第2ラウンド決戦前日となりました。

既に両チーム顔ぶれも出揃い、皆さまどんな想像力で土曜分を思い描いているでしょうか?

 

〈一応、ご参考までに第1Rもの〉

 

 

桜はスターターの総キャップ253、1人平均16.9と第1ラウンドより更に〝若い〟布陣で、平均25.6キャップ(総キャップ384)のホストに挑む80分。約9キャップという双方の経験値差を考えると、第1ラウンドと同等か。キックオフ前々日午前中のエディーHC、ワーナーCptのオンライン会見を少々紹介しておこう。

 

メンバーリストを見て、2つの質問をした。

 

①    CTBとしての上ノ坊駿介の評価

②    3試合ぶりのリザーブSHの起用

③    3試合会場のピッチコンディション

 

エディーが上ノ坊について触れる時に何度か「CTB」という単語を使うのがすこし気になっていたが、交代投入どころか早くもスターターで使ってきた。①の回答として指揮官はこんな評価を語っている。

 

「複数のプレーが出来て、柔軟な選手だと見ています。しっかりしたスキルセットも持ち合わせているし、プレーする意欲も強い。チーム内では、タウンズヴィルのゲームは非常に速い展開になると考えているので、上ノ坊には適していると考えて決めたんです」

 

それが「ない」とは言はないが、上ノ坊がインサイドとしてどこまでスピードでインパクトを出せるのかは正直定かではない。天理大時代のSO、そして神戸でのFBでのプレーブルを見ても、ミッドフィールダーとしても、おそらくそう悪くはないだろうが、実際にそこまでミッドエリアで彼のランやラインを動かすプレーぶり、エディーの言う「速さ」を見たことがないからだ。まぁ確かなのは、フィジカリティー、縦への強さを買ってここまでスタートで起用してきたサミソニとの相対的な評価として、速い展開に適しているという解釈はあるのだろう。

 

 

 

 

上ノ坊の場合〝速さ〟もさることながら、神戸での#15でも頻繁に見せたノールック、トリッキーなパス、オフロード…。このスキルで、もしゴールドジャージーの防御網を崩すシーンが幾度か創り出せれば、ミッドフィールダーとしての株もそこそこ跳ね上がるだろう。CTBの顔ぶれを見ると廣瀬雄也の不在は惜しまれるが、以前にも触れたようにまだまだ〝ディランの相棒〟探しは続く状態の中で、1つ選択肢が増えることになるかも知れない。

 

同時に、もし上ノ坊にCTBとしての可能性が出てくれば、従来は#10とアウトサイドBKをベースに回していた複数ポジションでの選手兼業に、SO-CTB-FB(WTB)と更に幅が広がることになる。伊藤龍之介はSOプロパーだとしても、矢崎由高をBKスリー中心(意表を突いてのSOコミ)、そして上ノ坊をCTB兼アウトサイド+SOという柔軟なマルチポジション編成を組める。勿論、この若手にFBベースで#10にも上がれる松永拓朗、サム・グリーンも、この〝マルチポジションサークル〟に加わることになる。

 

②については、指揮官は素直にこう説明している。

 

「上ノ坊と同じ理由で、速い展開になるということがある。齋藤については十分手応えを感じていますが、80分フルの試合を2試合して、尚且つ長いフライトもあった。その負担も顧慮しての判断で、それと同時に上村も今回非常にいい練習をしていた」

 

このゲームこそ、齋藤直人がフル稼働する展開になってほしいと願いつつ、ここまでの〝巡り合わせ〟も踏まえて、SH2人体制もやむを得まい。メンバリングで、個人的に感じたのは、かなり調子のいい植田和磨をベンチに下げる必要はないのではないかという疑問。21歳の司令塔との相性も抜群のアウトサイドだ。復帰2戦目の矢崎由高、この試合で復帰の木田晴斗のいづれかキレている方と植田くんのスタート、もしくはアカクロ4年生を終盤の〝超フレッシュレッグ〟として使ったほうが面白そうだ。

 

①②に対する説明も相まって③は更に興味深いものになったが、エディーによると芝はそれほど短いわけではないものの、固い地盤というオーストラリアのグラウンドの伝統的な傾向には似ているようだ。

 

