さてはて、いよいよシーズンファイナル。

土曜日の3位決戦にも絡んだ〝宿題〟を抱えるため、

すでに、キックオフまで12時間となろうとしている時間ながら簡単に前打ちを。

 

実力はかなり拮抗する中で、シーズンスタッツを見ると若干1位チームが優位に立つ印象ではあるが、こんな数字だ。

 

 

【神戸】       【クボタ】

1位    順  位  3位

16勝2敗     成  績  14勝4敗

750          得  点      709

112       得トライ  102

456       失  点  357

215    反  則  数  167

※リーグ戦18試合の数値

 

▼トータルスタッツ(by Rugby Pass)

2316  ボールキャリー   2290

10324    ランメーター   9953

165   クリーンブレーク 179

87%  タックル成功率     86%

 

 

ディシプリンでスピアーズが若干優位ではあるが、主要な数値は非常に近似値を示している。実力は互角といいたいところだが、スピアーズ側がキーマンと呼べる選手数人を欠いているのはやや厳しい戦いを予想させる。以前にSNSですこし触れたが、自慢の〝船橋ボムスコッド〟投入までの時間で、いかに戦えるかが注目。理想を言えば、後半15—20分までにリードを奪えば勝機は見えてくると期待したいところだが…

 

ちなみにメンバー表に触れておくと、ティアナン、アーディ、ワイサケという3列の破壊力は神戸が充実。狂気のFL末永健雄を中心にクボタがどう立ち向かうか。ミッドウィールダーをみても、神戸のボールドライブをどこまで封じ込めるか。#15上ノ坊、#14植田の息の合った若手が暴れるような展開だと、クボタはかなり苦しくなる。逆に#15ショーンが準決勝まで同様にボールを持てれば、幾度かのスコアチャンスが作れるだろう。

 

で、前日行われた両チームが会した会見からのコメントを紹介しておこう。

これは「優勝を逃した昨季からチームはどんな進化を感じているか」という質問に対してのデイブさん、フランさんの回答だが、こちらの質問も拙さもあり、お二人とも対戦相手側の評価も加えて応えてくれたので、そのままお伝えしたおこう。

 

 

神戸・デイブHC

クボタに関しては、過去4年で3度決勝まで進んでいるチーム。決勝を戦うことにも経験豊富です。フランさんは素晴らしい仕事をしてきて、何年もかけてしっかりと競技力の高いチームを創作り上げてきた。我々も間違いなく良くなってきていると思います。ディフェンス面やプレー精度の部分ですね。昨季に比べてターンオーバーの数も減少して、自分たちで自分たちに重圧をかけてしまう状況は減っていると思う。決勝は、積み上げてきたものを80分の中でどれだけ出し続けることが出来るかに尽きると思います

 

▼クボタ・フランHC

デイブさんが話したことと同じような思いですが、ここ数年、そしてとりわけ今季ですが神戸は非常にタフなチームで、対戦相手が結果を出すのが非常に難しい試合が多かった。我々については、昨年の決勝で負けたことからの学びでは、大事な局面でのディフェンスだったり、エリアを取っていく部分にフォーカスを置いて修正してきました。ディフェンス担当のスコット・マクラウドも2年目ということもあって、継続性がしっかりと生かされていますし、ランとキックのバランス、キックオフからの攻防をどれだけ上手くやっていけるか。それがしっかり出来れば、チャンスに繋げて勢いを持てるだろう

 

両HCとも〝概略〟程度のコメントではあったが、攻守トータルに底上げに自信を持つスティーラーズと、防御、ラン&キックを中心に整備されてきたスピアーズ、いずれが高い完成度を見せられるかが1つのポイント。

 

「しょせん」と書くと元も子もないが、ラグビーはやはり、いかに相手にミスをさせ、自分たちのミスを減らすかが、永遠のテーマでもある。

 

ヘビー級のようなパンチの応酬の中で、自分たちのエクスキューションを保てたほうに、勝利の女神がほほ笑むことになる。

 

 

 

すこしメモ書きレベルで、TMOの新テクノロジーについて。

 

