永遠の姉妹 第22話『母娘の絆』
「お願いだから、和彦と別れてちょうだい!」
沈黙する知香子に、知永子は繰り返した。
「ねえ…」
「…な、何よ」
「十年前、あたしがそう言ったら、お姉ちゃんはそうした?」
「えっ…」
知香子の言葉に、今度は知永子が沈黙する。
「あたしが、あんたに照矢と別れてくれって頼んだら、そうしてくれたのかって聞いてんだよ!!」
知香子は、声を荒げた。
「するわけないわよね、そんなこと」
「で、でも…あの時と今とじゃ状況が違うでしょう。わたしと…和彦はもう三年も付き合っていて、結婚の話だってないわけじゃないのよ。それを…」
「だから何?そんなこと、あたしにとっては何の関係もないわ」
「ち、知香子…」
「とにかく、あたしは和彦とは別れないわ。…むしろ、相手がお姉ちゃんだと知って、絶対に奪い取ってやるって、心に決めたぐらいよ。和彦を…絶対にあたしのものにしてみせる」
「そ、そんな…知香子!知香…」
知永子の呼び掛けに応えることなく、知香子は一方的に電話を切った。知永子は携帯を握り締め、呆然と立ち尽くす。
「夜中にそんな大声を出して…どうしたって言うの?」
知永子の様子を心配した織江が、ドアを開け尋ねた。
「お母さん…」
知永子は、織江に抱きつく。織江は戸惑いながらも、知永子の肩を抱いた。
「何ですって!?」
知永子の話を聞いた織江は、思わず声を上ずらせた。
「ま、まさか、そんな…」
「わたしだって…いまでも信じたくないわ。でも、現実なのよ…。和彦と知香子は、付き合っているの。愛し合っているのよ!」
知永子は、織江に縋りつく。
「あんた達って、本当に因縁のある姉妹なんだねえ。まさか、再び同じ男を愛してしまうだなんて…」
織江は、感慨深げに呟く。
「思えば、あんた達の因縁は、あたしと奥様…それぞれの母の代から続いているのかも知れないやね。同じ男を愛し合った女達の娘が、こうして同じ男を…しかも、二度も愛するんだから…」
「お母さん…。わたし、どうすればいいのかしら。わたし、和彦とは別れたくないの。別れたくなんか…」
知永子は、涙で声を詰まらせた。
「でもねえ、」
「お母さんだって、知っているでしょう。和彦は、照矢のことがあって以来、わたしが初めて心から愛せた男性なのよ」
「…覚悟は、出来ているの?」
織江が、知永子の手を握る。
「知香子さんと…同じ男を愛するってことは、あの時のような…いいえ、きっとあの時以上の修羅を招くに違いないわ。その覚悟は、出来ているの?」
織江の重い言葉に、知永子は少しの間考え込んでから、頷いた。
「…ええ。たとえ、この先にどんな修羅が待ち受けていようと、わたしは和彦を愛していくわ」
知永子は、きっぱりと言い切る。
「知永子…」
「だから、お母さん。わたしと和彦のことを、応援してちょうだい」
「もちろんよ。世界中があんたの敵に廻ったって…あたしだけは、あんたの味方でいるわ」
「お母さん!!」
ふたりは、ひしと抱き合った。
<母の腕に抱かれ、知永子は和彦との愛を貫く決意を固めていた。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。自らをも鬼へと変える、壮絶な愛憎劇の第二章が、完全に幕を開けた瞬間である。>
閉店後、知香子は近くにあるバーに、仁を呼び出した。
「どうした?俺には、関係ないじゃなかったのか」
言いながら、知香子の向かいに腰を下ろす。知香子は、吸っていた煙草を灰皿に押しつける。
「そんな、いじわるなこと言わないでよ。事情が変わったの。仁に…頼みたいことがあるのよ」
知香子は、バッグから出した一枚の写真をカウンターの上に差し出した。十年前の、知永子のポートレートだ。隣には、知香子がいる。
「この女のことを、調べ上げて欲しいの」
言いながら、もう一枚の紙を取り出した。そこには、現在知永子が住んでいるはずの『長谷倉』の住所が書かれている。
「住所は解っているの。だから、簡単でしょう?」
「倉内…。まさか…」
「そう。この女は、あたしの実の姉よ。もう、十年も顔を合わせてないけど」仁は、目を見開いた。
