ⒸJRFU(以下全て)

 

 

14日朝には編集サイドがコラムをアップしてくれていたが、朝からの「代表」2チームの取材に、夜の私事で、だいぶ遅めのお知らせに。

 

世界3位との20—36。評価の分かれる結果ではあった。

付け加えるとしたら、コラムでも書いたように「1.6軍」の相手。

評価が分かれるというよりも、どんな観点から見るかによって評価が異なると書いた方が適切か。暴論すれば、どうとでも書ける試合でもあった。

 

ただ、ゲームパフォーマンスも含めて改めて考えさせられたのは、本番1年前のテストシーズンが始まって、何だか〝引っ掛かり〟があった「あの言葉」について。

 

 

 

 

まぁ、何度も繰り返したくないが、最上級の労力を自分たち自身に求めていくためのキーワード。こういうシンプルで、誰もが直ぐにイメージ出来るキャッチ―なワードというのは、組織を一つの方向へ進めるには重要なものでもある。我々メディアも、こんなのについつい飛びついてしまう。だが、事の本質を考えると、これが桜のジャージーがこれからの15か月、そして15か月後に幕を開ける「挑戦と試練」の全てを解決する〝魔法の言葉〟なのか…。

 

そこで、コラムで紹介したメインくんのコメントが、「!」というカンジのいいヒントになった。

 

メインが発言で意図したこととは違うが、コメントを聞いた時にアタマの中に浮かんだのは「そうなんだよなぁ」という思いだった。

 

 

15か月後の本番会場でのテストだったが、

それ以上の〝学び〟のあった80分になった

 

 

そう、昨今誰もがまさに金科玉条のように唱える〝呪文〟だが、実はそれは、誰もが頑張ればなんとか一定の成果は残せるものだ。勿論、個人差があるので、日本代表のスタンダードには届かない〝エフォート〟しか見せられない選手もいるかも知れない。だが、そういう選手は先ず〝宮崎〟に呼ばれる可能性は低く、万が一呼ばれても淘汰されていくものだ。

 

なので、ニューカッスルでの80分を観ていても両チームのプレーからは、エフォートは自分たちのラグビーを支える地盤であり、一つの〝目安〟のようなものだと読み取れた。No8として常にエフォートを見せ続けるジャック・コーネルセンが「エフォートとは、オフザボール(ボールに触れていない状態)でどこまで仕事が出来るかでもある」と単なる努力・労力だけではないとも説明するが、そこでの〝ワーク〟はまだまだ積み上げ途上だろう。

 

そんなオフザボールでのエフォートも含めて、そこから相手を上回るスコアを奪っていくためのゲームプランや、個々の判断といった練習で培ってきたもの、そして才能や経験が、ゲーム中のパフォーマンスを生み出すことこそが、勝利への重要なファクターになっていく。

 

代表チームが究極的に求めるのは、「よくやった」という努力賞、敢闘賞、もしくはお慰みではない。「勝利」という結果だ。当然のことながら、負けてもファンに何かを感じさせるプレーは蔑ろには出来ない。だが、どちらにプライオリティーがあるのかと問えば、回答は明らかだ。

 

勿論、これからも「エフォート」は代表強化の重要なキーになる。だが、「勝つ」というテーマ、しかも百戦錬磨の相手をスコアで上回るという困難な壁を乗り越えていくためには、「エフォート」を80分間続けるのは前提で、どう相手をノックアウトするパンチを創り上げることが出来るかが勝負になる。

 

 

 

ここまでの2試合∔1を見る限り、15か月後もこの2人がキーマンの勢い。相手

マークも厳しさを増すだろう中で、どう機能させていくかもコーチの腕の見せ処

 

 

繰り返しになるが、そこは戦術であり、個々のパフォーマンスであり、そのための純粋なスキルもあれば、個々の経験値が生み出す判断力が勝負になる。その個々の、そしてチームのパフォーマンスで完全に差を見せつけられたのが、コラムでも紹介した「ラスト12分の明暗」だった。そこを追求し、一定の水準(つまりスコアで相手に追いつき、上回ること)にまで持っていくことで、チームはようやくマイケルを筆頭に多くの選手、コーチが唱える「結果を取りに行く」というフェーズに入っていく。

 

諄いようだが、「全て勝ちに行く」という〝公約〟は2戦目でとん挫した(まぁ、全勝すると公言したわけじゃないが)。だが、アイルランド戦を観て感じるのは、曝け出された「勝つために足りないもの」を認識、チームで共有した上で、どう次には克服していけるかが重要だということだ。

 

格差を見せつけられたラスト12分は、まさに〝シャムロックからの学び〟と言っていいだろう。

 

すでに次戦の相手「ル・ブリュ」は首都圏で準備をスタートしている。

次のフィフティーンは、このチームの指揮官が好きそうな〝夏の若手登用〟の気配もするが、その一方で、過去2戦の1桁キャップ、テストデビューのポテンシャルを見ても、末恐ろしいというより即テスト戦力というフィジカルもセンスも持ち合わせているのは、昨今のこの国らしい。

 

予備軍U20がジュニア版ワールドカップでもNZを凌いでジュニア・ボカとのファイナルに進んでいる。41人のツアーメンバーの中で1桁キャップ33人にも及び、内5人がノンキャップだ。そこに不動のメンバーであるCTBモエファナ、HOペアト・モヴァカ、SOロマン・ヌタマック、FBでのテストも良好なマチュー・ジャリベールら主力も帯同する。つまり、シャムロックのワンランク下という相手ではない。

 

幸いなのは、このレベルのチームに、「12分」の次戦に追試が出来ることだ。

〝穴を埋める作業〟が続く。

 

 

 

刻々と2027年〝開幕戦〟会場でのキックオフが近づく中、すこし第2戦、とりわけ対戦相手についての考察を。

 

前週のワラビーズ戦。正直、内容はほぼイーブンという印象。すこし準備不足の世界ランク3位と、ホームのぶん? 準備していた同8位だと、こういうクロスゲームになるのか。否、やはりオーストラリア大陸を去ろうとしている名将の為せる業か…。

 

双方の攻守両面で顕著だったのは、フラット気味で尚且つショートレンジのパスを使いながら、バックドアもメリハリを利かせてギャップを作り、守る方も早い出足でアタックラインにプレスをかける昨今のトレンド。どの試合もこの傾向がある中で、そんなトレンドのショーケースのような80分に。「どの試合も」を書いたが、但し書きとしては、イングランドがフラットと深めのラインでのオプションも垣間見られたのは、この先興味深い。

