101回目のプロポ…否伝統の一戦。

すこし簡単に。

事前にSNSで呟いたように、紫紺がFWに拘り、過去100回と変わらずの緊迫の80分を勝者として終えた。

 

スクラムの苦闘は、神鳥裕之監督も「思っていたよりも圧力を掛けられなかった」と認めたが、それでも八幡山のフィフティーンは臆せずFWに拘った。開始直後のマイボールラインアウト。相手陣10mラインよりも手前だったがモールを組んで10mを押し込んだ。モール以外にも選択肢があっただろうが、迷いはなかった。

 

予断の許されない展開は続いたが、あの8人のパックを観て、なんだか幾何かの安心感も感じ取ったゲームでもあった。

 

その後も、何度もモールを組みじわりじわりと押し続ける。明治伝統の「前へ」をこのチームとして体現するプレー。前半31分には、ラインアウトからのモールで一度はサイドを突きながら、リモールを組んで、更にサイドを突いたFL最上太尊が、この試合のチーム初トライを奪い取った。

 

神鳥監督が振り返る。

 

「帝京戦を前に、特に学生たちが中心になって自分たちの強みというのを、しっかりと話し合った。答えとしてはね、明治はやはりFW。ここ中心にシンプルに戦うんだと。そういう戦いをすることでBKも生きる。帝京戦あたりから、そういう考えを皆が同じ共通理解の下で戦う準備が出来てきたというのが、今日の試合でも出たと思う。これはしっかり選手権まで持って行って、戦いたいと思います」

 

指揮官も指摘したように、帝京戦が選手を覚醒させた。シーズン開幕戦で筑波大に敗れ、帝京戦前の慶大との戦いは終了目前に18フェーズの猛攻を受けながら、相手の判断ミスで2点差で逃げ切った。チームは同じ方向に顔を向けているように見えても、個々に見ているページが異なるようにバラバラだった。それが、シーズン最強の真紅のジャージーとの勝負で一つになった。敵陣深く攻めこんだ後半24分の相手ペナルティー。PGでも、いまや大学屈指の選手が並ぶBKでもなく、FW勝負でリードを奪うトライを捥ぎ取り、ノーサイド目前の逆転決勝ペナルティートライにも結び付けた。

 

 

 

 

12月の第一日曜日も、相手の日本代表FB矢崎由高に華麗なフットワークと度肝を抜くスピードでスコアされても、愚直に、一貫してFWが前に出ることを前提とした戦いを貫いた。全てがFW一辺倒の勝負はしない。だが、FWが前に出ることで相手防御に重圧をかけ、2次、3次フェーズにモメンタムを作り出した。紫紺がマークした3トライ中2つは最上、つまりFWで仕留め、残り1トライはCTB東海隼が決めたが、それもPRの田代大介が相手のSO服部亮太のキックをチャージしてのもの。売り出し中の若き司令塔のキックモーションの大きさも頭に入れて、愚直に走り続けた巨漢の成果と称えていい。

 

白熱の戦いで、観戦した誰もが「?」となったプレーもあった。紫紺が18-16と追い上げられて迎えた後半27 分。再び服部にチャージ―をかけてのミスキックで掴んだ敵陣22mライン内でのラインアウト。モールを再び10m押し込んでの右展開で、パスを受けたFB古賀龍人が手前に弾いたボールを自ら好捕してグラウンディングしたが、レフェリーは古賀の捕球とほぼ同時にホイッスルを吹いてアドバンテージ解消による反則のジェスチャーをしていたのだ。

 

紫紺の選手が一斉にグラウンディングした位置を指差してトライだと訴えたが、ジャッジはそのまま紫紺のPKに。その場で、オンライン中継の画像を再生してもラインアウト→モール→右展開と反則は見当たらない。古賀が弾いたボールに他の誰かが触れていればトライは認められなかったはずが、それも確認出来ない。試合後の会見で、このシーンについてCTB平翔太主将に確かめると「レフェリーに確認したけれど、あれはトライだったということでした」というやり取りがあったという。その後、紫紺がモールからトライを決めたために大事にはならなかったが、レフはトライを決めた紫紺FW、そしてスコアラーの最上に感謝するしかないだろう。

 

このミスジャッジについては試合中からSNSなどで物議を醸していたようだが、レフェリーを詰る声に一言返す言葉があるとしたらこんなものになる。

 

「文句があるならアナタが笛を吹けばいい」

 