「…何で、今さら姉貴のことなんか?」
「この男はねぇ、あの男の…和彦の恋人なのよ」
「何だって!?」
「ふふふ…。笑っちゃうでしょう。まさか、実の姉妹で男を奪い合うだなんて、しかも二度も。あたし達、顔も性格もまるで違うのに、男の好みだけは一緒みたいなのよ」
知香子は、喉を鳴らして笑う。
「ねえ、やってくれるでしょう?」
「…なあ」
「何よ」
「…本気なのか?」
仁は、知香子の目を見据え問いかける。
「本気よ。和彦を手に入れるためなら、あたしは悪魔にだって魂を売れるわ」
知香子は、真っ直ぐに仁を見返した。その瞳には、いつもの残虐性が戻っている。
「お願いよ。今まであんたは、あたしの頼みなら何でも聞いてくれていたでしょう」
仁の太ももに手を添えた。
「あぁ…解った」
仁は呟く。知香子は、彼を魅了する悪魔の微笑みで、仁を眺めた。
「おやすみなさい」
和彦に送られた知永子は、玄関の前で言った。和彦は、笑顔で手を振る。
「…和彦」
背中を向けた和彦に、知永子は声をかけた。
「えっ…」
和彦は、驚いたように振り向く。その顔からは、明らかに困惑が見てとれた。
「な、何…?」
「愛しているわ。わたし…この先もずっと、あなたと一緒にいたい…」
知永子は、囁いた。和彦は、戸惑いつつも
「あぁ。俺も、知永子と同じ気持ちだから…」
と返す。
「そう…。嬉しいわ」
知永子は、そう言って手を振った。
そんな、ふたりのやりとりを遠くから見つめるひとつの影があった。
仁である。仁は黙ったまま、知永子を見つめていた。
「知香子…」
そう呟く。
つづく
沈黙する知香子に、知永子は繰り返した。
「ねえ…」
「…な、何よ」
「十年前、あたしがそう言ったら、お姉ちゃんはそうした?」
「えっ…」
知香子の言葉に、今度は知永子が沈黙する。
「あたしが、あんたに照矢と別れてくれって頼んだら、そうしてくれたのかって聞いてんだよ!!」
知香子は、声を荒げた。
「するわけないわよね、そんなこと」
「で、でも…あの時と今とじゃ状況が違うでしょう。わたしと…和彦はもう三年も付き合っていて、結婚の話だってないわけじゃないのよ。それを…」
「だから何?そんなこと、あたしにとっては何の関係もないわ」
「ち、知香子…」
「とにかく、あたしは和彦とは別れないわ。…むしろ、相手がお姉ちゃんだと知って、絶対に奪い取ってやるって、心に決めたぐらいよ。和彦を…絶対にあたしのものにしてみせる」
「そ、そんな…知香子!知香…」
知永子の呼び掛けに応えることなく、知香子は一方的に電話を切った。知永子は携帯を握り締め、呆然と立ち尽くす。
「夜中にそんな大声を出して…どうしたって言うの?」
知永子の様子を心配した織江が、ドアを開け尋ねた。
「お母さん…」
知永子は、織江に抱きつく。織江は戸惑いながらも、知永子の肩を抱いた。
「何ですって!?」
知永子の話を聞いた織江は、思わず声を上ずらせた。
「ま、まさか、そんな…」
「わたしだって…いまでも信じたくないわ。でも、現実なのよ…。和彦と知香子は、付き合っているの。愛し合っているのよ!」
知永子は、織江に縋りつく。
「あんた達って、本当に因縁のある姉妹なんだねえ。まさか、再び同じ男を愛してしまうだなんて…」
織江は、感慨深げに呟く。
「思えば、あんた達の因縁は、あたしと奥様…それぞれの母の代から続いているのかも知れないやね。同じ男を愛し合った女達の娘が、こうして同じ男を…しかも、二度も愛するんだから…」
「お母さん…。わたし、どうすればいいのかしら。わたし、和彦とは別れたくないの。別れたくなんか…」
知永子は、涙で声を詰まらせた。
「でもねえ、」
「お母さんだって、知っているでしょう。和彦は、照矢のことがあって以来、わたしが初めて心から愛せた男性なのよ」
「…覚悟は、出来ているの?」
織江が、知永子の手を握る。
「知香子さんと…同じ男を愛するってことは、あの時のような…いいえ、きっとあの時以上の修羅を招くに違いないわ。その覚悟は、出来ているの?」
織江の重い言葉に、知永子は少しの間考え込んでから、頷いた。
「…ええ。たとえ、この先にどんな修羅が待ち受けていようと、わたしは和彦を愛していくわ」
