明治大を率いる高野彬夫監督についてのコラムを挙げた。

 

先日、長野・菅平に上がったのも、大きな目的の一つが彼とのインタビューだった。本来なら、3月4日に行われた就任会見前後というタイミングでのコラムも候補に挙がったが、この時季、退任前の前監督、神鳥裕之の明治大での〝全仕事〟を書き残したかったのと、野上太尊くんの〝選択〟を、釜石というチームのことも踏まえて書きたかったので、新監督には会見の場で直接こう相談していた。

 

 

 

 

「本来、就任のタイミングでのインタビューが正攻法だが、明治案件が続くこともあるので、是非、新チーム始動後のどこかのタイミングで話を聞かせてほしい」

 

そんな勝手な都合も快諾していただき、ようやく実現したのが8月末の菅平だった。

 

明治大にやって来て頭角を表す頃から、記事にする以外にも常にやり取りしてきた存在だった。縦に強い往年のメイジのCTBというイメージとはすこし異なるタイプだったが、スキルフルなCTBとしての印象が常にあった。コラムでも書いたように、厳しい時代のメイジでは、どうしても限られた才能、経験値の高い選手に依存度が高まる時代。常に奮闘する姿も印象に残った。心の中では、「他の(強豪)チームに進んでいたら、もっと持ち味を出せていたかも」という思いもあった。そんないぶし銀CTB、そしてリーダーとして何度も話を聞いた。

 

 

 

 

高野主将が卒業した辺りから、幸いなことに、長らく苦悩を続けたチームもようやく若手OBを中心に〝正常化〟を進め、藤田剛HC時代に対抗戦2位、吉田義人監督で同1位と息を吹き返してきた。時間の経過によりメイジ回避の傾向が弱まり、強豪高からの選手も戻って来たことも大きかったが、そこには各地方のセレクターたちの貢献も大きかった。〝内紛〟の最中も、OB達は各地方で根を張り、高校、ラグビー関係者とのパイプを作り、有望選手を発掘して、声を掛け続けた。その努力が、1年前なら早稲田などのライバル校を選んでいた選手が、シーズン毎に八幡山に集まるようになっていた。

 

本格的に大学、OB会、双方が選出した監督が一体感を持って強化を推進出来るようになったのは、2013年に就任した丹羽雅彦監督の時代から。北海道から赴任したこともあり、八幡山の合宿所に寝泊まりしながら、清水建設の社員としての「常識」も部内、寮内に落とし込んだ。その丹羽監督とOB会が、トップリーグの経験や知識を持つ田中澄憲を後任に選び、その後はコラムで紹介した通り、神鳥監督と経て高野新監督へバトンが回って来た。

 

上記した全ての指導者が、現役時代、引退後と記者として、個人的にと様々な形で交流を続けてきた人物ばかりだが、高野新監督に期待するのは、あの現役時代の苦しいチーム事情を経てきた初めての監督として、現役時代とはまた違ったいい時代を築いてほしいこと。苦労があったからこそチームに役立てられる引き出しもあるだろう。

 

そして同時に、本人も語っているように、フラン・ルディケという名将の下から〝巣立って〟どんな学生チームを創り上げるのか。そんな期待も密かに抱きながら開幕を待っている。もちろん、帝京、早稲田らライバルをみれば、前年度王者の肩書きに何の〝免罪符〟もないのは明らかだ。だからこそ、昨季という土台の上に、学生たちと共に何を上乗せしていけるのかがキーになる。プレッシャーを掛ける訳ではないが、素材は十分に揃っている。あとは、どう同じベクトルで彼らが前へ進んでいけるかだ。

 

監督はじめチームは「連覇」を掲げる中、個人的には先ずは高野監督というフレーバーを盛り込みながら、どこまでスタイルを作り、「3強プラス1」と勝手に読んでいる大学シーズンで、ライバルたちと四つに組み合えるか。あくまでもチームは学生たちの〝もの〟ではあるが、実はHC時代からそのフレーバーをチームに落とし込んでいる現実を考えれば、すでに昨季も高野くんが神鳥監督との共闘でチームのスタイルを形作ってきたのだが、自分自身が全てを背負う初めてのシーズンに、「高野メイジ」のラグビーを見せることから新たなストーリーが始まる。