レフェリーに様々な意見があるのは周知のことだ。この試合に限らず、首をひねるようなジャッジも多々あるのは間違いない。だが、希望者も限られる中で毎週末の試合を、多くのレフェリーが全国のグラウンドに赴き、正直有難みは感じ難い〝経費〟だけで自分の週末を犠牲にし続けている。どんなにいいジャッジをしても、レフェリーが絶賛されるようなシーンはほとんどなく、何かミスや不明瞭な笛があれば、とりわけこの匿名性が大手を振るネット時代は容赦ない罵詈雑言が浴びせられる。

 

今回のケースでも「何故TMOを導入してないんだ」という主催者側へのイチャモンは正当性があるかも知れない。だが、ほとんど無償に近い待遇で、賞賛されることもほとんどない中で鍛錬を続ける31人目のプレーヤーを吊し上げる権利は誰にもない。

 

ここからは個人的な価値観に基づいた主張になるが、プロ化が進んだことによりTMO等の導入でジャッジの正確性、厳密さがさらに求められる時代ではあっても、ミスは起こり得るものだ。ミスもゲームの内で、それを楽しみたい。レフェリー本人は、ミスがあれば、そんな楽しむような心境ではないだろう。だが、レフェリーでも選手でもない観戦者は、ボールゲームを楽しめばいいのだ。

 

但し、忘れてはいけないのはミスは間違いなくミスで、弁解のしようがないということ。レフェリーはあの笛で、今後は同じミスは犯さないはずだ。今回、あまりにも明らかなものだったこともあるかも知れないが、その場でレフェリーが選手にミスを認めたのは、むしろファインプレーだったと解釈したい。あの場面で頑なに四角いものを丸だと主張しても、それは不当なジャッジをされた側にとってもフラストレーションや不信感、憤りだけを募らせることになる。確かに、あのジャッジ直後のラインアウトでのスローミスは心理的な動揺を感じさせた。だが、あの状況の中での咄嗟の判断でミスを認めるという最上のジャッジをしたと感じている。

 

再びチームに眼差しを向けると、神鳥監督にとっても現役部員にとっても初体験の優勝で対抗戦を乗り越えた。1位の〝ご褒美〟で、次のゲームは2週間後の関西学院大(関西3位)と福岡工大の勝者と決まった。帝京に続き早稲田を倒したことで、選手権制覇という大きなロードマップは見えてきたが、この日のスクラムやプレー精度では宿題も残している。神鳥監督が「接点とラインアウトモールの部分、FWの頑張りとBKのディフェンスという本当にシンプルな部分を80分間やり続けられたところが最後上回れたかなと思います。ただ、ここがゴールじゃありませんので、今日一日喜んで、明日からしっかり気持ちを切り替えて選手権を頑張っていきたい」と語るように、頂点に辿り着くためにはまだまだ磨き込む余地はある。

 

敗れたアカクロも、勝者と十分渡り合えるポテンシャルは証明した。精度の粗さはこのチームらしくないが、来週から始めるノックアウトトーナメントを勝ち上がりながらどこまで修正しているかが、敗れた真紅と紫紺にキャッチアップする鍵になる。

 

 

 

 

最後にスタンドの話を。終了近くのアナウンス「観客数は39084人です!」に歓声が沸いたが、個人的にはすこし肩が落ちる数字だった。事前に協会サイドから聞いた見通しどおりの数字ではあったが、どちらも勝てば対抗戦1位という実質上の優勝決定戦だったが、昨季の40544人に届かなかった。最近5シーズンでは2番目の入りではあったが、今でも必ず白熱の展開を見せる伝統の一戦も、コクリツという舞台を埋めるまでの集客力は無くなってしまったのか。

 

今季唯一の桜のジャージーの国立での試合もかろうじて4万台。リーグワンの開幕戦と呼んでいい来週、味の素スタジアムでのブレイブルーパスvsワイルドナイツも、現状4万に届かない見通しと聞く。

 

この日の見応えのある80分でも、茶の間や新橋の居酒屋に響かないとしたら、何かを変えていくことも必要だと考えるのが健全な判断だと思えるが、残念ながら楕円球の周辺からはそんな声は聞こえてこない。

 

 

 

12月3日に行われた2027年の〝ドロー〟についてのコラムをアップした。

 

この案件、結構「タラレバ」のハナシが多くなる。どう書くか――すこし悩んだ末、あまり生真面目の書くよりも、選手には申し訳ないが、すこしお遊びのマインドで書こうとキーボードを叩き始めた。

 

その結果が「プールB2位狙い」というものに帰結したのだが、皆さん2年後の戦いをどう考え、読んでいるのでしょうか?

