糖尿病内科&消化器内科に行ってきた 栄養指導篇 その1 の続きである。

 

 

 

この8週間、糖質制限を解除して、糖尿病学会が推奨する糖質摂取量をクリアするよう頑張ってきた。その結果、食後高血糖を連発し、HbA1cは7.2%まで上昇した。

担当医から「栄養士さんと話をして、一番いいところを探すように」と言われたことを伝えると、栄養士は悩んでしまった。

 

そんな栄養士に、「この前の栄養指導のあと、糖尿病学会が『健康食スタートブック』を公開しましたよね」と言ってみた。

すると、栄養士は「健康食スタートブック」の存在をまだ知らなかった。

公開されてから、すでに1ヶ月以上経つのに? 栄養士の間で話題にならなかったのだろうか?

 

わたし「この『健康食スタートブック』の中で、やっと『糖質摂取量は40〜60%』と、下限が40%になったんですよね」

そう言いながら健康食スタートブックの当該部分を見せたら、「そうなんですか!?」と栄養士は驚いていた。

 

あらら…

わたしが伝えなかったら、今回もまた糖質50〜60%で指導されてたのか…?

 

すんげー嫌なヤツになることは承知の上で、「主要栄養素の適切な摂取比率にはエビデンスがない」ことは、糖尿病診療ガイドライン2019年のステートメントとして記載されていることも指摘した。

そして、エビデンスはないが「栄養素のバランスの目安は、健常人の平均摂取量に基づいて勘案してよい」としていること、厚労省の「日本人の食事摂取基準2020年版」の内容を参照していることも話した。

 

「日本人の食事摂取基準2020年版」が根拠にしている論文(参考文献30)は、これだ。

Seidelmann SB, Claggett B, Cheng S et al (2018) Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and metaanalysis. Lancet Public Health 3(9):e419–e428. DOI: 10.1016/S2468-2667(18)30135-X

このARIC研究は、糖尿病患者を含む一般人集団を対象としている。炭水化物の摂取量は50〜55%のときが一番死亡率が低く、これよりも炭水化物量が少なくても高くても、死亡率が上昇するというU字型を描くことが示された。
ただし、炭水化物を動物性でなく植物性食品に置き換えた場合は死亡率の低下と関連していたのだが、この点についてはあまり言及されないことが多い。

 

低炭水化物食の危険性を報告した、有名なメタアナリシスもある。いわゆる「能登論文」だ。

Noto H, Goto A, Tsujimoto T, Noda M (2013) Low-carbohydrate diets and all-cause mortality: a systematic review and metaanalysis of observational studies. PloS One 8(1):e55030. DOI: 10.1371/journal.pone.0055030
 

このメタアナリシスに用いられた9つの論文は、一部に糖尿病患者も含まれているものの、どれも一般人集団を対象にしている。解析の結果、低炭水化物スコアが高いと死亡率が高くなること、CVDリスクを低下させる効果はないことが示された。

 

これらの論文を根拠に、「低炭水化物食は死亡率が高くなるから危険だ」「糖質制限はしてはいけない」と言われるわけだが、これはあくまでも一般人を対象としたものだ。糖尿病患者の場合はどうなのか?を調べたものではない。

 

では、糖尿病患者に限って解析したらどうなのか?

それが、2023年にDiabetes Careに掲載された論文だ。

Yang Hu, Gang Liu, Edward Yu, et al (2023) Low-Carbohydrate Diet Scores and Mortality Among Adults With Incident Type 2 Diabetes. Diabetes Care 46(4):1–11. DOI: 10.2337/dc22-2310
 

これ、ブログで紹介しようと思いつつ、そのままになってたやつ。

近いうちに記事にするつもりだけど、ここに要旨だけ載せておく。

 

目的
本研究の目的は、2型糖尿病(T2D)患者における診断後の低炭水化物食(LCD)パターンと死亡率との関連を前向きに検討することである。

研究デザインと方法
看護師健康調査(Nurses‘ Health Study)および医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)で同定された糖尿病発症参加者のうち、総炭水化物としてエネルギーに占める割合に基づいて総合的なLCDスコア(TLCDS)を算出した。さらに、植物性(VLCDS)、動物性(ALCDS)、健康的(HLCDS)、不健康(ULCDS)の各LCDSが導出され、主要栄養素の異なる供給源と質が強調された。多変量調整Coxモデルを用いて、LCDSと死亡率との関連を評価した。