このご時世、世界のどこでもグラウンドのピッチの造成は新しい技術で改善、均一化されていると考えてもいいはずだが、実際にはそうでもない。各国のグラウンド状態は、まちまちというのが現実だ。実際にタウンズヴィルのピッチが伝統に則っているため固いのか、偶然そういう作りになったのかは不明だが、そもそも往年のワラビーズが世界を魅了したショートパスを駆使したランニングラグビー自体、この固い地面を生かしたスタイルと言われてきたものだ。エディーは「速い展開になるだろう」と語ったのは、ピッチの固さ以上に、数日前にこのスタジアム(QLDカウンティバンクスタジアム)で行われたNRLブロンコスvsルースターズの12-82というハイスコアのゲームの印象が影響しているようだ。

 

因みに余談ではあるが、会場のカウンティバンクスタジアムだが、古の2003年RWCで日本が3試合を行ったデイリーファーマーズスタジアム(DFS)とは全くの別物。DFSよりも更にダウンタウンに近く(10分かからず)、2020年にオープンした最新鋭ヴェニューだ。

 

エディーの見立て通り、このピッチが速いゲーム展開を生み出すのなら、サクラにとってはNZやUK地域のようなぬかるんだピッチよりは「超速」を生かせる期待は高まるのだが…果たして。ただし、ゲームの肝になるのは東大阪で露呈したサポートの不十分さ、反応の悪さをどこまで修正できるのかだろう。まぁ、その集散、サポートの悪さも、固いピッチがマイナスに働くことは無いだろう。

 

同時に軽視できないのは、対戦相手も酷暑の東大阪で見せたような、プアなハンドリングミスで得点機を潰すようなプレーは大幅に改善される可能性だ。オンライン取材に応じた松永くん情報だと、気候は日本の春程度で「1枚(服を)羽織る程度。ラグビーをやるには最高の状態」という。先週の数多のトライチャンスをぶち壊しにするパスミスが、固いピッチと乾いた空気のおかげで修正されるとしたら、日本の失点はそれなりに高まってしまうリスクも孕んでいる。

 

勿論試合展開次第ではあるが、テストマッチで勝つには、やはり失点を20点以内に抑え込みたい。ジャパンは、あれだけのワラビーズのワンドリングを中心としたミスに助けられても前週35点を許している。失点を振り返れば、勝ったイタリア戦は10点に抑えたが、アイルランド36点、フランス42点と20点台には抑えられていない。反則数もほぼ10点前後と、ワーストではないが、そこから相手にスコアを許すケースも目につく。ここは、不要な反則を減らして、失点のリスクを更に回避することもポイントになる。

 

 

 

 

既にタウンズビルのメンバーも発表されたが、ワラビーズ戦第1ラウンドについてのおさらい。日本代表に託けて、実はマイケルについてという内容だが、この37歳の「いま」と「これから」に注目している。

 

 

 

 

先ずはコラム内でも紹介した〝Tackle per minutes〟つまり1分換算での平均タックル回数0.43が示す通り、いま与えられた立ち位置での仕事は、かなり高いクオリティーで果たしている。折に触れて何度か書いてきたが、この天性のスキッパーについては、第2期エディージャパンという〝時制〟では、やはり「年齢」という敵との戦いにどうしても思いがいってしまう。

 

誰もがこのレジェンドの存在に疑いを持たないのかも知れないが、個人的に思うのは、この齢で世界トップ8突破を目指すチームで戦い続けられるのか、それとも…。昨年ロンドン―ダブリンと直接見て回ったモチベーションの一つも、この男の37歳のパフォーマンスを、ボカ、アイルランドという半端ない相手との戦いで確かめたかったから。生憎、本人の早々の離脱で、十分には見届けられなかったのだが…。

 

で、この夏のテストシリーズでの戦いぶりだ。テスト4試合全て「20番」でプレーした。1試合平均のプレー時間は26.5。ベンチ組では、まぁまぁのプレータイムとも言えるが、もの凄い期待感のある長さでもない。ワラビーズ戦は〝最短〟の20分だった。勿論、per minutesの数値は、この短いプレータイムも後押ししたものだが、その一方で、他のベンチスタート組で、この数値をマークした者もいない。なので、20番としては「いい仕事」をしているという評価でいいだろう。

 