 

 

 

 

6プールからのノックアウトトーナメントというフォーマット自体、いろいろな所に不具合がありそうだ。次回大会では微調整やフォーマットの見直しもあるかも知れないが、コラムでも触れた通り日本のドローについては、結構上手い事組まれたものだ。オーストラリアとの試合が与し易しでも、次の相手はイングランドが濃厚だ。スコットランドという難敵の後は日本が接戦を演じたフィジーないしウェールズ。 結局は「どこも同じ」に帰結するようだが、やはりベスト16越えは果たしたい。

 

 

 

 

JRFUおよびエディーは2019年の8強という過去最高位越えを唱えるが、前回(2023年)のプール戦敗退が起こした〝潮が引くような〟楕円球への関心度の減退を考えると、8強に辿り着くことの価値は軽視できないだろう。結果的に「ああ、前々回と同じなんだね」という、あまりパッとしない印象だったとしても、「またベスト8行けなかったんだ」と無関心さが増長してしまうより遥かにいい。もし16強を突破して8強越えに挑むなら、賞味期限1週間だったとしても日本全土に広がる関心と期待感という波紋は価値のあるものではないだろうか。

 

ま、御託を並べても所詮すべては憶測の世界のはなしだ。エディーも力説するように、目の前のゲームに集中するようなマインドで、まだまだトップ10には届かない桜のジャージーを、2003年のオーストラリアで命名されたBrave Blossomsに仕上げることが優先事項になる。

 

 

 

11月最後の週末は府中から北青山へ。

カーディフでの深夜のオンラインもあり、2日間で3.5試合を堪能した。

 

先ずは土曜日の試合から。

SNSでも呟いたが、調布での〝歴史的な1勝〟がかかる「大学公式戦」と府中での「シニアリーグ練習試合」を天秤にかけると、前者の勝利=14シーズンぶりの快挙への〝王手〟よりも、カード、メンバーで〝重み〟を感じた後者を選び、後ろ髪を引かれつつ甲州街道を西へ進んだ。

 

一部代表組の不在を差し引けば、ほぼガチメンという狼と槍による昨季リーグワン決勝のリターン戦。しかも代表組でも、スピアーズCTB廣瀬雄也、ブレイブルーパスLO伊藤鐘平と既に実戦復帰している若手もいる戦いだったが、注目のホスト不動の#10以上にビジターの再加入#15のパフォーマンスが際立った。

 

敵陣レッドゾーンでの、余力を持ちつつのフットステップで防御を崩してのチーム初トライ、そして加速するラインアタックに参加してのドンピシャのキックパスなど、自身の1トライに加えて、トライアシストでも連発して充実ぶりを見せつけた。

 

この#15のプレーを観戦しての印象は、昨季の短期参加でリーグワンの良さも悪さ(弱み)もかなり掴んでの〝2シーズン目〟。そんな質問を本人にぶつけると、こんなコメントが返って来た。

 

「言われた通りで、昨季数試合出たことで日本のラグビーへの理解が深まったし、後は2、3カ月というプレシーズンは久しぶりだったが、長い挑戦でいい調整も出来ているんだ」

 

 

 

 

昨季はチームに合流して、1月18日の第5節ブラックラムズ戦で途中出場して国内デビュー。次節から先発#15を張り続け、5試合をプレーして古巣・チーフスへ一部帰京していた。その5試合半で吸収した日本のラグビーで、今季はシーズン前の段階で、自分のスキルをどう生かし、そして、ここで相手防御を惹き付ければどこにスペースが出来るかをしっかり把握しながらの余裕を持ったプレーが目立つ。個人技だけではなく、仲間をアシストするプレーでも、チームの得点力、攻撃力アップでさらなる貢献を見せそうだ。

 

現状の契約期間は、次回ワールドカップ開催前シーズンの2027年までと聞く。つまり、代表キャップを持つ母国の誇りではなく、船橋でのプレーを選んだことになる。2シーズン覇権から遠ざかるチームにとっては大きな戦力アップに、某関係者がオフレコで「昨季決勝で、もしショーンがいたら」と話すのも無理はない。

 

密集戦近場のパワーゲームで右に出るチームは多くはない。そこに日本ラグビーを掴んだ〝王国〟トップレベルのアウトサイドBKがフルシーズン参加することで、攻撃のバリエーションは各段にアップする。そんな期待感を沸き起こさせる。

 