結果
追跡期間139,407人年に寄与したT2D発症10,101例のうち、4,595例が死亡し、うち1,389例が心血管疾患(CVD)、881例ががんに起因していた。診断後のLCDSが10ポイント増加するごとの総死亡のプールされた多変量調整ハザード比(HR、95%CI)は、TLCDSで0.87(0.82、0.92)、VLCDSで0.76(0.71、0.82)、HLCDSで0.78(0.73、0.84)であった。VLCDSとHLCDSはともに、CVDと癌死亡率の有意な低下とも関連していた。診断前から診断後にかけてTLCDS、VLCDS、HLCDSがそれぞれ10ポイント上昇するごとに、総死亡率はそれぞれ12%(7%、17%)、25%(19%、30%)、25%(19%、30%)低下した。ALCDSとULCDSについては有意な関連は認められなかった。

結論
T2D患者において、多量栄養素の高品質な供給源を重視したLCDパターンをより遵守することは、総死亡、心血管死亡、がん死亡の低下と有意に関連していた。

植物性食品を重視したり、健康的な食品を重視した低炭水化物食は、2型糖尿病患者の死亡率低下と有意に関連していた。

また、ここが重要なことだが、動物性食品が多かったり、不健康な食品が多かった低炭水化物食でも、死亡率が有意に高くなるという結果は得られなかったのだ。

 

そりゃそうだろうと思う。

糖尿病患者にとって、高血糖状態があらゆる健康障害の原因となるのだから、低炭水化物食によって高血糖を回避できたなら、健康障害リスクを低下させることができるだろう。

 

ただし、この論文で言う「低炭水化物食」とは、炭水化物摂取量が40%程度だ。なので、とても糖質制限と呼べるレベルではないし、ロカボですらない。

でも、一般人集団の解析では、この程度の低炭水化物食で死亡率が高くなると報告されていたのだ。それが、真逆の結果になったことは大きい。

 

…なんてことを、栄養士に言ったところで仕方がないんだけどね。

本当は医師に言いたいところだけど、どうせ機嫌が悪くなるだけだろうから。

 

あと、本当に栄養士には申し訳ないけれど、例の話もした。

栄養士「すごい、ADAから返事が来たんですね…」

 

と、わたし自身の栄養指導よりも、別の話題に時間を割いてしまった。

またしても、栄養士よりわたしの方が長くしゃべってしまった。

時間が限られているのに。

あーあ、なにやってんだろ。

 

で、わたしはどうすればいいでしょうか?と、栄養士に聞いた。

栄養士「えぇ…? …じゃあ、糖質量を40%にしてみますか?」

わたし「いいですけど、『40%』って数字を決めても、それを毎日毎食計算するのは大変ですよね? 毎食、食材を計量してカロリー計算をして、それをもとに40%の割合で主食を量り取って食べるのは現実的じゃないですよね?

たとえば、以前はもち麦や玄米を2合炊いて、それを10食分にしていました。今はそれを5食分にして食べています。これを6食分にする、というのは簡単にできます。

オートミールも、50gのところを40gにする、ならできます」

栄養士「そうですね。では、2合を6食に分けて、オートミールは40gにしてみてください」

 

ここで、消化器内科の診察を知らせる呼び出しベルが鳴ったので、2回目の栄養指導は終了となった。

 

さて。

医師の指示は「夜の高血糖を何とかしろ」だった。

その対策は単に「朝食のオートミールを10g減らすこと」と「昼もしくは夜に食べている、もち麦/玄米を20gほど減らすこと」になったわけだが。

こんな変更で、夜の血糖値が改善するのかなぁ?

