Don't Blow Away -4ページ目

ハロルドとモード 少年は虹を渡る (1971)





Harold and Maude

 

出演: ラス・ゴードン、バド・コート

監督: ハル・アシュビー

91分 アメリカ

 

あらすじ: 鬱で孤独な青年ハロルドの趣味は赤の他人の葬式に参列することと、母親の前で(死なない程度の)自殺をすること。ハロルドは同じく葬式に参列する趣味を持つモードと知り合い、二人は友達になる。

 

 

ゴーストワールド 』に続き、ひねくれ青春ムービー第2弾。

日本での知名度はまだまだ低いみたいですが、とーってもいい映画なので広まってほしい。

かなり独特な映画で、そこがいいんですが初めて観たときはちょっと面食らいました。

自殺癖のある青年ハロルドが、じき80歳になるパワフルおばあちゃん・モードに出会い、友達になり、愛し、生きることの素晴らしさを学びます。

ファッションやモードの家はヴィジュアル的に楽しめるし、ハロルドの自殺のバリエーションの広さはコントみたいになっちゃっておもしろいし、とにかく魅力が満載の映画です。

映画の後半、ハロルドとモードが花火を見ているときにモードの腕に刻印された刺青が写ります。一瞬のショットで説明も何もないけど、それはナチスの強制収容所で入れられた囚人番号。自殺ごっこを繰り返すハロルドの目に、この刺青はどのように映ったんだろう。この一瞬のシーンにはグッときました。

そしてこの映画で外せないのがキャット・スティーヴンスの挿入歌。モードとハロルドが歌う『If You Want To Sing Out, Sing Out』、しみじみ・・いい曲です。元気がないときに聴くと励まされます。

 

余談ですが、2、3年前にこの映画のサントラを買ったときに、店員が“彼(スティーヴンス)はいまヒンズー教に目覚めてチベットにいるよ~”と教えてくれたんだけど、本当なのかは謎です・・。



リバーダンス




Riverdance

 

初演: 1994年 ダブリン アイルランド



これは私が見にいったのではなくて、音楽をやる私の友人が見に行って、絶賛してDVDを買ってきたのでその日の夜に一緒に見たものです。

私は別に見に行ったわけでもないのに、彼女の興奮がうつって自分まで見て来たような気になってしまいました。

 

ミュージカルではなく、ダンスパフォーマンス集大成という感じ。楽団の演奏あり、コーラスあり、ダンス、タップ、フラメンコもある。

数十人が足を揃えて踊るステップダンスも大迫力ですが、私のお気に入りのシーンは、タップダンスのシーン。

白人の男性ダンサー2人と、黒人の男性ダンサーが2人、彼らが自分のスタイルのタップで競い合います。白人ダンサーのタップは英国風のお堅いタップ、そして黒人ダンサーのはジャズっぽく崩されたタップ。お互いがあおり合うんですが、おもしろい~!
競い合うたびに、会場が盛り上がってどよめくんです!もう~大興奮でした。

白人ダンサーにはバイオリン奏者が、黒人ダンサーにはサックス奏者がつくのですが、この奏者たちもあおり合って、すごい迫力。

こんなふうに観客を巻き込んで会場を沸かせちゃうのが、さすがプロのパフォーマーだなぁ。

このショーは絶対に生で見た方が楽しいと思う。いつか劇場で見たいです。



フロント・ページ (1974)



The Front Page

 

出演: ウォルター・マッソージャック・レモン、スーザン・サランドン

監督: ビリー・ワイルダー

105分 アメリカ

 

あらすじ: 時は1929年。ヒルディーはシカゴトリビューン新聞社の腕利きのライターだったが、多忙すぎるライター生活に疲れて寿退社を決意する。しかしヒルディーの編集長ウォルターは、ヒルディーに辞められては困るとあの手この手で引きとめようとする。翌日に首吊りの公開死刑を控えていた殺人犯、アール・ウィリアムスの記事を書かせようとしたのだ。そんななか、新聞のフロントページを飾るべき大事件が起こる。アール・ウィリアムスが脱走したのだ。

 

 

ウィルター・マッソーとジャック・レモンの名コンビ振りに脱帽!