ちなみに、敗れたホストは、際どい辛勝→惜敗→惜敗という結果で開幕に臨むことになった。「うちはいつもこんな感じのプレシーズンだから」とある首脳が苦笑を浮かべたが、昨季に続き「王者」として臨むだけに、シーズン序盤戦の不用意な黒星が順位に及ぼす影響も踏まえてキックオフを迎えたい。開始直後のドンピシャタックルから攻守にインパクトを残し続けたCTB眞野泰地のパフォーマンスが光る。LOワーナー・ディアンズ、HO原田衛というコアメンバーを海外挑戦で失う中で、眞野はじめ残った連覇メンバーが、どこまでブレイブルーパス基準のクオリティーを保ち続けることが出来るかが注目だ。

 

 

 

 

翌日の秩父宮は関東大学リーグ戦の優勝及び順位諸々を決める戦い。

選手権進出、入替戦進出はこの日の試合による大きな番狂わせなかったが、土曜日に〝後ろ髪を引かれた〟釜利谷のスカイ&マリンブルーのフィフティーンが、14シーズンぶりの選手権進出は称えたい。

 

土曜日の自らの勝利で王手を賭けたが、確定は日曜日の秩父宮第1試合の勝敗にかかっていた。首位に立つ東海が、いつものように苦戦を強いられながら流通経済を下したことで、待望の選手権帰還を確定した。かのチームの全盛期を取材し続けた身としては感慨深いが、この日リーグ戦最終日に赴いたのは他に大きな理由があった。結果的に、2001年シーズン以来となる2年連続での選手権進出失敗となった龍ヶ崎の暴れん坊チームで、人知れずメンバー表に名を書かれた1年生に会うためだった。

 

隈江隆希

 

彼との〝出会い〟は作戦12月だった。東大阪・花園での全国高校ラグビーのピッチに、宮崎・高鍋の細身の15番として立っていた。その柔らかだがピンポイントに仲間に繰り出すパス、そして正確なキック、こちらも柔らかさを湛えるフットワークと、地味ながら異彩を放っていた。

 

昨年12月30日のSNSにささやかに書き残していた選手だが、1回戦での素晴らしいパフォーマンスを見ながら、その試合後は別件の取材で話を聞けず、2回戦も同様に「マスト」な他ゲームを取材中に、敢え無く引き分け、抽選〝敗退〟で花園を去ってしまった。

 

 

 

「この才能が、どんな進路を選ぶのか」そんな思いで、様々な関係者に聞いて回ったが、誰もが口を揃えて「わからない」。同じ九州の強豪校を率いる監督が「隈江くんは3年生の秋になってようやく花園に間に合った子だから、そのポテンシャルを分かっているリクルーター、大学関係者は全国区では多くないだろう」と話していたが、この龍ヶ崎のチーム関係者は中学生時代からその才能を認めていたとも聞いた。

 

この試合のメンバー表でも身長172㎝、体重79㎏と、決して目を惹くサイズではない。1週間前までヨーロッパで激闘を繰り広げてきた桜のジャージーに手が届く保証も、何もない。だが、その相手との間合いやスペース感覚、そしてボールを扱う柔らかさ、しなやかな動作は、「最高峰のラグビー」という範疇とはまた別物として惹き付けられるものを秘めている。

 

試合後、1年越しで初めて話を聞いた隈江くんは、終わってしまったばかりの新天地でのシーズンを、こう振り返った。

 

「最初はFBからSOに転向して慣れていなくて難しいところもあったが、春からずっと下のチームでチャレンジし続けたことは、今日全部出し切れたと思います」

 

後半11分からの人生初の秩父宮でのプレーは、1年前の西の聖地ほどに〝フレア〟は見せられなかった。ゲームプランのハイパントを測ったように落として求められる仕事は果たしたが、本領を見せるのは来季からだ。その可能性に、韓国代表でFBとしてプレーした流通経済大の池英基監督も、流暢な日本語でこう言及する。

 

「1年生ですけれど、キック力もあるし、思い切って前に仕掛けるプレーも出来る。怪我もあったが、もし早くに復帰出来ていたら今日も十分スターティングメンバーで出られた選手。1年生だし無理は避けて、後半シビアなゲームになると思っていたので、キッキングが勝負になるというところでリザーブで使いました。(初めての)秩父宮であれだけ出来たことに対しては評価したい。来年はSOとして中心になる選手だと期待しています」。

 

高校1年で前十字靭帯を痛め、翌年も同じ箇所を負傷。最終学年で、ようやく〝聖地〟でそのポテンシャルを見せたが、怪我という内なる敵との戦いはキャリアが続く限り終わらない。池監督の期待に応えるには、常時プレー出来るコンディショニングがパフォーマンスの前提だ。

