リーグワン(D1)の〝ブレーク〟も有効利用して、真冬の関西へ。楕円関係なしのプチ・ジャーニーは、久しぶりに古都の佇まいを体感するのと、浪速での朝めしがお目当てだ。

 

先ずは「朝めし」から。向かったのは大阪。とはいえ、降り立ったのは利休の生まれた地だ。

 

ここには、何故か〝朝めしの名店〟が揃う。

大阪市内のような、よりどりの店舗はないが、朝8時閉店の庶民天ぷらの名店に、白米が〝ウリ〟の定食屋…。魅力的なメシ屋が並ぶ。

 

木曜。この旅初めての朝は、少々出遅れもあり、計画を変更。いちばんのお目当てだった「ゲコ亭」は、過去の経験では朝9時を回るとどこまで料理が残っているかという不安があった。馴染みでない方に説明しておくと、この界隈の定食屋は、昭和の時代の名残のように、店内に並べられた料理を自由に取って、白米(大概、大中小)、汁物を用意してもらうスタイル。つまり、出来上がった料理が次々に並べられるとはいえ、客が多ければ品切れの恐れもある。食に貪欲なおじさんとしては、入ってはみたがお目当ての料理が食えないのはどうしても回避したい。

 

で、プランBを選択。「ゲコ」より、やや大阪寄りの、ほぼ同類の定食屋「銀シャリen堺」へ。この店、前者ほど名立たる店ではない。浅はかな知識と勝手な先入観では、「ゲコ」のばったもんという認識だったが、今後の知見のためにも、一度訪問するのは悪くないと判断した。

 

 

 

 

店内が見えない引き戸を恐る恐る開けると、まさに町の定食屋規模の広さ。ま、4人テーブル4、5台と座敷という構成(たぶん)。カウンター席であっただろう場所には、料理がズラリと並んでいる。料理の顔ぶれは、なんでもアリ。焼き魚、煮魚、揚げ物、だし巻き、小鉢はひじきに切り干し大根、酢の物…枚挙にいとまがない。

 

この時間、ほとんどのテーブルが埋まっている。かろうじて空いているテーブルに荷物を置いてから、ブリキのお盆を手に料理を物色。ブリ照りとの最終決戦を悩みながら、より繊細な料理のクオリティーを感じられそうだと、カレイの煮つけを選んだ。その他は一汁三膳に則って小皿をピックアップした。一汁といったが、普段は汁物には関心が薄いのだが「みそ汁とあさり汁どちらにぃ?」というお姉の関西弁に、この日は迷わず「あさりで!」で、ラインアップが固まった。

 

メインディッシュ。見た目も煮汁も、関西基準では若干濃いめだが、この料理には、このくらいの濃さが合う。ただし、身の炊きあがり具合、そこまで煮汁に浸食されないかれいの淡白でア甘みのある味わいと、まさに絶品である。カウンター越しの厨房から次々に出て来る料理をちらちら眺めていると、どうやら煮つけも大小サイズがある様子。「小」を選んだことを悔やみつつも、初見の店では、なるべく多めの料理を食することを考えればやむを得ない。小さめの鉢に盛られた肉じゃがも、冷えても十分に味わい深いのも、厨房の腕前を感じさせる。

 

 

 

そして、なんといっても白米の見事さ。口に広がる甘さもさることながら、しっかりと粒が立った噛み応えがいい。既に糖質が敵となるトシではあるが、この店に関しては、全ての料理が米を美味く食わせるための枠役に成り下がる。

 

大満足の堺ブレークファーストを楽しんだ後は、立ち寄り温泉へ。泉質はとにかく、前夜の睡眠不足を解消するために、3時間ほど放心状態となりリフレッシュ出来た。

 

 

 

 

この朝、「en」訪問を決めた時点で、本来の目的だった「ゲコ」は翌朝のお楽しみと決めていたのだが、金曜朝は計画通りに5年ぶり?の再訪。店は、以前の路地に在った古民家風から、はす向かいの大通りに面した新店舗になっていた。この引っ越しは、ロケーションを考えると一見プラスにも感じられる。だが結論から書くと、むしろマイナスとなっている印象で、ややがっかり。一番の変化は店舗の位置ではなく、店内の風景だった。以前なら8時の開店からごった返していたはずが、この日は先客1人のみ。料理も以前の小皿が並んだものではなく、スーパーのようなプラスチック容器が整然と並べられていた。