常に電話が鳴り響く忙しい新聞社の様子がそっくりそのまま映画に収まっています。目まぐるしい展開により、駆け足で進んでいくストーリー。パトカーの速度も2倍速並みに速いです。

シリアスなテーマなんだけど、ビリー・ワイルダーの手にかかると洗練されたコメディに仕上がってしまうから不思議

記事の為ならどこまでも東奔西走してしまうライター達は、この時代の新聞の重要性を物語っていると思うし、そんな時代描写だけじゃなくて、一人ひとりの人間像もしっかりと描かれているところがよかったです。

あと印象的だったのは、根本的な男女の性質の違い。仕事に一直線になってしまうヒルディーたちは私の目にはやや誇張された男性像として映ったんだけど、ヒルディーとピギーを見ていたら、これってきっと男と女って全く違う生き物っていうことを意図的におもしろおかしく描いて伝えているように見えてしまいました。

ちなみに私はエンディングのクレジットを見るまでペギーがスーザン・サランドンだと全く気が付かなくて軽くショックでした。

そしてこの映画の最大の見所の一つは終盤のウォルターです。

最後の彼の不敵の笑みに、こっちまでニヤリとしてしまいました。

 

The son of a bitch stole my watch. 

 

これは歴史に残る名台詞だな。



レディ・イヴ (1941)




The Lady Eve

出演: ヘンリー・フォンダ、バーバラ・スタンウィック、チャールズ・コバーン

監督: プレストン・スタージェス

97

 

あらすじ: 1年間のアマゾン滞在によるヘビの研究を終えたチャーリーはニューヨークへ向かう豪華客船でジーンと居合わせる。世間知らずで御曹司のチャーリーはジーンと恋に落ち、ある日ジーンに結婚を申し込む。ところが、ジーンと彼女の父親は詐欺師で最初は金目当てでチャーリーに近づいたのだった。事実を知ったチャーリーは憤慨してもちろん結婚をキャンセル。彼の仕打ちにショックを受けたジーンは、イギリス貴族の“レディ・イヴ”に変装して彼の前に再び現れる。

 

 

この映画は、私がクラシック映画好きになるきっかけとなった映画です。60年以上も前にこんなに面白い映画が作られていたなんて!と、純粋に感動してしまいました。

この時代に多かったスクリューボールコメディ(どんでん返し満載の恋愛もの)の代表作のひとつですが、それ以外にも魅力がたくさん詰まった映画です。

普通の恋愛もののようですが、映画は『アダムとイヴ』の物語を基にしていて、映画のところどころにそれを彷彿とさせるエッセンスが詰まっています。オープニングアニメーションの蛇の表情や動きは、まさに奔放でいたずらな魅力を秘めたジーンにそっくりです。チャーリーは蛇オタクだし、ジーンの落とした林檎がチャーリーの頭に当たっちゃうし、まさにジーンの誘惑に落とされてゆくチャーリーは蛇に誘惑されて林檎を食べるアダムとイヴ!? 比喩が多いのであれこれ考えながら観ても楽しい。

『アダムとイヴ』のエピソードを抜きにしても、魅力的なキャラクターによってテンポの良い展開で話が進んでゆく、一枚も二枚も上手な上流コメディだと思います。

ヘンリー・フォンダのおとぼけ具合もかわいいですが、バーバラ・スタンウィックの変装振りや奔放なジーンを演じるさまはお見事!これはチャーリーでなくてもメロメロに落ちるでしょう。

林檎はもちろん、鏡やストッキングなどの小物使いも多用されていて、小物使いに弱い私には更にツボ。ジーンの個性的な衣装も見逃せません。
クラシック
映画好きな方、恋愛映画好きな方、そうでない方にも、お勧めしたい一本です。



真珠の耳飾りの少女 (2003)



Girl with a Pearl Earring

 

出演: コリン・ファース、スカーレット・ヨハンソン

監督: ピーター・ウェーバー

100

 

あらすじ: 1665年、オランダ。17歳のグリートは家族を助けるため画家フェルメールの家のメイドとして働き出す。

 

 

久しぶりに映像美に惚れた映画。一つ一つの映像がとても綺麗。

フェルメールの作品への敬意を込めているのか、光の使い方がとても凝っていると思いました。

町を歩く人々に注ぐ青めの光、家の中に差し込むやや黄色がかった白い光、肉屋の息子と小道を歩くグリートに注ぐ茶色っぽく暖かい光、光で遊ぶ子ども達・・。

フィルターを使ったのでしょうか、とにかく色が綺麗なのがとても印象的で見とれてしまいました。

絵画の構図がそのまま使われたような映像も多かったです。隅々まで丁寧に作られた映画だという印象を受けました。

コリン・ファースもはまり役だと思うけど、やっぱりスカーレット・ヨハンソン。

フェルメールの作品を初めて見るときのグリートのショットは忘れられない。この映画での彼女が一番綺麗だと思います。

ストーリーとしては、フェルメールとグリートのあいだに生まれた密やかなつながり。二人の気持ちの揺れ移りが的確に描写されているなかで、交差する愛情の裏には人間の欲望などの暗いテーマも浮き彫りにされていた気がします。

愛の物語なんでしょうが、私には“アートな作品”というイメージの方が強く残りました。

ゆっくりとした時間の経過を思わせる、独特の空気も印象的です。