ロス・プーマスの〝出で立ち〟を見て、唸らされた。
直ぐに感じたのはもう一つのフットボールのことだった。

 

丁度40年前にメキシコを舞台にした、あの「神の手」の戦い。

相手も同じUKを支配する王国であり、さらに4年を遡るフォークランド紛争(ホスト側からだとマルビナス戦争)で一戦を交えた国。

 

この日、古都サンティアゴ・デル・エステロの、まるでコロッセオのような美しいエスタディオ・ウニコ・マドレ・デ・シウタデスに姿を見せた大型猫科動物たちの纏ったウェアを見れば、誰もが〝もよおす〟デザインだった。

 

まるでサッカーユニフォームのような半袖仕様のシャツは、ブルーの縦縞シャドーストライプに白の襟首と袖口のステッチ。おまけにパンツは黒というデザイン。メキシコの高地で躍動したあのディエゴが着ていたヤツだ。明らかに40年前の神話、そして44年前の屈辱、同時に北米で連覇に臨もうとするイレブンたちへのオマージュだった。

 

ゲームは、後半に追い上げをはかりながら〝白い壁〟に跳ね返される展開。最後はもやっとした幕切れではあったが、40年前ほどの〝疑惑〟じゃない。むしろ内容的は、ほぼ互角に戦えている。40年前のような歓喜は果たせなかったが、残り数分で演じた見せ場も含めて、この古都で「楕円球」に集まった市民に伝わるものはあっただろう。

 

この夜で、新機軸の大会は前半戦を折り返した。正確には、3フェーズのファーストラウンドが終わったと書くべきか。このゲームの数時間前の千駄ヶ谷の80分も然りだが、勝者も敗者も大会のタイトル、順位以上に、「この先」への確認やチェックに関心があるように感じる3週間だった。

 

皆さん関心があるのは、千駄ヶ谷のゲームかも知れないが、これはあらためて清書することにして、溜息が出るのは日本のスタジアムの貧困さ。否、11人のフットボールは着々と「器」も整えている。楕円のほうだけが、一見〝改革〟が為されているように見えながら、多くのものが着手も大ナタも振るえず、足踏みを続ける。

 

このサザンラウンド最終戦から、ホストユニオンが、様々なストーリー、メッセージを、工夫されたアイデアを通じて、ファン、ファン以外の市民に伝えようとしていることを学ぶべし。〝事業化〟を謳い、押し進めようとしたのは「主管」側だ。具体性を持ったイノベーションが無ければ、事業を加速するのも難しい。

 

 

▲桜のジャージーでもまだ定まらないインサイドCTBでスターター投入される

ソニくん。怪我に悩まされてきた男が、エディーの期待に応えることが出来るか

 

 

KOまで12時間。これが「もう」か「まだ」なのかは、受け止め方次第だが、薄暮ゲームまでの時間潰しにでも。

 

アイルランドへの苦杯も含めて重要な80分がカウントダウンに入った。

 

前売りチケットも5万を突破。関係者は「同じ国立でのリーグワンプレーオフ決勝が一つのチャレンジ」と、スティーラーズvsスピアーズの50451人超えを目指すが、まぁ代表戦とクラブ決勝が競り合うのもいかがなものか。見方を変えると、現状のジャパンはそのレベルともいえる。

 

で、昨日昼メシ前のメンバー発表。皆さまどんな受け止めを。

エディーは常に「現状ベスト」と言い張る(どのコーチもキホン同じだけど)が、すこし「うぅむ…」と唸ってしまう布陣。

 

確かにPR大塚の強さはどこまで通じて、通じないのか、新生エディージャパン始動から選ばれながら、怪我で未だ3キャップのCTBサミソニが本領を爆発させるかなど〝新しい力〟への期待感は無くはないが、一番のネックはやはり「相手」だろう。

 

世界4位ながら、ここまでの2テストを観ても、その破壊力と個人能力はハンパない。スターター15人の総キャップ数270。1人平均で18とかなり若い布陣。日本の216キャップ、平均14.4とも大きな差はない。1桁台のキャップ保有者7人、30キャップ以上5人も、日本の1桁8人(内1人0キャップ)、30キャップ以上4人と似たような経験値ではあるが、要所にはルク&ンタマックのHB団、今や欠かせない主力CTBモエファナ、FBでのテストにも十分に応えるジャリベルらを投入してきた。