 

 

 

 

様子を見ていると、朝食なのか昼食なのか、地元民らしき持ち帰りでの客もいる。そうなると、パック詰めのような配膳が効率的なのかも知れない。温め直し用の電子レンジの横にはパックから移し替えられる皿や小鉢もあったが、心情的には厨房で作った料理を皿に載せて出してくれたほうが、はるかに食指が伸びるのだが。このパック詰めは、以前の店舗に厨房があり、新店舗は食事がメーン(厨房もあるにはあったが)という影響もあるのかも知れない。

 

 

 

 

結果、店舗にいた30分あまりで食事をしたのは小生込みで2人のみ。店番のお婆ちゃんが、放心したように物憂げに外の通りを眺めていたが、客足が遠のき店の質も下がったのか、質が先で客足が遠のいたのか…。それでも、前日との味比べで選んだカレイの煮つけは、味付けに関してはそう拙くない。だが、甲乙をつければ、この地での第一候補は「en」を推さざるを得ない。双方、料理は冷えていても(レンチンね!)、炊きあがりのような白米と、しじみの出汁の利いた味噌汁、そしてふっくらとしたカレイの身と、見事な味付けの煮汁とのコンビは鉄板メニューだ。

 

唯一の「ゲコ」での救いは、婆ちゃんの思い遣りだった。料理を選んでから先払いするのだが、何気に婆ちゃんが「コレ、おまけね」と、肉じゃがの小鉢をポンと盆に乗せてくれた。帰りがけにも、お盆を婆ちゃんの所まで運ぶと、「コレ持って行きぃ」と白米の塩にぎりを手渡してくれた。ここ10年、いや20年で一番うまい握り飯だった💖婆ちゃんありがと!

 

 

 

 

そんな一泊二日の大阪南部での滞在だったが、やや元気を無くした「ゲコ」以上にショックだったのは、以前の訪問で新たなオキニのラインアップに加わった〝人知れぬ名店〟が店をたたんでしまったこと。「刀屋」というこの店は、SNSでもすこし書き残していた店だったが、どうやら一月中に閉店となったようだった。

 

SNSでも書いたが、一見も二見も何の特別感もない町の食堂といった佇まいだが、出汁をしっかりと利かせた味噌汁に、只ならぬものを感じさせた店だった。降ろされたシャッターに貼られたお知らせから、3週間前まで店は開いていたことが分かる。そこそこのお歳のご夫婦らしき2人で営んでいたので、店をたたむ潮時と判断したのだ。健康や経営上、畳まざるを得なかったのではなかったのが、わずかばかりの朗報だった。

 

失うものあれば、得るものもあり。「en」と同時に、ささやかな発見もあった。夕闇に包まれつつある時間帯に、その晩一宿の恩を供してくれた知人へ〝貢物〟をそうしようかと考えたが、誤算だったのは堺東駅に隣接する某有名百貨店が閉店していたのだ。ここで菓子折りでも買おうとイージーに算段していたが、界隈の菓子店なども、結構早めに店を閉めていることに気付いた。

 

そもそも飲み屋街はバラエティーに富んだ町だが、あまり気の利いた店などない界隈だ。道端でGoogleマップを開いて探すと、今は亡き「刀屋」から遠くない場所に営業中の一軒のケーキ店を発見。あまり店舗のない住宅街を進んでいくと、闇夜の中にポツンと明かりが灯る小さな店がみえてきた。

 

「ゆうか」

 

こんな屋号と周囲の雰囲気から、地元の主婦ゆうかさんが、趣味が高じて開店したのかとも思ったが、小さなケーキ用ショーケースと2、3畳ほどしかないフロアの店内にいたのは、いいお歳のおじさんだった。あまり狂暴じゃない森のくまさん風体のこのパティシエに〝居候先〟の家族分のケーキを包んでもらいながら、こんな会話をした。

 

「お時間かかりますか?」

 

「小一時間くらい。でも、この寒さなんで大丈夫ですよ」

 

「いやいやダメですよ。電車の中、かなり暑いでしょ。だから1時間くらいの保冷剤入れときますからね。それと、ウチのプチシュークリーム、おまけで2個入れときますから」

 