よい子が注目する今週末のリーグワンファイナルでは、最新のNTTグループの通信システムを利用した〝ジャッジ〟が導入される。これは、従来導入されてきたTMOを、一拠点と各会場を繋いでリモートで行われるように変更したもので、日曜日の国立競技場でのゲームで初めて実施される。

 

要するに、TMOを試合会場ではなく、一か所の拠点で担当者が映像解析することになる。すでにFIFAワールドカップで観たシステムに似たものだ。例年のラグビーの方の祭典でも導入される。今回は、この「一拠点での管理」とNTT側の「新規通信技術」という2点がトピックスなわけだが、ブリーフィングは後者のNTT側に配慮したものになっていた。

 

NTTおよびNTTドコモが持つIOWNとい最新の高速通信システムをTMOに活用するということだが、かなりの高速通信で、現在、試合中継などで感じられる映像再生のタイムラグがほとんどなく、ほぼライブで視聴出来るという。極論すれば、理論上ではシドニーでの画像が、今回もTMO基地となる大手町でもラグなしでということのようだ。従来の国内TMOのジャッジに見られがちな遅延、もたつき感が大幅に解消されるという。

 

まぁ、実際に決勝で、どこまでスムーズなビデオ検証がなされるか、お手並み拝見というところだが、少々疑念、課題もあると感じている。

 

この日行われたブリーフィングで、リーグ側はTMOに求められる人員などのコスト抑制や画像通信速度の改善による時間短縮などをメリットに挙げている。確かに指摘通り、一拠点で集中的に管理することでの人員のコンパクト化、通信クオリティーの進化によるメリットはあるのだろう。だが、ブリーフィングを聞いていて感じるのは、本来、一番重要なのはTMOに依存するジャッジ、そしてTMOによるゲームの中断、遅延をどこまで減らしていけるかだということだ。

 

今回のブリーフィングの趣旨からすれば、TMOの介入の是非を問うものでもなければ、新規方式が介入回数にどう影響するかを問うものではない。だが、しかし、観る側やプレーする側に、どんな恩恵、もしかしたら損失があるのかを考えると、TMOがどこまで行われるかは大きな問題だ(TMOを見慣れて「有る無し」が問題だと感じない方々もいるだろうが…)。

 

確かに、現状のリーグワンを観ていて、TMO:0回というゲームがどれだけあるのかを考えれば、現実的ではないかも知れない。TMOが導入されていない大学や高校の公式戦を観ても、際どいジャッジには「TMOがあれば…」と思い至るケースも少なくない。だが、それでも、シーズン毎に常套化する、あのレフェリーがテレビモニターを示す両手で描く四角い枠のジェスチャーが、プレーの流動性、継続性といったラグビーだからこその醍醐味をかなり奪い去ろうとしているように思えてならない。

 

野球やアメフトのようなアメリカンスポーツは、攻守が入れ替わるなど、試合を寸断しながら、テレビ中継用のCM時間を作り、現地の会場でもビール購入や生理現象を解消することに役立てている。他の競技でも〝ピリオド〟を設け、増やすことにより、ゲームを切り刻む作業に余念がない。

 

だが、ヨーロッパ起源のスポーツにありがちな、先にも書いたゲームの流動性や継続性の中に、それぞれの競技が持つゲーム性、戦略性が構築されることを踏まえれば、自ら進んで自分たちの競技を細切れの80分、90分にすることは慎重であるべきだ。何故なら、刻々と、尚且つ継続的なゲーム展開の流れの中にラグビーやサッカーといったスポーツの醍醐味やカタルシスがあるからだ。個人的には「ここをアメリカンスポーツに倣ってどうするのよ」と突っ込みたくなる。

 

レフェリーの試合中の振る舞いに触れておくと、スーパーラグビーや6か国対抗と比べても、リーグワンは統計上はTMOが極端には多くないし、むしろ少ないケースもあるとは聞いているが、実際に試合を視聴すると、海外のトップレベルの試合を担うレフェリーが、自分のジャッジで笛を吹こうとしている意識は高い。トライシーン等をみても、よほどの視認困難な状況以外は、断固として自分のジャッジを貫いている。勿論、日本の幾人かのレフも、自分での視認を尊重している。

 