 

 

▲せっかくこれだけ若手投入だと#9 もノンキャップで

と考えてしまうが、そこフランス。経験値も、今季

パフォーマンスも素晴らしいルク投入と抜かりはない

 

 

それ以上に、このチームの場合、所謂主力勢だけではなく、出て来るノンキャップ、一桁キャップ勢も含めて、そのポテンシャルは尋常ではない。ワインとバゲットだけで生きているフランス人とは思えない連中が楕円球に勤しんでいる。

 

で、注目すべきは、前週の苦杯についてのコラムでも触れている部分。

簡単に表現すれば、状況状況の中でどう「やるべきプレー、やってはいけないこと」を、個々の選手がしっかりと理解して、プレーを選択・遂行していけるか。

 

 

 

 

チームも(一部誘導尋問により)、メディアも、憑りつかれたように「ゴールド」というエフォート案件を騒ぎ立てているが、個人的に注視するのは判断、そして(ほぼ同意味での)プレー選択。ここをどうしっかりとプレーに出せて、しかも難しいことは、どうスコアに繋げて行けるかだ。いいエフォートをしても、いい判断をしても、ボールがトライラインを越えなければ意味はない。代表メンバー誰もが唱えるように「結果に拘る」のであれば…。

 

この世界4位との80分。すこし乱暴にいうと、結果的に若干ノーガードの打ち合いの展開になったとしても、自分たちの意図したプレーの中で、適切な判断でスコアを稼ぎ、相手に数字上上回られたとしても、しっかりと見て、判断して、防御するという作業が見せられれば、15カ月先に繋がるだろう。

 

メンバリングの上では、フロントローを全替え、LOは固定、バックローはポテンシャルの高いエセイを使ってきた。このルーキーキャッパに関しては、セカンドローが充実しつつある中で、もしかしたらこちらの〝サブポジション〟がメーンになる可能性も秘めている。まぁ、当面はまだ2、3列兼務のマルチパーパスの存在としての〝試用期間〟だろうが、後は、エセイ本人が指揮官にどこまでアピール出来るか。

 

アイルランド戦では結果的には裏目に出たベンチの6-2スプリット(ジャパンの場合は、ティアナン込みで5.5-2.5スプリットか?)を、性懲りもなく(というと少しネガティブ過ぎるか)再び敷いてきた。だが、前回は㉒SH、㉓SO/FB∔㉑WTB/CTBの布陣だったBKリザーブ2人が、今回は㉒WTB/CTB、㉓SO/CTB/FB∔㉑WTB/CTBという組み合わせ。一人#9の齋藤直人のカバーには、エディーが「JTSからSHの準備はさせてきた」と自信をみせる新鋭司令塔・伊藤龍之介が担う。

 

 

▲個人的に注目していたのは去就が取り沙汰されるDF担当

のショーン・エドワーズだったが、ピッチにその姿はなし。

すでにチームを離れているのか。そうなると、防御面での

タンダードをどこまで持ち続けているかも関心どころに

 

 

2024年からの新体制発足からSO-FBなどマルチポジションでメンバリングの工夫に執心を持ってきたエディーだが、今回も、否今回は、さらに1歩踏み込んだ、BKの控え全員が複数ポジションを担う一歩踏み込んだ「兼業体制」を組んできた。

 

エディーは、対フランスというカードについては「来年のワールドカップでの対戦は一切気にしていない。この大会での対フランスに集中するだけ」と、過去にも、そしてメンバー発表会見でも一貫して主張してきた。だが、この若き布陣、そして兼業選手の多さ等を鑑みると、テストマッチとは異なる意味での〝テストゲーム〟(勿論、プラクティスマッチとも異なる)を仕掛けてきているように感じてしまう。

 

より少ない人数の選手で、様々なポジションをカバーしていくことで、より少ない人数で、より効率のあるメンバリングを検証していると考えるのは、詮索好きという職業柄の弊害だろうか…。

 