 

 

 

 

土曜の2試合について少々…と思ったら長めになったので、FBではなくコチラで書いておこう。

 

なんだか、世間ではケープ試合については「低空飛行」が話題のようだが、今季ここまでの最高レベルのゲームへの関心を削いでしまい兼ねないのが非常に残念。一般論では、確かにあの低さは「どうよ」レベルだが、この国のラグビーにとって、大型旅客機での〝演出〟は、かの1995大会へのオマージュとしても特別なもの。そして、ビジター側の特権事項「ハカ」が醸し出す空気感を打ち消してキックオフを迎えるという〝対抗策〟としても意味がある。パイロットが若干やっちまったレベルでいい話しに過ぎない。

 

で、そんな「最高レベル」だが、もしかしたら、ここ1週間久しぶりに学生さんばかりの試合を観過ぎていた影響もあるかも知れないが、そりゃ世界ランク1位と2位じゃ、ベストゲームでも当たり前かも知れない。

 

観戦(視聴)は、なんだか変則に。キックオフ直前に見事に寝落ちして、目覚めた時には、すでに番組自体が終わろうとしていた。つまり、ほぼほぼ試合時間に落ちていた。

なんとも遣る瀬無い、若干腹立たしい思いも感じながら、長野の旅で撮り貯めていた動画など観ながら大猫と小型カンガルーのキックオフを待ち、観戦。

で、翌朝に、ケープのゲームを観戦した。

 

唯一の救いがあったのは、先に世界ランク7位vs8位を観戦出来たこと。というのも、同じく1位vs2位を観終わってから、ある〝驚き〟を感じていた。それを確かめるために、早送りながら再び南米のゲームを見直した。

 

こちらも結論から書けば、ゲームの見応え感が、この世界に名立たる4チームの戦いでここまで違うのかと感じる程の大きな差があったと、個人的には感じた2試合だった。

 

つまり結果的に〝第1試合〟としてプーマスvsワラビーズを観た時点では、そんな格差を感じなかったが〝第2試合〟観戦後に、ふと「すこしレベチじゃね?」という感覚に襲われ、それを確かめるために再び南米のゲームを確認したのだ。

 

まぁ、個々の技術的にはそこまで差はなかっただろうが、ゲームを動かすダイナミズム、一つ一つの接点の激しさ、南アの試合がヘビー級なら南米はすこし大袈裟かも知れないがバンタム級という重量感の差がありながら、スピードは同等、否むしろよりスピード感に満ちた試合をヘビー級の2チームが演じていた。

 

感覚的なハナシであるので個人差があるかも知れないが、「トップチーム」という称号があってもいいワラビーズ、プーマスではあるが、このレベルのチームでも、若干調子を落として7位、8位に後退すると、1位、2位とは、こんな格差が出来てしまうのか。そんな思いを感じつつ、2試合+ダイジェストを視聴した。これをキックオフ時間通りに南米のゲームを後に観ていたとしたら、かなり落胆の中での観戦になっていただろう。

 

で、書いておくべきは、もちろんボカvsオールブラックス。第1テストの結果を見ても注目の再戦だったが、キックオフ直後の先制パンチに、1位を明け渡した王者の気迫を感じさせられた。いや、気迫より気合が適切か。

 

ゴール前、復帰してきたシアの、あのアングルとスピードのキャリーからのラックが全てだったが、そこをフィニッシュまで持ち込んだのは、かの町田の住民ジェシー。キックオフから2分に満たない一撃だったが、相手の頭の皮を毟り獲るような激しさと決意を感じる数秒間だった。

 

合理的なハナシをすれば、ラインアウトの出来が明暗を分けたが、ゲーム展開を見ると、そんな数値は度外視して見応えのある80分だった。おそらく、いつものように、ボカはそこまでラックスピードに拘らない、重量感のあるアタックを仕掛けてきた。数値もそれを物語る。

 