そろそろ、競技団体や大会運営者は、「こんなすごいテクノロジーが導入されます」という発想から、「この競技ならではの特性や魅力をより高めるためにどんなテクノロジーが役立つか(又は、高めるためにどんなテクノロジーはいらないか)」というアプローチで物事を判断する時代に入っていけないのか。勿論、関係者が後者の考え方を否定しているとは考えていない。だが、〝最初に在りき〟は、テクノロジーではなく競技性、競技特性だというスタンスは、この先もブレてはいけない掟のようなものだ。

 

ブリーフィングで説明されたコストを含めた効率化も、もうすこし詰めた議論、検証が必要かも知れない。説明をさらに掘り下げて聞くと、実際のTMOのオペレーションにかかる人員は、従来とそう大きく変わらない。何故なら、1試合に必要なTMO要員は、この新システムでも受け持つのは1試合のみだからだ。同時に2試合、3試合を兼業で受け持つことは有り得ないのだ。ご存知のように、リーグワンの場合は、ほぼ同時刻で開催される試合がかなりの量に上る。スーパーラグビーなら、キックオフ時間をずらして、1試合が終われば別会場の他のカードがキックオフを迎える流れだが、この国では12時、14時、14時30分あたりでスタートするのが相場になっている。なので、ほぼ同時で試合があれば、TMO要員もそれぞれの試合に、それぞれの人数が必要になるのだ。

 

勿論、NTT側の技術に関しては間違いなくプラスの恩恵はあるだろう。だが、画像を繰り返してプレーや反則を審議する作業については、課題になるのはむしろ、TMO担当者と画像を操作するオペレーターのやり取りの迅速化が大きな課題なのは間違いない。このエリアの問題点は、過去に上げたぶろぐおよびコラムでも触れている。

 

 

分析のための映像は基本的には中継するJスポーツの撮ったものが「公式映像」として使われ、動画再生のオペレーションも同社のスタッフだ。ブリーフィング時にJスポーツ関係者は「担当者の技術アップにも取り組んでいる」と説明してくれたが、ラグビーだけに特化しているわけじゃないスタッフも多い中で、なかなか難しい部分があるのは否定できない。

 

いずれにせよ、改善が求められるとしたら、ピッチ上のレフェリーがTMOの介入を求めてから、最終ジャッジが下されるまでの時間をどこまで短縮できるかだ。そこに付随する課題としては、画像分析が多角的に行われるためのムービーカメラの台数を、さらに充実させていくことだろう。試合によっては、観るべきシーンが十分に撮影されていない試合も少なくない。すこし極論すれば、これだけ技術が進む中なら、1会場に於いて、中継用の高度なカメラを補足するスマホないしスマホ程度の撮影機器を数台設置してもいいのではないか。

 

ブリーフィングおよび、先のJスポ関係者の話では、来季レギュラーシーズンには、幾つかの会場、これは秩父宮などの主要施設になりそうだが、ここで導入される方向だという。決勝戦単発の今回より、複数会場で行われるとしたら、来季からの導入で、その恩恵がより具体的になるかも知れない。

 

但し、繰り返しになるが、大事なことは、よりレフェリーの〝四角いジェスチャー〟が少ない試合を増やせるかだと個人的には思っている。先日覗いた大学春季大会でも、あるチームコーチから「レフェリーのレベルが厳しい」という話も聞いた。協会公式戦レベルをしっかりと吹けるレフェリーは、大幅な若返りの影響も含めて人員不足と感じている。滑川剛人というトップレフェリーもピッチを去る中で、いかに生身の人員を養成、確保していけるか。テクノロジーでは埋め合わせることが難しいエリアでのクオリティーの向上という継続的な課題は、変わらず横たわる。

 

 

 

一日遅れのおさらいを―

 

ファイナリストが出揃った。

昨日の神戸に続いて、国立進出を決めたのはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。

26-24というスコアが、このゲームをよく表している一方で「2点」という差では計り知れない〝差〟も感じた80分だった。

 