だが、その詮索を後押しするのが、先にもすこし触れた「固定ポジション」と「非固定ポジション」の違いだ。〝ド〟が就く固定ポジとなりつつあるのはハリー&ワーナーの200㎝コンビ、SH、そしてアウトサイドCTBあたり。準固定が、今回〝総外れ〟のフロントロー(#2に関してはかなり競り合う展開。少なくとも14日の公開練習での江見のスローは素晴らしかった!)、そして#10、アウトサイドBKあたりか。

 

例えばフロントでは、総じて若い顔ぶれの中で、今回テストデビューの大塚やベンチから初キャップを目指すイジ―のような〝原石〟が、15か月でどこまでダイヤの輝きを見せるのか、それともまだまだ路傍の石なのか。そしてアウトサイドBKでは、ジョネ始め相次ぐ怪我組がどこまで巻き返せるかという不確実要素と、「今風のアウトサイド」として資質を持つ上ノ坊駿介のような存在の伸びしろ次第だろう。注目される#10も、長期離脱見込みの承信と、着実に経験を積む龍之介のマッチレースになりつつある。

 

この上ノ坊については、エディーも「ここまですこし怪我もあったので、ようやくメンバーに入って来た」と語るように、同じキャップ0組の伊藤龍之介の〝開幕ダッシュ〟と対照的に出遅れはしたが、龍之介同様に、どこまでテストラグビーで資質を輝かせることが出来るか、非常に注目される存在だ。まぁ、ハイボールコンテストのように対外国勢では困難さがあるポジションではあるが、そこでどうポテンシャルを見せられるか、先ずはお手並み拝見だ。

 

BRに関してはこれまで何度も触れてきたように、ゲームプラン、対戦相手等の戦術・戦略、そしてコンディションで顔ぶれが変わるポジションだ。他ポジションのようにポジション分の「3枠」という争いではなく、複数名の選手がカバーしていくことになる。現時点ではFLとして下川くん、ベンさんがスターター、マイケル、ララトゥブアらがベンチを固め、そこにLOとの兼務で当確レベルのジャック、そしてテスト段階のハアンガナ、もう1人のマイケルらが陣取る。そこにコンディションでチームを離れタイラーといったところが主要な顔ぶれと考えていい。

 

フランスという若手も破壊力抜群のチーム相手に、どこまでパフォーマンスを見せられるか。もし歴史的初勝利が起こるとしたら、伏線には「キメ細かさ」があるかも知れないが、ここは勝ったらのコラムで扱えばいいか…。

 

チームは「マスト・ウィン」の鼻息だが、15か月のレースと捉えれば、興味深い試金石の80分間になる。

 

ⒸJRFU(以下全て)

 

 

14日朝には編集サイドがコラムをアップしてくれていたが、朝からの「代表」2チームの取材に、夜の私事で、だいぶ遅めのお知らせに。

 

世界3位との20—36。評価の分かれる結果ではあった。

付け加えるとしたら、コラムでも書いたように「1.6軍」の相手。

評価が分かれるというよりも、どんな観点から見るかによって評価が異なると書いた方が適切か。暴論すれば、どうとでも書ける試合でもあった。

 

ただ、ゲームパフォーマンスも含めて改めて考えさせられたのは、本番1年前のテストシーズンが始まって、何だか〝引っ掛かり〟があった「あの言葉」について。

 

 

 

 

まぁ、何度も繰り返したくないが、最上級の労力を自分たち自身に求めていくためのキーワード。こういうシンプルで、誰もが直ぐにイメージ出来るキャッチ―なワードというのは、組織を一つの方向へ進めるには重要なものでもある。我々メディアも、こんなのについつい飛びついてしまう。だが、事の本質を考えると、これが桜のジャージーがこれからの15か月、そして15か月後に幕を開ける「挑戦と試練」の全てを解決する〝魔法の言葉〟なのか…。

 

そこで、コラムで紹介したメインくんのコメントが、「!」というカンジのいいヒントになった。

 

メインが発言で意図したこととは違うが、コメントを聞いた時にアタマの中に浮かんだのは「そうなんだよなぁ」という思いだった。

 

 

15か月後の本番会場でのテストだったが、

それ以上の〝学び〟のあった80分になった

 

 