なんとまぁ、心優しき場末(失礼!)の職人さん。居候先でこんな出来事を話しながら、「いい人か悪い人かは、美味しいケーキを作る条件じゃないけど、こんな暖かく、思い遣りがあって、自分のケーキをいい状態で提供したいという思いを持った人が作ったお菓子が食べたいよね」ということだけは全員一致。小さな店内の片隅には箱やビニール袋に入った焼き菓子も並んでいた。こんな小さな店舗ながら、ご自分でケーキも焼き物も作っているとすると、やはり菓子作りへの情熱は、町中の自分の名前を店名に使うゴージャスなパティスリーになんら劣らないと感じさせる。いや、むしろこういう顔が見えるパティシエが作る菓子を食べたいと切に感じさせられた一夜だった。

 

利休を生んだ町で過ごした後は、久しぶりの古都へ。こちらは「生産性」を考えると良い旅だったか、はたまたそうじゃなかったか…。自分の中でも議論が湧く滞在となった。

 

 

日本での2度目の祭典招致についてのコラムをアップした。

 

先週23日に行われた協会首脳による記者会見。内容としては「まだ手を挙げたばかりの段階」という具体性に乏しい内容だった。日付のように「イチ・ニ・サン」と飛び出したばかりの印象。なので協会側も、訴求材料として「NO SIDE SPIRIT」を打ち出した。

 

 

 

 

確かに日本でこのワードを掲げる意味も十分準備しての会見だったが、正解の範疇ではあってもド真ん中じゃない。微妙に刺さらない。プレゼンのための最高のキーワードを探し求めた末に引っ張り出してきた言葉のように感じられた。

 

世の流れは「単独」から「共催」へと変わろうとしている。良し悪しは、この祭典に何を求めるか次第。それよりは、招致を勝ち獲るための戦術として重要か。動きを注視するべきはドバイ、アブダビ…。彼らが最終的に手を挙げないなら、それはそれでいい。だが、本気なら、相当なダブリンが垂涎のストーリーを持ってくる可能性は高い。それにどう対抗し、打ち克てるか。

 

ヨーロッパは今のところマドリード以外は沈静なのか。実際、マドリードがローマと組めば、残された候補は限られる。先日、マーク・イーガンなるアイリッシュと話したが「カーディフ、エディンバラと組む可能性はあるが、開催が難しい要素もある」と、なんとなく納得出来る指摘。ブエノスアイレスも含めて、具体的、潜在的候補が風向きを見ている状況の中で、今回の第一声に続く二の手、三の手を放てるか。アドバンテージを持てるチャンスでもあるのだが、そのためにも更なる「何故日本なのか」というストーリーを語るべし。

 

 

 

おそらく、試合がある週末に限れば一番の冷え込みだった土曜日。しかし、両チームのプレーが寒気を忘れさせた80分だった。コラムはどこかのタイミングでと考案中だが、とりあえずおさらいを。

 

ブレイブルーパス  〇24-20●  スピアーズ

 

行われた6試合全てが9点差以内という1日だったが、とりわけ1位と4位の激突は、リーグワン今季6節で、観戦したゲームの中では最高のクオリティーゲームになった。

 

いいラインアタックを持つ両雄だが、この日は互いに防御を崩せない。ロースコアの展開でもゲームにテンションを持たせる。終盤の数分で、ようやく敗者が防御にスペースを作り出してしまったことにより、ノーサイド直前のリッチーの個人技で勝負が決まったが、前半40分のデータが勝利の伏線だと感じられた。

 

試合前の勝手な憶測。

5節を終えて4位の反則数は77。1試合平均15.4個のホイッスルは、1位の1.5倍以上だ。このディシプリンの問題は、タイトな上位戦では致命傷に成り兼ねない――。

 

だがそんな憶測を、勝者は前半で打ち消した。

40分での反則数。

 

ルーパス     4

スピアーズ 7

 

これまでの〝反則魔〟を見事に返上。このディシプリンの高さを追い風に、敵陣22mライン突破回数も明暗を分けた。

 

ルーパス     12

スピアーズ 1

 

5節修了時で、リーグトップの246点を叩き出すアタックマシーンを、40分間でレッドゾーンに僅か1回しか入れない防御力。ここには、ポゼッション61%、テリトリー70%という数値も手助けした。

 

その一方で、ポゼッション、テリトリーで苦戦した側も個々のタックルが光る。前半を終えて個々のタックル回数ではFL末永健雄13(通算23)、CTBリカス・プレトリアス(20)11、PRオペティ・ヘル11(後半0分退場)、No8タイラー・ポール10(22)と上位を独占して応戦した。余談だが、後半12分に投入されたFLマキシファウルアの危機を未然に防ぐ9回のタックルも素晴らしかった。すでに桜のジャージーを手にした選手も多いが、ここに名を挙げた5人は全員、タックル評価では日本代表入りの資質を持つ