 

おっと、考えるべきは純白のジャージーではなくエメラルドグリーンの方だ。基本の攻め方は伝統の敵陣ゴール前まで陣地を進めてのラインアウト→モール→フィニッシュという鉄板のプレー。だが、この日の「シャムロック」はその得意の空中戦で粗さを見せた。

ラインアウト失敗数はワラビーズの1に対して3。この不安定さが、ほぼ互角のゲームとなった一因でもある。今日の試合で、なんと優位に立つ「高さ」で再び苦しめられれば面白いのだが。

 

粗さという点では、ハイボールの処理も然り。反面、ワラビーズのボールチェイサー以外の選手のポジショニング、反応の良さも大きかったが、ここは身長の低い日本が優位に立つようだと面白い。SO伊藤龍之介-WTB植田和磨のホットラインを軸に、日本が精度で上回ることが出来るかは注視したい。

 

ブレークダウンに関しても、前週はワラビーズのモメンタムを、取り分け前半は圧迫するには十分じゃなかった。ワラビーズの2本目のトライも、彼らにテンポを作られながらバックドアを使って仕留められている。ここも日本が接点でのバトルでイタリア戦レベルのファイトが出来ればおもしろい。

 

但し、やはり怖いのはゴール前まで攻め込まれてしまうこと。ゴールラインを守り切るのは容易ではない。エリアマネジメントは、かなり重要なポイントになるそうだ。

 

すこし視野を広げて前週のゲームをみると、ワラビーズが防御でタックラーが思い切ってチャージをかける一方で、残りの選手はしっかりと次のフェーズを考えながらライン防御のセットアップを意識していた。ここは先に触れた、若干ホームチームが準備で上回ったのと同時に、去り行くHCを中心とした準備の賜物と感じている。

 

ビジターが、そこまで細かな準備、相手分析をしていないのではないかと感じさせた一方で、ゴールドジャージーの15人は、相手が何をして来るかを、概ねインプットしていた印象だ。27分のインタセプトからのトライも、そんな相手の陣形を読んでの防御プレスの中で、ボール奪取まで行きついた結果だろう。

 

数時間後の戦いでは、流石に〝ややホーム〟の相手も前戦よりは、様々な準備、修正はしてくるだろう。その中で、先発15人中9人を替えてきた。若干のローテーションはあるが、かなり「落としてきた」ことが、どう精度に影響するのか、しないのか…。いずれにせよ、その精度の歪のようなミスを、どこまで桜のジャージーがチャンスに、そしてスコアにまで持っていけるか。8か月前の完全アウエーは10-41と後半ボコられた相手。鍛えたワークレートによるエフォートで、どこまでフィジカルに対峙出来るかから勝負が始まる。

 

 

 

もうアイルランド戦メンバーも発表されましたが、毎度の代表戦あとの〝おさらい〟でも。

 

 

 

シーズン初テストとなるイタリア戦。皆さん、どんな採点でしたか?

マオリ戦後のコラムを読めば、だいぶ親切なトーンだとお察しでしょうは、昨季までの2年間の苦闘を考えると、イタリアとのテストも、やはり素直に70点以上は上げてもいいか。

 

今回のイタリア戦コラムは、なんだか自分でも取り留めなくポジティブ要素を並べてしまったけれど、要点は下記の2項目かな。

 

①    防御の熟成(とりわけ個々の責任感、そして3人のユニットとしての集散の精度アップ、さらに全体の防御オーガナイズ)

②    キック戦術の熟成およびキック、パス、ランのバランス

 

上記2項目は、コラムでも触れた部分、舌足らずな部分が混在しているのだが、要は段階的にチームとして機能し始めていると評価したい80分だった。多くの選手が特別な何かが上乗せされたのではなく、3年目の蓄積、チームとしての完成度の進化をイタリア撃破の要因に挙げている。

 

①の防御面は、#6ベンさんの驚異的なパフォーマンスが先ず大きなインパクトになったが、それにも引っ張られて、否、適切な言葉を選べば「助けられて」、FW・BKともに昨季以上の出来栄えだった。

 

ただし、タックル以外の要素も然りだが、コラムでも指摘した通り、アズーリの出来栄えはすこし踏まえておいた方がいい。6ネイションズの中では、〝若干ながら〟ではあるがヨーロッパベースのテストが多いチーム(とはいえジャパンほど長時間フライトにヤワだとは思わないが)。そこそこ気温抑え目だった試合前日のラマロ主将とのやりとりでも、やはり湿度はキツいものがあったし、チームのちょっとしたコンビネーションを見ても、「?」のプレーは少なくなかった。

 

つまり、日本での出来栄えも、8掛け、8割5分で見ておいていいだろう。

まぁ、それでも桜のジャージーの昨季までからの前進は認めたいゲームだった。

 

で、先ずその防御の熟成からだが、この部分、コラムでは端折ったが、HC代行ニールさんにも試合後の会見でも当然聞いたのだが、その答えはこんな内容だった。

 

「ディフェンスコーチのギャリーが本当にいい仕事をしてくれています。彼はすごく情熱を持ったアプローチで選手たちをコーチしてくれて、そこにエディーがアグレッシブな姿勢でディフェンスをしろとやってきたことで、今日のような結果になったと思います。日本の強みでもあるトランジションのところもしっかり出来ていた。ここまで拘って来た成果だと思います。でも、最終的にディフェンスというのは、張っているのは選手ですから。彼らが素晴らしい仕事をしてくれたと思います」

 

なるほど、なるほど。選手からはGG(ジージー)とも呼ばれるギャリー・ゴールドについては、昨秋のアイルランド戦後のコラムでも「さらっと」レベルで触れているが、 ニールさんの言葉どおりなかなかパッションと〝狂気〟を持って組織防御と個々のタックル力アップに磨きをかけているのだろう。イタリア戦後の取材で原田衛くんにも、GGさんの防御担当としての良さを聞くと、こんな話をしてくれた。

 

「(良さの)一つは情熱というか、ディフェンスってチーム愛というか、どれだけチームのために体を張れるかで、それがディフェンスの醍醐味だと思う。なので、システムもそうですけれど、どれだけ情熱を持って臨めるか。そういうところを、ギャリーさんはレヴューとか、個々のタックルについてもですが、指摘してくれるので、そこがイタリア戦は良かったのかなと思います」