となると、スタートかベンチかという議論も浮上する。ここに正解はないのだが、エディーには迷いはないように思える。どこかで聞いてみよう。スタートから60、70分と消耗しきるまで起用するより、今の限られた時間帯でいい数値を出すことのほうがチームにも本人にもプラスではないか。ここはしかし、相対的な問題でもある。つまりベン、下川というスターター勢の成長と期待感との関係で、マイケルには20分、30分をフルスロットルで活躍してもらうことがベターチョイスということだと解釈する。ちなみに、分換算でのタックル数に触れてきたが、タックルの成功率は9/9、つまり9回入って全て成功というのがワラビーズ戦でのパフォーマンスだった。

 

あと14か月。エディーはシーズン前には「8月にはメンバーの80%を決めたい」と話していたが、13日の〝第2ラウンド〟メンバー会見では「80.5%かな」とかなり順調にメンバーが固まりつつあることを示唆する。そんな状況の中で、多くのファン、関係者はマイケルを不動のメンバーと疑わないかも知れない。数値を見ても、かなりの評価を得ていいものだ。だが、刻々と進む年齢との戦いを踏まえて安泰かは予断を許さない。さらに、先にも書いた通り、セレクションは相対的な戦いでもある。新たな力が台頭すれば、誰かが後退する。それが、20番をつける男であっても何ら不思議はない。

 

では、マイケルが争うBRの顔ぶれはどんな状況か。この夏、ここまでの4テストでBRとしてメンバーリストに書き込まれたのは下記の7人だった。

 

ベン、下川、ジャック、マイケル、ティアナン、エセイ、マキシ

 

ワラビーズ戦では、怪我からマキシが復帰するとジャックがLOへと回っている。このパターンを考えると、No8はマキシが僅かながらファーストチョイスとも読める。他ポジションとの兼ね合いも含めて8番をフィジカリティー優先で考えればマキシ、機動力、サポート力重視ならジャックという塩梅か。ジャックが兼ねるLOも、高さ、重さにフォーカスを置くゲームならワーナー、ハリー、そして〝3番手〟でマイケル(大)の3枚がいる。

 

かなり固定化されつつある印象だが、ここに、この夏はコンディション等で不在のBRもいる。

 

タイラー、ワイサレ、アマト

 

ここらが妥当な顔ぶれだろう。都合10人。ジャック、アマトは2列&3列として、概ねこんなメンバーで、14か月後の登録枠を争うことになる。ここで、37歳がどこまでプレゼンスを見せることが出来るのか。そう容易な争いではないと感じているが、少なくともここまでのテスト4試合でのタックルで評価を得ているというところだろう。

 

コラムでは「3点差」に関連してキャップ数という題材で書いたこともあり、スタッツ関連はすこし控え目にしている。まぁ、書く程顕著なものでもなかったこともあるのだが、それでも興味深い数値もある。

 

        JPN             AUS   

テリトリー   55%   45%

ポゼッション  53%   47%

パス回数    203    153

キャリー回数  135    104

ランメーター  447    276

 

 

2023RWCを前後して、従来はゲームを優位に進める目安と考えられてきたこのような数値があまり勝敗に関係ないという傾向は変わらないのだが、それでもジャパンが攻撃を〝優位に〟進めてきたのは間違いない。優位が括弧付きなのは、これはスコアまで辿り着いたかではなく、あくまでも攻撃時間、ボールを持ってプレーする時間が指し示されただけだからだ。だが、それでも僅か3点ながら勝利に届かなかった。

 

ここも数値で見てみよう。レッドゾーン(22mライン内)侵攻回数と得点率だ。

 

        JPN       AUS

22ML侵攻回数 10回(2.9点)  10回(3.8点)

 

スタッフでも「3点差」通りまさに僅差ではあるが、同じ回数攻め込んでいても、仕留める能力では数値が逆転する。ここを、エディーは会見で「ファンダメンタルなミス」という要因を挙げ、コラムではその主だった現象として「孤立」をその理由として書いている。ここを、どう克服していけるのか。実際には、第2期エディー体制がスタートしてから、このエクスキューションの領域は常に課題であり続けるのだが、初冬まで続くネイションズ選手権などティア1ネイションズに胸を借りながら、仕留める力を上積みしていくしかない。

 

ちなみに、13日の会見でエディーはチームに渡り鳥の映像を見せたことを語っている。先頭の鳥の後に他の鳥たちが続き数千㎞も飛び続ける姿を、ボールキャリアーを他のサポート選手が追走する姿勢にオーバーラップさせてのことだ。

 