 

勝者に話を戻すと、後半33分に一度は同点に追いつくトライをマークしたWTB桑山聖生が、ディシプリンについて振り返る。

 

「ここ数試合で自分たちも反則の多さに危機感を感じていた。そういう意識がこの試合に繋がったと思う」

 

参考までに、ルーパスのここまでの試合毎の反則数を挙げておこう。

 

節     対戦相手

①     21(7)埼 玉 

②     15(12)静 岡

③     13(10)横 浜

④     16(11)相模原

⑤     8(9)浦 安

⑥     10(10)船 橋

(カッコ内は対戦相手反則数)

 

正直優勝を争うチームとしてはかなり不安材料に成り兼ねない多さだが、大敗した野武士との開幕戦以来の序盤戦のビッグマッチで、そんな危機意識がプラスに働いた。そして前半を12-3で折り返せたことが、後半一度はリードを許したゲームを、リッチーの個人技による逆転劇へ繋げたと解釈したい。

 

因みに、リッチーに触れておくと、33分の桑山のトライ後のコンバージョンを失敗。残り6分で同点から逆転と転じるキックだったが仕留め切れなかった。記者席で「日本で年々コンバージョン精度下げてるんちゃう?」と冗談交じりに呟いたが、蹴るためにはイマイチだった足をステップと加速で補った。

 

ゴール前中央でラックからのボールを持つと、CTB廣瀬雄也、リカスをインステップで一人ずつ抜いて、最後はタイラーのタックル受けながらインゴールへ。決勝トライは79分34秒のことだった。大外には7分前にトライを決めた桑山もフリーでパスを待っていた。記者席では頭の中で「外だ!」と叫んでいたが、NZの至宝は「外も開いていると見えたが、その外途への意識で自分の前もスペースが出来てきていたので自分で行ったよ」と振り返った。

 

 

 

 

このコメント、囲み取材が終わってから、さるルーパススタッフとこんな会話をした。「取材ではああ言ってたけど、最初から自分で行くつもりでしたよね」。YES。桑山に一切非はないが、好調なWTBよりも自分を信じていたのは間違いない。

 

だが、この日のリッチーの凄さは、この派手なフィニッシュではないだろう。象徴的だったのは後半18分のプレー。ミッドフィールドでスピアーズがいい流れの攻撃をする中で、廣瀬が若干ボックス気味のキックをルーパス防御の裏に蹴り込んだ。この判断、相手の最後尾が1人しかないなかったことを瞬時に見抜いた廣瀬の好判断と感じたが、この若きジャパンのCTBが目視からキックの動作に入り蹴り込んだモーションの中で、リッチーが見事にキックに備えて背走。22m内のダイレクトキャッチでチャンスを封じ込んだ。ラストワンプレーのステップは真似できないが、このゲームを、展開を読む力こそ、この#10の資質であり、すべての選手が学ぶべきプレーだった。

 

で、繰り返しになるが、最後のトライがあまりにもインパクトを残してしまったが、ゲームの肝は前半の反則数と、それも響いてのレッドゾーン侵入回数の差にあったと考えたい。実は勝者も、前半12回22内に攻め込み12点しか稼いでいないのも緊迫感を演出したのは事実だが、これも先に触れたスピアーズの個々のタックルの健闘があったからだ。

 

敗者にとっては、今季初めての黒星にはなったが、悲観する必要はないだろう。クオリティーのあるゲームを見せた2つのチームの実力はほぼ互角。敗れた指揮官も会見での表情は穏やかだった。互角のゲームは十分出来ている。ここに唯一の全勝となった野武士が先頭に浮上して、6節修了で「3強」がかなりしっかりと形作られた。現状で考えれば、4カ月後のプレーオフでの対戦で、この3強の中でどのチームが勝ち切れるかというシーズン終盤のシナリオも、かなりの確度で明白になってしまった。やや興覚めでもある。

 

 

 

 

残念なのはこのトップグループを追い、食い込む対抗馬がなかなか加速出来ていないこと。強いて言えば、神戸が期待通りのパフォーマンスを見せ「3+1」という形を形成するが、中盤戦でさらに数チームがギアを上げてきてほしいのが願望だ。