そう、昨今誰もがまさに金科玉条のように唱える〝呪文〟だが、実はそれは、誰もが頑張ればなんとか一定の成果は残せるものだ。勿論、個人差があるので、日本代表のスタンダードには届かない〝エフォート〟しか見せられない選手もいるかも知れない。だが、そういう選手は先ず〝宮崎〟に呼ばれる可能性は低く、万が一呼ばれても淘汰されていくものだ。

 

なので、ニューカッスルでの80分を観ていても両チームのプレーからは、エフォートは自分たちのラグビーを支える地盤であり、一つの〝目安〟のようなものだと読み取れた。No8として常にエフォートを見せ続けるジャック・コーネルセンが「エフォートとは、オフザボール(ボールに触れていない状態)でどこまで仕事が出来るかでもある」と単なる努力・労力だけではないとも説明するが、そこでの〝ワーク〟はまだまだ積み上げ途上だろう。

 

そんなオフザボールでのエフォートも含めて、そこから相手を上回るスコアを奪っていくためのゲームプランや、個々の判断といった練習で培ってきたもの、そして才能や経験が、ゲーム中のパフォーマンスを生み出すことこそが、勝利への重要なファクターになっていく。

 

代表チームが究極的に求めるのは、「よくやった」という努力賞、敢闘賞、もしくはお慰みではない。「勝利」という結果だ。当然のことながら、負けてもファンに何かを感じさせるプレーは蔑ろには出来ない。だが、どちらにプライオリティーがあるのかと問えば、回答は明らかだ。

 

勿論、これからも「エフォート」は代表強化の重要なキーになる。だが、「勝つ」というテーマ、しかも百戦錬磨の相手をスコアで上回るという困難な壁を乗り越えていくためには、「エフォート」を80分間続けるのは前提で、どう相手をノックアウトするパンチを創り上げることが出来るかが勝負になる。

 

 

 

ここまでの2試合∔1を見る限り、15か月後もこの2人がキーマンの勢い。相手

マークも厳しさを増すだろう中で、どう機能させていくかもコーチの腕の見せ処

 

 

繰り返しになるが、そこは戦術であり、個々のパフォーマンスであり、そのための純粋なスキルもあれば、個々の経験値が生み出す判断力が勝負になる。その個々の、そしてチームのパフォーマンスで完全に差を見せつけられたのが、コラムでも紹介した「ラスト12分の明暗」だった。そこを追求し、一定の水準(つまりスコアで相手に追いつき、上回ること)にまで持っていくことで、チームはようやくマイケルを筆頭に多くの選手、コーチが唱える「結果を取りに行く」というフェーズに入っていく。

 

諄いようだが、「全て勝ちに行く」という〝公約〟は2戦目でとん挫した(まぁ、全勝すると公言したわけじゃないが)。だが、アイルランド戦を観て感じるのは、曝け出された「勝つために足りないもの」を認識、チームで共有した上で、どう次には克服していけるかが重要だということだ。

 

格差を見せつけられたラスト12分は、まさに〝シャムロックからの学び〟と言っていいだろう。

 

すでに次戦の相手「ル・ブリュ」は首都圏で準備をスタートしている。

次のフィフティーンは、このチームの指揮官が好きそうな〝夏の若手登用〟の気配もするが、その一方で、過去2戦の1桁キャップ、テストデビューのポテンシャルを見ても、末恐ろしいというより即テスト戦力というフィジカルもセンスも持ち合わせているのは、昨今のこの国らしい。

 

予備軍U20がジュニア版ワールドカップでもNZを凌いでジュニア・ボカとのファイナルに進んでいる。41人のツアーメンバーの中で1桁キャップ33人にも及び、内5人がノンキャップだ。そこに不動のメンバーであるCTBモエファナ、HOペアト・モヴァカ、SOロマン・ヌタマック、FBでのテストも良好なマチュー・ジャリベールら主力も帯同する。つまり、シャムロックのワンランク下という相手ではない。

 

幸いなのは、このレベルのチームに、「12分」の次戦に追試が出来ることだ。

〝穴を埋める作業〟が続く。

 

 

 

刻々と2027年〝開幕戦〟会場でのキックオフが近づく中、すこし第2戦、とりわけ対戦相手についての考察を。

 

前週のワラビーズ戦。正直、内容はほぼイーブンという印象。すこし準備不足の世界ランク3位と、ホームのぶん? 準備していた同8位だと、こういうクロスゲームになるのか。否、やはりオーストラリア大陸を去ろうとしている名将の為せる業か…。