組織的な連動による攻撃という観点から見れば、コラムでも触れた後半4分のWTB植田和磨のテスト初トライは、ジャパンの「獲り方」の取り組みを感じさせるプレーだった。連続攻撃の中でNo8マキシファウルアがブレークダウンを作る。実はここはワラビーズが接点に人数を掛けずにライン防御をしっかりと整えてきていた。この日のワラビーズの防御を見ると、前半20分のジャパンのバックドアを使った攻撃への対応力などを見ても、かなり日本のアタックを分析していたと感じられる。ここらが、初陣ではあるがブリスベンで采配を振るったレス・キスHCの手腕かも知れない。

 

そんな相手防御の中で、植田のトライは、ブレークダウンからファーストレシーバーとなったFL下川甲嗣の後方深い位置に伊藤龍之介、植田が位置取りすることで、相手防御がマークしづらい状況からパスをスピーディーに繋いで防御を突破している。コラムで植田のポジショニングに触れたが、すでに伊藤の立ち位置からして相手防御は対応しづらかったはずだ。ブラインドから伊藤、植田が連続して沸き上がるようなランで防御を攪乱してのスコアはエディーのチームらしいものだった。

 

そんなトライの取り方が出来ても、80分間を通した戦いでは3点及ばないというのが、いまのジャパンの実力を物語る。余談にはなるが、この植田も、伊藤のテスト初スコアもファイントライではあったが、この試合でのベストトライはワラビーズが後半開始直後の左展開から5回のオフロードを繋いで奪ったプレー。あのスキルとインプロバイゼーションは、まだまだ桜は及ばない。

 

ポジティブにみれば、あと1トライまで勝利は近づいているという解釈も出来るのだが、得点機だけではなく、簡単にスコアを許すシーンや、接点での孤立など、チームは80分の中でいいパフォーマンスとそうではないプレーを繰り返しているのが現状だ。この良さと悪さのバイオリズムのような波形を、どうフラットなグラフに変えることが出来るかが、この先のテーマでもあるのだろう。

 

ニュー〝ヘア〟スタイルのTKくん。網走で指導を受けたもう

1人のTKさんへのオマージュではなく「気合」だが、

うやらここ2試合程度限定というので、大坂の陣で見納めか…

 

 

真夏の大阪でのランク8位と10位の激突が近づいてきた。

今回の旅(どこぞの馬鹿県会議員センセイのように〝旅行〟とは言わない!)では、会うべき人や神仏・物の怪が多く、「前打ち」を充分には書いていないので、キックオフ当日の朝に、付け焼刃如しの辻褄合わせ文章をアップしておこう。

 

6日は双方発表したメンバーを見ると、キャップ数ではビジターの8位が1人アタマ、テストマッチ10試合多くプレーしている公算だ。

 

■先発15人の総キャップ数

ワラビーズ   426

Bブロッサムズ   276

 

異例のシーズン途中での指揮権の移譲となったが、新HCはこのスターター布陣に、ベンチにはビリー(21キャップ)、タニエラ(70)やテイト(53)という経験豊富なメンバーを用意。不測の事態にも十分対応出来る顔ぶれだろう。

 

 

 

 

昨秋の対戦は、ホストの15-19。だが、このスコアを語るには、キャップ数を忘れちゃいけない。当時の先発15人の平均は日本の20.9キャップに対してワラビーズ21.9と、ほぼ似たような経験値のチーム。因みに、ワラビーズは宿敵NZとの前戦から13人もの先発を入れ替えた試合だった。

 

相手布陣を見ると、要所にいい駒を揃えている。とりわけ強力なのはBR。ブレークダウンでの仕事人フレイザーに、フィジカル抜群のロブ、そしてボールキャリーのハリー主将と、それぞれがそれぞれのBRとしての魅力を持つ。この3列を、ガンちゃん、下川くん、復帰のマキシが、どう好きなように暴れさせないファイトが出来るのか。そして、彼らを相手に日本の超速をクリエート出せるのか。

 

もう一つ、興味深いのはミッドフィールド。スイアリイは既に不動の存在だが、インにはレンではなく日本に定住するハンターを入れてきた。有無を言わさない縦への強さが、ゲームの軸になると読むのは早計か。理想を言えば、シンプルに、縦に仕掛けてくる相手は確実に倒して、レンのように、ラインも生かせるスキルも持つボールドライバー不在の相手に、攻撃面で優位に立てればいい。#13 には何度かブレーク、そしてオフロードでのチャンスを造られたとしても、そこを最低失点に抑えられるかがキーになる。

