既にタウンズビルのメンバーも発表されたが、ワラビーズ戦第1ラウンドについてのおさらい。日本代表に託けて、実はマイケルについてという内容だが、この37歳の「いま」と「これから」に注目している。

 

 

 

 

先ずはコラム内でも紹介した〝Tackle per minutes〟つまり1分換算での平均タックル回数0.43が示す通り、いま与えられた立ち位置での仕事は、かなり高いクオリティーで果たしている。折に触れて何度か書いてきたが、この天性のスキッパーについては、第2期エディージャパンという〝時制〟では、やはり「年齢」という敵との戦いにどうしても思いがいってしまう。

 

誰もがこのレジェンドの存在に疑いを持たないのかも知れないが、個人的に思うのは、この齢で世界トップ8突破を目指すチームで戦い続けられるのか、それとも…。昨年ロンドン―ダブリンと直接見て回ったモチベーションの一つも、この男の37歳のパフォーマンスを、ボカ、アイルランドという半端ない相手との戦いで確かめたかったから。生憎、本人の早々の離脱で、十分には見届けられなかったのだが…。

 

で、この夏のテストシリーズでの戦いぶりだ。テスト4試合全て「20番」でプレーした。1試合平均のプレー時間は26.5。ベンチ組では、まぁまぁのプレータイムとも言えるが、もの凄い期待感のある長さでもない。ワラビーズ戦は〝最短〟の20分だった。勿論、per minutesの数値は、この短いプレータイムも後押ししたものだが、その一方で、他のベンチスタート組で、この数値をマークした者もいない。なので、20番としては「いい仕事」をしているという評価でいいだろう。

 

となると、スタートかベンチかという議論も浮上する。ここに正解はないのだが、エディーには迷いはないように思える。どこかで聞いてみよう。スタートから60、70分と消耗しきるまで起用するより、今の限られた時間帯でいい数値を出すことのほうがチームにも本人にもプラスではないか。ここはしかし、相対的な問題でもある。つまりベン、下川というスターター勢の成長と期待感との関係で、マイケルには20分、30分をフルスロットルで活躍してもらうことがベターチョイスということだと解釈する。ちなみに、分換算でのタックル数に触れてきたが、タックルの成功率は9/9、つまり9回入って全て成功というのがワラビーズ戦でのパフォーマンスだった。

 

あと14か月。エディーはシーズン前には「8月にはメンバーの80%を決めたい」と話していたが、13日の〝第2ラウンド〟メンバー会見では「80.5%かな」とかなり順調にメンバーが固まりつつあることを示唆する。そんな状況の中で、多くのファン、関係者はマイケルを不動のメンバーと疑わないかも知れない。数値を見ても、かなりの評価を得ていいものだ。だが、刻々と進む年齢との戦いを踏まえて安泰かは予断を許さない。さらに、先にも書いた通り、セレクションは相対的な戦いでもある。新たな力が台頭すれば、誰かが後退する。それが、20番をつける男であっても何ら不思議はない。

 

では、マイケルが争うBRの顔ぶれはどんな状況か。この夏、ここまでの4テストでBRとしてメンバーリストに書き込まれたのは下記の7人だった。

 

ベン、下川、ジャック、マイケル、ティアナン、エセイ、マキシ

 

ワラビーズ戦では、怪我からマキシが復帰するとジャックがLOへと回っている。このパターンを考えると、No8はマキシが僅かながらファーストチョイスとも読める。他ポジションとの兼ね合いも含めて8番をフィジカリティー優先で考えればマキシ、機動力、サポート力重視ならジャックという塩梅か。ジャックが兼ねるLOも、高さ、重さにフォーカスを置くゲームならワーナー、ハリー、そして〝3番手〟でマイケル(大)の3枚がいる。

 

かなり固定化されつつある印象だが、ここに、この夏はコンディション等で不在のBRもいる。

 

タイラー、ワイサレ、アマト

 

ここらが妥当な顔ぶれだろう。都合10人。ジャック、アマトは2列&3列として、概ねこんなメンバーで、14か月後の登録枠を争うことになる。ここで、37歳がどこまでプレゼンスを見せることが出来るのか。そう容易な争いではないと感じているが、少なくともここまでのテスト4試合でのタックルで評価を得ているというところだろう。