ラストツープレーで「追われる側」が予期せぬ相手にセンタースクラムを与えるというミスを犯し、ラストワンプレーで、「追う側」が逆転への反撃のはずがあっさるとゲームを終わらせてしまった驚きの展開。まさに「こんなのあるの?」というプレーの中で、この試合がラストホイッスルの滑川剛人レフェリーの笛が鳴り響いた。

 

様々な〝トピックス〟があった80分だったが、記者席から会見場へと戻る時の頭には、こんな言葉が浮かんだ。

 

「選手層」

 

先に触れたラストワンプレー。勢い付いた野武士が中央スクラムから左にボールを回したが、心中で「ここはポイントを作って次をどう攻めるか」と頭の中で思った瞬間、ブルーのジャージーが、あまりにもあっけなくタッチの外へ押し出された。

 

防御の殊勲者となった船橋#15ショーンが、サイズを生かして反撃を寸断したとも表現出来るが、あそこは攻める側が絶対にタッチラインを割るリスクを避けながらボールを動かすのが鉄則。タッチライン際どころか、15mラインより外側を走るなら、「割らない」整合背を持って攻めなければいけない。〝犯人捜し〟をする気は毛頭ないが、あの左展開をタッチライン際で途中出場のマークスに任せてしまったことが全てだった。付け加えると、起点となったSHが小山から萩原、サポートに動けるはずだったSOが山沢から齎藤と、若手に代わっていたことも祟った。

 

 

▲帝京大1年から選手、レフとして取材対象であり、楕

円球の仲間でもあった滑川テフ。退任を決めた数日後に

話を聞いたが、今後はレフェリーグループでの活動はピ

オドを打って、某自動ーカーでの仕事に戻る。詳

これからだが、同社の持つ広範なスポーツ分野での

活躍も視野に入れて〝サードキャリア〟スタートする。

頑張れ滑ちゃん!

 

 

ライリーからラストパスが渡った段階で、マークスをサポートする選手は、ほぼ0という位置取り。防御に入ったタックルスキルのある相手WTB根塚とショーンなら、押し出すのは容易い作業だった。

 

ラストワンプレーでの逆転劇という結構現実味のある流れの中で、気持ちがトライへと急いてしまったことと、選手個々の経験値(判断力)。この2つの要素が生み出した、すこし不思議な幕切れだったが、先にも書いた選手層は大きな差があった。

 

ベンチメンバーを並べておこう

 

【船橋】         【埼玉】

江良  颯(11)     ⑯ 佐藤 健次(19)

加藤 一希(14)     ⑰ 木原 優作(9)

O・ヘル(17)       ⑱ L・フィナウ(19)

M・オリヴィエ(20)    ⑲ O・バナード(8)

P・ラブスカフニ(3) ⑳ J・ウィルソン(15)

B・ホール(8)    ㉑ 萩原  周(15)

押川 敦治(17)      ㉒ M・マークス(16)

H・ヴァイレア(18)  ㉓ 齊藤 誉哉(16)

※カッコ内は今季出場回数

 

出場回数でいえばわずかながら船橋が下で、ほぼ同数となっているが、この顔ぶれをぶれば、先発でも起用されてきた〝実績〟で大きな差を感じさせる。

今回の準決勝にとどまらず、スピアーズはリーグでも屈指の有力ベンチメンバーでシーズンを戦ってきた。このメンバーの厚みが、この日の明暗を分けたと感じてならない。

 

あの、衝撃的なキックチャージを演じてみせたハラトアも、前半一時出場した時から運動量で状態の良さを感じさせていた。36分のトライも、そんな状態の良さが後押した。

江良は、もう誰もがその実績を認める存在だが、加藤と共にマルコムが下がった後のスクラムで、〝先発セット〟以上の安定感を見せ、ヘルに関しては、言及する必要はないだろう。

 

対照的に野武士は、ラストワンプレーにベンチからの3人が重要な役割を果たしていた、いや、果たすべきだった。マークスは、交代出場してからのトライや、チャンスを創り出したランと、そのシャープな走りはチームも認めるところだが、あの状況であの立ち位置でボールを渡されるのは荷が重すぎる。そしてその3人の一人でもある齊藤君の痛恨のチャージダウンも、同じベンチスタートのハラトアとのマッチアップを踏まえればミスを認めざるを得ない。