 

もうすこし、なにか情熱以外の大きな(具体的な)エッセンスがあるようにも思うのだが、原田くんだけではなく、コーチ、選手揃ってギャリーさんのパッションの所を挙げているのは揺るぎのない彼の資質であり、誰もがインパクトを受けているギャリーのコーチとしての〝強み〟なのだろう。

 

ここら辺は、定点観測的にその取り組みを見られないのは残念だが、ゲームの中でのパフォーマンスとしては十分に頷ける成果を残していると言っていいだろうか…むしろ、ここからの相手とどこまでやり合えるか、合えないのかを見ていきたいところだ。

 

だが、これもジョン・カーワン以降のコーチが何度も指摘してきたことではあるが、日本選手が、1度のツアー、1回の合宿、1日の練習で見せる=積み上げるパフォーマンスの進化はなかなかのものになろうとしている。ここもチームとしての3年目の進化の大きな要因だろう。

 

イタリア相手の80分間を見ても、1対1のタックルでのヒットの強さ、ユニットとしての集散の確実さ、個々の判断もあるだろうが、連携し合いながらのオフザボールの選手の動き=ポジショニングと、昨秋以上のレベルに入ってきている。大会ウェブサイトを見れば明らかだが、イタリアがタックル総数172回の内ミスタックル16、ドミナントタックル5だったのに対して、ジャパンが153回中ミスタックル14、さらにドミナント10という数値が防御の勝利を指し示している。

 

前主将の方のマイケルは、事ある毎にこんな事を話している。

 

「練習は前ほどのキツさはない」

 

第1期エディージャパン時代は、まだまだ世界トップ水準の戦いにおけるゲーム理解度、スキル、そして決定的なフィジカルの格差を、徹底したハードワークでなんとか補ってき。だが、この第2期での大きな変化の一つは、所属チームでの積み上げも含めた個々の選手のフィジカル、スキル、ゲーム理解度の進化だろう。このような「ベース」の部分の上乗せの恩恵もあって、「第2期」では、マイケルの言葉通り以前のような時間、ボリュームをかけずにジャパンとしてのクオリティーを上げていると感じている。ここも定点観測不可能のため「感じている」としておこう。

 

そして、忘れてはいけないのが、ここまでの代表戦での積み重ねだろう。

 

自分自身も含めてだが〝外野〟はどうしても勝った負けたで一喜一憂するものだ。だが、エディーや、マイケルのような経験豊富な選手がいつも口にするのは、数年前と比べて飛躍的に組めるようになったティア1クラスとのテストマッチの増加だ。

 

簡単な比較を紹介しておこう。

エディーの2度も含めて直近3回のHC就任2シーズン目のテストマッチの数字だ。6か国対抗およびラグビーチャンピオンシップ参戦チーム(実質ティア1)とそれ以外のティア2(もしくはティア3)との対戦数の比較だ。就任2シーズン目というのは、初年度、つまりW杯翌年のマッチメークが、日本、対戦相手双方にとってすこし不安定になることで、安定的に試合を組める2シーズン目という設定だ。

 

  【13年】 【17年】 【25年】

T1    4     5     6

T2    10     6     5

 

ここは、国際部門で手腕を発揮したJRFU岩渕健輔前専務理事(8月1日よりJRFU会長補佐)、国際部のメンバーらの貢献およびエディーら現場の一部〝口利き〟もあっただろう。喫緊の代表戦を振り返っても、昨秋のロンドン・ウェンブリーでの南アフリカ戦後に、選手は日本でプレーする多くの同国代表選手とのテストについて「リーグワンでの対戦とは全く違っていた」と〝本気〟の世界王者を思い知らされている。

最近代表選手も盛んに口にしている(半数以上はメディアの誘導でだが)〝ゴールド(エフォート)〟について、イタリア戦後にマイケルが触れていて、後半に所謂ボコられたアイルランド戦後についてこんな事を話している。

 

「ゴールデンエフォートというキーワードがありますが、昨季のアイルランド戦後半のメンバーがあまりパフォーマンスが良くなかった。それを修正して、今回は週の始まりからインパクトを与えられるように意識してやってきた。個人としてはタックルミス、ノックオンがあったので、しっかりもう一回やっていきたいと思います」

 

マイケル自身の反省は置いておいて、ダブリンでのアイルランド戦後半の惨敗でのワークレートが非常に低かったことを、次のシーズンにはかなり修正出来ているのは、秩父宮での80分でも良く判る。こんな負けからの学びや直接肌で思い知らされた格差が、世界のラグビーの中で自分たちの置かれた座標や、足りない物を実感させられたことで、「国内でいちばんいい選手が集まるチーム」を「世界で勝つには足りない物ばかりのチーム」に意識変革させ、貪欲に成長を求める空気感がチーム内に醸造されてきているのだろう。

 

だいぶ長たらしく書き綴ったが、2番目に上げたキックを交えた戦い方でも、「ゲーム理解度」のアップが大きな要因になっている印象だ。コラムでも何度も触れてきたが、ティア1ネイションズとの対戦で痛感するのが、個々の選手のゲーム、試合展開を読む能力の差だ。このエリアの差が、結果的にプレー瞬時瞬時に自分がどう動けばいいか、何に備えればいいかという判断力の差にもなる。結果的に、対戦相手が日本より適切に、早くに、次のプレーに動いて日本が後手を踏むというシーンは、何度も味わわされてきた。

 

この現実は今も続いていると感じているが、イタリア戦を観ると、準備段階でのコーチング、インプット=事前のお約束も含めて、桜のジャージーも「どう動けばいいか」という領域で、なんとか世界10位と渡り合えている。アズーリのファーストトライは完全に個人技でやられたが、コラムでも触れたが、むしろ17分の右展開からの松永拓朗のトライや、遡っての前半9分、15分など随所で見せたSO伊藤龍之介とWTB植田和磨とのドンピシャのキックチェースなど、ジャパンの意図したアタックが機能して、トライシチュエーションまで持ち込めているのは評価していい材料だ。

 

経験値に裏打ちされた判断力は、なかなか差を埋められない究極の差でもあるのだが、日本代表はそれを組織連携やゲーム、戦術理解の深化でなんとか埋め合わせようとしている。このエリアも、引き続き、さらにレベルの高いエメラルドグリーン、トリコロールのジャージーとのゲームで、どこまで対抗出来るのかに注視していきたいものだ。

 