【ラックスピード】

RSA                NZL

53%     0-3sec   68%

25%     3-6sec   28%

22%     6-- sec    4%

 

だが、このスタッツには「但し」が必要だろう。

ファーストトライも然りだが、この日のボカは、明らかに自分たちのモメンタムというものを、明確に意識してゲームを進めてきた。もちろん、ここには一人一人の接点の強さがベースにあるわけだが、目に見えないハイスピードラグビーではなくても、自分たちのテンポをしっかり創り出し、流を殺さない攻撃でフェーズを重ね、黒いジャージーに強烈なボディーブローを打ち込んできた。

 

このチームの信条は「力任せ」かも知れないが、この日のボカは力任せだけじゃない、攻撃の流れを殺さないアタックでインパクトを残した。

 

敗者も良かった。元神戸の住人デイブさんにとっては就任初黒星となったが、黒星の中ではベストの負けっぷりと感じた。上記したラックスピードでも判るように、敗者はスピードで、怒れるパワー軍団に立ち向かい、7点差まで迫った。

 

兎に角、好機を作れば、スピード感を持って、大きくボールを動かし、ゴールラインを狙う。このカードでは尚更なのだろうが、スピードなくして勝利が無いような展開勝負。80分間の中で、数回は「リッチーがいたら、どうだったか」と感じながらの観戦だった。

 

ココも、少々数字を紹介。

 

RSA                                        NZL

93               pass                   248

103             carry              154

287            run m                 494

1:2.7          Kick raito         1:10.8

 

 

兎に角、黒いジャージーが80分間走りまくっているという数値だが、それでもボカのゲームになった。最後に敗者が追い上げたが、ゲームの印象は2トライ差ほどはあったか。

キックレートも紹介しておいたが、この数字も両チームがどんなラグビーを演じたかを如実に物語る。

 

この試合、どうやらPOMは元府中の住民チェスリンだったようだが、何かご褒美をあげるなら、町田の住民ジェシーと熊谷の住民ダミアンと感じた。ジェシーの先制パンチは置いておいても、ブレークダウンでの相手のスイープ、クリンアウト、そしてタックルと、あまりボールを持たないプレーで、この2人のワークはかなり効いていたと感じた。

 

勿論、ラインアウトの勝利、そしてモメンタムを生むアタックをみれば、このチームの「いつも通り」FWの仕事を称えるべきだろが、ゲームを視聴する中では、随所にカメラアングルとプレーの性質から見えるか見えないかという画像で12番と13番を何度も垣間見えた。こういう〝働くミッドフィールーダー〟を観て、欲しがるのは高望みだろうか。

 

取り留めなく、土曜の試合を書き綴ったが、このケープでの80分を超えるゲームを、9月からのテストで拝みたいものだ。その1試合が、あわよくば桜のジャージーのものであれば最高なのだが。

 

ケープの試合ばかりとなったが、アルゼンチン・フフイの「8月23日スタジアム」での競り合いはケープと比べると筆、否タイピングが進まないので、すこしだけ。このカード、不思議なまでに競り合う展開になるのでが、往年の勢いはまだまだないのが残念。その中で、まだまだ若手のワラビーズ#14 マックスが、ここまでの〝走り屋〟だけじゃないタックルからのジャッカル、ハイボールと、ラン以外のプレーで急速に進化しているのが印象的だった。

 

ゲーム以外の話しになるが、ホストチームの国歌斉唱はホームならではの「長いバージョン」を〝フォルクローレ〟調で奏でたのは新鮮だった。浅はかな知識しかないが、おそらくこの北部の都市が、かなり原住民系の人たちも多いのだろうが、いつものオペラ調からのギャップが素晴らしいし、こんなアレンジも聴き応えがある。

 

 

この人のジャッカル3発がインパクトを残した大敗だったⒸJRFU

 

 

敵地タウンズヴィルでのワラビーズ戦コラムをアップした。

皆さん、この大敗をどう解釈しただろうか?