 

「怪我した時というピンチがチャンスだと自分の中で考えています。高校の先生からもずっと言われてきたんです。チームから離れている時に、それをどう取り戻せるか。自主練習や、誰よりも早くグラウンドに来て、最後まで練習やウェートをしています。それをこれからも続けて、来年から僕らがRKUを国立に連れていきたい」

 

大学生としてのルーキーシーズは敢え無く「全国」に手を掛けながらリーグ戦4位で終わった。2年生で挑む来期の目標は明らかだ。怪我をどう克服して、レギュラージャージーに定着するのか。高3の冬、負けずに終えた「全国」というストーリーは、まだエンドロールが終わっていない。

ⒸJRFU

 

 

トビリシのおさらいは、総括会見とセットで。

いつものパターンだが、ジャパンもクロークパーク見学もせず早々の帰国になったので取り急ぎ。

 

 

 

 

諸々賛否の声が聞かれるのは、「1勝」の後も当然ながら変わらないセレクションについて。非常に建設的な〝クレーム〟と、結果、つまり目先に見えたモノだけを論っての文句という2つの罵声が聞こえる中で、すこし優し目のコラムと自認しているが、いかがだろうか。ここでは、コラムに書き切れないもの、敢えて除外したものについて、すこし書いておこう。

 

先ず、セレクションについて。

コレは〝明確に〟念頭に置かなければいけないのは、選手選考は監督、HCの特権事項だということ。大袈裟に言えば、この権限を持つから代表監督(HC)だと言ってもいい。

 

勿論、赤羽の千ベロ呑み屋でのネタや、ハンドルネームという隠れ蓑を纏っての陰口は勝手だが、明確な〝対案〟、つまり「何故〇〇選手が選ばれずに□□選手が選ばれるのか」をしっかりと踏まえない、いわば「なんとなくセレクション批判」の空気感に、幾何かの〝ネガティブ派〟が包み込まれたまま文句をつけているように感じる。繰り返すが、これを〝酒の肴〟にするのは全くを持ってOKなこと。但し、マジメにセレクションを考えるなら、雰囲気や風潮に後押しされたような主張はご法度だ。

 

そもそも、2年前にこの体制が始まってから一貫してきたのが「若手起用」だ。そこから一貫してその危うさを唱えてきた声は、或る部分は頷ける。だが、芳しくない結果が出てから、既に2年前から生じているセレクション案件を声高に唱えるような〝後だしジャンケン〟を、曲がりなりにも「メディア」というフィールドに立つ者がしているとしたら、それこそそちらの方が問題だ。一言で言い表せば「見識不足」で片付けられるものではあるとしてもだ。

 

 

 

 

まぁ、そんな憶測領域のハナシはこれくらいにして、遅ればせながらチームがようやくチームになり始めたツアーだったというのが〝食後〟の感想だ。そこを見届けたかった(勿論「なり始められなかった」というケースも含めて)からこそ、安航空券とエアビーを駆使して2週間の旅をしてきたが、記者席のテーブルを何度か叩きながらも、僅かな1歩1歩を見られたのは、一応収穫と受け止めている。

 

そこはエディーや、エディーが評価するギャリーACらのエフォートが反映されているだろうし、ツアーで感じるのは日本選手の「木目細かさ」が武器になりつつあるという感触だ。確かにフィジカル、ジェネラルスキル、経験値は、戦ってきた相手(特に負けた3試合の相手)に一歩譲るしかない。だが、日本の優位性があるとしたら、それは食べ終わった後の食器のようなものだろう。勿論「例外」はどこにでも在るのだが、今回のロンドン、ダブリンの旅でも、レストランで食べ終わった食器を見ると、大きな文化の違いを感じざるを得なかった。

 

 

西洋文化圏の人たちを中心に、多くの人たちが、日本人の感覚では驚く程の食材を、皿に残している。食材とは書いたが、それは小さな肉野菜片であり、米粒レベルの些細なものだが、我々極東の島国では子供なら必ず親から「ちゃんと食べなさい」と叱られる、デートならすこし彼女(彼)の採点が下がるレベルの食べ残しだ。

 

