101回目のプロポ…否伝統の一戦。
すこし簡単に。
事前にSNSで呟いたように、紫紺がFWに拘り、過去100回と変わらずの緊迫の80分を勝者として終えた。
スクラムの苦闘は、神鳥裕之監督も「思っていたよりも圧力を掛けられなかった」と認めたが、それでも八幡山のフィフティーンは臆せずFWに拘った。開始直後のマイボールラインアウト。相手陣10mラインよりも手前だったがモールを組んで10mを押し込んだ。モール以外にも選択肢があっただろうが、迷いはなかった。
予断の許されない展開は続いたが、あの8人のパックを観て、なんだか幾何かの安心感も感じ取ったゲームでもあった。
その後も、何度もモールを組みじわりじわりと押し続ける。明治伝統の「前へ」をこのチームとして体現するプレー。前半31分には、ラインアウトからのモールで一度はサイドを突きながら、リモールを組んで、更にサイドを突いたFL最上太尊が、この試合のチーム初トライを奪い取った。
神鳥監督が振り返る。
「帝京戦を前に、特に学生たちが中心になって自分たちの強みというのを、しっかりと話し合った。答えとしてはね、明治はやはりFW。ここ中心にシンプルに戦うんだと。そういう戦いをすることでBKも生きる。帝京戦あたりから、そういう考えを皆が同じ共通理解の下で戦う準備が出来てきたというのが、今日の試合でも出たと思う。これはしっかり選手権まで持って行って、戦いたいと思います」
指揮官も指摘したように、帝京戦が選手を覚醒させた。シーズン開幕戦で筑波大に敗れ、帝京戦前の慶大との戦いは終了目前に18フェーズの猛攻を受けながら、相手の判断ミスで2点差で逃げ切った。チームは同じ方向に顔を向けているように見えても、個々に見ているページが異なるようにバラバラだった。それが、シーズン最強の真紅のジャージーとの勝負で一つになった。敵陣深く攻めこんだ後半24分の相手ペナルティー。PGでも、いまや大学屈指の選手が並ぶBKでもなく、FW勝負でリードを奪うトライを捥ぎ取り、ノーサイド目前の逆転決勝ペナルティートライにも結び付けた。
12月の第一日曜日も、相手の日本代表FB矢崎由高に華麗なフットワークと度肝を抜くスピードでスコアされても、愚直に、一貫してFWが前に出ることを前提とした戦いを貫いた。全てがFW一辺倒の勝負はしない。だが、FWが前に出ることで相手防御に重圧をかけ、2次、3次フェーズにモメンタムを作り出した。紫紺がマークした3トライ中2つは最上、つまりFWで仕留め、残り1トライはCTB東海隼が決めたが、それもPRの田代大介が相手のSO服部亮太のキックをチャージしてのもの。売り出し中の若き司令塔のキックモーションの大きさも頭に入れて、愚直に走り続けた巨漢の成果と称えていい。
白熱の戦いで、観戦した誰もが「?」となったプレーもあった。紫紺が18-16と追い上げられて迎えた後半27 分。再び服部にチャージ―をかけてのミスキックで掴んだ敵陣22mライン内でのラインアウト。モールを再び10m押し込んでの右展開で、パスを受けたFB古賀龍人が手前に弾いたボールを自ら好捕してグラウンディングしたが、レフェリーは古賀の捕球とほぼ同時にホイッスルを吹いてアドバンテージ解消による反則のジェスチャーをしていたのだ。
紫紺の選手が一斉にグラウンディングした位置を指差してトライだと訴えたが、ジャッジはそのまま紫紺のPKに。その場で、オンライン中継の画像を再生してもラインアウト→モール→右展開と反則は見当たらない。古賀が弾いたボールに他の誰かが触れていればトライは認められなかったはずが、それも確認出来ない。試合後の会見で、このシーンについてCTB平翔太主将に確かめると「レフェリーに確認したけれど、あれはトライだったということでした」というやり取りがあったという。その後、紫紺がモールからトライを決めたために大事にはならなかったが、レフはトライを決めた紫紺FW、そしてスコアラーの最上に感謝するしかないだろう。
このミスジャッジについては試合中からSNSなどで物議を醸していたようだが、レフェリーを詰る声に一言返す言葉があるとしたらこんなものになる。