 

アウトサイドも、トップランナーが揃う。彼ら3人がボールを持った時ではなく、どう生きたボールを持たせず、スペースを作らずに戦えるかという「パスの前」が勝負だろう。

 

 

 

 

ジャパンで見たいのは、フランス相手にやられたハイボールでの攻防。ここは、かなりやり込んできていると聞いた。どこまで、ルーズボールのコンテストも含めてボールを持てるかに注目したい。その一方で、過去のワラビーズは、独特の放物線を描くような捕球ジャンプを見せてきた。このキャッチングを今回もしてくると、コンテストシチュエーションでどう競り合うかは工夫が必要になるかも知れない。

 

いずれにせよ、どんな戦術を使おうがラグビーだ。先に触れたBR中心のブレークダウンの攻防で、相手に対抗して、自分たちのテンポを継続できるか。そして、スコアチャンスにもなるハイボールコンテストで、ある一定数以上にボールを持てるか。前日練習を見る限り、戻って来た矢崎くんが、相手に見えづらい位置からエキストラマンとして走り込むアタック、ティアナンをアタックラインに入れてスピードで仕掛けるプレーあたりが見られる時間帯まで食らいつければ、冒頭に書いたような力のある今回のワラビーズ相手にも興味深い展開もあるかも知れない。

 

 

 

日本海外特派員協会でのティムの会見をコラムに。

 

 

この案件、昨年5月のブリーフィング後にまとめたものから、正直、自分自身の〝見方〟は基本的に変わらなかった。参考までに、昨年のコラムも貼っておこう。

 

 

すこし予想外だったのは、昨年5月の発表から1年ほどの期間に、リーグが、不利益を被るであろう選手たちと膝を突き合わせるような話し合いをほとんど出来ていなかったことだ。コラムを書いた時点では、数カ月の内に話し合いが持たれて、新たな落としどころが模索されると信じていた。

 

だが、それでも自分のスタンスが昨年からキホンは変わらなかったこともあり、今回の会見についての出稿は、エントリーでお力添えをいただいたジャーナリスト柳田通斉氏に〝お任せ〟のつもりで、ティムがどんな話をするのか、同席した〝差し止め〟も担当する弁護士がどんな視点でこの案件を見ているのかという関心で出向いていた。

 

それを予定外にコラムにまとめたのは、会見の内容もさることながら直後にリーグワン側がリリースした〝短文〟が後押しした。編集サイドも、このリーグサイドのリリースの内容も鑑みて、コラムにGOサインとなった。

 

コラム内でも書いたように〝和解〟には数日から数週間という見通しだが、ティムたちに〝幸運〟だったのは「ワールドカップ」だ。〝超法規措置〟で続投する土田雅人JRFU会長が、鼻息を日々荒くしている2度目のRWC実現へ向けて、今回の案件が海外ラグビー有力国の中で「差別的」と捉えられでもしたらたまったもんじゃない。たとえそれが憶測の範囲だったとしても、いらない火の粉は立つより前に消しておきたいのは明らかだ。コラムでも書いたリリースの英語版がまさにこの理由のためだが、この観点からだと、むしろ〝火消し〟に時間がかかり過ぎたようにも思える。

 

おそらく基本的な部分では、ほぼ合意に至っているのだと思われる。後は、どんな〝基準〟で、つまり誰が特例の対象になるのか。ティムと共に訴え出た23人は、概ね「A1扱い」というシナリオが妥当とは思われるが。

 

ウンザリだったのは、一部の〝声〟が、この案件を、あまりにも勧善懲悪のストーリー仕立てで語ろうとしていたことだ。リーグや協会は「悪」、選手は「善」。1歩譲って一ファンがシンパシーから選手の側に立つのは自然な判断かも知れない。だが、いま日本のラグビーに起きている深刻な競技人口という問題を真剣に考えるのなら、リーグ及びJRFUが今回のような〝線引き〟を考えるに及んだ思考は、決して良手ではないにしても理解は出来る範疇だ。

 

 

会見にはティム(中央)、牧野弁護士(左)に加えて、ジャーナ

トで桐蔭学園中、国際基督教大、留学した米コロンビア大

グビー部だった神保哲生氏(右)もコーディネーター役で登壇

 

 

