「アリが象倒した」地殻変動 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。


火に油を注いだ発言が「専横と驕
り」のしみ込んだ与党体質を改め
て露わにした。森喜朗五輪組織委
会長の女性差別発言に抗議してボ
ランティア登録を辞退した人に「
瞬間的なもの。また募集したらい
い」と言い放った二階俊博幹事長
。小池百合子都知事の「五輪4者
会談」への出席拒否が森会長辞任
につながったが、会長辞任だけで
はもう済まない。女性差別のほか
様々偏狭的な価値観を優先する政
治に向けられた「ノー」の声の高
まりは、異論に耳を傾けない驕っ
た統治が続く政治風土を根底から
覆そうとする地殻変動の震動では
ないか。


暴言から辞任まで8日もかかった
。国会で白のスーツ姿で女性差別
発言に抗議した野党の女性議員に
、二階幹事長側近の野田聖子幹事
長代行は「ここは日本」と批判、
二階発言にも「よく聞こえなかっ
た。機械ではないのでうまく伝え
られなかったのでは」と擁護した
。萩生田光一文科相は森会長の「
面白おかしくしたいんだろう」と
した逆切れ発言さえ、「最も反省
している時にあんな発言をする」
と聞き苦しい説明までしてかばっ
た。この間、政府与党幹部からは
森会長辞任を求める声は上がらず
、「政府に権限はない」とする言
い訳ばかりが際立った。その閉鎖
性と愚鈍な判断が一層反発を招い
ていたことに気付いていなかった


菅義偉首相が6人を任命拒否した
日本学術会議問題ではそれまでの
憲法解釈を強引に変えてまでおき
ながら、都合が悪くなると、今回
は「組織委の人事」と不介入を決
め込んだ。その二枚舌にまたあき
れ返った。


森会長への同情論はなお強い。「
功績は大」、「森さん以外に会長
職は務まらない」……などだが、
海外では今回の暴言だけでなく個
々の恥ずかしい発言も同時に紹介
され、謝罪会見で「終了」として
いたIOCも改めて「不適切だっ
た」と多様性と調和を強調せざる
を得なくなった。「大阪はたん壺
」「日本は天皇を中心とした神の
国」など過去の暴言も拡散、差別
意識と偏狭な価値観持つ人物像が
首相を務めていた後進性が世界に
知れわたってしまった。


こんな人物を担ぎ続けた自民党政
治自体が今問われているのだ。「
#黙っていない」「#わきまえな
い」などのネット上の抗議投稿は
日々数十万単位で増え続けたが、
これほどの「怒りのムーブメント
」は過去になかった。「森会長辞
任」までの経緯は、心あるアリた
ちが集って、暴走する巨像を倒し
たような印象さえ与える。「辞任
要求」で一致した野党は今後公正
さを求めるアリの思いをくみ取る
知略を練る時だろう。


かろうじて内閣支持率を30%台を
保つ菅政権にとっても辞任は大打
撃になり、強引な五輪開催も強行
しにくくなるだろう。そこで、目
を離せなくなるのが小池知事の動
向だ。森暴言翌日、「話が長いの
は人によるんじゃないでしょうか
」と感想を述べただけだった。と
ころが、批判が高まると「重要な
時期にこの発言で困惑している」
と述べた。その翌日は「私自身は
絶句したし、あってはならない」
とそのトーンを変えた。変わり身
の早さは舌を巻くほどだ。



今夏の都議選まで視野に入れ、落
ち目の菅政権と対峙する姿勢を明
確にしておく方が得策とする判断
が働いたように見える。野党には
は機を見て一気に相手の弱みにつ
け込む小池知事のしたたかさが必
要かもしれない。


    【2021・2・12】