タイトルは違うが、前回記事の続きである。

 

 

 

2024年3月25日、日本糖尿病学会が満を持して公開した「健康食スタートブック 〜生活の質向上を目指して〜」(ここ)。

 

「健康食スタートブック」では、PFCバランスについてはこのように述べている。

 

 

たんぱく質は上限しか設定してないけど、下限を設定しなくてもいいんだろうか?

「1日の摂取エネルギー量の20%まで」ということは、10%でもいいということ? わたしの1500 kcal設定の場合、20%だと300 kcalだから75 g、10%だと37.5 gになる。

「過剰な摂取は腎臓への負担となる場合があります」と脅されたら、過剰摂取を恐れるあまり、肉や魚を避ける極端な患者も出てきそう。

 

まあ、現実的には、炭水化物の上限が60%と決められているので、純粋な油脂でエネルギーを摂取しない限り、肉や魚、卵や乳製品を摂れば、必然的にたんぱく質を摂取することになる。穀物にもある程度たんぱく質が含まれているから、下限は気にしなくていいんだろうけども。

ただ、食が細くなった高齢者の場合は、たんぱく質不足が懸念されるよね…

 

たんぱく質も脂質も炭水化物も、具体例のところで数値を限定して説明しているところに違和感を覚える。なぜ、たんぱく質は15%、脂質は25%、炭水化物は60%に限定して説明してるんだろう? 本音ではこの比率(PFC = 15 : 25 : 60)に誘導したいんじゃないの?と勘ぐってしまう。自分で計算するのが面倒くさい(あるいは、どう計算していいか分からない)患者は、この具体例をそのまま自分に適用してしまうと思われる。

 

「例えば1日のエネルギーが2000 kcalの場合、たんぱく質の比率は20%までなので、400 kcal以下となります。これはたんぱく質100 g以下に相当します。(ただし、フレイル予防のため、最低でも男性は60 g、女性は50 gのたんぱく質は摂取しましょう)」

 

「例えば1日のエネルギーが2000 kcalの場合、炭水化物の比率は40〜60%なので、800〜1200 kcalとなります。これは炭水化物200〜300 gに相当します」

 

「例えば1日のエネルギーが2000 kcalの場合、たんぱく質(〜20%)と炭水化物(40〜60%)以外のエネルギーを脂質とするので、20〜45%程度の範囲となります。ただし、25%を超える場合は、不飽和脂肪酸の割合を増やしてください」

注)たんぱく質の下限を15%としている

 

こんな感じの説明なら納得しやすいんだけどな。

 

ただ、こんな数値を出されたところで、どの食品にどんな栄養が含まれるのか知らなければどうしようもない。「あすけん」のようなアプリや、使いやすいサイトを紹介して、「自分の食事に含まれる栄養素をチェックしてみよう!」と誘導した方がいいんじゃないだろうか(具体的なアプリ名を書いてしまうと問題があるのかな?)

 

「日本人の食事摂取基準(ここ)」では、脂質は20〜30%エネルギーと設定している。

一方、「健康食スタートブック」では摂取範囲を設定せず、総摂取エネルギーからたんぱく質と炭水化物分を引いた残りを脂質としている。

これは、「日本人の食事摂取基準」では、炭水化物は50〜60%エネルギーと設定しているところ、「健康食スタートブック」では40〜60%と、低炭水化物側に範囲を広く設定したからだろう。炭水化物の摂取を40%にした場合、必然的に脂質の割合が高くなるから。

 

でも、脂質の割合を数字で「20〜45%」なんて記載すると悪目立ちしてしまうので、あえて記載しなかったのかな?なんて裏読みしてしまった。

だとしても、糖尿病の食事療法で高脂質な食事が許容されたというのは、とてつもなく画期的なことだと思う。

 

重要なのは、この「健康食スタートブック」は「患者向け」の資料であるということだ。

これに対し、医師向けのガイドラインや診療マニュアルの記載内容はちょっと違う。

 

たとえば、4月1日に公開された「糖尿病標準診療マニュアル2024(PDF)」だ。

こちらは「日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会」が作成したもの。

毎年改訂しているようで、今年の版が4月1日に公開された。

 

これには、以下のような記載がある。

 

 

「健康食スタートブック」ではなく、まだ「食品交換表」を参照と書いてあるのはさておき。

 

目安とする総エネルギー摂取量について、「エビデンスは不十分であり、絶対的な値ではない」とある。

さらに、「三大栄養素の適正比率についてのエビデンスはない」とあるのだ。

 

「食品交換表を参照」と言いつつ、PFCバランスについてはエビデンスがないと書くとは、矛盾してない?