 

惜しむらくは、この日は切れまくっていたSO山沢拓也が、後半も健在でプレーしていたらどうだったのだろうと思いを巡らせてしまう。あのチャージダウンも含めて…。まぁ、これは野暮な妄想なのだが、脇道ついでに、すこし数字のおはなしも。

 

スタッツをざっと眺めてみると、かなりの項目で両チームが互角の数字を残している。例えば22mライン内エントリーは勝者からみて7対6,スコア率も3.2点対4.0点、テリトリー47%対53%、ポゼッション53%対47%、ランメーター228m対250mといった具合だ。ただし、後半最後の猛攻までの試合展開で、勝者が野武士をほとんど自陣22mへ入れなかったこと、そしてキック処理からどうボールを動かしていくかというゲームプランでは、選手層同様に勝者に分があったと感じている。

 

 

▲個人的には就任1年目でファイナリストまで行ってほしかった金

澤HC。その一方で、組織委としてここ数シーズンの積み重ねの中で

生じた「選手層」の差を、どう埋めていくかが来季の宿題でもある

 

 

ハラトアに話を戻すと、試合後にあの状況を自ら説明してくれた。最初はゴール内でチームの円陣に入っていたが、目をキッカーに向けると、キックティーの位置、つまりゴールラインからの距離を見定め、同時にティーのボールの置き方(角度)で「あまり蹴り上げるキックじゃない」と判断している。その助走距離も見定める、わずか数秒の判断でアクションを起こした。自らプレースキッカーも務めるからこその判断でもあったが、日本体育大からクボタ入団数年は、まだまだ子供っぽさ、プレー精度の低さを発散させていた原石が、ようやくトップチームの一員としてのクレバーさ、自分で判断する力を持ち始めているのは、HCフランさんを筆頭としたコーチングスタッフによる〝投資〟の賜物だろう。


そんな投資の話のついでに、何度も事ある毎に触れているハナシではあるが、冒頭の「選手層」については、やはりフランさんと、チームマネジメントの、この10年に及ぶブレない忍耐強さと理解の結実だ。

 

フランさんのスピアーズでの取り組みを見ていると、チームを最短距離を効率よく進めるのではなく、組織としての地盤になる文化を築き、選手層にシーズン毎に厚みを持たせ、決してブレないラグビースタイルを固めてきた。不思議な事に、狩猟民の中で育まれてきたラグビーではあるが、まるで農耕民の文化のように、土壌から一つ一つ、年を重ねる毎に改良を重ね、良い品質の作物をバージョンアップさせて行くような作業が大事になる。その加点からすると、フランさんの振る舞いには、南アフリカの狩猟民ではなく、農耕民としての優れた資質を感じてならない。

 

そんな狩猟民の築いたチームと、まさに狩猟民のような攻守に圧倒的な力を見せるチームとの一騎打ち。ヘビー級のような力対力も見ものになるが、2つのクラブの文化が交錯する80分を楽しみたい。

 

▲会見に臨んだ神戸デイブHC(左)とレタリック主将。サンゴリアスの

完敗を嘆いて手を顔に当てている訳じゃないが、凄まじい圧勝劇だった

 

 

興味深いセミファイナル①ではあったが、結果は上位が上位らしい勝ちっぷりに終わった。どこかのタイミングで、コラムにまとめたいが、取り急ぎ土曜の80分をおさらいしておこう。

 

戦前には、こんな関心を持ちながらキックオフを迎えた。

 

・「フロントロー平均年齢」スティーラーズ35.3歳vsサンゴリアス28歳の激突

・奇しくもリーグワンでは数少ない九州共立大の先輩後輩の直接スクラム対決

・2列目はNZ代表で百戦錬磨のブロディと日本代表を牽引する期待のハリーの空中戦

・#6は1年後は同じ桜のジャージーでコンビを組む可能性の選手同士がやり合う

・No8が東海大なら、SHは帝京大の先輩後輩決戦

・インサイドCTBは未来のジャパンの〝隠し球〟vs和製最高峰のレジェンドが対峙

・しんがり#15も未来のジャパンと経験豊富な元ジャパンの激突

 