知永子は、きっぱりと言い切る。
「知永子…」
「だから、お母さん。わたしと和彦のことを、応援してちょうだい」
「もちろんよ。世界中があんたの敵に廻ったって…あたしだけは、あんたの味方でいるわ」
「お母さん!!」
ふたりは、ひしと抱き合った。
<母の腕に抱かれ、知永子は和彦との愛を貫く決意を固めていた。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。自らをも鬼へと変える、壮絶な愛憎劇の第二章が、完全に幕を開けた瞬間である。>
閉店後、知香子は近くにあるバーに、仁を呼び出した。
「どうした?俺には、関係ないじゃなかったのか」
言いながら、知香子の向かいに腰を下ろす。知香子は、吸っていた煙草を灰皿に押しつける。
「そんな、いじわるなこと言わないでよ。事情が変わったの。仁に…頼みたいことがあるのよ」
知香子は、バッグから出した一枚の写真をカウンターの上に差し出した。十年前の、知永子のポートレートだ。隣には、知香子がいる。
「この女のことを、調べ上げて欲しいの」
言いながら、もう一枚の紙を取り出した。そこには、現在知永子が住んでいるはずの『長谷倉』の住所が書かれている。
「住所は解っているの。だから、簡単でしょう?」
「倉内…。まさか…」
「そう。この女は、あたしの実の姉よ。もう、十年も顔を合わせてないけど」仁は、目を見開いた。
「…何で、今さら姉貴のことなんか?」
「この男はねぇ、あの男の…和彦の恋人なのよ」
「何だって!?」
「ふふふ…。笑っちゃうでしょう。まさか、実の姉妹で男を奪い合うだなんて、しかも二度も。あたし達、顔も性格もまるで違うのに、男の好みだけは一緒みたいなのよ」
知香子は、喉を鳴らして笑う。
「ねえ、やってくれるでしょう?」
「…なあ」
「何よ」
「…本気なのか?」
仁は、知香子の目を見据え問いかける。
「本気よ。和彦を手に入れるためなら、あたしは悪魔にだって魂を売れるわ」
知香子は、真っ直ぐに仁を見返した。その瞳には、いつもの残虐性が戻っている。
「お願いよ。今まであんたは、あたしの頼みなら何でも聞いてくれていたでしょう」
仁の太ももに手を添えた。
「あぁ…解った」
仁は呟く。知香子は、彼を魅了する悪魔の微笑みで、仁を眺めた。
「おやすみなさい」
和彦に送られた知永子は、玄関の前で言った。和彦は、笑顔で手を振る。
「…和彦」
背中を向けた和彦に、知永子は声をかけた。
「えっ…」
和彦は、驚いたように振り向く。その顔からは、明らかに困惑が見てとれた。
「な、何…?」
「愛しているわ。わたし…この先もずっと、あなたと一緒にいたい…」
知永子は、囁いた。和彦は、戸惑いつつも
「あぁ。俺も、知永子と同じ気持ちだから…」
と返す。
「そう…。嬉しいわ」
知永子は、そう言って手を振った。
そんな、ふたりのやりとりを遠くから見つめるひとつの影があった。
仁である。仁は黙ったまま、知永子を見つめていた。
「知香子…」
そう呟く。
つづく
永遠の姉妹 第21話『明かされた真実』
一体、どれくらいの時間そうしていたのだろう。知永子は、和彦の携帯を握り締め、呆然と立ち尽くしていた。
知香子。
和彦の着信履歴に度々残っている女の名前に、ぞっとする。まさか、そんな偶然があるだなんて…。
理性では否定しながらも、どこか体の奥深いところでは、何故かそれを確信していた。
その時、ドアの開く音がする。
知永子は、咄嗟にその女の番号を自分の携帯に打ち込み、和彦の携帯を元あったソファに投げ捨てた。
「どうした…顔色悪いぞ」
「う…うん。ちょっと気分が…」
「大丈夫か?いいから、ちょっと横になっておけよ」
和彦は、知永子の肩を抱く。知永子は、和彦に支えられるようにして寝室に入り、ベッドに横たわった。
「夕飯は、俺が作るから」
「…ありがとう」
和彦が、優しく微笑む。
ひとり寝室に残された知永子は、携帯に打ち込んだ番号を眺めた。
今ここで通話ボタンを押せば、全てが明らかになる。しかし、そのひと押しを踏み出す勇気はなかった。
