ヒマワリノタネ -5ページ目

ヒマワリノタネ

ひまわりの、ひまわりによる、ひまわりのための。

恋愛感情も

キスも

いらないから

ただ

抱きしめていて
正しく寒い、という表現が好きだ。
しんと冷えて、
音もなくて、
空は澄んでいて、
ふぅっと吐き出した息は白く、解けていく。

寒いのは大嫌いだけれど
「正しく寒い」日は
どこかスッキリする。

憧れにも似た、気持ち。
声にならない、思い。
そういった曖昧さが
白い息となって
空に解けていく。

過去は綺麗だ。
降り積もった雪のように。
触れた途端に解けてしまうし
少しでも足を踏み入れれば、
白銀は灰色に近づく。

それでも、冬が好きだ。
矛盾しているようだけれど。
すれ違った人が
肩まで届く黒髪で
痩せていて
どこか遠くを見ているような目をしていた

ココにはいないとわかっていても
つい振り向いてしまう

季節は廻っていくから
いつか―――

あの言葉を忘れられずにいる

私たちの歩く道は
いつも平行線で
一度も交差しなかったけれど

いつか、と
言いあえるだけでもよかった
いつのまにか
空気が冷たくなっていた
吐息が白くて
手がかじかんで

ある日は雲ひとつない青空
ある日はぼんやりした曇り空

青空がいいとか
曇り空がいいとか
冬が好きとか嫌いとか
そういうことではないのだと
ふいに思った

どうしようもない私は
ただ空を見つめるのに精一杯だけれど
そんな私でいいのだと
言ってくれた気がして

大事なことはいつも失くすまで気づかない
次こそは繋いだ手を離さないようにと
思っているのに

どうしようもない私は
今日もただ空を見上げて
でもそれでもいいのかもしれないと
少しだけ笑った
大好きなのは、夏の夕方。
昼間の暑さがやわらいで、でもまだ空気は暑さと湿気を含んでいて。
ゆるりとした、風が頬を撫でる。
見上げれば、うっすらとした月と、綺麗な夕空。
大きく深呼吸をして、また少し夜の気配が近づいたのを感じて。
蝉の声が降り注いで、木が風に揺れて、
私はただ佇む。


次に大好きなのは、冬の昼間。
あたたかな日差しが差し込んで、
北風が吹いてくる。
遠くで聞こえる子供たちのはしゃぐ声に
いつかの自分たちを重ねる。
近くて遠い思い出。
コーヒーを入れてベランダにでる。
マフラーをして、日向ぼっこをしながら、コーヒーを飲む。


わけもなく涙が出るのは、
何かを思い出したわけでも、悲しいわけでもない。
ただ、大好きなだけ。
夏の夕方の空気や、
冬の昼間の日差しが。
昨日泣いてしまったのも、それと同じで。
ただ、あの眼差しが大好きすぎるだけ。