 

府中のもう1チームは、埼玉相手のスコアほどの肉迫感はなかったが、接点での2人目が段階的に整備されて、アタックは再生の兆しは感じられた。彼らの〝信条〟ほどのハイテンポまで行かずとも、チェスリンの八面六臂の活躍で、フェーズを重ねる中でチャンスを生み出している。アタッキングチームで起点もフィニッシュも演じられるCTBイザヤ・プニヴァイも調子を上げてきている印象だ。ブレークダウンからの球出しが安定感を見せ始める中で、ここをテンポアップさせていければ、グラウンド縦軸にボールを停滞させない〝らしさ〟が蘇るのだが、ブレークを挟んだ中盤戦でどこまで覚醒するか。

 

順位表を見ると、この府中の類人猿さんの真後ろは未だ団子状態のようだが、以前もどこかで呟いたが浦安のディビジョン1への順化と接点での健闘、そしてスクラムはこの先も武器には出来るだろう。プレーオフのボーダーラインで数シーズン喘ぐレヴズは、確固たる強さを持ちながら、その強みがグラつくと急速に力を落とす傾向は、未だに変わらない。攻撃陣もそう悪くないまでに戦力積み上げはしているが、まだ「個」でしか相手に脅威を与えられていない印象だ。三河に棲む〝世界の巨人〟は変わらず眠りの中にある。前任者の下で個性あるチームを創り上げてプレーオフ常連組の扉を叩くまでになって横浜は、新体制でそのスタイルを〝常道〟へと切り替える中で、生みの苦しみの脱皮中か。

 

諸々書き立てる中で、冒頭に記したように土曜の6試合全てが9点差以内というゲームだったのは、観戦する側も木戸銭を払う価値はあったと考えたい。観客数は1試合平均でかろうじて1万人台を守った。昨季同時期からは2000人上乗せは、一応の評価をしていいだろう。今週末のようなゲームを続けることで、シーズン通しての平均1万人台を達成出来れば、手を挙げた2035年RWC招致への訴求材料にもなる。

 

一週間のブレークを挟んで始まる極寒の中盤戦。

さらに熱いリーグを待つことにしよう。

 

ⒸNECグリーンロケッツ東葛

 

 

「どこかの機会に」

 

そんな挨拶ばかりの吞仲間も少なく無いが、同じように久しく記事に出来ない選手がいる。その一人が今回取り上げた大和田立(たつる)だ。

 

トップリーグまでの時代、毎夏のように訪れた道東オホーツク地方。網走、北見という合宿拠点地を右往左往する中で、いずれかの町に向かう途中、何度も立ち寄ったグリーンロケッツの拠点、美幌町が故郷。お盆と花火大会の影響で一泊だけ網走の宿が取れない時に急遽泊まったチーム宿舎の美幌グランドホテル&グランドボウルはすでに姿を消した。かの焼肉の名店は健在だろうか? そんな町からやってきた少年は、大学最強チームで主力に成長して、トップリーグ、リーグワンでも戦い続けている。

 

 

 

 

 

 

今回のコラム。きっかけは勿論チーム譲渡ばなしだ。コラムを書くか?と考えた時、まず頭に浮かんだのは9月で40歳になるタッキーこと瀧澤直。大和田くんも及ばない我孫子のレジェンドだ。そして、移譲劇の内幕なら太田治GM、さらに深部で携わったNEC本社サイドの話を聞くべきか。ただし、そんな頭の中のキャスティングの悩みは数分で片付いた。

 

「大和田立という選手が、何を思い、どう受け止めているか」

 

アタマの中で知りたいと渦巻いていたことを、素直に優先した。比較的自分の視点でモノを書ける立場上プライオリティーを置くのは《選手》を対象にした取材。昨年12月のリーグワンプレスカンファレンスに大和田くん本人が参加したのも好都合だった。

 

一通りの取材対応が終わった本人と、広報として帯同した鎌田竜之介くんに、こんな相談をした。

 

「シーズン目前ないしシーズンインの中というタイミング、それとご本人が、移譲ばなし(当時は移譲先未定)についても話したくないというなら見送るが、インタビュー出来るかな?」

 

当初は、譲渡先未定のままのインタビューを想定していた。移譲の期限が延期されたことで確定の可能性が高まったとも推測したが、決まるか決まらないか、極論すればチームが消滅の方向だとしても、大和田立とグリーンロケッツのコラムは書くつもりだった。