その背景にあるのは、多くが生き物から作られる食物への感謝、包丁を入れ、火を入れた人への感謝、日々食を口に運べることへの感謝を尊んできた価値観だ。狩猟民族であり、闘争でより豊かで広い領土を勝ち獲って来た文化では、自分が力で奪い取ったものとしての当然の権利として獲物を口にするのに対して、日本ではあらゆるものへの感謝の思いを忘れない。それは、先日某放送協会で放映された茶器一つへの思いの込め方、小さな道具一つにも見出す慈しみなど、食以外でもあらゆるもの、神羅万象に至るものへの眼差しに通ずる価値観でもある。

 

このような些細なものにまで注ぐ眼差しや拘り、現状のものを更に研ぎ澄ませようという職人気質は、この国の文化の中に取り込まれる者の多くが継承、共有するものでもある。それを、もし西洋で築かれた楕円球の競技に生かすことが出来れば、それが日本の強みになる可能性はあると考えるのは些か理想主義的過ぎるだろうか。本来狩猟民族が生んだこの競技、その強化課程を見ると、多分に農耕民族のような取り組み方が多分に重要に思えるのも「日本らしさ」が意味を持つという思いを後押しする。

 

だが、こんな考え方は、人生の第4コーナーを曲がろうとする老体の妄想だけではない現実もある。楕円球のフィールドで最初にその可能性を口にしたのは、かのJKことジョン・カーワンだった。

 

サクラのHCに就任して1回目のワールドカップを終え、2期目をスタートした時のブリーフィングで、こんな発言をしていた。

 

「コーチたちとも話し合う中で日本人の賢さを感じてきた。それをもっと伸ばしていきたい」

 

世界最強のWTBと言われた男の指摘する「賢さ」こそが、コーチから指示されたことは生真面目に、徹底的にやり抜く日本選手の取り組む姿勢だった。自国やコーチ経験豊富なイタリアでは、文化的な背景も含めて選手個々に持つ「自我」が、コーチが組織として選手に求めるものと衝突を起こすことがあるが、日本選手は(良し悪しはあるものの)コーチからの指示を徹底して全うしようという姿勢を★★滅私奉公しようという文化レベルの価値観に★されている。それが90年前の愚かな殺戮にも繋がったのかも知れないが、JKは我孫子と桜の第1期政権での経験で、銃ではなくタックルで戦うバトルで武器になることに気付いていた。

 

勿論、抜け目のないエディーも、その傾向には直ぐに気付いていた。第1期HC時代に、この日本選手の勤勉さに触れて、冗談交じりにこう語っていた。

 

「日本の選手は『やれ』と言われたら日が暮れてもやり続ける。これをオーストラリアでやれば、選手は直ぐに家に帰ってしまう」

 

このような米粒一つでも皿や碗に残さないような「躾」という領域の細やかさを、現状以上に個々と組織の防御、タックルスキルやブレークダウンスキルに生かして、圧倒的なパワーやサイズに抵抗できれば、日本らしさはさらに高まるのだが、あと2年弱という歳月でどこまで伸ばしていけるのやら。だいぶ妄想領域へ暴走したが、それ以前にやるべき事は山積でもある。

 

コラムの中で名前を挙げた人物が、果たして〝入閣〟するかは兎に角、適材を招き入れ、コーチ体制を固めて、チームの磨き込みを加速させていくことが急務。その中で、「閉じられつつある」と書いたセレクションの門戸から、必要なピースをしっかりとスコッドに入れ込み、メンバー面でどこまで100%の水準に近づけていけるかも楽しみではある。

 

エディーは、帰国した羽田で「LOとCTB(13)」と補充が不可欠なポストを明言する。つまりワーナー、ようやく桜のジャージーを手にしたハリーをカバーする人材、そして不動の13ディランの〝表裏〟となる存在の補充が優先事項になる。

 

セカンドローについては、そこらを見渡しても他の選手よりも頭一つ高い人材は隠れているものではない。船橋のパワフルな2人、そして国内王者に在籍するもう1人の2m選手あたりが、高さに加えて日本選手にないフィジカリティーやスキルを持ち併せた存在だ。個人的には静岡にいるマリーを桜のジャージーで見たいものだが、ここまでのセレクションを見る限りは未だに〝サクラ〟には遠い立ち位置だ。

 

アウトサイドCTBについては、LOほどの領域に達している素材は豊富とは言い難いが、個人的には、ここまでも何度か名を挙げている技巧派でもある相模原の住人ハニテリ、WTBでのプレータイムが長いが同僚のジョアペ、ここらがポテンシャルでは磨きがいのある素材だろう。エディーの日本での〝古巣〟でプレーするイザヤが居住年数で難しいなら、インサイドでの出場が多いが切れ味鋭いランを見せるチャンピオンチームのロブ、オールラウンドに計算が立つ船橋のリカスあたりが、スピードも踏まえて圏内だろうか。

