内容だという。

 

勿論、本人は「戻って来てスピアーズでプレーしたい気持ちはある」と話しているが、その気持ちに偽りがない一方で、彼が望むような活躍が出来れば〝復帰〟の可能性は遠ざかるという皮肉な現実もあるだろう。そして「代表」については、今回メンバーから外れているように、当面はリヨンでの順応に注力することは、エディーとも相談済みだという。気掛かりは、ジャパンがオペティもプレーするヨーロッパへ出向く秋のテストウィンドウに参加が出来るのか。そして、育ったオーストラリアが舞台となる1年後に、桜のジャージーを着るのか。全ては、新天地でプレーを始めてから見えてくるだろう。

 

 

 

今季のリーグワンは、長く日本ラグビーを支え、盛り上げてきた男たち、個人的には様々な形で長い付き合いになった選手たちが、数多くジャージーを脱いだ。

 

その中で、コラムに書いたのは、この男だった。

 

 

 

 

コラムの中でも触れたが、あの一言への〝回答〟をしなければならないという気持ちもあった。だがそれ以上に、完璧な聖人君主でも極悪人でもない、独特の人間臭さは書き残す価値は十分あると判断した。勿論、今季の引退者の多くは同様に人間臭い男ばかりでもあるが。

 

垣永真之介というラグビープレーヤーの全てを書き尽くしたというものでは到底ないが、東京にやって来てから見つめてきた足跡はなんとか認めた。多くの選手同様に、その活躍を新聞記者として、フリーランスライターとして充分には文章に出来なかった申し訳なさは痛切に感じる。そんな罪滅ぼしとまではいかないが、最後の〝一行〟は活字で残しておきたかったし、残すべき存在だっただろう。

 

パッションを持ちながら、ヘンにウエットにならず、どこまで真剣でどこまで受け狙いか――というコメントが次々と口を突く。だが、本気か冗談かは問わず、その言葉には、偽りのないストレートな思いが籠る。自分の想ったこと、感じたことを表現する――それは言葉でもだが、コラムでも紹介した行動=事業でも、特有の感受性を感じさせる。そんな話ぶりも、カッキーの大きな魅力かも知れない。

 

同時に、エリート畑を突き進んできた経歴の中でも、ファン、選手への眼差しは決して下向きにならない。ここは根っからの人間性も大きいが、ラグビー選手としてのキャリアの後半の苦節も影響しているのかも知れない。コラムでも紹介した立川ハルさんとのラジオの下りは、そのおかげでファンの声をダイレクトに聞けたこと、そんな声に有難みを感じたカッキーの感受性がそうさせているのだろう。

 

まぁ向上はほどほどに、概ねはコラムに書き残したので、拙文ご一読を。