先にも書いた通り、ハイボールの選択や、ラン、パスとのバランスについては、予想以上に伊藤龍之介がいい選択とスキルを見せている。ここも結果的に、彼のアグレッシブなゲームスタイルに直結するのだが、コラムでも紹介したイタリア代表HCゴンサロさんの言葉に、外交辞令ではない部分があると信じたいところだ。ま、それがお世辞だとしても、桜の#10がここまでの160分で見せたものに何の遜色もないのは間違いない。

 

テストラグビーという舞台では「小ささ」「フィジカル」というマイナス面は間違いなくある。だが、どのポジションも共通ではあるものの、ゲームで15人と15人が対峙したときに相手に「嫌だな」「面倒」と感じさせる10番はそう多くはない。それを感じさせる21歳を、残る15か月でどこまでテストラグビーで本当に遣り合える10番に仕上げることが出来るのか、時間切れで選外になるのか。ここは、コーチの腕の見せ所だ。

 

個々の選手の評価は、2027年10月へのセレクションも交えてコラムの方で書いている。ネタ証しをすれば、27年へ向けたセレクションの部分は〝ぶろぐ〟からの引用も多々あるのだが、そこはお許しを。なのでココ(個々)についてはココ(此処)ではそこまで奉らないでおこう。〝記入漏れ〟した何人かはいるが、そこを網羅すると結構な文字数にもなるものだ。

 

さて、時間は「試合後」より「試合前」という段階だ。無事チームに合流したエディーは、オンラインのメンバー発表会見でこんな意気込みを語っている。

 

「この大会、最初の週はいい成績を収められた。非常に印象深いスタートが切れましたし、素晴らしいラグビーを展開出来た。アイルランドはイタリアとはまた異なるチームですし、様々な脅威をもたらす相手です。先週よりもポゼッションが多くなるとは思いますが、我々はディフェンスの向上に拘って準備を進めてきた。そこでしっかりとラインを上げていきたい。ポットで仕掛けてくる相手にクイックラックでボールが出るとアタックが優位になるという展開も想定して、そこのエリアに着手してきました」

 

そう。多々あるフォーカスポイントの中でも一つの焦点は防御でありコンタクトエリアでのバトルになる。シャムロックのジャージーの男たちは、まずしっかりとこのエリアでの制圧を挑んでくる。そんな勝負で注目したいのは、個々のワンオンワンタックルでイタリア戦のクオリティーを見せられるか。その後の組織防御を着実に履行できるか。そこが一定のレベルでパフォーマンス出来るとしたら、次に伊藤龍太郎を軸としたアタックで、どこまでバリエーションを持って世界3位を苦しめられるかという勝負になる。

 

因みに、2027年での日本の開幕戦(vsサモア)が行われる舞台(会場)、ニューカッスルでの試合について指揮官は

「今はアイルランド戦に集中している」

エディーらしい対応で会見を終えている。

 

あ、このタイミングなので、アイルランド戦メンバーについても触れておこう

 

 

リンク通りだが、スターターの変更は一時離脱の石田吉平に代わりメイン平のみ。メインが力を発揮するチャンス到来であるのと同時に、この変更の無さは、本気のテストの雰囲気に包まれていいものだ。

 

イタリア撃破で見所が増えた次の中間地帯戦。対戦相手がかの国に居座っての2戦目と考えると、若干日本がアウエーなのか…いずれにせよ、前週土曜日に世界10位に浴びせた固い防御と、バリエーションを増やすアタックで、どこまで世界3位を苦しめられるのか。

 

勝負の時まで、あと2日余りに迫る。

 

いくらウィンブルドン開催中とはいえ⁈

 

今年初のテストがカウントダウンに入った。

メンバーリリース直後にすこしだけ呟いてメンバー会見(オンライン)に参加したが、この顔ぶれ皆さんどんな受け止めを?

 

ちなみに、冒頭の写真だが、イタリアは試合前日練習をほぼフルオープン(日本は公開15分)。その内容も、写真のテニスあり、セパタクロー風のキックのみのお遊びバレーなどなどを、ラグビー以外のメニューを笑顔で終えた。取材に応じたラマロ主将は、まだ準備時間が不十分なことを明かしたうえで、日本代表が強化に1か月ほどかけてきたという認識も口にしていた。

 

この試合のメンバー、先週の顔ぶれを比べると、職業柄せっかちな思考・行動パターンの習慣が抜けないこともあり、来年の10月の33人をどうしても意識してしまうのだが、エディーは6月のメンバー会見でも、こんなコメントをしているね。

 

「去年70%くらいまでいったので、この夏は80%くらいまでメンバーを固めたい」

 

確かに8割方決まりかけている印象だ。

先週の「XV」戦と今回のテストの顔ぶれを眺めると、メンバー固めに関するエディーの思考が反映されているようにも感じている。「現状で」という前置きは必要だが、誰がファーストチョイスで誰がセカンドチヨイスかが、この2試合のメンバーリストからも読み取れるのではなだろうかなどと思いを巡らせる。

 

この2試合の顔ぶれだ。

 

  vマオリ    vイタリア

①    岡部     →岡部

②    原田     →原田

③    竹内     →竹内

④    ハアンガナ  →ホッキングス

⑤    ストーバーグ →ディアンズ

⑥    下川     →ガンター

⑦    コストリー  →下川

⑧    ララトゥブア →コーネルセン

⑨    北條     →齊藤

⑩    伊藤     →伊藤

⑪    ブルア    →石田

⑫    李      →廣瀬

⑬    ライリー   →ライリー

⑭    植田     →植田

⑮    松永     →松永

 

 

先発15人中8人が継続出場になる。

手前味噌になるが、先週の試合については、こちら参考に。

かなり〝特定のポジション〟についてしか書いてはいないけどね。

 

 

 

 

今回のイタリア戦。幾つかのポジションはコンディション理由の選考もあるだろうが、上から順番に眺めていこう。

 

先ずフロントロー3人は前週と変わらず、2列目は逆に全替え。ここ興味深い。フロントローは、期待されたオペティのフランス移籍もあり、この3人への評価がかなり堅いように見える。岡部&竹内のコンビは、国内屈指の機動力。そして、江見との「2」争いが過熱していくだろう中で、今のところはエディーの評価が高い方がスターターを掴んだ。

 