 

カタカナ名ばかりが上がったが、漢字の選手に必要だと感じるのは、直人、衛に続くことだろう。近々ドローも行われる〝祭典〟まで残り2シーズンを切ろうとしている段階では、あまり現実的ではないかも知れないが、このツアーでも不十分さを感じさせたスキル、フィジカル、ナレッジを上げるには海外挑戦は真剣に考える必要がある。

 

ツアーで何度も見せた判断力や遂行力の足りなさは、日本の国内ラグビーという〝温室〟ではなかなか伸ばせない。確かに多くの海外トップ選手が流入してきてはいるが、リーグや協会関係者による「世界最高峰のリーグ」などという声高な主張に、強化や選手育成というフィールドに立たされる人間は騙されていけいない。日本でカテCなどと呼ばれている選手が数人出場するリーグと、そのカテCクラスが10人、15人いるTOP14やスーパーラグビーで、どちらがより高度な経験値を自分にもたらすかを考えれば、答えは明確だ。

 

すでに2026年シーズンの契約シーズンは幕を閉じかけ、翌27年シーズンはRWCイヤー。ここから原田衛に続くのは現実的ではないのは明らかだが、ではプランBがないのか。そんな貪欲さがなければ、代表ジャージーに手を掛け、その誇りあるメンバーリストに名を連ねるのも容易ではない。

 

組織としてHCやスタッフが、ここから取り組むべきものは、だいぶ見えてきている。後は、その遂行力や時間をどう有効に使っていくかが重要だが、同時に、いま書いたような選手個々にも、どう自分を磨いて、バージョンアップしていくのかは、「ジャパン」と名乗るチームのポテンシャルを、かろうじて1歩アップさせた世界ランキングをトップ10、8とジャンプアップさせるには、実はかなり重要なテーマでもある。

 

 

 

 

まだ連休中ですが、週末のおさらいでも。

 

土曜は、トビリシでの〝2年後〟を賭けた決戦前に、東京郊外の飛行場横のグラウンドへ。

 

ここ2シーズン「ファイナル」を制してきた強豪と、昨季初めて4強を逃した強豪の〝ダービーマッチ〟は後者が38-26で競り勝った。

 

勝者はFLサム・ケイン主将に、No8ショーン・マクマ―ン、SO高本幹也、FB尾﨑晟也、敗者もLOジェイコブ・ピアース、FL佐々木剛、CTBセタ・タマニバルに前節でもアタック力をアピールした新加入のFBティージェイ・クラークと、代表組を除くかなり開幕を意図した布陣での戦い。明暗を分けたのはディシプリン。すこし不確かな数字なので参考までにではあるが、反則数で勝者の9に対して敗者は17。ここはブレークダウンの解釈で、敗者が若干レフェリーと食い違いがあったか。その一方で、勝者の防御にはポジティブな印象も残した。

 

日本代表でも活躍したサンゴリアスの〝コス〟こと小野晃征HCは「簡単に抜かれてしまうところもあったが、昨季、良くなかったディフェンスの部分で、しっかり取り組んできたものが見えてきているところもあった」と防御面の成長を感じている。

 

2024-25年シーズンは8勝2 分8敗の6位。得失点を見ると1試合平均で30.1得点(ディビジョン1中6位)に対して失点は31.5(同7位※低失点順)とほぼイーブンの数字。微小の差とはいえ、3位だった一昨季の36.5得点(同3位)、26.6失点(同3位)からは得点もだが、失点、つまり防御面で大きく後退している。

 

アタッキングラグビーを標榜しているとはいえ、獲った分と同じスコアを相手に許せば、微小であっても、当然のことながら勝ち数も少なくなる。だが、この日のプレシーズンマッチでは、ベースとなるボールを積極的に、そして大きく動かす中で、締まった防御が3連覇を目指す王者を苦しめた。

 

「ここに代表に行っている7人が戻って、ようやくチームが出来上がる。あまり怪我、疲労なく帰ってきてくれればいいね」

 

笑顔で語ったコスだが、本音なのは間違いない。土曜日にトビリシで戦った日本代表に7人の選手が参加している。桜のジャージーの主力メンバーとしてワークレートを見せるFL下川甲嗣、PR小林賢太は課題のセットでも国内リーグ同様に進化をみせ、HO平尾翔大、PR木原三四郎らが、未体験の領域を体で味わった。それぞれのレベルで得たもの、学んだものは大きな財産になる。チームとしては、開幕へ向けた順位期間にレギュラー候補の大量招集というデメリットもあったが、それが選手の〝投資〟となり、チームにもいいリターンとして還元されることを期待していいだろう。