 

昨秋、そして1週間前の東大阪の結果もあり、個人的には期待感と不安感を抱きながらの観戦だったが、結果はご存知の通り。思い切り横っ面をビンタされたようなゲームに終わった。

 

コラムでも挙げた通り、敗因はディシプリン、そしてエクスキューションと感じさせられたゲーム。ようやく自分たちのスタイルを頭と体に染み込ませて、同じ絵を見てゲームを進められるようになったと感じた矢先に、まだまだ一貫性がないことを見せつけられた。ワールドカップでの8強突破には、さらなる鍛練が必要だと世界8番手から教えられた。

 

 

 

 

ディシプリンの前提にあるのはFW戦、セットピースもかなりヤラレていたが、とりわけブレークダウンで受けたプレッシャーが響いた。その象徴的な存在として、コラムでは勝者の#7 にスポットを当てたが、ゴールデンジャージーの7の系譜にしっかりと名を刻むであろう可能性を発散させていた。これぞワラビーズの7番というプレーぶりだった。

 

 

総じてこんな防御に苛まれた80分。ティア1ク

ラスの〝本気〟との格差はまだまだ ⒸJRFU

 

 

で、敗者の方だが、多くの海外出身勢の力も借りてフィジカル面でもティア1クラスとやり合えるようになったことが、今回のようなカードが組め、ネイションズチャンピオンシップの仲間入りが出来た大きな要因である一方で、向こうが本気でフィジカルで重圧をかけ勝負してくれば、こういう後半ワンサイドという〝決壊〟もまだまだあるのだと思い知らされた。

 

このエリアを、残る1年余りで飛躍的に伸ばしていくことは、なかなか難しいのではないか――。やはりルアン・ボタ、タイラー・ポールあたりのフィジカルが必要かななどという思いも過りながらの観戦となった。ジャパンの場合、これは宿命のようなものでもあるが、サイズ(フィジカル)とスピードという、乱暴に言えば相反する斜面を持つ稜線を、どう歩んで行くかという議論が明らかに、否半永久的に存在する。

 

タウンズヴィルでの完敗をみれば、後者のスピードという斜面に体重を掛けていたぶん、相手FWの猛烈なフックに悶絶したというゲーム。そこで沸々と胸中に膨らんだのが「リンクプレーヤー」の必要性だった。勿論、そこにはワラビーズ#7 の活躍があったからではあるが、同時に、この待望論は歴代ジャパンでも強く感じさせられたギロンでもあった。

 

遡れば、JK時代の佐々木隆道も、ワールドカップに選出され、それこそワラビーズ戦でゲーム主将まで務めたが、当時の「セカンドチーム戦略」が背景にあった。簡単に書けば「主力」という範疇から外された布陣でのスキッパーだったのだ。その後も、吉田光治朗、堀江恭佑、安藤泰洋、金正奎、布巻峻介、ブラックラムズで現役を続けえる松橋周平も含めて多くの小兵オープンサイド、リンクプレーヤーが、挑んでは散る命運に翻弄され続けてきた。

 

 

目線も姿勢もしっかり次のジャッカルシチ

ュエーションをイメージする#7  ⒸJRFU

 

 

前任のジェイミー時代は、ボールキャリーに長けたサイズのある「ランナー」タイプが多用されていたのは記憶に新しいが、当時も練習、ゲームを観ながら、このイケイケの大型ランナーを存分に走らせるためにも、接点でボールをリサイクルする潤滑油のような選手がいたほうがいいのではないかと何度も感じさせた。

 

エディーの復帰に伴い、従来以上にスピードに舵を切ろうという挑戦の中で、比較的スピード、運動量が強みの選手も増えてはきたので、個人的な「待望論」は沈静化していたが、この試合でのワラビーズのオープンサイドのパフォ―マンスを見せつけられると、ジャパンのどうにも不安定な遂行力や、他を圧倒するほどの超速になり切れない状況を打破するには、やはりリンクプレーヤーは必要なのかと感じてならない。

 

とはいえ、大型ランナーを揃えるのか、リンクプレーヤーを1人入れるのかという議論に正解はないのも事実だ。戦術やチームスタイル、すこし情緒的にいえば、世界に向けてどんなラグビーを見せたいのかで、必要な選手のプライオリティーは決まっていく。そして、その仕事と権限はHCに託されているのだ。