PFCの適正比率についてのエビデンスはないということは、「健康食スタートブック」の「炭水化物は40〜60%」もエビデンスがないということだ。

 

実は、エビデンスがないことは、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」37ページにすでに記載されていた。(PDF

 

 

ただし、ガイドラインの本文には、以下のような記載がある。

 

 

エビデンスがないので、「栄養素のバランスの目安は、健常人の平均摂取量に基づいて勘案してよい」のだそうだ。

なぜそのような結論に至るのか、わたしにはちょっと理解しづらいのだが。

 

一方、「糖尿病標準診療マニュアル2024」の方は、「エビデンスがない」だけで記載が終わっているので、読み手にとってインパクトが大きいように思う。

 

 

「糖尿病標準診療マニュアル2024」や「糖尿病診療ガイドライン2019」は完全に医師向けだ。なので、患者がこの内容を知ることはほぼない。(ネットで公開されているため、わたしのような一般患者が見ようと思えば見ることはできるが)

患者は、医師や栄養士から「炭水化物は50〜60%(もしくは40〜60%)を摂取すること」と指導されると、それが糖尿病の食事療法として確立したものなのだと思うだろう。まさか、エビデンスがないものを指導されているとは思いもしない。

 

指導する側の医師や栄養士は、どう思っているんだろう? どんな顔をして、患者に指導してるんだろうか? 「エビデンスはないけど糖尿病専門家の中でコンセンサスは得られているのだから、この指導で正しいのだ」と思っているのかな。実際のところは、ちゃんとしたコンセンサスが得られているようにも思えないけども。

 

わたしが指導する側の立場だったら、とても悩むと思うなぁ。特に、患者が独自に糖質制限をしていて、それで上手く血糖コントロールができてたりすると。でも、立場上はきちんと指導しないといけないから、「糖質制限は勧められません。糖質はせめて40%を摂りなさい。(エビデンスはないけど)」と患者に言うのかもね。仕事だからね。

 

 

摂取エネルギー量については、本当にただの目安でしかないと思う。

エネルギー量を設定するのは肥満を予防するためだろうけど、同じエネルギー量を摂取して太る人もいればやせてしまう人もいる。個人差がとても大きくて、一律で決められるものではないと思う。

 

わたし自身は、自分の日々の食事について、カロリー計算はほとんどしていない。

体重を測定して、増加傾向が続けば少し食事量を減らし、減少傾向が続けば少し食事量を増やす、といった感じで調節している。

糖質制限を解除した今、以前より脂質摂取量を減らさないとカロリー過剰になってしまうので、体重増加に気をつけている。今のところは、BMI 19台後半を維持し続けていて、急激な増加はしていない。

 

おそらく、担当医が設定した1日1500 kcal以上を摂取していると思うけど、なんせ計算していないから分からない。ただ、多くの人は自分の食べた量を過小評価しがちなので、自分が思っているよりは多く食べているのだと思う。(やせすぎの人は逆で、食べた量を過大評価しがち。でも、そういう人は少数派だ)

 

「日本人の食事摂取基準」70ページより

体重が一定の場合は、理論的には エネルギー摂取量=エネルギー必要量 と考えることができる。(理論値 エネルギー摂取量/総エネルギー消費量=100%)

ところが、食事アンケートでの回答を元にしたエネルギー摂取量は、実際のエネルギー消費量よりかなり少なかった。

特に、BMIが大きい人ほど過小報告している傾向が見られた。中には、実際の40%しか報告していないのでは?と思われるデータもあった。

BMIが25未満の標準体重の人でも、60%程度に過小報告をしている場合があり、多くは80%程度に過小報告していた。

一方、本人のアンケート回答ではなく、第三者が食事量を観察した場合(●のデータ)は、比較的正確なエネルギー摂取量を報告していた。

 

 

だから、担当医は「(きちんと栄養計算した病院食を摂取する)入院中は 1600 kcal設定、退院した今は(自分の食事量はどうせ過小評価するから)1500 kcal設定(にしておけば、ちょうどいい塩梅に落ち着く)」と考えたのだろう、とは思う。

理解はできるけどさぁ…

どうせ守れない(正確な計算もできない)ようなカロリー設定より、「体重が急激に増加したり減少したりしないよう、こまめに体重を測定して、食事量を調整してください」という指導内容なら納得いくんだけどな。

 

 

そろそろ、次の診察、栄養指導のための食事記録をまとめなきゃと思って、少しずつ作業をしてるんだけど。

どんなふうにまとめれば分かりやすいかな?と試行錯誤し、リブレのグラフを1日ずつ切り取って、その下に食事の写真と食事と運動の内容を記載するのが一番なので、1日分ずつ切り貼りしながら作業している。

いや〜、8週間分ってかなり大変だわ(汗) もっと早くから、その日の分ずつやっときゃよかったよ…orz

A4に2日分ずつだから、プリントすると膨大な量になりそう。

タブレットや軽いノートPCでも持っていれば、それでプレゼンできるんだけどな。そんな文明の利器はないので、プリントするしかないか。

力作を糖尿病内科の医師に見せたところで何の反応もない(どころか、機嫌が悪くなりそう)だから、栄養士さんにだけ見せようっと。できれば、栄養指導を先に受けて、そこでわたしの食事内容を栄養士さんに評価してもらって、それを医師に伝えるという順番の方がいいような気がするんだけどな。

まあ、いいや。

とにかく、連休中の時間があるときに今までの食事記録をまとめておいて、あとはその日の分を追加すればいいようにしておこう!