2列目については、エセイさんが名古屋で若干痛んだのが悪い影響がないといいのだが、いずれにせよ今週末の2人がファーストチョイス。マオリ戦の2人はとりあえず桜のジャージーでの試運転を果たし、これからトップ2を追うことになる。〝新参コンビ〟が〝府中コンビ(一部ウェリントン)〟に近づいていけるか。追う側の、背の高い方のマイケルは#6という選択肢も一つのアピールポイントではある。エディーも好きな副業=マルチポジションで実績があるのは、現状の顔ぶれだとこのマイケル、今回#8でスターターのジャック、そしてエセイ。これがアドバンテージになるか、現状セカンドロープロパーの他のメンバーに〝チャレンジ〟を求める可能性も含めたレースが始まる。

 

この2列のポジション争い。数年前には願いもしなかった高さになってきた。エディーも第一期HC時代が終わる2015年RWCの最終戦後に、これからテコ入れが必要なポジションとしてLOの手薄さを強調していたが、今回のメンバーだとハリーが208㎝、ワーナー201㎝、ベンチのマイケル202㎝と一気に摩天楼化している。この3枚の〝壁〟に、2列にも空中戦以上に機動力が求められれば、今回#8 で先発する195㎝のジャックが絡んでくることに。

 

理想をいえば、もう一枚、局地戦で強烈なバトルを武器にするルアンさんがナショナルサイドに加わることが出来れば、さらにパンチのある編成になるのだが。ここは、キャリー、フィジカルファイトでも進化を続けるワーナーの成長次第で、ルアンへのニーズが変わって来るかも知れない。若き代表スキッパーが期待通りの成長曲線を描けば、怪我も多く、超速には決して向いてない〝局地戦〟エキスパートは必要なくなるかも知れない。

 

3列に関しても、ワークレート、フィジカリティーという評価でのベンさん&下川甲嗣は、昨シーズンの起用法をみても、かなりスターターとしての評価を勝ち獲っている印象だ。ここは従来、対戦相手やコンディション等状況次第で入れ替わりが多いエリアでもあるが、絶対的なスピードを求めればティアナンが浮上して、そこに6番としてのエセイ、No8とFL両睨みでのマイケルに、後で触れるワイサケらが絡んでくる。FW8人もだが、ピッチに立つ15人全体を束ね、ゲームの方向性を失わせないためならマイケルもまだまだ捨て難い。勿論一選手としての存在でも。

 

だが、今回のベン、下川、ジャックのスタートとマイケルのベンチは、現状のプライオリティーを物語っているようにも思える。もう、15か月後に迫るものの、マイケルにとっても「代表枠」という戦いの中でレースの中で、どこまでプレゼンスを見せ、生き残るかの勝負になってきている。

 

ちなみにティアナンのベンチからの起用は、まず3列のセレクションが最優先なのは間違いないが、ベンチメンバーの6-2スプリットにも伏線はある。BKの控えはSH橋本くんとSO兼FBグリーンの2人。つまりTBのプロパー不在というユニークな布陣でもある。そこで、WTBのベンチ要員を兼ねるのがティアナンだ。ニールさんの説明だ。

 

「コストリーはハイブリッドの選手で、去年のウェンブリーでの南アフリカ戦でもWTBでプレーしています。北半球のイタリア相手だとFWがかなり厳しい戦いになる。そこで我々が圧倒したいので、こういうベンチになりました。もちろんFWでの控えではあるのですが、状況で必要になればBKでの起用も考えて準備しています」

 

ティアナンのWTBも楽しみな一方で、そういう展開にならないことも願いたいものだ。

 

バックローのメンバリングに話を戻すと、ここまでエディーの下でプレーしてきた顔ぶれを考えれば、昨秋の代表加入直後からウルトラフィジカルなゲームでのタイラーの存在感は素晴らしかったが、コンディション不良だ。ここはこの先に期待するしかない。本来は、タフなFW戦でもレベルを上げているアズーリ相手でも、日本代表という組織の中でどう機能、否、チームにプラスをもたらすかという観点からタイラーを試したいゲームではあったが…。そこに、セカンドローに続き理想をいえば、グラウンドレベルのボールへの仕掛け人、仕事人として、熊谷のラクランを加えたいところだ。すこし手薄なリンクプレーヤーとしても重要に思えてならない。

 

 

試合采配はNGだが、ようやく指導はOKのエディーも前日はいつもどおり

 

 

ジャックの#8に異論はないが、固定というメンバリングではないだろう。正直「不動の8番」は欲しいところだが、現状を見渡せばゲームプラン、メンバリングで〝日替わりエイト〟のまま来年10月までいく可能性も。先に触れた3列のほうのマイケル、ワイサレらが、バックロー3人、バックファイブ5人の兼ね合いで誰が最適かを争うことになる。勿論、パワーハウスとしてのテビタの復帰も可能性はあるが、〝いいコンディション〟をキープするのが条件だろう。マオリ戦で8を背負ったワイサレは、常に球際に居るワークレートで個人的には非常に買っているバックローではあるが、ブレークダウンへの参加回数等を踏まえてブラインドFLがベターチョイスにも思える。

 

エイトマンに関しては、個人的には、スピードとワークレートに優れた2,3列が多いこのチームでは、先に触れたルアン同様に、すこしパンチ力のある選手がいてもいいのではと時折思う。マフィが所属チームでも国境線でもジャパンを離れ、後継として期待されるテビタも先ほど触れた通りの現状だ。怪我の多さへの懸念と、やはり〝パワーハウス〟という役回りであってもエディージャパンでは持久力が求められる(かなりワガママな要求ではあるが)。書いても意味のない願望ではあるが、どこかに浦安のヤスパーのような8番がいないもんか…。

 

そして、ようやくBKに。SHは、こちらも「かなり」投資の意味合いでのマオリ戦の北條くんから、今回は帰国したばかりのファーストチョイスの#9 を投入してきた。

 

太平洋を跨いで帰国したワーナー、ユーラシア大陸を越えてきた齋藤直人の先発起用に関して、代行HCのニールさんは、こんな評価を語っている。

 

「彼らはキープレーヤーですし、ワーナーはハリケーンズで優勝して、個人では3年連続で優勝を経験しているとこともあり勝ち方を知っている。齋藤直人もヨーロッパの強豪トゥールーズで今回チャンピオンになりました。そして、この2人は代表でのプレー経験もあり、キャプテン経験者でもある。そんな経験値が、若手のメンバーには非常に大事なことですし、メンバーに選ぶ決断に迷いはなかった。直ぐ最近までラグビーをしていたこともあり、代表に合流してからの練習でも素晴らしい成果もでていたので、今回に起用になったのです」