あんまり減らすと、糖質摂取量40%の下限を下回っちゃうし。

夜の高血糖を回避するために、夕食は糖質制限にして、その分の糖質量を朝食と昼食で増やせばいいのか? それはちょっとしんどいな。

 

まあ、いいや。

また8週間、この食事を続けてみて、リブレの変動がどうなるか、HbA1cがどこまで上がるのか見てみよう。

すでに予約が入っているから3回目の栄養指導は受けるとして…

次の診察で、医師に「もう栄養指導は必要ないです」と断りたいなぁ。でも、そんなこと言ったら、また機嫌が悪くなるかなぁ…

「外来栄養食事指導料1(2回目以降・対面で行った場合)」の保険点数は200点。ということは、3割負担で600円か。

栄養士さんと話をすること自体はいいんだけど、この内容で費用が発生するのはモヤる…

 

栄養士さんに確認し忘れたんだけど、栄養指導の内容って、カルテに記載されて医師に報告が上がってるのだろうか? 患者の食事内容を聞き出し、問題点を探し出し、今回はこのような改善点を指導しました、みたいな。

そうであれば、今回の栄養指導は、どのように報告されるんだろう? 単に、「主食の量を少し減らすよう指導しました」で終わるのかな?

「患者の普段の食事をチェックしましたが、問題は全くありませんでした。患者には基本的な知識があり、すでに実践しているようです。したがって、これ以上指導できることはありません。現在の食事での糖質摂取量はそれほど多くなく、これ以上減らすと糖質制限となります」

と、栄養士さんの方から医師に報告を入れてくれないかなぁ…

でないと、わたしから医師に「栄養士さんと話をしましたが、特に問題ないと言われました」と伝えたところで、医師はわたしの言うことなんて信用しないだろう。「うそつけ、栄養士の言うことを本当に守っていたら、こんな血糖値になるわけがない」と思われそうだ。

 

わたしだって、栄養士さんを困らせたくはないんだよー

好きでイジワルしているわけじゃないのよ。

わたしはただ、糖質制限しても上がってしまう血糖値をどうにかしたいだけ。

どうにかしたいと思って医師に相談した結果、さらに血糖値が上がる方向に進んでしまった、この顛末。

もちろん、この食事を継続していくうちに体が順応して、意外にも血糖コントロールが良好になる可能性もある、かもしれない。

とりあえず、また8週間継続するしかないな。

 

ほんとはね、コンビニの抹茶スイーツを食べたいなと思ったのよ。

でも、栄養士に食事の全記録を見せなきゃと思ったら、躊躇してしまった。

やっぱ、誰かに食事を監視されるというのは抑止力になるんだね。

 

わたしは人付き合いが苦手で陰キャの非リア充だから、8週間で店舗での外食一切なし(出先のベーカリーのパン、コンビニ惣菜+パンを各1回、実家で下鴨茶寮の料理盛り合わせを1回)、あとは自炊という生活ができている。これ、出かけることが好きな人だったら、外食の頻度がどうしても多くなると思う。一人気ままな食事だからもち麦/玄米や全粒粉100%のパンやら食べているけど、家族がいれば難しいことが多いと思う。隣でお菓子をムシャムシャ食べられたりもね。

でも、ネット記事を見ていると、「孤食はよくない」という論調が目に付く。誰かと一緒に楽しく食事をすることが大事なのだそうだ。

 

ふーん。

みんなが白米や白パンやラーメンを美味しそうに食べている横で、自分だけもち麦/玄米や全粒粉100%パンを食べろってこと? ケーキを食べているのを見ながら、コーヒーだけ飲むの?(両親、弟家族と集まったときは、みんなケーキを食べたけど、わたしはコーヒーだけだったぞ!)

いやいや、みんなと食べるときは一緒のものを楽しんでいいんだよ、って言うのかな?

そうやって外食を楽しんだ日に限って、医師から「外食は内容に気をつけないと!」って注意されちゃうんだけど。

 

まあ、どうでもいいや。どうせ陰キャでほとんど出かけないからさ(爆)

 

あ、そうそう。

病院食で出る朝食のパンについて、栄養士さんに確認した。

1600kcalでも1500kcalでも、パンは90gで同じなのだそうだ。

違いは昼食と夕食に出る米飯が170gか150gかの違いだけだって。

うーん、だとしたら、米飯1日340gか300gの違いになるのだが、摂取エネルギーは70kcalしか違わない。

わたし「米飯の違いだけで、100kcalも減りませんよね?」

栄養士「…そうですね」

 

わたし自身の栄養指導には直接関係のない話なので、これ以上質問するのはやめた。

カロリー計算なんて、あまりアテにならないと思っているしね。

 

 

とうことで、次の消化器内科に向かったのだった。