相続税の計算方法は、なかなか複雑ですが、相続税の「基礎控除」の額は、とても大きいです。


 したがって、相続税の対象となるケースは、全体の5パーセントともいわれています。


 よほどの資産家でなければ、実際に相続税の心配をすることはありません。


 しかし、2015年(平成27年)1月1日以後のものについては、相続税の「税率」と「基礎控除額」が改正されるに伴い、相続税対象者が拡大されます。


 また、遺産額が1億円超の「税率」と「速算控除額」も、細分化されるようになります。


 なお、相続税改正の対象は、2015年(平成27年)1月1日以降に発生した相続です。


 改正以前に相続が開始し、2015年(平成27年)1月1日以後に申告したケースでは、改正前の税率等が適用されます。


 

 ここで、改正前の相続税の「税率」と「速算控除額」を表してみます。


 

 (法定相続分に応じた取得額)    (税率)   (速算控除額)

  

 1000万円以下             10%          0

 

 1000万円超  3000万円以下    15%       50万円

 

 3000万円超  5000万円以下    20%      200万円

  

 5000万円超  1億円以下      30%      700万円

  

 1億円超  3億円以下         40%    1700万円

 

 3億円超                  50%    4700万円 



      

      行政書士  平 野 達 夫

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 ここで「相続税の計算の流れ」について、掲示した項目一覧で順次説明してまいります。



① 相続財産の把握

 

  ・ 各種財産の把握をします

 

  ・ 「みなし相続財産」を加算します

  

  ・ 亡くなる前3年以内の贈与財産を相続財産に加算します 

 

  ・ 一方、非課税財産は算入しません

 

  ・ 債務があれば、控除します


② 「基礎控除」を差し引く

 

  ・ 5000万円+ 1000万円×法定相続人数 ( 現税制法上 )


③ 相続税の総額の計算

 

  ・ 「法定相続分どおりに分けた」と仮定します

 

  ・ 各人の相続税額を算出して合計します


④ 実際の相続額に応じて、「相続税の総額」を案分

 

  ・ たとえば、「30%の財産を相続した」ならば、相続税も

    「総額の30%」です


⑤ 各種「税額控除」を差し引く


  ・ 配偶者の税額軽減をします


  ・ 未成年者控除、障害者控除をします


⑥ 相続税の「2割加算」を行う


  ・ 法定相続人でない人 ( たとえば友人など )


  ・ 被相続人の兄弟姉妹


  ・ 被相続人の孫養子

  

           が相続した場合は、相続税が2割加算されます


  

  以上が、「相続税の計算の流れ」であります。

 お分かりいただけましたでしょうか。



      行政書士  平 野 達 夫

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④ 各種税額控除を差し引きます。 


 前回の③で一応、税額の計算は終わりですが、特例的には、その税額が軽減される制度があります。


 その代表的な例が、「配偶者の税額軽減」です。


 これは、亡くなった配偶者の「夫婦財産形成の貢献」という観点から、税の負担を軽減しようというものです。


 まずは、配偶者が納付すべき相続税がある場合を考えてみましょう。


 それは、亡くなった被相続人の配偶者が相続した相続財産のうち、「法定相続分の相当額までの相続財産に対応する相続税額」と、「1億6000万円」までのいずれか多い分までは、相続税を納めなくてもよいというものです。


 したがって、多くのケースで、この「配偶者税軽減」が該当してくるものと思われます。



⑤ 相続税の「2割加算」をする


 前記④とは逆に、税額が加算される人もいます。


 それは、被相続人の「兄弟姉妹」が相続の場合です。

ほかに、法定相続人以外で、相続した人です。

これは、たとえば、被相続人の「友人」などが上げられます。


 また更に、「相続税の2割加算」の対象者としては、被相続人の養子となったその被相続人の孫が、これに該当します。

いわゆる、「孫養子」です。


 すなわち、このような場合では、「④で算出した税額×1.2」が相続税の納税額となります。



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② 法定相続分どおりに分けたと仮定して税額計算


 相続財産の総額から基礎控除を差し引いた額を、「課税遺産総額」といいます。


 この「課税遺産総額」が出ましたら、それを、各相続人が法定相続分どおりに分けたと仮定して、各人の税額を算出します。


 これは、あくまでも、「仮定」です。

実際にどのように財産を分割するかは、ここでは問いません。


 この段階で算出した税額を、「仮相続額」と呼ぶこともあります。

後ほど、事例に基づいて、具体的な計算を示していきたいと思います。



③ 実際の相続分に応じて税金を分ける


 続いて、②で求めました「仮相続税」の総額を、各相続人の「実際に相続した比率」で案分いたします。


 すなわち、簡単に申しますと、「遺産を相続した割合と同じだけ、相続税も負担していただきます」ということです。


 たとえば、法定相続人が、「妻、長男、次男」のケースで算出してみましょう。


 仮相続額が、「妻1000万円、長男500万円、次男500万円」だったといたしましょう。

すなわち、あなたもお分かりのように、仮相続税額の合計は、「2000万円」です。


 もしここで、妻が相続財産の70%を取得し、子供たちが15%ずつ取得するといたします。


 この相続分で、各人の税額を算出しますと、


    妻は、2000万円×70%=1400万円


    子供1 2000万円×15%=300万円


    子供2 2000万円×15%=300万円


                           となります。


 