 

これまでも何度か触れてきたが、チームの中ではこの夏からは「勝ちに拘る」というコンセンサスが固まりつつある。来年10月からの逆算で、もう投資や選手の経験値を上げていくという時間ではないということだ。今回のワーナー、齋藤直人のスターター起用も、こんな思いが反映されている一面もあるだろう。同時に、プロプレーヤーとしてなら、所属クラブでのゲームからナショナルチームでの活動で、大陸間を跨ぐ移動もエクスキューズにならないというマインドセットの部分もある。

 

SHのセレクションに関しては明確な部分と、流動的な要素がある。コンディションなどに大きな変化がなければ齊藤直人、負傷離脱の藤原忍の1、2番手争いはほぼほぼ確定事項。その3番手に誰が入るのかが、この先の焦点になる。

 

名古屋で先発した北條くん。スキルや、ボールを持って走るという面ではポテンシャルのある選手。言い換えれば、相手と正対した状況では強みを持つ。だが、名古屋でのパフォーマンスを見ると、日本代表で#9として求められるものはまだまだ磨き込みが必要だと明らかになった試合でもあった。決定的にブラッシュアップが必要なのは密集からの攻撃的なキックだ。とりわけ中盤からのパントは、敵陣でゲームを進めるための大前提として重視されるスキルだが、理想の〝落としどころ〟へのコントロールがまだまだなのは露呈した。他にも理由はあったかも知れないが、ハーフタイムでの交代はやむを得なかったように思える。

 

その一方で、マオリ戦でインパクトを残したSO伊藤龍之介とのコンビネーションは悪くなかった。伊藤のほしがるテンポのある流れの中でボールを供給していたのは〝いい点数〟をあげたい。幸いなのは「足りないもの」が明白だったこと。ここをスキルアップすれば、十分〝3人目〟を狙える位置に立つ。

 

そして今回ベンチに入った上村樹輝が、それこそどこまで輝くか。彼がベンチから出て行く展開になればだが、〝3番手レース〟の有力候補の桜のジャージーでのお手並み拝見でもある。この#9のメンバー争い。思い切りギャンブルをすれば、来年秋の33人のスコッドに2人しか選ばないというやり方もある。個人的には勿論3枠でと願うが、3番手は33人外のバックアップ、時差の無いフライトで合流可能な日本に置いておくという思い切った選択で、他のポジションに1枠を割り当てるというマジックもある。正攻法でいけば、今週末の#21 に、現在選外となっている昨季までのメンバー、そしてエイジレベルの若手が候補となるのだが。

 

#10は2戦連続のスターターとなった21歳に再び注目だ。散々奉ったので、詳細はリンクを貼ったコラムをご参照を。前週よりさらにステージが上がった相手との〝本気〟のゲームで浮上するだろう課題も含めて、どこまでインパクトを残せるか。彼が再びテンポのあるゲームメークが出来るかは、ジャパンの目指すアタックがどこまで出来ているかのバロメーターという観点からも興味深いのだが、先ずはラインを引き上げ、石田、植田、ディラン、もしかしたらティアナンといったスピードランナーを生かせるか。土曜日の観戦で注目したいエリアでもある。

 

10番の〝本チャン〟枠は2~3人。これはFBを中心とした他ポジションとの兼ね合いで人数が決まる。第2期エディージャパン発足から、ここまで両ポジション兼務の選手を呼んでいる現実を考えれば、兼任を含めた2.5人程度の枠が適切かとは思うがいかがなものか…。

 

そう仮定すれば、エディーが現状ナンバーワンSOと明言する承信を軸に考えれば、この先のパフォーマンス次第ではあるが伊藤龍之介で2枠は埋まる。勿論ここから21歳の「10」が評価を下げる可能性もないわけじゃないが、持っているアタックセンスを買えば、残り0.5枠を小村くん、15兼務の松永らも候補にレースが進むことになる。

 

前週から入れ替えてきたインサイドCTBは、まだ僅か5キャップだが、昨秋のツアーでの練習も含めて経験値を積んだ廣瀬を抜擢してきた。もしかしたら、現状での選択肢としてやむを得なかったのかも知れないが、注目したいのはまさに〝インサイド〟としての仕事ぶりだ。

 

これ、チ―ムやコーチの考え方次第という部分もあるのだが、「CTB」という括りは「どうかな」と感じるケースは少なくない。インサイドCTBに関しては、ボールとBKラインのドライバーとしての役割を重視し、アウトサイドにはWTB、FBと同様にフィニッシャー、フィニッシュに繋がるランナー、ラインブレーカーという役回りで論じた方が、その求められる資質が明確になる。

 

勿論、インサイドCTBも攻撃の起点作りや、防御ラインに仕掛けるランも役割の一つだが、これも過去に何度も書いてきたことなのだが、インサイドCTBではなく「セカンド・ファイブエイス」と呼んで、#10=ファースト・ファイブエイスとの連携や役割分担で、その資質を考えたほうが適切なチームはかなりあると感じている。

 

今回の廣瀬くん起用で興味深いのは、彼が東福岡時代からゲームを動かしていく選手として見せた資質を、若い八幡山の後輩の隣で輝かせてくれるのではないかという期待感だ。前週の試合で伊藤龍之介自身が口にしていた「ボールを持ち過ぎた」という課題や、それ以外のゲームメーカーとしての1つ1つの判断の中で、セカンド・ファイブエイスとしていいサポートが出来れば、この才能溢れる若き司令塔をさらに輝かせる期待も高まるのだが。

 

この八幡山での4年—1年の関係だった10番とのコンビネーションについて、試合前日練習後に取材に応じた廣瀬くんは、こんな話をしている。

 

「一つリュウに言っているのは、前回の試合でマイナス面を気にし過ぎていた。持ちすぎだとか、そこは正しいが、そこに拘り過ぎないこと、自分のアタックが効いていることをポジティブに捉えて欲しい。初めてのテストマッチ、ティア1との相手で、リュウが今まで経験したことのないことも絶対に経験するし、そこをしっかり僕がコントロールしながらやっていきたい。アタックはリーグワンの選手にも引けを取らないので、そこ楽しんでやってほしい」

 

 

 

 