 

コラムでは「3点差」に関連してキャップ数という題材で書いたこともあり、スタッツ関連はすこし控え目にしている。まぁ、書く程顕著なものでもなかったこともあるのだが、それでも興味深い数値もある。

 

        JPN             AUS   

テリトリー   55%   45%

ポゼッション  53%   47%

パス回数    203    153

キャリー回数  135    104

ランメーター  447    276

 

 

2023RWCを前後して、従来はゲームを優位に進める目安と考えられてきたこのような数値があまり勝敗に関係ないという傾向は変わらないのだが、それでもジャパンが攻撃を〝優位に〟進めてきたのは間違いない。優位が括弧付きなのは、これはスコアまで辿り着いたかではなく、あくまでも攻撃時間、ボールを持ってプレーする時間が指し示されただけだからだ。だが、それでも僅か3点ながら勝利に届かなかった。

 

ここも数値で見てみよう。レッドゾーン(22mライン内)侵攻回数と得点率だ。

 

        JPN       AUS

22ML侵攻回数 10回(2.9点)  10回(3.8点)

 

スタッフでも「3点差」通りまさに僅差ではあるが、同じ回数攻め込んでいても、仕留める能力では数値が逆転する。ここを、エディーは会見で「ファンダメンタルなミス」という要因を挙げ、コラムではその主だった現象として「孤立」をその理由として書いている。ここを、どう克服していけるのか。実際には、第2期エディー体制がスタートしてから、このエクスキューションの領域は常に課題であり続けるのだが、初冬まで続くネイションズ選手権などティア1ネイションズに胸を借りながら、仕留める力を上積みしていくしかない。

 

ちなみに、13日の会見でエディーはチームに渡り鳥の映像を見せたことを語っている。先頭の鳥の後に他の鳥たちが続き数千㎞も飛び続ける姿を、ボールキャリアーを他のサポート選手が追走する姿勢にオーバーラップさせてのことだ。

 

組織的な連動による攻撃という観点から見れば、コラムでも触れた後半4分のWTB植田和磨のテスト初トライは、ジャパンの「獲り方」の取り組みを感じさせるプレーだった。連続攻撃の中でNo8マキシファウルアがブレークダウンを作る。実はここはワラビーズが接点に人数を掛けずにライン防御をしっかりと整えてきていた。この日のワラビーズの防御を見ると、前半20分のジャパンのバックドアを使った攻撃への対応力などを見ても、かなり日本のアタックを分析していたと感じられる。ここらが、初陣ではあるがブリスベンで采配を振るったレス・キスHCの手腕かも知れない。

 

そんな相手防御の中で、植田のトライは、ブレークダウンからファーストレシーバーとなったFL下川甲嗣の後方深い位置に伊藤龍之介、植田が位置取りすることで、相手防御がマークしづらい状況からパスをスピーディーに繋いで防御を突破している。コラムで植田のポジショニングに触れたが、すでに伊藤の立ち位置からして相手防御は対応しづらかったはずだ。ブラインドから伊藤、植田が連続して沸き上がるようなランで防御を攪乱してのスコアはエディーのチームらしいものだった。

 

そんなトライの取り方が出来ても、80分間を通した戦いでは3点及ばないというのが、いまのジャパンの実力を物語る。余談にはなるが、この植田も、伊藤のテスト初スコアもファイントライではあったが、この試合でのベストトライはワラビーズが後半開始直後の左展開から5回のオフロードを繋いで奪ったプレー。あのスキルとインプロバイゼーションは、まだまだ桜は及ばない。

 

ポジティブにみれば、あと1トライまで勝利は近づいているという解釈も出来るのだが、得点機だけではなく、簡単にスコアを許すシーンや、接点での孤立など、チームは80分の中でいいパフォーマンスとそうではないプレーを繰り返しているのが現状だ。この良さと悪さのバイオリズムのような波形を、どうフラットなグラフに変えることが出来るかが、この先のテーマでもあるのだろう。