すこし脇道に逸れるが、高校生レベルの普及状況でも、部員不足の高校チームを鑑みて容認、導入された「合同チーム」を、それこそ良手だと考えているのであれば、かなり危険な現状認識だ。合同チームの監督さん、選手たちが、どんな不条理な環境の中でワンチームになる努力を続けているか。そんなスポットの当たらないエリアを、彼らの目線で見つめることからしか、よりマトモなソリューションには至らないだろう。この3年間ほどの高校ラグビーを見ていても、花園での勝った負けたは急速に関心を失い、部員不足や、この春初めて取材が実現した釜石での〝全国大会〟に心を動かされているのも、そのためだ。この秋冬から春先にかけても、どちらか一方しか取材出来ないのであれば「東大阪」ではなく「釜石」を選ぶだろう。

 

で、規約のマターだ。おそらく今回は、訴え出た24人への新たな措置、カテゴライズに終始するだろう。だが、例の「義務教育6年」などという規約は、すこし検討するべきものかも知れない。ここは、リーグワン案件というだけで考えるべきではなく、留学生等も網羅した、統括団体の方策として構築するべき案件だ。

 

規約内容の拙さと同時に、発表から施工までの時間が2年だったことも、結果的にリーグ側に悪手となった。何度も触れたように、これから代表を目指す世代、憧れを持つであろう世代のことを考えれば、早急な対策を講じるのは理解出来る。だが、パスポートを変更し、自分や家族のロードマップまで書き換えて日本でチャレンジしようという海外選手にとって2年は決して潤沢なモラトリアム時間ではない。日本のラグビーキッズや、マネーゲームが進むチームへのメッセージとしての〝規約変更〟を迅速に打ち出しながら、デッドラインについてはもうすこし時間的な余裕を持たせてもよかった。

 

コラムからの繰り返しになるが、日本選手にどうラグビーに打ち込める環境を用意できるかというテーマはより迅速に、そして数シーズンというスパンで変えていくべきもの、つまり新たな規約、枠組みは、しっかりと時間をかけて、様々な声を聴きながら組み上げていくべきだろう。ティムが語ったように、リーグ、協会が、「ポーズ」としてのヒアリングはしていても、本気で何かを自分たちの取り組み、事業に反映したいという思惑で、所謂ステークホルダーから自分たちとは異なる〝声〟を聴いているとはあまり思えない。だからこそ、今回のような騒動が1年を超えて解決に至っていないのだ。

 

まだ決着には至っていないものの、今回の「A1、A2論争」も、日本ラグビーには重要な海外出身選手への、より公平なプラットフォーム構築には重要な案件ではある。だが、個人的に思うのは、何度も触れてきた〝日本の楕円土壌〟をどう豊かで生産性の高いものにしていけるかを、もう一度真剣かつ深刻に考える契機にしたいということだ。今回の、言わば〝パスポート議論〟も遡れば日本のドメスティックな環境の問題から生じている。この議論が、人権問題から普及の抜本的な問題を見つめ、考える場へと広がっていけばいいのだが、果たして…。

 

 

 

 

 

「20番宣言」もしたマイケル。まだまだスタートでの活躍も期待したい一方で、

年齢の陰りも間違いなく歩み寄る。経験値も武器に、どこまで突っ走れるか…

 

 

完敗に終わったフランス戦がらみのコラム。

観戦→取材→書き始めまでは、とある重鎮メンバーの目線で見た敗戦、そして3連戦というおはなしを考えていたが、軌道を修正。各々のチームメンバーの言葉を借りながらの「サザンシリーズ」の振り返りであり、夏の前半戦のおさらいというものになった。

 

 

 

 

すこし肩が落ちたのは、アイルランド戦残り12分での完敗からの「学び」は、国立ではなかなか見せられなかったこと。わずか1週間、しかも太平洋を縦に往復した旅路を鑑みればやむを得ないともいえるのだが。

 

敗戦後のミックスゾーンでも、マイケルはこんな話をしている。

 

「(ヨーロッパのチームは)上手かったし、しっかりと分析をしてきて相手の、ジャパンの弱点はこれだとやってきた。1週間という限られた時間があって、そこでどれだけ質を高く出来るか、またはいろいろな時間がない、いろいろモールを組まないと…対策はいろいろしないといけないと思います。3週間ですこしずつ良くなって、今日また新しいこともやられたので、改善していきたい。網走(合宿:7.25-8.6)は試合がないので数多くやりたいなと思います」

 

 