 以上のように、先ずは、法定相続分どおりに分けたと仮定して税額計算をし、続いて、実際の相続分に応じて税金を分けていくという形になります。



      行政書士  平 野 達 夫

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 養子縁組の効果を考える前に、「相続税計算の流れ」を確認してみましょう。


 先ずは、相続財産の総額の把握が最初に来ます。

その後の流れについては、以下順次述べてまいます。


① 「基礎控除」を差し引く


 相続税には、皆様もご存じのように「基礎控除」というものがあります。


 相続財産の総額から、この「基礎控除」を差し引いた数字に対して、税金を計算します。


 もしも、財産の総額が、「基礎控除」の範囲内であれば、相続税はかからないことになります。


 基礎控除の額は、5000万円+(法定相続人数×1000万円)です。


 たとえば、妻と子供2人を残して死亡した場合は、法定相続人が3人なので、計算により、「基礎控除」は、8000万円になります。


 また、子供がなく、遺族が妻1人で、他に法定相続人がいないケースでは、「基礎控除」は、6000万円ということになります。


 つまり、財産が最低6000万円ないと、相続税はかかってまいりません。


 ただし、これは、改正前の現行の税制により計算したものです。


 平成27年1月1日より施行の新たな税制改正では、基礎控除は、次のように改正されております。


 すなわち、基礎控除の額は、3000万円+(法定相続人数×600万円)です。


 上記のように、妻と子供2人を残して死亡した場合は、「基礎控除」」は、4800万円になります。


 また、遺族が妻1人で、他に法定相続人がいないケースでは、「基礎控除」は、3600万円です。


 もちろんこの場合も、財産が最低3600万円ないと、相続税はかかってまいりません。


 しかし、この度の来年1月1日より施行の新たな税制では、「基礎控除」の算出額に、大きな変更があったことがお分かりいただけたと思います。


      行政書士  平 野 達 夫

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 養子をとったことによる失敗事例として、多いパターンの一つを上げてみます。