廣瀬くんの目には、この若き才能が思い切りよく、伸び伸びと自分のプレーが出来れば、十分に力を発揮出来るという感触があるのだろう。廣瀬くん自身もまだまだ自分のプレーを着実に履行する事が最優先事項という立ち位置ではあるが、#10の後輩が名古屋から宮崎へ戻ってからの数回のセッションでも、2人の連携やら、その連携からディランたちをどう走らせるのか、生かすのかの創意工夫はしているだろう。そんな準備が、スターターが確定する、いまや世界屈指というレベルに達しているアズーリのミッドフィールダー2人をどう崩せるのか、或いは封じ込まれるのか。想像するだけで胸躍る対峙が待っている。

 

おそらく6月の名古屋でのゲームを分析すれば、アズーリが小さな21歳をかなり潰しにかかる恐れは十分にある(そこを狙わずとも、2年前のように簡単にねじ伏せられる最悪のシナリオもあるが)。そこも、初めての「テスト」の大きな試練になるが、まずは経験値を上げていくことからスタートだ。

 

ミッドフィールダーのセレクションをみれば、リーグワンではまだまだエンジンが掛かり切っていなかったディランは、名古屋ではかなりコンディションを取り戻してきた。ここから注目ポイントは、エディー体制から呼ばれ始めながら、コンディションの問題でまだ本領を見せ切ってないサミソニが、どこでブレークするのか。同時に今回は廣瀬が担うインサイドで〝ドライバー〟として機能する素材も欲しいところだ。個人的には、地味だがスキルフルなラン、パス、タックルが魅力の相模原のほうのヴァイレアがお薦めだが、若手代表合宿を怪我理由で辞退した後はお呼びがかからない。

 

この先のサバイバルは、代表離脱中の中野、シアサイア、トレスコに戻って来た池田という〝常連〟が絡んでくるが、勿論、怪我で代表リスト止まりの府中のロブ、船橋のリカスは十分に〝圏内〟の存在だ。もう一枚ディラン級がいればといいうのは欲張り過ぎか。

 

アウトサイドBK3人を見ると、新たな〝補充〟は石田吉平の復帰のみ。ヨーロッパからやって来きた相手は、ジャパンがさらに取り組んでいこうとするハイボールを使ったゲームでは、胸を借りるには最適な相手。ジャパンキラーでもあるWTBイオアネはフィジカルを武器にした力強いランで、若いFBバーニは190㎝台という高さを武器に日本に挑んでくる。マオリ相手には空中戦での強さを証明した植田、そして昨秋、ハイボール対応も含めて攻守にポテンシャルを見せながら戦線離脱した石田くんがどこまで渡り合えるかも、この先へ向けたキック戦術における重要な指針になる。

 

ハイボールの可能性を試すという観点では新鋭・上ノ坊駿介の不在が惜しまれるが、まずは勝ってチームを勢いづけたいネーションズシリーズ開幕戦は、松永拓朗に天理の先輩としての威厳を見せてもらうことにしよう。

 

今後を見通すと、なかなかフルスロットルに入り切れないジョネ、同じく怪我の矢崎と復帰が待たれるスピードスターもいるが、残す15か月は怪我も大きなマイナスポイントになるだけに、グラウンドパフォーマンス以外の影響による泣き笑いもあるかも知れない。このポジション、本大会ではあまり〝投資組〟は必要ないが、代表トレスコを離脱した武藤航生、現在グルジアで苦闘する内田真之甫という思い切りの良さが武器の2人を、どこかでテスト出来ればという願望だ。勿論、2人供2031年を見据えてではあるが…

 

最後にすこし、数字上のおはなしも。

 

先発メンバーの総キャップ数は234(1人平均15.6)。実はコレ、昨年の開幕戦(vsウェールズ)の244(平均16.2)を下回る。数字上は、来年へ向けて経験値の上乗せが不十分とも捉えられる。エディーが以前に語ったように、ワールドカップ決勝に進むようなチームは600、800というキャップ数=経験値が必要と解釈すると、やや物足りないものでもある。

 

この数字にすこし〝いたずら〟があるとすれば、通算100キャップに近づくリーチマイケルの存在が影響する。現在のキャップ数は98。そして、今回はベンチスタートになるのだが、そのマイケルが昨季開幕戦はスターター入りしているのだ。このマイケル枠を踏まえて、去年のウェールズ戦をマイケル抜きの14人の平均キャプ数で換算してみると11.2という数字になる。一人のレジェンド選手で、総キャップ数も大きく変わるレベルじゃ、所詮まだまだ経験値は高くないという解釈も出来るのだが、実際には僅かではあるが経験値が上げてきている。23人全員では平均11.4キャップから16.0ともなる。

 

経験値での勝負になれば、まだまだ世界のトップ10クラスには及ばない桜のジャージーではあるが、その〝幼さ〟の中で、伊藤龍之介のように輝き始めた原石も出てきている。まさに「発掘」から「磨き上げ」の工程に入りつつある桜の15人が、どこまで6ネイションズ勢という強化・進化のためには最良の〝砥石〟との接触で、さらに輝きを増していけるのか。土曜日17:40の薄暮のキックオフを待つことにしよう。

 

「33人」のセレクションを意識した文章になったため、紹介できなかったものを書き足しておこう。

 

先ず、試合前日に取材に応じたワーナー。ハリケーンズでの活躍で、オールブラックスの可能性に触れ始めた〝強欲〟NZメディア、世論に対して「日本」という思いを語っているが、この日も、その理由をこう語っている。

 

「日本で高校に行って、色々学んでいろんなチャンスを貰った。高校を卒業した後も、リーグワンの試合に出る前に代表の経験をして、(ここでも)いろんなチャンスを貰った。それを、ただ捨ててNZ(代表)でプレーするというのも、勿体無いなと思います」

 

嬉しい話しじゃないか。ワーナー個人のことを思えば、NZでの挑戦は、日本では見られない光景を目にする大きなチャンスかも知れない。それを封印してまで、日本での〝恩〟を大切にする。あのポテンシャルをみれば、奇蹟に近い選択をしてくれたと感じてしまう。

 

イタリア戦については、2年前の経験と現状分析でFWのフィジカル勝負と見据えるワーナー。ウェリントンで鍛えたコンタクトエリア、ボールキャリー、タックルで世界10位との真っ向勝負に備える。

 