 

双方の攻守両面で顕著だったのは、フラット気味で尚且つショートレンジのパスを使いながら、バックドアもメリハリを利かせてギャップを作り、守る方も早い出足でアタックラインにプレスをかける昨今のトレンド。どの試合もこの傾向がある中で、そんなトレンドのショーケースのような80分に。「どの試合も」を書いたが、但し書きとしては、イングランドがフラットと深めのラインでのオプションも垣間見られたのは、この先興味深い。

 

おっと、考えるべきは純白のジャージーではなくエメラルドグリーンの方だ。基本の攻め方は伝統の敵陣ゴール前まで陣地を進めてのラインアウト→モール→フィニッシュという鉄板のプレー。だが、この日の「シャムロック」はその得意の空中戦で粗さを見せた。

ラインアウト失敗数はワラビーズの1に対して3。この不安定さが、ほぼ互角のゲームとなった一因でもある。今日の試合で、なんと優位に立つ「高さ」で再び苦しめられれば面白いのだが。

 

粗さという点では、ハイボールの処理も然り。反面、ワラビーズのボールチェイサー以外の選手のポジショニング、反応の良さも大きかったが、ここは身長の低い日本が優位に立つようだと面白い。SO伊藤龍之介-WTB植田和磨のホットラインを軸に、日本が精度で上回ることが出来るかは注視したい。

 

ブレークダウンに関しても、前週はワラビーズのモメンタムを、取り分け前半は圧迫するには十分じゃなかった。ワラビーズの2本目のトライも、彼らにテンポを作られながらバックドアを使って仕留められている。ここも日本が接点でのバトルでイタリア戦レベルのファイトが出来ればおもしろい。

 

但し、やはり怖いのはゴール前まで攻め込まれてしまうこと。ゴールラインを守り切るのは容易ではない。エリアマネジメントは、かなり重要なポイントになるそうだ。

 

すこし視野を広げて前週のゲームをみると、ワラビーズが防御でタックラーが思い切ってチャージをかける一方で、残りの選手はしっかりと次のフェーズを考えながらライン防御のセットアップを意識していた。ここは先に触れた、若干ホームチームが準備で上回ったのと同時に、去り行くHCを中心とした準備の賜物と感じている。

 

ビジターが、そこまで細かな準備、相手分析をしていないのではないかと感じさせた一方で、ゴールドジャージーの15人は、相手が何をして来るかを、概ねインプットしていた印象だ。27分のインタセプトからのトライも、そんな相手の陣形を読んでの防御プレスの中で、ボール奪取まで行きついた結果だろう。

 

数時間後の戦いでは、流石に〝ややホーム〟の相手も前戦よりは、様々な準備、修正はしてくるだろう。その中で、先発15人中9人を替えてきた。若干のローテーションはあるが、かなり「落としてきた」ことが、どう精度に影響するのか、しないのか…。いずれにせよ、その精度の歪のようなミスを、どこまで桜のジャージーがチャンスに、そしてスコアにまで持っていけるか。8か月前の完全アウエーは10-41と後半ボコられた相手。鍛えたワークレートによるエフォートで、どこまでフィジカルに対峙出来るかから勝負が始まる。

 

 

 

もうアイルランド戦メンバーも発表されましたが、毎度の代表戦あとの〝おさらい〟でも。

 

 

 

シーズン初テストとなるイタリア戦。皆さん、どんな採点でしたか?

マオリ戦後のコラムを読めば、だいぶ親切なトーンだとお察しでしょうは、昨季までの2年間の苦闘を考えると、イタリアとのテストも、やはり素直に70点以上は上げてもいいか。

 

今回のイタリア戦コラムは、なんだか自分でも取り留めなくポジティブ要素を並べてしまったけれど、要点は下記の2項目かな。

 

①    防御の熟成(とりわけ個々の責任感、そして3人のユニットとしての集散の精度アップ、さらに全体の防御オーガナイズ)

②    キック戦術の熟成およびキック、パス、ランのバランス

 