 

コラムでも触れたが、キックオフまで14か月という段階で、メンバー編成に大ナタを振るうのは現実的とはいえない。ここまでの蓄積も踏まえて、さらに組織として固めて行こうとしている段階だ。素材を育てる段階でもない。現実的には、新たなオープンサイドが招集される可能性はほとんどないだろう。その一方で、現有メンバーに、即戦力として使える限られた人数の実績組を加えるだけで、目指す高みまで勝ち上がれるのか。現状のティア1勢が本気で勝負してきたフィジカル勝負に太刀打ち、凌駕するのはかなり苦しく、結果反則を増やし、エクスキューションもそこまで高いとは評価出来ないジャパンを、一貫性のあるチームへと脱皮させるのに14か月が十分な時間なのかという議論が必要になる。まぁ、いくらギロンしても、最終的にはエディーのセレクションにかかっている訳だが。

 

 

 

エディーという指揮官を見くびってはいけない――。そんな評価をするとしたら、この残された時間で我々も驚くような〝巻き返し〟をしてくれるのかも知れない。だが、すこし感じさせる〝手詰まり感〟は、本当のものなら何か「打つ手」を考える必要がある。

 

 

 

第2ラウンド決戦前日となりました。

既に両チーム顔ぶれも出揃い、皆さまどんな想像力で土曜分を思い描いているでしょうか?

 

〈一応、ご参考までに第1Rもの〉

 

 

桜はスターターの総キャップ253、1人平均16.9と第1ラウンドより更に〝若い〟布陣で、平均25.6キャップ(総キャップ384)のホストに挑む80分。約9キャップという双方の経験値差を考えると、第1ラウンドと同等か。キックオフ前々日午前中のエディーHC、ワーナーCptのオンライン会見を少々紹介しておこう。

 

メンバーリストを見て、2つの質問をした。

 

①    CTBとしての上ノ坊駿介の評価

②    3試合ぶりのリザーブSHの起用

③    3試合会場のピッチコンディション

 

エディーが上ノ坊について触れる時に何度か「CTB」という単語を使うのがすこし気になっていたが、交代投入どころか早くもスターターで使ってきた。①の回答として指揮官はこんな評価を語っている。

 

「複数のプレーが出来て、柔軟な選手だと見ています。しっかりしたスキルセットも持ち合わせているし、プレーする意欲も強い。チーム内では、タウンズヴィルのゲームは非常に速い展開になると考えているので、上ノ坊には適していると考えて決めたんです」

 

それが「ない」とは言はないが、上ノ坊がインサイドとしてどこまでスピードでインパクトを出せるのかは正直定かではない。天理大時代のSO、そして神戸でのFBでのプレーブルを見ても、ミッドフィールダーとしても、おそらくそう悪くはないだろうが、実際にそこまでミッドエリアで彼のランやラインを動かすプレーぶり、エディーの言う「速さ」を見たことがないからだ。まぁ確かなのは、フィジカリティー、縦への強さを買ってここまでスタートで起用してきたサミソニとの相対的な評価として、速い展開に適しているという解釈はあるのだろう。

 

 

 

 

上ノ坊の場合〝速さ〟もさることながら、神戸での#15でも頻繁に見せたノールック、トリッキーなパス、オフロード…。このスキルで、もしゴールドジャージーの防御網を崩すシーンが幾度か創り出せれば、ミッドフィールダーとしての株もそこそこ跳ね上がるだろう。CTBの顔ぶれを見ると廣瀬雄也の不在は惜しまれるが、以前にも触れたようにまだまだ〝ディランの相棒〟探しは続く状態の中で、1つ選択肢が増えることになるかも知れない。

 

同時に、もし上ノ坊にCTBとしての可能性が出てくれば、従来は#10とアウトサイドBKをベースに回していた複数ポジションでの選手兼業に、SO-CTB-FB(WTB)と更に幅が広がることになる。伊藤龍之介はSOプロパーだとしても、矢崎由高をBKスリー中心(意表を突いてのSOコミ)、そして上ノ坊をCTB兼アウトサイド+SOという柔軟なマルチポジション編成を組める。勿論、この若手にFBベースで#10にも上がれる松永拓朗、サム・グリーンも、この〝マルチポジションサークル〟に加わることになる。

