2024年3月25日、日本糖尿病学会が満を持して公開した「健康食スタートブック 〜生活の質向上を目指して〜」(ここ)。

「はじめに」には、以下のような文言がある。

現在は糖尿病の方が糖尿病のない方と同じくらい長生きする時
代です。以前と比べて個々のライフスタイルや食習慣も多様にな
り、食事で必要なエネルギー量も年齢や活動量によって個人差が
出てくるようになりました。

あら?

以前は、糖尿病患者は「食事で必要なエネルギー量は年齢や活動量によって個人差はなく、一律で(低い設定で)いい」と考えていた、ということかな?

 

やっと個人差を認めたというわけだけど、それでもまだまだカロリー制限の考え方が支配的だと思う。

 

厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(ここ)によると、推定エネルギー必要量は以下のようになっている。

 

 

身体活動レベルは、以下のように規定されている。

・低い ( I ) 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合

・ふつう ( II ) 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツ、のいずれかを含む場合

・高い ( III ) 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合

 

わたしの年齢だと、活動レベル I なら1650 kcal、活動レベル II なら1950 kcalとなっている。

 

もちろん、身長によって必要エネルギー量は変わるはず。おそらくこの数値は各年代の平均身長付近の体格で計算されているだろう。わたしは平均的な身長なので、この数値を参考にしていいと思う。

 

 

一方、日本糖尿病学会の「健康食スタートブック」では、適切な摂取エネルギー量の算出法を以下のように説明している。

1 日の摂取エネルギー量 = 目標体重 × エネルギー係数

目標体重は、64歳以下の場合は一律BMI 22で求めるよう決められている。

エネルギー係数は、活動量の違いによって3段階に設定されている。

 

 

この3段階は、厚労省の「日本人の食事摂取基準」での活動量 I、II、IIIと同じと考えていいだろう。

 

たとえば、在宅勤務をしていて買い物のほとんどを宅配ですませ、全く運動をしていないような生活だと、活動量 I になるだろう。

田舎の車社会の場合、通勤や買い物で歩くことはほとんどないので、座り仕事で運動をしていないなら活動量 I になると考えられる。

 

157 cmのわたしの場合、目標体重は54.2 kg。

軽い身体活動量の場合、エネルギー係数は25〜30なので、摂取エネルギー量は 1355〜1626 kcalとなる。

普通の身体活動量の場合は、1626〜1897 kcal。

重い身体活動量の場合は、1897〜 kcal。

 

厚労省「日本人の食事摂取基準」の推定では、それぞれ1650、1950、2250 kcalだ。

この差はどこから生まれているのだろう?

「日本人の食事摂取基準」は「健常人」が対象で、糖尿病患者とは違うから?

 

でも、日本糖尿病学会が公開している「糖尿病診療ガイドライン2019(PDF)」の37ページには、以下のような記載がある。

 

 

エネルギー消費量は、糖尿病、非糖尿病で差異がないことが報告されている。

「日本人の食事摂取基準」でも、以下のような記載がある。

4─4─7 疾患を有する者について
 糖尿病患者の基礎代謝量は、体組成で補正した場合、耐糖能正常者に比べて差がないか5〜7%程度高いとする報告が多い(肝臓の糖新生等によるエネルギー消費によると考えられる)。保健指導レベルの高血糖者で検討した成績は少ないが、横断研究で睡眠時代謝量は耐糖能正常<耐糖能異常(impaired glucose tolerance;IGT)<糖尿病、同一個人の基礎代謝の継時的変化も耐糖能正常<IGT(+4%)<糖尿病(+3%)であった。したがって、保健指導レベルの高血糖の者(空腹時血糖:100〜125 mg/dL)では、耐糖能正常者と大きな差はないと考えられる。二重標識水法により糖尿病患者の総エネルギー消費量を見た研究によれば、糖尿病患者と耐糖能正常者で、PAL 及び総エネルギー消費量に有意差を認めていない(図 15)。
 したがって、保健指導レベルの高血糖者のエネルギー必要量は、健康な者とほぼ同じと考えて体重管理に当たってよいものと考えられる。一方、糖尿病を含む種々の疾患を有する者のエネルギー摂取量の設定は、それぞれの診療ガイドラインを参照する。

糖尿病患者の方が、むしろ耐糖能正常者よりも基礎代謝量が高いという報告が多いらしい。

ただし、糖尿病(を含む)患者のエネルギー摂取量の設定は、診療ガイドラインを参照しろ、とある。

 

はて?

なぜ、糖尿病患者の適切な摂取エネルギー量は低く設定されてるんだろう?

エネルギー消費量は、糖尿病患者と健常人で差がないのに?

 

2017年に糖尿病で入院したときは、1400 kcal(米飯140 g)に設定された。

突発性難聴で入院した2023年には、1600 kcal(米飯170 g)に設定された。

身長が伸びたわけじゃないのにw

(ちなみに、甲状腺手術で入院した2020年には、1200 kcal(米飯120 g)に設定された。身長が縮んだわけじゃないのにw)

 

そして、普通に生活している今、なぜか担当医は1500 kcal(米飯150 g)に設定した。

まあ、担当医とは日常の活動量について話をしたことがないので、わたしが寝たきりのような生活をしていると担当医が考えていてもおかしくはないのかも(?) 田舎で車生活だから、意識しないと歩く機会がないしね。

 

だとしても、突発性難聴で入院したときよりは活動量が多い。当たり前だ。

入院生活こそ、ほぼ寝たきりだよなぁ…

入院で1600 kcalに設定し、今は1500 kcalに設定した、担当医の頭の中を覗いてみたい。(いや、普通に質問すればいいだけの話なのだが、なんせ余計なことを聞くと機嫌が悪くなりそうなので…)

 

 

と、日本糖尿病学会が推奨する適切な摂取エネルギー量を腐してみたが、実際のところは、厚労省の「日本人の食事摂取基準」が推定している摂取エネルギー量はちょっと多い気がする。わたしが毎日1950 kcal摂取したら太りそうな気がする。

まあ、1950 kcal摂取するとBMI 22までは体重が増加して当然で、BMI 20未満を維持しているということは、つまりは摂取エネルギーが少ないということなんだろう。

 

 

続く。