 

 

▲ハーフタイムショーは代表前スキッパーによる未来のジャパン育成講座

 

 

敗者は前週の辛勝に続き、ホロ苦いゲームにはなったが、先に触れたディシプリンに加えて要のSOが個人的な〝おめでたい〟ハプニングで緊急離脱するなどのマイナス要因もあった。こちらも、連覇を果たした過去2シーズン同様に積極的にボールを展開したが、有効なゲインはなかなか作り出せない。公式戦でも、相手が〝王者〟の攻撃スタイルは十分分析してくるだろう。そこをブレークしていく形をどう構築できるか。次週の昨季ファイナルと同じカードで、どこまで接点で渡り合い、アタッキををスコアに繋げられるか。チームの最終仕上がりを確認する80分になる。

 

深夜のトビリシで接戦を挟んでの日曜日は港区の〝聖地〟へ。伝統の一戦と呼ばれる大学生のクラシカルマッチを観戦した。夜中から未明にかけて4試合ほどのハイレベルの「テスト」を観戦した後の大学生の試合の観戦はすこし不安なのだが、期待はレベルはとにかく、互いがいいプレーを見せ合い、競り合うゲームを期待を胸に家を出る。

 

ここまで4勝1敗の「アカクロ」と2勝3敗の「黒黄」の戦い。ファンやメディアはカーディフから戻って来た代表#15に注目していたが、見たかったのはそこではない。下位チームの方は勝敗こそ〝そこそこ〟だが、今季戦いぶりからどこまで喰らいつけるかという思いを抱いてキックオフを迎えたが、前半で大勢は決してしまった。

 

期待したのは「黒黄」伝統の狂気を湛えたタックルだったが、あまりに簡単に「アカクロ」に突破を許し、40分だけで5度ゴールラインを割られてしまった。後半は見違えるような戦いぶりで、トライ数、スコアもイーブンまでこぎつけたが、時すでに遅しというゲームに終わった。

 

後半は早稲田の選手を仰向けに倒すようなビッグヒットや積極的な仕掛けでラインブレークする場面を何度も見せただけに、悔やまれる最初の40分について聞くと、CTB今野椋平主将、青貫浩之監督はそれぞれこう語っている。

 

「(早稲田の)接点の強さもありましたが、ダイレクトプレーで走り込んできたのに対して、自分たちは練習の中であまりダイレクトプレーを使わなかったので、初見、視野という部分で慣れていない部分もあったのと、相手のキーマン、10、15番のところでモメンタムを作られてしまった。自分たちは2対1の状況を作ることを意識していたが、そこを上手く作れなかったのが敗因かなと思います」

 

 

 

 

「(主将のコメントに加えて)前半はセットピースのところは、準備していたことが出来なかったので、普段やっていることを試合に出すこと。経験浅いメンバーがいることは言い訳になるのでしたくないが、逆にいうと、こういう大舞台では普段やっていることが出来ないのは課題です。目に見えないプレッシャーもあったのかと思います。上から見ていて、なんでこのサイン選択をするんだろうというのはありました。事前に話していたこと、準備していたものとはすこし違う事をしてしまったなというところはあると思います。スクラムに関しては、まだまだ成長が足りないですね。もっともっと成長していかないと」

 

前半主導権を握られ、後半なんとか挽回する展開を、指揮官は「いつも早稲田にやられる時のパターン」とも語ったが、まさにその通りのゲームであり敗戦だった。前半から牙を磨いて襲い掛かればいいのだが、その難しさが「黒黄」のここ数シーズンの課題でもある。負けるべくして負けたとも解釈出来る80分だったかも知れない。ただ、それでも残念な思いで聞いたノーサイドの笛の音だった。

 

確かに短時間ではあっても、あの後半の激しいタックル、何度か見せたアタックでの接点のファイトを黒黄の15人が出来たのは間違いない事実。それが終始出来ないまま負ければ、それは「力が足りなかった」で済まされるが、彼らは「出来る」のだ。

 

残る数週間の大学シーズンで大きくチームを変えるのは容易い事ではない。だが、40分に満たない時間で出来たことを、さらに数分、十数分、数十分出せれば…。いまさらどちらを応援するかという価値観では観戦はしないが、敗者のキックオフからの40分があまりにも勿体ないという気持ちに包まれて、夕闇迫る聖地を後にした。