 

②については、指揮官は素直にこう説明している。

 

「上ノ坊と同じ理由で、速い展開になるということがある。齋藤については十分手応えを感じていますが、80分フルの試合を2試合して、尚且つ長いフライトもあった。その負担も顧慮しての判断で、それと同時に上村も今回非常にいい練習をしていた」

 

このゲームこそ、齋藤直人がフル稼働する展開になってほしいと願いつつ、ここまでの〝巡り合わせ〟も踏まえて、SH2人体制もやむを得まい。メンバリングで、個人的に感じたのは、かなり調子のいい植田和磨をベンチに下げる必要はないのではないかという疑問。21歳の司令塔との相性も抜群のアウトサイドだ。復帰2戦目の矢崎由高、この試合で復帰の木田晴斗のいづれかキレている方と植田くんのスタート、もしくはアカクロ4年生を終盤の〝超フレッシュレッグ〟として使ったほうが面白そうだ。

 

①②に対する説明も相まって③は更に興味深いものになったが、エディーによると芝はそれほど短いわけではないものの、固い地盤というオーストラリアのグラウンドの伝統的な傾向には似ているようだ。

 

このご時世、世界のどこでもグラウンドのピッチの造成は新しい技術で改善、均一化されていると考えてもいいはずだが、実際にはそうでもない。各国のグラウンド状態は、まちまちというのが現実だ。実際にタウンズヴィルのピッチが伝統に則っているため固いのか、偶然そういう作りになったのかは不明だが、そもそも往年のワラビーズが世界を魅了したショートパスを駆使したランニングラグビー自体、この固い地面を生かしたスタイルと言われてきたものだ。エディーは「速い展開になるだろう」と語ったのは、ピッチの固さ以上に、数日前にこのスタジアム(QLDカウンティバンクスタジアム)で行われたNRLブロンコスvsルースターズの12-82というハイスコアのゲームの印象が影響しているようだ。

 

因みに余談ではあるが、会場のカウンティバンクスタジアムだが、古の2003年RWCで日本が3試合を行ったデイリーファーマーズスタジアム(DFS)とは全くの別物。DFSよりも更にダウンタウンに近く(10分かからず)、2020年にオープンした最新鋭ヴェニューだ。

 

エディーの見立て通り、このピッチが速いゲーム展開を生み出すのなら、サクラにとってはNZやUK地域のようなぬかるんだピッチよりは「超速」を生かせる期待は高まるのだが…果たして。ただし、ゲームの肝になるのは東大阪で露呈したサポートの不十分さ、反応の悪さをどこまで修正できるのかだろう。まぁ、その集散、サポートの悪さも、固いピッチがマイナスに働くことは無いだろう。

 

同時に軽視できないのは、対戦相手も酷暑の東大阪で見せたような、プアなハンドリングミスで得点機を潰すようなプレーは大幅に改善される可能性だ。オンライン取材に応じた松永くん情報だと、気候は日本の春程度で「1枚(服を)羽織る程度。ラグビーをやるには最高の状態」という。先週の数多のトライチャンスをぶち壊しにするパスミスが、固いピッチと乾いた空気のおかげで修正されるとしたら、日本の失点はそれなりに高まってしまうリスクも孕んでいる。

 

勿論試合展開次第ではあるが、テストマッチで勝つには、やはり失点を20点以内に抑え込みたい。ジャパンは、あれだけのワラビーズのワンドリングを中心としたミスに助けられても前週35点を許している。失点を振り返れば、勝ったイタリア戦は10点に抑えたが、アイルランド36点、フランス42点と20点台には抑えられていない。反則数もほぼ10点前後と、ワーストではないが、そこから相手にスコアを許すケースも目につく。ここは、不要な反則を減らして、失点のリスクを更に回避することもポイントになる。

 

 

 

 