興味深いマッチアップが山積みだったが、戦前のスタッツにはかなりシビアな数字が並ぶ。

 

 

       神戸     サン

リーグ戦順位 1位        4位

総得点    750①          625④

総トライ数  112①          87④

総失点    456③         625④

反則数    251⑦        168④

※丸数字はディビジョン1順位

 

 

個々のポジションでは注目ポイントが多いカードだが、数字の上では上位チームの優勢をかなりしっかりと示されている。サンゴリアスの主要なスタッツが全てリーグ戦順位に〝相応しい〟ランキングではあった。この日も、結果的にそれに順じた結末に終わってしまった。

 

前半の24-16というスコアだけを見れば、サンゴリアスがかなりいい戦いを見せたゲームのように見える。だが、実際のゲームパフォーマンスを見ると、数字(スコア)に誤魔化される内容だった。キックオフ直後から、接点で1歩でも1ミリでも前に出ていたのはリーグ戦1位チームだった。個々のフィジカル、体の大きさを存分に生かして、スタートから接点を制圧していたのは明らか。司令塔のSO李承信も「そこ(フィジカルの優位性)は感じていました」と振り返る。

 

かなりの優位性がありながら、折り返し時点で混戦気味のスコアになったのは、スティーラーズの個々のスキルの精度不足と、それに伴う反則の多さが響いた。象徴的だったのは、前半25分のサンゴリアスLOジョージ・ハモンドのトライまでの流れ。神戸が自陣からボールを左ワイドに振って、WTBイノケ・ブルアのパワフルなキャリーからCTBタリ・イオアネが左サイドをブレーク。ここまでは、この2人の身体能力の凄まじさを感じさせたが、タリさんがそこまでプレッシャーを受けていない状況から放り投げてしまったパスをカウンターされたのが〝起点〟だった。その後のラインアウトから自陣ゴール前へ押し込まれて、ハモンドが逆転のトライを奏でた。

 

それでも、ゲームが神戸にとって〝良からぬ方向〟へ大きくは傾かなかったのが、この勝者の底力だろう。勢いづくサンゴリアスがアタックのギアを上げて再び神戸陣レッドゾーンまで攻め込んだが、〝NZの至宝〟FLアーディ・サベアが見事なジャッカルで攻撃を寸断。そこから切り返して、11フェーズ攻め立ててNo8ワイサケ・ララトゥブアがトライ奪い返すまで7分しかかからなかった。スコアされてもスコアを獲り返すという必勝パターンは、接戦モードの前半40分間繰り返された。

 

接点の重量感、そして取られても取り返す神戸の得点力を見て、勝手に「勝負は時間の問題」と感じていたが、後半はそんな「地力通り」の展開に終始した。

 

ゲームスタッツも神戸圧勝を物語る。

 

敵陣22mライン内への侵入回数はサンゴリアスの9に対して神戸は14。22侵入しての得点率も敗者の2.2点に対して4.9点と明暗を分けた。アタッキングラグビ―を標榜するサンゴリアスだが、この得点率では厳しい。ラックから何秒でボールを出せるかの「ラックスピード」も、3秒でボールを出せた割合を見るとサンゴリアス53%、神戸59%と、敗者が強みを存分に発揮できなかったことが判る。ランメーターもサンゴリアスの129m対278m、ラインブレーク回数3対10など、攻撃面でのスタッツは悉く勝者が上回り、タックル成功率でもサンゴリアス78%、神戸87%と明暗を分けた。

 

結果圧勝劇というゲームで、輝きを放ったのは勝者の1シーズン目FB上ノ坊駿介と2シーズン目WTB植田和磨の若手アウトサイドBKコンビだった。

 

最初の見せ場は、キックオフからわずか6分。ミッドフィールドでの連続攻撃で、右展開からパスを受けた上ノ坊が防御の薄さを察知して蹴り込んだボールを、トップギアの植田がキャッチしてそのまま先制トライ。アーリーエントリーでデビューした今季、不動のFBに定着するルーキーは、アシストの後は前半21分にアクロバチックなコーナーへのトライも決めている。

 

 

