雨の降りしきる、大阪の中心地。
休日のオフィス街を歩く。
傘を畳み、水滴を落とす。
高層ビルの中へと進む。
「15時予約のHiMです」
受付を済ませ、席へと通された。
ほどなくして、
「失礼します」
お待たせしました、と女性が席に着く。
見た目は女子アナ風で、30代前半。
上品な立ち居振る舞いをされる。
「今日はよろしくお願いします」
軽く挨拶をすませる。
「こうしてお会いするのは久しぶりですね」
ふんわりとした笑顔。
前回は気づかなかったが、
女性の左手薬指に、指輪が見えた。
「今日は久しぶりに
スーツじゃないので、助かります」
今日は半袖。普段着だ。
「最近までとても忙しかったですよね」
土日は毎日お見合いを3件ずつ。
夜は交際中の女性とデート。
カフェインの摂りすぎに気を付けていた。
「カウンセラーさん側も、
このペースは結構大変ですよね」
「まあ!
お気になさらずに」
そんなことはないですよ、と微笑む。
今日は、相談所の定期面談にきていた。
入会時の面談から2ヶ月近く。
活動をしてみての感想や、
困ったことなどを
カウンセラーさんに、
ざっくばらんに話していく。
普段は事務的なメッセージの
短いやり取りしかしていなかったが、
面と向かって話してみると、親しみを感じる。
「そうだ、先日交際終了になった
○○さんですが--」
3回目のデート後に交際終了となった。
理由がいまいちピンとこない。
「詳しいフィードバックを
お聞きしたいですか?」
想定されていたのか、
すでに準備済みのようだ。
お願いします、と始めてもらう。
カウンセラーさんがノートPCに目を落とす。
「少々細かいのですが・・・
いえ、細かいですね」
そんなビッシリあるのか。
心当たりがなさすぎて怖い。
「要約すると、
直して欲しいのに
伝えても直してくれない
--といったところですね」
「そうなんですか・・・」
カウンセラーさんが、
かいつまんで読み上げていく。
「デート代がワリカンで--」
「はい・・・え?」
いや、それ。
奢ろうとしているところに、
彼女からワリカンを申し出たわけで。
「2人で歩いている時も、
車道側を歩かされ--」
「うーん・・・?」
あっただろうか。
そもそもこれを気にする人、
今だにいるのか?
「座席は奥側に座り--」
「あー、あの時、かな?」
「エレベーターは--」
「・・・」
こ、
細かい・・・
そして、まだまだ続き。
「--とのことでした。
お心当たりはありますか?」
「え、ええ・・・。
一部、ある気がします」
「すぐに直せそうなのですけどね」
「あの、そもそも今出た話、彼女からは
何か言われたことがなくてですね」
「そうなのですか。
まあ、直接的な伝え方では
なかったのかもしれませんね」
「なるほど・・・」
腑に落ちないが、
言い訳しても仕方がない。
もう交際終了になったのだから。
次にどう活かすかだ。
--*
【CASE11:京都出身】
シグナルは送っているが、
読み取れないケース。
今後も言葉の裏にある本音を汲み取って
生活するとなると、窮屈で仕方がない。
「言わなくても察して」
タイプも合わせて、ちょっと
自分には自信がありません。
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