 それは、「養子が亡くなった際に、他人である養子の兄弟に財産が渡ってしまう」というケースです。


 あなたが「血筋」を重視するのであれば、「娘の配偶者」や「息子の配偶者」を養子とすることも考えられます。


 この場合、先に養子が亡くなっても、その財産を相続する配偶者は、「被相続人、あなたの実子、すなわち、娘」です。


 また、「養子の子供」も、「被相続人、あなたの孫」です。

このケースでは、あなたの財産が他人に移るという心配はないようにも思えます。


 しかし、次のような事例では、いかがでしょうか。

Aさんは、会社を経営していました。


 Aさんが社長で、娘夫婦も手伝っておりました。

娘婿は仕事の能力が高く、人柄の面でも、Aさんは娘婿を信頼していました。


 そこでAさんは相続税対策も兼ねて、娘婿を養子にし、財産の一部である法人の株式や、所有する駐車場などを相続させるべく、遺言書も書きました。


 やがてAさんは亡くなりました。

そして娘婿は社長に就任しました。

ところが、その途端に娘婿は、「人が変わって」しまいました。


 娘婿は、被相続人Aさんから相続した法人の株式を、実家の兄に贈与し、その上、会社の経営にまで参画させてしまいました。


 さらに娘婿は、相続した駐車場を売却して、弟が経営する会社に融資してしまいました。


 その後、弟が経営する会社は、倒産するはめとなりました。

結局、融資したお金は返ってきませんでした。


 このように、結果的には、娘婿に相続させた財産が、実家の兄弟、すなわち、Aさんから見て「他人」に、渡ってしまったわけです。


 最後まで、それら相続財産は、戻ってくることはありませんでした・・・。


      行政書士  平 野 達 夫

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  ~ 前回に続きます ~


 ただし、Aさんのように「財産のほとんどが不動産」という場合には、その遺産分割は大変です。

なかなかどうして、容易にはまいりません。


 それぞれ相続人間で,相続財産、主たる不動産を分けるためには、換金しなければなりません。


 換金するということは、「売る」ことです。

すわち「手放す」ということです。


 被相続人が遺しおいた不動産は、「先祖代々にわたり継承され、それぞれが守ってきた」ものでもあります。


 したがって、売ることに抵抗を持つ方も、少なくないでしょう。

出来ることなら、だれかが継いで欲しいです。

これも自然の気持であります。


 また一方、皆様もご承知のように土地を分ける方法としては、「分筆」というやり方があります。


 当該土地を細かく切って、それぞれを各相続人が持つというものです。


 もちろん分筆によって、各人の財産を自由に処分などしてよいことになります。


 ただし、土地を細かに切って分筆するには、測量などのコストもかかってまいります。


 更に、仲介世話人などへの諸費用がかかってくる場合もありましょう。


 それでいて、土地の利用価値が下がり、将来売る際の価格が下がることも視野に入れなければなりません。


 そもそも、すでにマンションなどが建っている状況では、土地を細かに分けて持っていても、意味はありません。


 なお、今回のケースでは、「土地の共有」という方法が選択されました。


 すなわち、土地の大きさはそのままにして、土地名義を「妻2分の1、長男4分の1、Yさん4分の1」という形にします。


 しかし、この「共有」というケースでは、売ったり、或いは利用形態を変えるに際しては、相続人全員の合意を取る必要があります。


 すなわち、共有者全員の合意を得なければ、各持分の処分はできません。


 もしこの合意が取れなければ、この先長期に亘り、「当該土地は従前のとおり、未処分のまま」となってしまう可能性も出てきます。


 更に考えますことは、これまで「他人」であったYさんと、「一緒に土地を共有し持つ」ということになります。


 気分的にも、決して良いものでないことは言うまでもないでしょう。

あなたは、ストレスが溜まりませんか・・・・。


      行政書士  平 野 達 夫

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    「奥さんと前夫との間に生まれた子供」を養子にした

 

 Aさんは、複数の不動産を所有する資産家です。

しかし、ほとんどが不動産です。

 

 Aさんの法定相続人となる人としては、「奥さん」、「長男」の2人がいました。


 相続税を試算しましたが、節税したいというニーズがありました。

そこで考えたのが、「養子縁組」です。


 皆さんもご承知のように、養子をとりますと、相続税は軽減されます。


 Aさんの奥さんには、離婚歴があります。

前の夫との間に生まれた子供Yさんがいました。

このYさんを養子とすることで、節税しようとしたのです。


 結果、Aさんの法定相続人は、「奥さん」、「長男」、加えて「Yさん」の3人となりました。


 奥さんと前夫との離婚により、子供Yさんは前夫の父親が引き取ったところから、AさんはYさんとはほとんど面識はありません。


 双方の関係が希薄だったため、Aさんは、「Yさんが、Aさんの財産に口を出すことはないだろう」「多少の現金を渡せば、満足してくれるだろう」というくらいに、軽く考えていたようです。


 やがてAさんが亡くなりました。

そして、遺産分割の話にすすみます。


 そのときYさんから、主張が出ました。

「財産の4分の1を求める」と言ってきました。


 確かに養子といっても、「子供」であることには変わりありません。

すなわち、実の長男と同じ権利があります。


 Aさんの奥さんや、長男からすれば、まさしく驚きです。

説得しても応じません。


 いよいよ、難航な状況に陥ります。

Yさんは、弁護士を立てて争う事態に発展します。


 Aさんの「Yさんに対してのわずかな現金を」というもくろみは、みごとに、打ち消されてしまいました。


 亡くなったAさんの意向としては、「所有する不動産のうち、2つを奥さん、残りを長男に相続させる」


 そして、「若干の現金を、Yさんに渡す」というものでした。

Aさんは、遺言書を作成していたわけではありません。


 今回のように、Yさんから強く主張されますと、それに沿った形で分割しなければならない可能性が出てまいります。


              ~ 次回に続く ~



      行政書士 平 野 達 夫

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 従来の相続対策は、「節税」、「納税資金」、「分割」の3つが、軸であったと言えます。


 すなわち、主に相続税の申告・納税がメインで、節税が中心になりがちでした。


 これは、将来に悪影響をおよぼす対策を立ててしまうおそれがないとは言えません。


 「現在」の視点としては、「今のままでは相続税が大きくなるので、少し下げよう」という程度ものでしかありません。


 また先に関しては、「遺産分割や納税ができる」という程度の、「直近の未来」しか考えていません。


 要は、「相続税の申告・納付さえできればよい」という感覚であります。


 もしここで、しっかり「現在」の視点があれば、税金だけでなく、「現況の土地の活用方法は適切か」というところまで考えが及びます。


 更に「未来」の視点は、長期的なものです。

もしその視点に立てば、「節税のために建てたマンションに入居者が入らず、借入金の返済が困る」といったことも、回避できましょう。


 「従来型の視点」により立てた相続対策の失敗例は、多く見られます。


 逆に言いますと、「過去・現在・未来」の視点があれば、起こり得なかった失敗でもあるかも知れません。


 「あるべき視点から、あるべき対策は生まれる」 

すなわち、本来のあるべき相続対策とは、「過去」「現在」「未来」の長期的視点に立った対策でもあります。


      行政書士  平 野 達 夫

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   はきものを  そろえると  心もそろう


     心がそろうと  はきものもそろう


   ぬぐときに  そろえておくと


     はくときに  心が  みだれない




   だれかが  みだしておいたら


     だまって  そろえておいてあげよう


  そうすれば  きっと  世の中の


    人の心も  そろうでしょう


     

        


           行政書士  平 野 達 夫

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