それは、まさしくパンドラの箱だった。しかも、最後に希望が残っているとは限らない。
「知香子…」
知永子は、携帯を握り締め呟いた。
週明けの月曜日、知永子はデスクの上に頬杖をつき、溜め息を漏らす。
結局、何も確かめられなかった。そんな自分を歯痒くもあり、かと言って真実を前にした自分を想像すると、そんなことをしなくて良かったとも思う。とにかく、真実を知るのが怖かったのだ。
こんなことになるのなら、始めから携帯など見なければ良かった。お門違いとは知りつつも、美和を恨む。
「知永子、今日の夜って空いてる?」
「えっ…」
当の美和に話しかけられ、戸惑った。
「軽く食事しに行かない?話したいことがあるの」
「あの…わたし…」
「いいじゃない。この前オープンしたイタ飯に行きましょう
美和は半ば強引に話をまとめると、さっさと自分のデスクへと戻ってしまう。知永子は、再び溜め息をついた。
「何ですって!?」
美和の言葉に、知永子は声を裏返らせる。それから、周りを気にするように声を潜めて
「どうゆうこと?」
と続けた。
「だからあたし、知永子とも前に行ったことがある六本木のバーで飲んでいたのね。もちろん、男とよ。そうしたら、そこに主任がいるじゃない、隣に女を置いて。何やら、親密そうな雰囲気だったわよ」
「そ、そんな…」
知永子の声が震える。
「彼の携帯、まだ見てないの?」
身を乗り出した美和の問いかけに、知永子はさらに動揺した。その様子から、美和はにんまりと笑う。
「見たのね!そして、怪しい女の影を見つけてしまったのね。そうなんでしょう?」
「わ…わたしは…」
「いいじゃない。で、何が解ったのよ」
美和は、執拗に問い詰める。
「わたし、後悔しているの。あんなことさえしなければ、こんなこと知らなくて済んだのに…」
「何言ってるのよ!!知永子、あんたこのままでいいの?」
「…よ、よくなんかないけど」
「だったら、とことん戦いなさいよ。あんな女に、主任を奪わせちゃいけないわ」
美和は、知永子の手を取り言った。
「…で、でも…」
尚も躊躇う知永子に、美和は
「あの店で張るのよ」
と囁いた。
「えっ…」
「あたしが、あのふたりを目撃したバーに張り込むのよ。人間の行動パターンなんて、たかがしれているもの。絶対に、現れるわ」
美和は、自信満々に言う。
「…でも」
「やるのよ!彼を、愛しているんでしょう。だったら、出来るはずだわ!!」
美和の迫力に押され、知永子は頷いた。美和の瞳が、ギラリと光る。
六本木のバー。知永子は、店内を観察し易そうな奥のボックス席に座り、和彦を待っていた。
かれこれ、一時間はこうしている。美和に急かされ、こんなところまで赴いてしまったが、今夜は空振りかも知れない。
そう思って席を立とうとした瞬間、ドアが開き和彦が姿を現した。知永子は、慌てて身を隠す。
和彦はカウンターに座り、腕時計で時間を確認した。やはり、待ち合わせなのだろう。
知永子は息を飲み、和彦の背中を見つめた。ここまで来てしまったら、相手の女を確認するまでは帰れない。そう覚悟を決めた。
再びドアが開き、水商売風の女が入って来た。
知永子は、思わず叫びそうになる。服装やメイクのせいでだいぶ印象は変わっていたが、間違いない。
知香子だ。
知香子は、当然のように和彦の隣に座る。ふたりは、親しげに顔を寄せ合い、話し込んでいるようだった。
その場に居たたまれなくなった知永子は、顔を隠しながら店を出る。一体、どうすればいいのか解らなかった。
部屋に戻り、シャワーを浴びた知香子は、髪を乾かしながらソファに座る。
和彦とのことを思い出していた。彼に対する想いは、日に日に募っていく。
現に別れたばかりなのに、もうすでに会いたいと思う。久しく忘れていた恋の感覚に、知香子は苦笑した。
まさか、この年になってこんな気持ちになるだなんて…。
その時、テーブルの上の携帯が鳴った。見知らぬ番号に訝りながら、知香子は電話に出る。
「はい、もしもし…」
「……」
相手は無言だ。
「いたずらだったら、切るわよ」
「…ち、知香子」
かすれたような女の声に、知香子は驚愕する。
「お、お姉ちゃん!?」
「…やっぱり、知香子だったのね」