既にタウンズビルのメンバーも発表されたが、ワラビーズ戦第1ラウンドについてのおさらい。日本代表に託けて、実はマイケルについてという内容だが、この37歳の「いま」と「これから」に注目している。

 

 

 

 

先ずはコラム内でも紹介した〝Tackle per minutes〟つまり1分換算での平均タックル回数0.43が示す通り、いま与えられた立ち位置での仕事は、かなり高いクオリティーで果たしている。折に触れて何度か書いてきたが、この天性のスキッパーについては、第2期エディージャパンという〝時制〟では、やはり「年齢」という敵との戦いにどうしても思いがいってしまう。

 

誰もがこのレジェンドの存在に疑いを持たないのかも知れないが、個人的に思うのは、この齢で世界トップ8突破を目指すチームで戦い続けられるのか、それとも…。昨年ロンドン―ダブリンと直接見て回ったモチベーションの一つも、この男の37歳のパフォーマンスを、ボカ、アイルランドという半端ない相手との戦いで確かめたかったから。生憎、本人の早々の離脱で、十分には見届けられなかったのだが…。

 

で、この夏のテストシリーズでの戦いぶりだ。テスト4試合全て「20番」でプレーした。1試合平均のプレー時間は26.5。ベンチ組では、まぁまぁのプレータイムとも言えるが、もの凄い期待感のある長さでもない。ワラビーズ戦は〝最短〟の20分だった。勿論、per minutesの数値は、この短いプレータイムも後押ししたものだが、その一方で、他のベンチスタート組で、この数値をマークした者もいない。なので、20番としては「いい仕事」をしているという評価でいいだろう。

 

となると、スタートかベンチかという議論も浮上する。ここに正解はないのだが、エディーには迷いはないように思える。どこかで聞いてみよう。スタートから60、70分と消耗しきるまで起用するより、今の限られた時間帯でいい数値を出すことのほうがチームにも本人にもプラスではないか。ここはしかし、相対的な問題でもある。つまりベン、下川というスターター勢の成長と期待感との関係で、マイケルには20分、30分をフルスロットルで活躍してもらうことがベターチョイスということだと解釈する。ちなみに、分換算でのタックル数に触れてきたが、タックルの成功率は9/9、つまり9回入って全て成功というのがワラビーズ戦でのパフォーマンスだった。

 

あと14か月。エディーはシーズン前には「8月にはメンバーの80%を決めたい」と話していたが、13日の〝第2ラウンド〟メンバー会見では「80.5%かな」とかなり順調にメンバーが固まりつつあることを示唆する。そんな状況の中で、多くのファン、関係者はマイケルを不動のメンバーと疑わないかも知れない。数値を見ても、かなりの評価を得ていいものだ。だが、刻々と進む年齢との戦いを踏まえて安泰かは予断を許さない。さらに、先にも書いた通り、セレクションは相対的な戦いでもある。新たな力が台頭すれば、誰かが後退する。それが、20番をつける男であっても何ら不思議はない。

 

では、マイケルが争うBRの顔ぶれはどんな状況か。この夏、ここまでの4テストでBRとしてメンバーリストに書き込まれたのは下記の7人だった。

 

ベン、下川、ジャック、マイケル、ティアナン、エセイ、マキシ

 

ワラビーズ戦では、怪我からマキシが復帰するとジャックがLOへと回っている。このパターンを考えると、No8はマキシが僅かながらファーストチョイスとも読める。他ポジションとの兼ね合いも含めて8番をフィジカリティー優先で考えればマキシ、機動力、サポート力重視ならジャックという塩梅か。ジャックが兼ねるLOも、高さ、重さにフォーカスを置くゲームならワーナー、ハリー、そして〝3番手〟でマイケル(大)の3枚がいる。

 

かなり固定化されつつある印象だが、ここに、この夏はコンディション等で不在のBRもいる。

 

タイラー、ワイサレ、アマト

 

ここらが妥当な顔ぶれだろう。都合10人。ジャック、アマトは2列&3列として、概ねこんなメンバーで、14か月後の登録枠を争うことになる。ここで、37歳がどこまでプレゼンスを見せることが出来るのか。そう容易な争いではないと感じているが、少なくともここまでのテスト4試合でのタックルで評価を得ているというところだろう。

