「記事は悔しすぎる。接待は受け
てない」。NTTから1回5万円
の接待を2回も受けながら、開き
直った高市早苗基総務相。「どの
口が言うか」である。そんな強弁
が通るとでも思っている浅はかさ
。ばれてから7万円を後で支払っ
たのが、そもそも割り勘でなかっ
たことを証明している。同じ高額
接待を受けた野田聖子元総務相も
「プライベートな懇談会だった」
と釈明したが、同じように後で差
額を払った。武田良太総務相は会
食の有無さえ答えようとしない。
職務権限のある省のトップが特定
企業の豪華な宴席に呼ばれたとい
うモラルの欠如はとどまるところ
がなさそうだ。
他に政務三役経験者も7年間でN
TTから実に15人も高額接待を受
けていたことも判明した。綱紀の
乱れの広がりが、空恐ろしくなる
。まさに「鯛は頭から腐る」の例
えを地で行くような安倍政権から
続く「利権政治」の腐敗が極まっ
た印象だ。
論壇では今よく「縁故主義(ネポ
ティズム)」という言葉を通して
、政治の現状が様々分析されてい
る。「縁故資本主義」とも言われ
、政府の幹部と大企業幹部が深い
関係を結び、双方の利益を最大限
に享受することへの批判がかつて
なく高まっている。文春報道で明
るみになった総務省幹部と利害関
係が密接な関係にあるNTTや東
北新社の接待疑惑はその一端の表
れでもある。
安倍政権では、行政をねじ曲げて
安倍晋三前首相と親友だった加計
孝太郎氏と首相夫人が支援した森
友学園に利益誘導を謀った。今回
の接待疑惑も前政権から連綿と続
く縁故者との癒着である。深刻な
のは菅義偉首相自身が総務相時代
に築いた癒着構造から発している
ことだ。
内閣人事局人事で官僚の人事を政
権の思惑通り動かすことが菅政権
の「権力の源泉」である。国会で
首相は「長男は別人格」などと答
弁、他人事のように疑惑から距離
があるように見せているが、すべ
ての癒着には「逆らうと、人事で
冷や飯を食わされる」という官僚
側の恐れが垣間見える。その意味
で首相自身の官僚支配が招いた汚
職事件なのである。
高市元総務相もかつて「どう喝」
を駆使していたことを忘れてはな
らない。2016年、衆院予算委
で「放送局が政治的な公平を欠く
放送を繰り返したと判断した場合
、放送法4条違反を理由に、電波
停止を命じる可能性がある」と答
弁した。放送法は1条で「放送に
よる表現の自由を確保する」と定
めており、高市答弁は言論弾圧に
もつながると批判された経緯があ
る。この発言以来、放送メディア
が過度に委縮して、政権批判を控
える傾向が顕著になってしまった
。
放送メディアによる報道の自由が
危うくなった事態を今に招いた張
本人である高市元総務相が、NT
T幹部と通信の分野でも陰で暗躍
していた疑いも浮上した。国会で
15日から始まる澤田純NTT社長
の参考人招致で、野党は接待の狙
いと癒着を明らかにする責務があ
る。東北新社の一部免許取り消し
は立憲の小西洋之議員のお手柄だ
ったが、文春報道の後追いばかり
では支持は広がらない。もっと独
自調査で全容解明を目指すべきだ
。有権者の怒りは強まり、菅政権
の不支持率は支持率をずっと上回
っているのだから、一段と追及姿
勢を強めるべきだろう。
【2021・3・14】