▲いつも爽やか、朗らか上ノ坊君。写真を

見返すと、なにやら自信も浮かび上がる⁈

 

 

後半その勢いは加速する。開始3分のキックカウンターから中盤でパスを受けた上ノ坊が、一瞬の溜めから駆け込んできた植田にパスを放つ。そのまま植田はトップギアへの加速から華麗なステップで相手SOケイレブ・トラスクを抜き去り、SH上村樹輝にラストパスを放った。

 

上ノ坊は、4分後の右展開でも詰めてきた防御のプレッシャーを受けながらの高速タップパスで承信にボールを渡しトライをアシスト。相手防御にとっては、このルーキー#15がボールを持つと自身で仕掛けられるランと、ラインを生かす判断力とパス能力という、2つの攻め手を頭に入れる必要があるため、かなり厄介な存在になっている。現時点で、エディーはジャパンXVも含めた代表系メンバーには選ばれてないが、この日のパフォーマンスも含めてどう評価するかも注目の存在だ。

 

それにしても上ノ坊22歳、植田23歳、そして粗さも見せたがリーグワン屈指のダイナミックなミッドフィールダーとしての魅力を湛えるタリは21歳と、すでに輝きを放ち始める原石が神戸のBKラインに並んでいる。願わくば、桜のジャージーに袖を通すまでには後1年以上かかるタリを、優勝を手土産にオールブラックスの指揮官に就任しようとしているデイブHCが、自分の新天地へ持ち帰らないでほしい。科の国には、他に才能あふれるCTBが五万といるいるはずだ。まだ粗削りとはいえ、この21歳とディランのミッドフォールドコンビは、是非桜のジャージーで拝みたいものだ。

 

そして、思いは1週間後の国立へ向く。FWの重量感、圧倒的なフィジカルに、BKも強さとスピードを併せ持つ西の鉄人は、リーグ戦1位の地力を見せつけた。この最強のファイナリストと国立の舞台で対峙するのは熊谷の野武士か、はたまたベイエリアの〝槍〟か。野武士が勝ち上がれば、リーグ随一の防御と圧倒的な攻撃力を持つヘビー級チームとの一騎打ち、〝槍〟ならヘビー級同士の重厚な〝殴り合い〟のような決戦になる。

 

何れが勝ち上がるのか、そしてキャラクターの異なるどちらとの決勝も、楽しみでならない80分だ。

 

 

 

 

今日の準々決勝第2戦。主役は本来、後半を圧勝したスピアーズなのだが、やはり書き残しておくべきはリッチー・モウンガだろう。

 

リッチーの日本での挑戦が終わった。

 

ブレイブルーパスの一員としての、最後の試合での囲み取材。

左瞼を縫い合わせた姿で現れた#10 は、チームを離れることに Yeah,Really Sadという言葉から語り始めた。その思いは、御託を並べるよりも、話したこと全てをお伝えした方が、皆さん喜ばしいだろう。どこかで、あらためてコラとも考えるが、取り急ぎ12分を超えるリッチー最後の言葉を書き残しておこう。

 

【リッチーQ&A】

「先ず、負けたことは寂しいですが、何よりも東芝での日々が終わってしまったことが一番寂しかった。振り返るといい記憶がたくさんあって、特に東芝で作り上げた友情が何よりも素晴らしいものだと思っています。

 

日本での経験は、人生を変えたと本当に考えていて、記憶を思い返してみると、全てが素晴らしい。特に家族と一緒に日本に来て、新しいライフスタイルを、新しい場所でやっていくのは本当に良かった。最初の2年で言えば、まるで夢の中にいるような経験でした。何もかもが上手くいって、本当に最高でした。

 

(試合後にリーチとハグ)

もうこれで終わりなんだと思うと寂しくて、その思いだけでハグをしていた。もしかしたら、これで二度と一緒にプレーすることは無いかも知れないということもあって、寂しく感じたんです。

 

(試合直後はグラウンドに座り込んでいた)

そうですね、ベストを尽くしました。今回の試合に勝てるように、本当に持っている物全てを自分自身出し切ったし、チームの皆もそうだったと思います。けれども3連覇するというのは、本当に簡単に出来るようなものじゃない。だから、勝てなかったが、全力を出し尽くして終われたのは誇りに思います。