 

コラムでは「3点差」に関連してキャップ数という題材で書いたこともあり、スタッツ関連はすこし控え目にしている。まぁ、書く程顕著なものでもなかったこともあるのだが、それでも興味深い数値もある。

 

        JPN             AUS   

テリトリー   55%   45%

ポゼッション  53%   47%

パス回数    203    153

キャリー回数  135    104

ランメーター  447    276

 

 

2023RWCを前後して、従来はゲームを優位に進める目安と考えられてきたこのような数値があまり勝敗に関係ないという傾向は変わらないのだが、それでもジャパンが攻撃を〝優位に〟進めてきたのは間違いない。優位が括弧付きなのは、これはスコアまで辿り着いたかではなく、あくまでも攻撃時間、ボールを持ってプレーする時間が指し示されただけだからだ。だが、それでも僅か3点ながら勝利に届かなかった。

 

ここも数値で見てみよう。レッドゾーン(22mライン内)侵攻回数と得点率だ。

 

        JPN       AUS

22ML侵攻回数 10回(2.9点)  10回(3.8点)

 

スタッフでも「3点差」通りまさに僅差ではあるが、同じ回数攻め込んでいても、仕留める能力では数値が逆転する。ここを、エディーは会見で「ファンダメンタルなミス」という要因を挙げ、コラムではその主だった現象として「孤立」をその理由として書いている。ここを、どう克服していけるのか。実際には、第2期エディー体制がスタートしてから、このエクスキューションの領域は常に課題であり続けるのだが、初冬まで続くネイションズ選手権などティア1ネイションズに胸を借りながら、仕留める力を上積みしていくしかない。

 

ちなみに、13日の会見でエディーはチームに渡り鳥の映像を見せたことを語っている。先頭の鳥の後に他の鳥たちが続き数千㎞も飛び続ける姿を、ボールキャリアーを他のサポート選手が追走する姿勢にオーバーラップさせてのことだ。

 

組織的な連動による攻撃という観点から見れば、コラムでも触れた後半4分のWTB植田和磨のテスト初トライは、ジャパンの「獲り方」の取り組みを感じさせるプレーだった。連続攻撃の中でNo8マキシファウルアがブレークダウンを作る。実はここはワラビーズが接点に人数を掛けずにライン防御をしっかりと整えてきていた。この日のワラビーズの防御を見ると、前半20分のジャパンのバックドアを使った攻撃への対応力などを見ても、かなり日本のアタックを分析していたと感じられる。ここらが、初陣ではあるがブリスベンで采配を振るったレス・キスHCの手腕かも知れない。

 

そんな相手防御の中で、植田のトライは、ブレークダウンからファーストレシーバーとなったFL下川甲嗣の後方深い位置に伊藤龍之介、植田が位置取りすることで、相手防御がマークしづらい状況からパスをスピーディーに繋いで防御を突破している。コラムで植田のポジショニングに触れたが、すでに伊藤の立ち位置からして相手防御は対応しづらかったはずだ。ブラインドから伊藤、植田が連続して沸き上がるようなランで防御を攪乱してのスコアはエディーのチームらしいものだった。

 

そんなトライの取り方が出来ても、80分間を通した戦いでは3点及ばないというのが、いまのジャパンの実力を物語る。余談にはなるが、この植田も、伊藤のテスト初スコアもファイントライではあったが、この試合でのベストトライはワラビーズが後半開始直後の左展開から5回のオフロードを繋いで奪ったプレー。あのスキルとインプロバイゼーションは、まだまだ桜は及ばない。

 

ポジティブにみれば、あと1トライまで勝利は近づいているという解釈も出来るのだが、得点機だけではなく、簡単にスコアを許すシーンや、接点での孤立など、チームは80分の中でいいパフォーマンスとそうではないプレーを繰り返しているのが現状だ。この良さと悪さのバイオリズムのような波形を、どうフラットなグラフに変えることが出来るかが、この先のテーマでもあるのだろう。