「文句があるならアナタが笛を吹けばいい」
レフェリーに様々な意見があるのは周知のことだ。この試合に限らず、首をひねるようなジャッジも多々あるのは間違いない。だが、希望者も限られる中で毎週末の試合を、多くのレフェリーが全国のグラウンドに赴き、正直有難みは感じ難い〝経費〟だけで自分の週末を犠牲にし続けている。どんなにいいジャッジをしても、レフェリーが絶賛されるようなシーンはほとんどなく、何かミスや不明瞭な笛があれば、とりわけこの匿名性が大手を振るネット時代は容赦ない罵詈雑言が浴びせられる。
今回のケースでも「何故TMOを導入してないんだ」という主催者側へのイチャモンは正当性があるかも知れない。だが、ほとんど無償に近い待遇で、賞賛されることもほとんどない中で鍛錬を続ける31人目のプレーヤーを吊し上げる権利は誰にもない。
ここからは個人的な価値観に基づいた主張になるが、プロ化が進んだことによりTMO等の導入でジャッジの正確性、厳密さがさらに求められる時代ではあっても、ミスは起こり得るものだ。ミスもゲームの内で、それを楽しみたい。レフェリー本人は、ミスがあれば、そんな楽しむような心境ではないだろう。だが、レフェリーでも選手でもない観戦者は、ボールゲームを楽しめばいいのだ。
但し、忘れてはいけないのはミスは間違いなくミスで、弁解のしようがないということ。レフェリーはあの笛で、今後は同じミスは犯さないはずだ。今回、あまりにも明らかなものだったこともあるかも知れないが、その場でレフェリーが選手にミスを認めたのは、むしろファインプレーだったと解釈したい。あの場面で頑なに四角いものを丸だと主張しても、それは不当なジャッジをされた側にとってもフラストレーションや不信感、憤りだけを募らせることになる。確かに、あのジャッジ直後のラインアウトでのスローミスは心理的な動揺を感じさせた。だが、あの状況の中での咄嗟の判断でミスを認めるという最上のジャッジをしたと感じている。
再びチームに眼差しを向けると、神鳥監督にとっても現役部員にとっても初体験の優勝で対抗戦を乗り越えた。1位の〝ご褒美〟で、次のゲームは2週間後の関西学院大(関西3位)と福岡工大の勝者と決まった。帝京に続き早稲田を倒したことで、選手権制覇という大きなロードマップは見えてきたが、この日のスクラムやプレー精度では宿題も残している。神鳥監督が「接点とラインアウトモールの部分、FWの頑張りとBKのディフェンスという本当にシンプルな部分を80分間やり続けられたところが最後上回れたかなと思います。ただ、ここがゴールじゃありませんので、今日一日喜んで、明日からしっかり気持ちを切り替えて選手権を頑張っていきたい」と語るように、頂点に辿り着くためにはまだまだ磨き込む余地はある。
敗れたアカクロも、勝者と十分渡り合えるポテンシャルは証明した。精度の粗さはこのチームらしくないが、来週から始めるノックアウトトーナメントを勝ち上がりながらどこまで修正しているかが、敗れた真紅と紫紺にキャッチアップする鍵になる。
最後にスタンドの話を。終了近くのアナウンス「観客数は39084人です!」に歓声が沸いたが、個人的にはすこし肩が落ちる数字だった。事前に協会サイドから聞いた見通しどおりの数字ではあったが、どちらも勝てば対抗戦1位という実質上の優勝決定戦だったが、昨季の40544人に届かなかった。最近5シーズンでは2番目の入りではあったが、今でも必ず白熱の展開を見せる伝統の一戦も、コクリツという舞台を埋めるまでの集客力は無くなってしまったのか。
今季唯一の桜のジャージーの国立での試合もかろうじて4万台。リーグワンの開幕戦と呼んでいい来週、味の素スタジアムでのブレイブルーパスvsワイルドナイツも、現状4万に届かない見通しと聞く。
この日の見応えのある80分でも、茶の間や新橋の居酒屋に響かないとしたら、何かを変えていくことも必要だと考えるのが健全な判断だと思えるが、残念ながら楕円球の周辺からはそんな声は聞こえてこない。