上記2項目は、コラムでも触れた部分、舌足らずな部分が混在しているのだが、要は段階的にチームとして機能し始めていると評価したい80分だった。多くの選手が特別な何かが上乗せされたのではなく、3年目の蓄積、チームとしての完成度の進化をイタリア撃破の要因に挙げている。

 

①の防御面は、#6ベンさんの驚異的なパフォーマンスが先ず大きなインパクトになったが、それにも引っ張られて、否、適切な言葉を選べば「助けられて」、FW・BKともに昨季以上の出来栄えだった。

 

ただし、タックル以外の要素も然りだが、コラムでも指摘した通り、アズーリの出来栄えはすこし踏まえておいた方がいい。6ネイションズの中では、〝若干ながら〟ではあるがヨーロッパベースのテストが多いチーム(とはいえジャパンほど長時間フライトにヤワだとは思わないが)。そこそこ気温抑え目だった試合前日のラマロ主将とのやりとりでも、やはり湿度はキツいものがあったし、チームのちょっとしたコンビネーションを見ても、「?」のプレーは少なくなかった。

 

つまり、日本での出来栄えも、8掛け、8割5分で見ておいていいだろう。

まぁ、それでも桜のジャージーの昨季までからの前進は認めたいゲームだった。

 

で、先ずその防御の熟成からだが、この部分、コラムでは端折ったが、HC代行ニールさんにも試合後の会見でも当然聞いたのだが、その答えはこんな内容だった。

 

「ディフェンスコーチのギャリーが本当にいい仕事をしてくれています。彼はすごく情熱を持ったアプローチで選手たちをコーチしてくれて、そこにエディーがアグレッシブな姿勢でディフェンスをしろとやってきたことで、今日のような結果になったと思います。日本の強みでもあるトランジションのところもしっかり出来ていた。ここまで拘って来た成果だと思います。でも、最終的にディフェンスというのは、張っているのは選手ですから。彼らが素晴らしい仕事をしてくれたと思います」

 

なるほど、なるほど。選手からはGG(ジージー)とも呼ばれるギャリー・ゴールドについては、昨秋のアイルランド戦後のコラムでも「さらっと」レベルで触れているが、 ニールさんの言葉どおりなかなかパッションと〝狂気〟を持って組織防御と個々のタックル力アップに磨きをかけているのだろう。イタリア戦後の取材で原田衛くんにも、GGさんの防御担当としての良さを聞くと、こんな話をしてくれた。

 

「(良さの)一つは情熱というか、ディフェンスってチーム愛というか、どれだけチームのために体を張れるかで、それがディフェンスの醍醐味だと思う。なので、システムもそうですけれど、どれだけ情熱を持って臨めるか。そういうところを、ギャリーさんはレヴューとか、個々のタックルについてもですが、指摘してくれるので、そこがイタリア戦は良かったのかなと思います」

 

もうすこし、なにか情熱以外の大きな(具体的な)エッセンスがあるようにも思うのだが、原田くんだけではなく、コーチ、選手揃ってギャリーさんのパッションの所を挙げているのは揺るぎのない彼の資質であり、誰もがインパクトを受けているギャリーのコーチとしての〝強み〟なのだろう。

 

ここら辺は、定点観測的にその取り組みを見られないのは残念だが、ゲームの中でのパフォーマンスとしては十分に頷ける成果を残していると言っていいだろうか…むしろ、ここからの相手とどこまでやり合えるか、合えないのかを見ていきたいところだ。

 

だが、これもジョン・カーワン以降のコーチが何度も指摘してきたことではあるが、日本選手が、1度のツアー、1回の合宿、1日の練習で見せる=積み上げるパフォーマンスの進化はなかなかのものになろうとしている。ここもチームとしての3年目の進化の大きな要因だろう。

 

イタリア相手の80分間を見ても、1対1のタックルでのヒットの強さ、ユニットとしての集散の確実さ、個々の判断もあるだろうが、連携し合いながらのオフザボールの選手の動き=ポジショニングと、昨秋以上のレベルに入ってきている。大会ウェブサイトを見れば明らかだが、イタリアがタックル総数172回の内ミスタックル16、ドミナントタックル5だったのに対して、ジャパンが153回中ミスタックル14、さらにドミナント10という数値が防御の勝利を指し示している。

 

前主将の方のマイケルは、事ある毎にこんな事を話している。

 