 

(マルコム・マークスへの好タックルもあった)

大きな選手だからね。マークスは勿論そうだし、クボタは本当に素晴らしいチーム。リーグのスタンダードを高めてくれた存在で、対戦する時はこちらも常にベストを尽くさないと勝てないのは分かっている。なので、そういう気持ちで頑張ったし、その点は感謝をしています。力を引き出してくれるいい相手でした。

 

(終盤、ご自身のいいランもあった)

疲れたよ。正直、疲れ過ぎて何も言えないが、3年間(メディアの)皆さんにも本当に感謝したい。日本でのラグビーの普及にすごくいい影響を与えられたと思うし、自分にも、東芝にも興味を持ってくれた。それを更に発展してもらうことで、リーグワンのこの3年を振り返ると、すごくいいエリートレベルのリーグになってきていると思います。その一端を担っていると思うので、すごく感謝しています。僕自身も、そこに少しでも関わることが出来たことを嬉しく思います。

 

(この先のキャリア)

正直、先の事は分からない。何故なら、まず一番大事なことは、次のシーズン1年間頑張って、オールブラックスに選ばれることが大きな目的になる。そのために、ベストな状態で新シーズンに臨むには、コンディションを整えていくことに全力を尽くすことしか今は考えていないからです。なので、その先はまだ分からないのです。

 

(日本のファンはまたリッチーのプレーを観たいと思っている)

そうですね。まだ先の事は分からないですが、何度も言うように、この3得年間の日本でのプレーは本当に最高の経験であり、最高の記憶でした。いつもNZに帰ると皆に話しているが、日本に行く機会があれば、絶対に行くべきだと。生活様式はすこし違うが、日本での生活も素晴らしいし、リーグもいい。ファンの人たちもいつも話しているように最高で、自分のことをすごく応援してくれて、スタジアムに来るといつも自分のホームのように思わせてくれる素晴らしい人たちです。皆、僕の子供のギフトまで準備してくれるようなファンたちがいるので最高のリーグだと思っています。

 

(何が一番恋しいのか)

食べ物かな。それとビールね。それに生活様式かな。すごくシンプルでチルなライフスタイルをしやすい環境だと思う。NZに帰ると、まだすこし違うことになるけれど、それが一番恋しいかな。

 

(府中の馴染みの店ますだやにも行けなくなる)

そうだね。僕が沢山お金を使ったから、居なくなると残念だが閉店すると思うよ(笑い)。

 

(日本のファンへのメッセージを)

本当に感謝してもし切れないくらい最高の経験をさせていただきました。NZに帰る時には、自分の心の中に日本の心を持って帰ろうと思っているくらい本当に日本が大好きになりましたし、家族も含めて最高の時間を過ごせたと思います。すごく感謝しています。

 

(東芝に来季どんなチームになってほしいか)

それは分からない。でも、NZで東芝ブレイブルーパスファンとして見ていきたい。ファン目線でこれからの東芝が楽しみです」

(以上)

 

 

試合終盤の独走を見ても、リッチー自身のスタンダードでは、切れ味のあるランではなかった。股関節の痛みがあったと聞いたが、その影響もあっただろう。もし、この試合で勝利しても準決勝、そして決勝ないし3位決定戦でも、そのパフォーマンスは変わらなかったように思う(本人は否定するだろうが)。ノーサイドのホーンで、ピッチに胡坐をかくような姿勢で座り込んだ姿を見て、やはり足に来ていたと感じざるを得なかった。そんな意味では、リッチー自身が認めたように、出し切った80分だったのだろう。

 

ただ、社交辞令も、母国では支払われないほどのサラリーも踏まえた上で、この3年間の府中でのピッチ内外の生活が、リッチーには予想した以上に満足のいくものだったのは間違いないだろう。

 

日本への復帰には、一切言及しなかったのは、なにやらこの先を想像させたが、この3年間の日本への、そしてブレイブルーパスへの愛着は、実は1シーズン目の言動、形振りでかなり感じられたものだった。

 

手前味噌ではあるが、文末に2年前のコラムを参考文献代わりに――