 

 

 

 

快諾を得たことで、後はインタビューのタイミングとなったが、チームから太田GM込みで1月上旬でのセッティングが可能ということで、久しぶりに国道6号線を北東へ向かった。

 

コラムでも触れたが、出会いは彼が大学1年の百草グラウンドだった。道東の小さな町から、いきなりエリートチームに飛び込んだばかり。取材なんてほとんど縁がない少年は、かなりの緊張の中で受け答えしてくれた。だが、その中でも、滲み出るような実直さだけは、偽りのないこの少年の資質だと感じていた。プレーを見れば、直感が間違いではないと直ぐに確認できた。

 

そんな大和田くんの立ち振る舞い、人としての資質は、今回のインタビューでも変わりない。33歳(取材当時)まで、北の大地の町道のように真っ直ぐ歩んできた。だからこそ、こんなラグビープレーヤーに、チーム存亡の危機をどう受け止めているのかを聞きたかった。危機に瀕したチームへの思い、社員選手としてラグビーを続ける理由、そして美幌キャップに込めるもの。書き残しておく価値はあるという判断は、そう難しい選択ではなかった。

 

話を聞く中で大和田くんが何度も繰り返したのは「恩」という言葉だった。毎朝迎えに来てくれた親友への恩、毎夏ラグビー教室を開いたグリーロケッツへの恩、帝京大進学を手助けしてくれたNEC相澤氏への恩、そして美幌キャップへの恩。ここまでのキャリアだけではなく、「恩」が人間性をも育んでいるようにみえる。大和田くんだけではなくトップ選手の多くは他者への感謝の思いを感じ、諭されて成長を続けている。だが、その中でも、格別な感受性の持ち主か、自身が苦労してきたからこそ感じ取れる「恩」を、彼の話からは受け止められる。

 

後は、新たな〝雇用主〟が、どんな働き口を設けるのか。コラムでも書いた通りベストなシナリオは、我孫子の職場で業務を続けながらJR東日本のチームでプレーすることだが、受け入れる側にも様々な雇用規約があるだろう。

 

頭の片隅かも知れないが、忘れてはいけないのは、大和田立のような人生設計を思い描く選手は他にも少なくない人数でいるということだ。彼らの人生もそうだが、まだまだ資本が未熟なリーグの中で、彼らのような挑戦への受け皿をどう維持するかも、リーグや協会は関心を持っているだろうし、持つべきだろう。ナマっちょろい昭和の企業スポーツの甘えた態勢を求めているのではなく、社長や平社員を問わず、企業の中で確固としたプレゼンスを持った社員がラグビーに深く携わることの価値は間違いなくある。極論すれば、そんな選手上がりのサラリーマンが、いまの名立たる企業がラグビーに投資を続ける由縁なのだから。

 

このハイブリッド環境の中で、リーグ、チームがどこまで自分たちの木戸銭で口に糊する地盤を確立出来るのかは、もう一度洗い直す必要があるだろう。南半球でもイングランドでも、純然たる収益だけでは運営に陰りを見せ始めている。日本でも既に〝育児放棄〟した親は今回の案件も含めて出てきている。トップリーグに戻せとは考えていないが、白か黒かではないこの国の形は考えるべきだろう。

 

いずれも過去の撮影だが、このコラボはいつか復活するのか?

 

 

楕円観戦に最適な日和だった土曜日は港区北青山へ。

3連覇に挑む〝王者〟もだが、今季初ナマ観戦の昨季最下位チームが〝気懸り度〟では上というカード。なんだか言葉あそびのようだが、敗れたとはいえ予期していた以上に予期していた80分だった。

 

昨季最下位は明らかに強い。

 

結論は、こんな言い回しだろうか。

この日の試合の前に、ここまでをおさらいしておこう。

 

〇27-24 相模原⑨

●19-37 埼玉④

〇34-21 静岡⑤

〇28-22 横浜⑧

 

そして

●27-38 BL東京①

 

丸数字は昨季順位。昨季の数字がどこまで信憑性があるかは疑問ながら、一つの目安にはなる。昨季12位は、4位までには勝てなかったが、5位以下には勝っている。昨季の勝ち数を既に第4節でクリアという事実からしても、何かが違っているとは十分推察出来た。

 

新任のグラハム・ラウンツリーHCの手腕か、はたまたディビジョン1復帰2シーズン目の適応力か。

 