「練習は前ほどのキツさはない」

 

第1期エディージャパン時代は、まだまだ世界トップ水準の戦いにおけるゲーム理解度、スキル、そして決定的なフィジカルの格差を、徹底したハードワークでなんとか補ってき。だが、この第2期での大きな変化の一つは、所属チームでの積み上げも含めた個々の選手のフィジカル、スキル、ゲーム理解度の進化だろう。このような「ベース」の部分の上乗せの恩恵もあって、「第2期」では、マイケルの言葉通り以前のような時間、ボリュームをかけずにジャパンとしてのクオリティーを上げていると感じている。ここも定点観測不可能のため「感じている」としておこう。

 

そして、忘れてはいけないのが、ここまでの代表戦での積み重ねだろう。

 

自分自身も含めてだが〝外野〟はどうしても勝った負けたで一喜一憂するものだ。だが、エディーや、マイケルのような経験豊富な選手がいつも口にするのは、数年前と比べて飛躍的に組めるようになったティア1クラスとのテストマッチの増加だ。

 

簡単な比較を紹介しておこう。

エディーの2度も含めて直近3回のHC就任2シーズン目のテストマッチの数字だ。6か国対抗およびラグビーチャンピオンシップ参戦チーム(実質ティア1)とそれ以外のティア2(もしくはティア3)との対戦数の比較だ。就任2シーズン目というのは、初年度、つまりW杯翌年のマッチメークが、日本、対戦相手双方にとってすこし不安定になることで、安定的に試合を組める2シーズン目という設定だ。

 

  【13年】 【17年】 【25年】

T1    4     5     6

T2    10     6     5

 

ここは、国際部門で手腕を発揮したJRFU岩渕健輔前専務理事(8月1日よりJRFU会長補佐)、国際部のメンバーらの貢献およびエディーら現場の一部〝口利き〟もあっただろう。喫緊の代表戦を振り返っても、昨秋のロンドン・ウェンブリーでの南アフリカ戦後に、選手は日本でプレーする多くの同国代表選手とのテストについて「リーグワンでの対戦とは全く違っていた」と〝本気〟の世界王者を思い知らされている。

最近代表選手も盛んに口にしている(半数以上はメディアの誘導でだが)〝ゴールド(エフォート)〟について、イタリア戦後にマイケルが触れていて、後半に所謂ボコられたアイルランド戦後についてこんな事を話している。

 

「ゴールデンエフォートというキーワードがありますが、昨季のアイルランド戦後半のメンバーがあまりパフォーマンスが良くなかった。それを修正して、今回は週の始まりからインパクトを与えられるように意識してやってきた。個人としてはタックルミス、ノックオンがあったので、しっかりもう一回やっていきたいと思います」

 

マイケル自身の反省は置いておいて、ダブリンでのアイルランド戦後半の惨敗でのワークレートが非常に低かったことを、次のシーズンにはかなり修正出来ているのは、秩父宮での80分でも良く判る。こんな負けからの学びや直接肌で思い知らされた格差が、世界のラグビーの中で自分たちの置かれた座標や、足りない物を実感させられたことで、「国内でいちばんいい選手が集まるチーム」を「世界で勝つには足りない物ばかりのチーム」に意識変革させ、貪欲に成長を求める空気感がチーム内に醸造されてきているのだろう。

 

だいぶ長たらしく書き綴ったが、2番目に上げたキックを交えた戦い方でも、「ゲーム理解度」のアップが大きな要因になっている印象だ。コラムでも何度も触れてきたが、ティア1ネイションズとの対戦で痛感するのが、個々の選手のゲーム、試合展開を読む能力の差だ。このエリアの差が、結果的にプレー瞬時瞬時に自分がどう動けばいいか、何に備えればいいかという判断力の差にもなる。結果的に、対戦相手が日本より適切に、早くに、次のプレーに動いて日本が後手を踏むというシーンは、何度も味わわされてきた。

 

この現実は今も続いていると感じているが、イタリア戦を観ると、準備段階でのコーチング、インプット=事前のお約束も含めて、桜のジャージーも「どう動けばいいか」という領域で、なんとか世界10位と渡り合えている。アズーリのファーストトライは完全に個人技でやられたが、コラムでも触れたが、むしろ17分の右展開からの松永拓朗のトライや、遡っての前半9分、15分など随所で見せたSO伊藤龍之介とWTB植田和磨とのドンピシャのキックチェースなど、ジャパンの意図したアタックが機能して、トライシチュエーションまで持ち込めているのは評価していい材料だ。