「何で…この番号を?」
「和彦から聞いたの…」
「和彦って…。まさか」
「そう。わたしが…和彦の恋人なの」
知永子の言葉に、知香子は言葉を失った。
何という運命の皮肉なのだろう。まさか、再び姉妹で同じ男を愛してしまうだなんて…。
「知香子、聞いているの?」
「…え、ええ。聞いているわ」
「…別れてちょうだい」
知永子は言った。
<十年の時を経て、再会してしまった姉妹。
やがて彼女達の愛憎は、周囲の人間を巻き込む、激しい嵐の渦になっていくのであった。>
つづく
知香子。
和彦の着信履歴に度々残っている女の名前に、ぞっとする。まさか、そんな偶然があるだなんて…。
理性では否定しながらも、どこか体の奥深いところでは、何故かそれを確信していた。
その時、ドアの開く音がする。
知永子は、咄嗟にその女の番号を自分の携帯に打ち込み、和彦の携帯を元あったソファに投げ捨てた。
「どうした…顔色悪いぞ」
「う…うん。ちょっと気分が…」
「大丈夫か?いいから、ちょっと横になっておけよ」
和彦は、知永子の肩を抱く。知永子は、和彦に支えられるようにして寝室に入り、ベッドに横たわった。
「夕飯は、俺が作るから」
「…ありがとう」
和彦が、優しく微笑む。
ひとり寝室に残された知永子は、携帯に打ち込んだ番号を眺めた。
今ここで通話ボタンを押せば、全てが明らかになる。しかし、そのひと押しを踏み出す勇気はなかった。
それは、まさしくパンドラの箱だった。しかも、最後に希望が残っているとは限らない。
「知香子…」
知永子は、携帯を握り締め呟いた。
週明けの月曜日、知永子はデスクの上に頬杖をつき、溜め息を漏らす。
結局、何も確かめられなかった。そんな自分を歯痒くもあり、かと言って真実を前にした自分を想像すると、そんなことをしなくて良かったとも思う。とにかく、真実を知るのが怖かったのだ。
こんなことになるのなら、始めから携帯など見なければ良かった。お門違いとは知りつつも、美和を恨む。
「知永子、今日の夜って空いてる?」
「えっ…」
当の美和に話しかけられ、戸惑った。
「軽く食事しに行かない?話したいことがあるの」
「あの…わたし…」
「いいじゃない。この前オープンしたイタ飯に行きましょう
美和は半ば強引に話をまとめると、さっさと自分のデスクへと戻ってしまう。知永子は、再び溜め息をついた。
「何ですって!?」
美和の言葉に、知永子は声を裏返らせる。それから、周りを気にするように声を潜めて
「どうゆうこと?」
と続けた。
「だからあたし、知永子とも前に行ったことがある六本木のバーで飲んでいたのね。もちろん、男とよ。そうしたら、そこに主任がいるじゃない、隣に女を置いて。何やら、親密そうな雰囲気だったわよ」
「そ、そんな…」
知永子の声が震える。
「彼の携帯、まだ見てないの?」
身を乗り出した美和の問いかけに、知永子はさらに動揺した。その様子から、美和はにんまりと笑う。
「見たのね!そして、怪しい女の影を見つけてしまったのね。そうなんでしょう?」
「わ…わたしは…」
「いいじゃない。で、何が解ったのよ」
美和は、執拗に問い詰める。
「わたし、後悔しているの。あんなことさえしなければ、こんなこと知らなくて済んだのに…」
「何言ってるのよ!!知永子、あんたこのままでいいの?」
「…よ、よくなんかないけど」
「だったら、とことん戦いなさいよ。あんな女に、主任を奪わせちゃいけないわ」
美和は、知永子の手を取り言った。
「…で、でも…」
尚も躊躇う知永子に、美和は
「あの店で張るのよ」
と囁いた。
「えっ…」
「あたしが、あのふたりを目撃したバーに張り込むのよ。人間の行動パターンなんて、たかがしれているもの。絶対に、現れるわ」
美和は、自信満々に言う。
「…でも」
「やるのよ!彼を、愛しているんでしょう。だったら、出来るはずだわ!!」
美和の迫力に押され、知永子は頷いた。美和の瞳が、ギラリと光る。
六本木のバー。知永子は、店内を観察し易そうな奥のボックス席に座り、和彦を待っていた。
かれこれ、一時間はこうしている。美和に急かされ、こんなところまで赴いてしまったが、今夜は空振りかも知れない。