そして、アズーリで前日取材に応じたベテランWTBイオアネの言葉も印象深い。こちらの聞き方が悪かったのだが、本来、彼がハットトリックでジャパンを粉砕した2023年の対戦について聞こうとしたのを、24年のゲームについての言及にはなった。それでも、このチームの進化の鼓動を感じさせるコメントになったのが興味深い。

 

 

長らくトライゲッターとしてアズーリを支えてきたモンティ。母

国でのW杯を花道という思いを語ってくれた。因みにこの写真に

は写ってないが、左耳の手前には「愛」のタトゥー。聞きたい事

多くそこには触れなかったが、日本メディアからの質問ナシ…

 

 

「2年前の試合は、丁度イタリアのラグビーが変わっていく、どんどん成長していく起点のときだったと思います。あのときのチームがあって、今のチームがあると思う。あそこから比べるとイタリア代表は大きな成長を遂げていると思うし、若手も沢山入ってきている。その組み合わせで今回いい準備できていると思う。HCのゴンサロについては、まず彼自身のスタッドフランセHCでの知見経験を、沢山イタリア代表に持ち込んでくれて、それが我々の成長の要素になっていると思います。前任のキアランが、イタリア代表のラグビーをぐっと押し上げてくれたのだが、ゴンサロがさらのディテールの部分を伸ばしていると思う。なので、イタリア代表の戦い方そのものが、より細かいところが引き上げられている」

 

やり取りの中で「自分にとってスペシャルでエキサイティングな大会になる」と語った母国オーストラリアでの来年の祭典を、「キャリアを母国で終えれたらいい」と代表での最後の舞台になるだろうとも語ってくれた。アズーリが、まだまだ〝6か国のお荷物〟だった頃から、いまの躍進までを知る男だからこその深みのあるコメント。今日のハットは御免被りたいものだが、その走りは楽しみでならない。

 

 

 

もう一つのフットボールの大一番が片付いてからということで、すこし遅めのアップにはなったが、尾張での今季最初の〝代表〟戦について。

 

本来は、例の北中米での喧噪も踏まえて、簡単にゲームに触れておこうという趣旨。本格的にはイタリアとのテストからの腹積もりだった。書き進めるとあれやこれやとくっついてきそうな欲望を押さえつつ、こんな分量のものに。それこそ「アレコレ」を遮断して「10番」に特化して、行数を抑え込んだ(つもり)。

 

多くの方が、良し悪しは置いておいて、観戦して感じるものではあるだろうが、やはり21歳の新鋭司令塔のパフォーマンスには、心が動かされた。なので、あまり〝変化球〟ではなくド直球のおはなしだ。

 

 

 

 

本来は6月10日のエディーによるメンバー会見から、構想の中にあったコラムのネタが、ワールドカップ前年というシーズンに、エディーが何をチームに求め、強化のための上乗せをしていくのかだった。

 

この観点から、非常に興味深かったものの一つがSOをどうするのか。

 

コラムで紹介した通り、エディーが10番に期待するものは「当たり前」のものでもある一方で興味深い。この言葉を聞きながら、では世界のトップチーム、選手の中で、エディーの唱える「10」として最適な人材は誰なのか? こんな自問をしてみると、そう長い時間をかけずに一人の男の姿と名前が浮かんできた。

 

サシャ・ファインバーグ=ウンゴメズル

 

泣く子も吹っ飛ばされる南アフリカ代表スプリングボクスの次世代スターと期待される司令塔こそ、理想の10番だ。

 

だが、残念ながら日本にはサシャはいない。〝ボカ〟と比べるのも僭越ではあるが、それじゃ〝日本のサシャ〟は誰なのか――。そんな思いを巡らせる。本物と比べると承信だとすこしオーソドックスか、山沢拓也だと個人技に走り過ぎか…。などと勝手に名前を浮かべては消す中で、多少の〝先物買い〟ではあっても、この名前に行き着いた。

 

伊藤龍之介

 

まだまだ若いし、172㎝、77㎏のサイズもテストラグビーでどうなのか? こんな脳内の〝反論〟を浴びながらも、その選択に迷いはなかった。世界ランキング12位あたりを徘徊して、なかなかトップ10内には入って行けない。そんな立ち位置の国で、もしサシャのようにプレー出来る10がいるとしたら、足りない物も沢山含有していてもおかしくない。

 

確かに、この名古屋でのナイトゲームでも、コンタクトエリアではまだまだひ弱さも露呈した。だが、それ以上に、コラムでも書いた通り、相手防御ラインと正対して前へ仕掛け、アタックラインを引っ張り上げることが出来る司令塔って、実はそう居るもんじゃない。

 

コラムで記したライリーへの狙いすました「アウト」へのパス、そして数回見せたCTB李智寿とのシザースも、一見すると「教科書通り」で片付けられるプレーではあるが、この若き10番の振る舞いには〝スペースをどうクリエートするか〟、言い換えればレシーバーのためにどうスペースを作り出すか――という意図が盛り込まれているのが興味深い。

 

自身がどう動くかで相手防御がどう釣られるかをしっかり認識し、履行出来るか、もしくは出来ないか。その違いで、パスを受けた選手の可動範囲が大きく異なるケースがある。伊藤龍之介が名古屋の夜にみせたいくつかのプレー(パス)から伝わるのは、こんなアタックラインを生かそうという、ボールと選手のドライバーとしての姿勢であり非凡なる能力だ。

 

しっかり自分へマークを引き付けスペースを作り出し、閃光の如きボールを放つことで「ただのパス」になるか「キラーパス」になるかが変わってくる。XVの挙げた全5トライ中3本をアシストして、1本はトライへの起点となったという結果は、この21歳がいかに「仕留めのパス」、「〝仕留め〟を生み出すパス」が出来る10番かという一つの証明でもある。

 

とはいえ、持ち上げ過ぎは禁物だ。コラムでも触れた通り、まだまだテストラグビーに足りない物がこの才気あふれる21歳にも沢山ある。本人には怒られるかも知れないが、まだ〝日本のサシャ〟ではなく、おそらく〝八幡山のサシャ〟、もしかしたらあの夜で〝世田谷のサシャ〟くらいになったかも知れない。これからのテストでも物足りなさや、場合によっては失望させられるプレーがあっても不思議ではない。それでも、あの名古屋市瑞穂区で、この〝ルーキー〟が演じたものは称えて余りあるものだった。

 

初めての、そして未知の舞台で21歳の大学4年生が演じた80分。これが、いつか〝伝説の始まり〟と語れるようになれば、この国のラグビーにとっての救いにもなる。