 

経験値に裏打ちされた判断力は、なかなか差を埋められない究極の差でもあるのだが、日本代表はそれを組織連携やゲーム、戦術理解の深化でなんとか埋め合わせようとしている。このエリアも、引き続き、さらにレベルの高いエメラルドグリーン、トリコロールのジャージーとのゲームで、どこまで対抗出来るのかに注視していきたいものだ。

 

先にも書いた通り、ハイボールの選択や、ラン、パスとのバランスについては、予想以上に伊藤龍之介がいい選択とスキルを見せている。ここも結果的に、彼のアグレッシブなゲームスタイルに直結するのだが、コラムでも紹介したイタリア代表HCゴンサロさんの言葉に、外交辞令ではない部分があると信じたいところだ。ま、それがお世辞だとしても、桜の#10がここまでの160分で見せたものに何の遜色もないのは間違いない。

 

テストラグビーという舞台では「小ささ」「フィジカル」というマイナス面は間違いなくある。だが、どのポジションも共通ではあるものの、ゲームで15人と15人が対峙したときに相手に「嫌だな」「面倒」と感じさせる10番はそう多くはない。それを感じさせる21歳を、残る15か月でどこまでテストラグビーで本当に遣り合える10番に仕上げることが出来るのか、時間切れで選外になるのか。ここは、コーチの腕の見せ所だ。

 

個々の選手の評価は、2027年10月へのセレクションも交えてコラムの方で書いている。ネタ証しをすれば、27年へ向けたセレクションの部分は〝ぶろぐ〟からの引用も多々あるのだが、そこはお許しを。なのでココ(個々)についてはココ(此処)ではそこまで奉らないでおこう。〝記入漏れ〟した何人かはいるが、そこを網羅すると結構な文字数にもなるものだ。

 

さて、時間は「試合後」より「試合前」という段階だ。無事チームに合流したエディーは、オンラインのメンバー発表会見でこんな意気込みを語っている。

 

「この大会、最初の週はいい成績を収められた。非常に印象深いスタートが切れましたし、素晴らしいラグビーを展開出来た。アイルランドはイタリアとはまた異なるチームですし、様々な脅威をもたらす相手です。先週よりもポゼッションが多くなるとは思いますが、我々はディフェンスの向上に拘って準備を進めてきた。そこでしっかりとラインを上げていきたい。ポットで仕掛けてくる相手にクイックラックでボールが出るとアタックが優位になるという展開も想定して、そこのエリアに着手してきました」

 

そう。多々あるフォーカスポイントの中でも一つの焦点は防御でありコンタクトエリアでのバトルになる。シャムロックのジャージーの男たちは、まずしっかりとこのエリアでの制圧を挑んでくる。そんな勝負で注目したいのは、個々のワンオンワンタックルでイタリア戦のクオリティーを見せられるか。その後の組織防御を着実に履行できるか。そこが一定のレベルでパフォーマンス出来るとしたら、次に伊藤龍太郎を軸としたアタックで、どこまでバリエーションを持って世界3位を苦しめられるかという勝負になる。

 

因みに、2027年での日本の開幕戦(vsサモア)が行われる舞台(会場)、ニューカッスルでの試合について指揮官は

「今はアイルランド戦に集中している」

エディーらしい対応で会見を終えている。

 

あ、このタイミングなので、アイルランド戦メンバーについても触れておこう

 

 

リンク通りだが、スターターの変更は一時離脱の石田吉平に代わりメイン平のみ。メインが力を発揮するチャンス到来であるのと同時に、この変更の無さは、本気のテストの雰囲気に包まれていいものだ。

 

イタリア撃破で見所が増えた次の中間地帯戦。対戦相手がかの国に居座っての2戦目と考えると、若干日本がアウエーなのか…いずれにせよ、前週土曜日に世界10位に浴びせた固い防御と、バリエーションを増やすアタックで、どこまで世界3位を苦しめられるのか。

 

勝負の時まで、あと2日余りに迫る。