そう思って席を立とうとした瞬間、ドアが開き和彦が姿を現した。知永子は、慌てて身を隠す。
和彦はカウンターに座り、腕時計で時間を確認した。やはり、待ち合わせなのだろう。
知永子は息を飲み、和彦の背中を見つめた。ここまで来てしまったら、相手の女を確認するまでは帰れない。そう覚悟を決めた。
再びドアが開き、水商売風の女が入って来た。
知永子は、思わず叫びそうになる。服装やメイクのせいでだいぶ印象は変わっていたが、間違いない。
知香子だ。
知香子は、当然のように和彦の隣に座る。ふたりは、親しげに顔を寄せ合い、話し込んでいるようだった。
その場に居たたまれなくなった知永子は、顔を隠しながら店を出る。一体、どうすればいいのか解らなかった。
部屋に戻り、シャワーを浴びた知香子は、髪を乾かしながらソファに座る。
和彦とのことを思い出していた。彼に対する想いは、日に日に募っていく。
現に別れたばかりなのに、もうすでに会いたいと思う。久しく忘れていた恋の感覚に、知香子は苦笑した。
まさか、この年になってこんな気持ちになるだなんて…。
その時、テーブルの上の携帯が鳴った。見知らぬ番号に訝りながら、知香子は電話に出る。
「はい、もしもし…」
「……」
相手は無言だ。
「いたずらだったら、切るわよ」
「…ち、知香子」
かすれたような女の声に、知香子は驚愕する。
「お、お姉ちゃん!?」
「…やっぱり、知香子だったのね」
「何で…この番号を?」
「和彦から聞いたの…」
「和彦って…。まさか」
「そう。わたしが…和彦の恋人なの」
知永子の言葉に、知香子は言葉を失った。
何という運命の皮肉なのだろう。まさか、再び姉妹で同じ男を愛してしまうだなんて…。
「知香子、聞いているの?」
「…え、ええ。聞いているわ」
「…別れてちょうだい」
知永子は言った。
<十年の時を経て、再会してしまった姉妹。
やがて彼女達の愛憎は、周囲の人間を巻き込む、激しい嵐の渦になっていくのであった。>
つづく
奇人変人を演じる難しさ…(=_=;)

最初

タィトルが違ったんで気づきまてんでしたが
奥田英明の伊良部一郎シリーズが原作の
ドラマ
『Dr.伊良部一郎』
確か
SP
ドラマだか映画
版でゎ阿部チャンが演じてましたが
原作でゎ小太りで気持ち悪ぃ変態のハズだった天才(
)精神科医を
21世紀の石原裕次郎襲名以来ずっとくすぶり続けてぃる印象の徳重聡がどぅ演じるのか…
チョット気になったので軽くチェック
してみましたが
う~ん…
ゃっぱり固ぃなぁ
ぃかにも
がんばって奇人変人を演じてます
って感じでつ
比べるのが酷なのゎ解り切ってぃるものの
無表情で露出過多な謎のナースをサラッと演じる余貴美サンとの差ゎ歴然(゚Д゚)
ハッ
松下奈緒主演の『CONTROL』で
福山雅治のガリレオの劣化版みたぃな大学教授役をゃってる藤木直人しかり
北川景子主演の『LADY』で
ハンニバル・レクターくずれみたぃな少年死刑囚役をやってる柳楽優弥しかり
今クールの
ドラマゎ
ゃけに変人な役が目につきまつが
ゃっぱり難しぃんでつねぇ…(>_<)

奥田英明の伊良部一郎シリーズが原作の
ドラマ
『Dr.伊良部一郎』
確か
SP
ドラマだか映画
版でゎ阿部チャンが演じてましたが原作でゎ小太りで気持ち悪ぃ変態のハズだった天才(
)精神科医を21世紀の石原裕次郎襲名以来ずっとくすぶり続けてぃる印象の徳重聡がどぅ演じるのか…
チョット気になったので軽くチェック
してみましたがう~ん…
ゃっぱり固ぃなぁ

ぃかにも
がんばって奇人変人を演じてます
って感じでつ
比べるのが酷なのゎ解り切ってぃるものの
無表情で露出過多な謎のナースをサラッと演じる余貴美サンとの差ゎ歴然(゚Д゚)

ハッ松下奈緒主演の『CONTROL』で
福山雅治のガリレオの劣化版みたぃな大学教授役をゃってる藤木直人しかり
北川景子主演の『LADY』で
ハンニバル・レクターくずれみたぃな少年死刑囚役をやってる柳楽優弥しかり
今クールの
ドラマゎゃけに変人な役が目につきまつが
ゃっぱり難しぃんでつねぇ…(>_<)