オンライン観戦した2節前に〝スクラム命〟のレヴズのFWパックを見事に押し込み、まさに命を奪ったゲームで異変を感じていたが、目の当たりにしたチームは、確かに昨季までとは別物だった。

 

「私がこのチームで最も大きく見つめ直したのは、規律と簡単に負けない不屈のハートです。そんな思いでコーチの要請を受けました。やりたいのはフィールドからボールを蹴り出さずに、ボールを動かしてインプレーの時間を伸ばし、選手が消耗する中でもスキル、フィットネスを見せられる、そういうチームを目指しています。その部分は上手く改善出来ている」

 

新任HCの会見でのコメントだ。元イングランド代表PR。獅子=ライオンズにも選ばれ、虎=レスタータイガースではレジェンドだ。スクラムの成長はイングランド代表PRも経験したご自身の得意分野なのかと聞いたが、アンサーにはトータルにチームを強化出来るという自負も籠る。

 

スクラムに関しては、「全てではないが、いいスクラムは組めていた」とあっさりだったが、藤村琉士主将に代わり先発して王者に重圧をかけた松下潤一郎が、こう代弁してくれた。

 

「良くなっていると思います。今日は良かったです。まず一人一人の強さ、強いフロントローが揃っているのは勿論ですけど、8人で一枚となって組むことを意識しています。密になって、コネクトして組んでいます。前節は試合の中で一貫性がなかったので、今週は一貫性を意識して準備してきました。コーチ陣が密にコミュニケーションを取ってくれて、映像を見たりミーティングを持ってくれています。後は藤村さんが引っ張ってくれているのも大きい」

 

本来は東芝OBでもある〝バズ〟こと浅原拓真ACに秘訣を聞きたかった。残念ながらこの日は捕まえられなかったが、松下の話はそこまで際立った〝何か〟ではなく、どこのチームも重視している範疇だろう。むしろ感心したのは、こちらから「強いスクラムを持ちながら、ボールを動かすスタイル。このバランスがいいね」と話したときの回答にあった。

 

「今年は走り勝つという感じで、FWもしっかり走り勝つチームになっていて、Tough to Beatというのを掲げているんで、そこでいいチームが出来ていると思います」

 

Tough to Beatには不屈の集団という思いが込められているという。この日は3-19からの追い上げで、後半22分のSH飯沼蓮のトライ(ゴール)で4点差まで迫った。残念ながら33分に仕留めのトライを喫して今季2敗目を喫したが、連覇中の王者に肉迫できた戦いぶりは強いインパクトを残した。スクラムに強み持ちながら、そこに拘るよりもボールを積極的に動かしワイドに攻めるのが信条だ。ここは前身NTTコミュニケーションズシャイニングアークス時代のラグビーともオーバラップする。トライも決めた飯沼は、HCが元スコットランド代表からイングランド代表へ変わった今季のチームの取り組みをこう語っている。

 

 

会見に登場したラウンツリーHCと主将代行の代行・飯沼くん

(左)。そして右はいつも名通訳をしてくれるジョシュアくん

 

 

「疲れた中で精度の高いチームが上に行けると思うので、練習から繰り返しSHとしても、そこらへんをオーガナイズしてやっていきたい。僕たちは、ブレークダウンで早くセットするとか相手にゲインされたら全員で帰るとか、当たり前のことを相手よりもどれだけ当たり前に出来るかという本当にシンプルなことを極められるチームが強いのかなと思っています」

 

スクラムとワイドアタックが印象的だったが、元主将のコメントにもあったように接点でファイト出来るようになったことが、やはり昨季からの最大の変化だろう。苦闘の前シーズン、チームスタッフと話し合った記憶が蘇る。

 

「戦力が足りない訳じゃない。ただ、やはり2シーズン、ディビジョン1で戦えなかったのが響いている。わかっていても、フィジカル、ブレークダウンで後手を踏んでいる」

 

それが、昇格1シーズン目には太刀打ち出来なかったエリアでファイト出来始め、タフを求める中でもボール・イン・プレーに拘るコーチの流儀が上手くハマろうとしているのが、第5節までの戦いに表れている。

 

BL東京戦。敵陣22mライン内侵入回数は10対16と差があったが、スコア率は2.4ポイント対2.3ポイントと、わずかながら上回る。つまりレッドゾーンに入れば、勝者に負けない遂行力を持っている。この事実を、新HCは「チャンスは作れている。そこについては満足しているが、(中略)相手に簡単にチャンスをプレゼントしてしまう状況もあります。そういうところを見直していきたい」と指摘している。