▲存在感は文句ない。残る1年、課題は怪我なしで本チャンも走り続けられるか

ⒸJRFU(以下全て)

 

 

すこし厳しい言い方なら、1週間単位で課題を修正していかなければワールドカップでも有効な改善は難しい。だが、先に触れた〝移動〟も含めて、いまのジャパンは迅速で明確な修正は、7日間では出来なかった。まぁ、アイルランド戦後のコラムでも書いた通り、とりわけあの12分間に色濃く見せつけられた「判断」の格差は、昨日学んで今日出来るといった類のものでもないだろう。要は、来年10月までにパフォーマンスおよびスコアに還元出来ればいいのだが…。

 

まさにマイケルのピッチ上での形振りが象徴するように、1つのプレーから次のプレーへ移行するエフォートは、選手も意図しているのは分かる。とりわけ、顕著なパフォーマンスを見せたのがインパクトプレーヤーとして途中出場したマイケルとティアナンだった。だが、マイケル、ティアナンに限らず、ピッチ上の15人が見せたエフォートが、フランスのウルトラフィジカルな相手に対してどこまで太刀打ち出来たのか。相手防御が、守り続ける中でジャパンのスピードにどこまで防御の破綻を作り、たまらず反則を犯したのか。ここらを総括すると、まだまだやるべきことは結構残されている。

 

 

▲マイケルと共にインパクトプレーヤーとして存在感をアピールしたティア

ン。この能力がベンチからの短時間がいいのか、それともスタートから

ングタームがいいのか。他の選手とのバランスも含めて思案のしどころだ

 

 

コラムでは、エリア=ポジションごとの出来不出来を書いたが、個々の選手を見れば、初夏の3∔1試合は、ABC3段階に評価を分けられる。

 

【A】

ベン、マイケル、ティアナン(特筆級)

ディラン、直人、ワーナー、ハリー、ジャック

【A’】

壮二郎、龍之介、雄也、拓朗、下川、吉平、和磨、颯、衛

【B】

柊平、崇人、エセイ、メイン

 

 

▲謙虚に「江良さんのトライ」とテストデビューでのトライ

振り返った大塚。ポテンシャルはかなりのものを秘める大

原石か▼選手評価は厳し目にしたが、そこは常にボールを

ち、判断を求められる存在。ミス少なくない。それでも、

この初夏シリー最大の収穫という存在なのは間違いない

 

 

【A’】卑怯にも、こんな逃げ口のような評価もしてしまったが、【A】評価の選手とは、どうしても同等ではないと感じた選手を差別化するために使ってしまった。この3段階での評価だが、すこし言い訳がましいが、【B】という評価は「中=凡庸」ではなく、このラインまでが「結構いい」と感じた選手。【C】は選手名を書き立てるのも野暮なので端折るが、勿論、名前を挙げてない選手=Cではなく、評価するほどに見られていない存在も幾人かはいるのだ。そして、このC範疇が「普通」から「よくない」という評価だ。なので、【B】に書いた選手を含めた選手たちが、高評価と考えてのリストアップになる。

 

 

▲スクラムワーク、ラインアウトスローでも成長を感じる

〝2番手〟#2颯くんだが、秋のシリーズでの追い上げは注目

 

 

まぁ、瞬間瞬間のプレーの積み重ねの中で、いいプレーもあればそうじゃないプレーもあると考えれば、このような差別化が適切かは疑問でもあるのだが、このシリーズを振り返ってインパクトを受けた選手という観点では、こんな評価になるという「目安」と解釈していただければという思いだ。

 

コラムでは、どうしてもポジション別の評価がメーンに見えてしまいがちかも知れない。だが、重要なのはその前に触れたエリアだ。世界トップ10界隈とは十分戦える一方で、トップ5には「差」をつけられてしまう。ここを、どう埋めていくか。ここが、初夏3テスト∔1の宿題であり、理想としては秋の最終週までに、例え負けても世界5位クラスと本当に「いい試合」が出来るまでにチーム力を伸ばせることが出来るか。まず、そのレベルに行くまでには怪我人も含めてメンバー編成を、もう1歩固めていきたいところだ。

 

初夏シリーズより更に充実した布陣で、どこまで真剣勝負をフルタイム演じることが出来るのか。コラム文末でも書いた通り、その緒戦のシーズンへ、ワラビーズとのゲームは非常に興味深い〝登竜門〟だ。