 

スタッツを更に見ていくと、ボールキャリー131対170、ランメーター273m対393mとアタック項目で勝者が上回る中で、ラインブレーク回数は11対8と上回る。タックル成功率も86%対84%と勝者を凌ぐ。個々の成功タックル数でも、ゲーム最多の16回をマークした5人の内FL佐々木柚樹、武内慎、CTBサミソニ・トゥアの3人が敗者のメンバーだった。数値で課題があったとしたら反則数。9対8とほぼイーブンではあったが、前半3回と相手の7の半分以下だったものが、後半7対1と激増したのは、追走する中でブレークダウンで受けたプレッシャーによるものだった。

 

ようやく勝つためのパズルが埋まり始めてきた印象の昨季最下位チームだが、ここからいかに取りこぼしを減らし、さらにラウンツリーHCの思い描いた絵を完成させることが出来るのか。3勝15敗からの巻き返しがリーグの熱量を高めるはずだ。

 

〝脇役〟扱いになってしまった勝者だが、開幕戦での大敗からしっかりと軌道を修正して、この日の伏兵も乗り越えた。気掛かりなのは反則数。5節を終えての77の笛は、12チーム中ワーストだ。トッド・ブラックアダーはいつもの穏やかな口調で「シーズンに入ってからも規律の部分は意識して改善を図っている部分だが、今日もミスから焦って頑張り過ぎて反則を犯している。後半かなり減らせたのはいい傾向と考えたい」と振り返っている。後半は38分までノンペナルティーというのは評価ポイントだが、次週激突する1位のスピアーズの50、大敗を喫した2位ワイルドナイツの46と大きく差をつけられている。上位争いが熾烈になればなるほど、ディシプリンは間違いなく勝敗を分ける重要なポイントになるだけに、1週間後のビッグマッチでどこまで改善出来るかに注目したい。

 

勝者についてゲーム以上に興味深かったのが、SOリッチー・モウンガの南半球から飛び込んだビッグニュースへの言及だった。試合後のミックスゾーン。幾つかの質疑応答の後に、こう切り出してみた。

 

「職務上聞くべきと思っての質問なので、ノーコメントでもいいけど、ニュージーランドでビッグニュースがありました。どう受け止めていますか」

 

ニュースの詳細は、ご参考までにコラムを張り付けておくが、〝レイザー〟ことスコット・ロバートソンとリッチ―といえば、クルセイダーズでコーチ、ゲームメーカーとして共に黄金時代を築いてきた仲だ。指揮官が来日して、わざわざ府中市のグラウンドまで訪ねて、母国復帰のラブコールも贈っている。

 

 

 

 

今夏からの#10 の母国での本格復帰を、しかも漆黒のジャージーでのコンビ結成という新たなチャプターを誰よりも待ち侘びていたはずだが、予期せぬ解任劇に見舞われてしまった。そんな関係の2人だからこそ、どんな思いかを聞きたかった。

 

「難しい状況だというのは理解しているし、見ても聞いてもいます。でも、自分の立場上だと、今はここでプレーしています。NZのラグビーとの関係でいうと、1ファン、1傍観者にしかなり得ない。その中で、ただしレイザーとは勿論選手、コーチという仕事の上の関係も、個人的にも親交が深い。彼自身もそうだし、家族もここ数日間、非常に苦しい時間を過ごしているかなと思ったので、あなた達のことをしっかりと思っていますということだけは伝えています。同時に、彼自身も何が上手くいかなかったのか、責任の所在というのはしっかり理解していると思う。自分も含めてそうですけど、選手もコーチも、プロのスポーツ界に身を置いている以上、こういうことが起こるのは織り込み済みで仕事をしています。そういう意味では、彼自身もそういう現実を自分自身で受け止めているだろうなと想像しています」

 

立場上、話せる範囲で実直に答えてくれたなと感じたコメントだった。「レイザーなら職を奪われてもブレイクダンサーという仕事もあるしね」という頭に過ったジョークは封印したが、失職はしたが本来底抜けに明るい男だ。心の傷が癒えれば、母国は勿論だがヨーロッパでも、日本でもダンサー以外の働き口はいくらでもあるはずだ。どこかで、この2人が再びコーチ&ゲームメーカーとしてコンビを組めれば最高だ。