◆サッカー選手 トレーニングを何倍も効果的にする方法? | 和久井秀俊オフィシャルブログ「海外サッカー選手のホンネ」Powered by Ameba

◆サッカー選手 トレーニングを何倍も効果的にする方法?

和久井です。

前回、トレーニングプログラムについて話しました。

今回は、忘れてはいけないトレーニングの概念を13か条に分けて考えていきましょう。

今回もサッカーに関連した傷害や病因などの研究を目的とした、FIFAが設立した医学評価研究センターの調査結果を参考にします。(要約)

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トレーニング強度を考慮しないトレーニングプログラムというものはあり得ないことは、強調すべき重要な点である。あるトレーニング負荷を個人がどのように認識するかはまことに重要である。その結果、疲労やオーバートレーニングの徴候が現れたら、トレーニングプログラムを個人別に調節しなければならない。特に、強度の高いトレーニングは、コーチから見て異常な疲労やオーバートレーニングの徴候が認められる場合に行ってはならない。試合が頻繁に行われるため、全身の疲労とオーバートレーニングがあらゆる選手のフィットネスレベルを常に脅かしている。

しかし、パフォーマンス不良の原因がトレーニング不足であると考えられる場合もある。トレーニング負荷に対する認識が本当に正しい場合もあるが、そうではない場合もある。それでも、休息日や、強度の低い再生トレーニングの方が、トレーニング負荷を上げるよりもフィットネスとパフォーマンスレベルにはるかに好影響を及ぼす場合も少なくない。したがって、選手が疲労のため所定のトレーニングプログラムを続けられないと思う場合は、コーチに知らせるべきである。そうしないと、トレーニングプログラムが実際にはパフォーマンスに悪影響を及ぼす。トレーニングに考慮すべき事項としては以下のようなものがある。

ウェイトトレーニング
選手が筋力(現代サッカーの非常に重要な必需品)を向上させたいと思う場合、筋力トレーニングの大部分は競技期外で、やはり期分けの原則に従って行う。シーズン中もウェイトトレーニングは継続するが、維持プログラムとしてであって、向上プログラムとしてではない。

柔軟性トレーニング
筋肉が温まっている方が柔軟性トレーニングを受け容れやすいことを覚えておくこと。また、柔軟性トレーニングは積極的休息期も継続すべきである。柔軟性トレーニングの前には必ずウォーミングアップを行う。柔軟性トレーニングはウォーミングアップではない。汗をかき始めたら、柔軟性トレーニングを開始できる程度に体が温まったということである。

体重減少
シーズン中に体重を落とすのは誤りである。期分けモデルによれば、シーズン中は体重を維持する時期であって、落とす時期ではない。

若年者に関する考慮事項
子供(10歳以下)にトレーナビリティがあることを示した研究は数多くある。しかし、ある程度の好成績を収めるために技術的上達を要するボールゲームでは、技術を重視するコーチが多い。また、交替を無制限に認めるリーグが多いため、試合に合わせたフィットネス調整はそれほど重要ではない。フィットネスを特に重視すると、幼年者の貴重なスキルトレーニングの時間が減ってしまうことになる。

トレーニングは毎回、必ずウォーミングアップから始め、最後にはクールダウン(ストレッチングプログラムを含む)を行う。

週のまん中に試合がある場合は、試合の翌日に再生トレーニングを行い、試合前日には軽度のトレーニング(十分なウォーミングアップ、モビリゼーション、ストレッチング、スピードトレーニングを含む)を行うことが非常に重要である。このトレーニングは、試合を行う予定のピッチで行うのが理想的である。

強度の高いトレーニングを行う場合、ランニング時間は、選手が高い強度で走ることができるが、そのスピードを数回の練習中も維持できるようなものでなければならない。コーチは、高強度トレーニング中の運動強度が高くなりすぎ、もっぱらスピード持久力トレーニングになってしまわないようにすべきである。強度が高すぎると、選手はその後の運動時間に十分な運動強度を維持できず、この高強度トレーニングの望む効果が損なわれる。心拍数モニターをいつでも使えるようにしておくと、強度の測定に非常に役立つ。

同じ理由から、回復時間は必ずフィットネスレベルによって決めなければならない。具体的には、最高レベルのランナーの場合、実際のランニング時間の3分の1を回復時間とすることができる。フィットネスレベルが中等度の場合でも、回復時間はランニング時間より短くすべきである。最後に、フィットネスレベルが低い選手の場合、回復時間はランニング時間より長いとまではゆかないが、同程度の長さとすべきである。

選手にオフシーズンのフィットネスプログラムを与えることにより、プレシーズンのトレーニングキャンプに現れる時には、フィットネスレベルをより高く向上させ、より長い期間にわたり維持できるような、ある程度のフィットネスレベルになっているようにする。オフシーズン中に毎年向上できたならば、基礎持久力は毎年少しずつ向上し、選手のキャリアからみれば大きな差となりうる。

プレシーズンにできるだけ十分なトレーニングを行い、プレシーズンのレベルをシーズン全体にわたり維持するように努める。プレシーズンの短期間にフィットネス向上を達成することもできるが、最終的なフィットネスレベルは低いままとなるうえ、短期間しか維持できない。

若年選手のトレーニングは、シーズンの進行中も強度を高めていくように努める。そのためには、フィットネス計画を中心としてシーズンの計画を立てる必要があり、試合のスケジュールは(特にシーズンの初期には)ある程度無視しなければならない。

試合はトレーニング日として数えるが、それは実際にプレーした選手だけの話しである。 この点に関しては、試合に参加する平等な機会を提供すべきである。

トレーニングは主に2種類の適応を身体に誘発する。一つは心血管系が筋細胞に酸素を送る能力であり、もう一つは筋細胞が送られた酸素を消費する能力である。研究から、中央の心血管系が筋肉に酸素を送る能力は徐々に向上するのに対し、筋細胞が送られた酸素を消費する能力は急速に向上することが明らかになっている。トレーニングをやめると、筋細胞は向上した能力の大部分をかなり急速に(10日~2週間)失うが、心血管系の脱トレーニングは徐々に起こる。ほとんどの選手は、短期間の休息をとった後の練習の際にこれを感じたことがあるだろう。この場合は、最初の練習がそれほどつらく感じることはない。その練習中に心血管系が、急速に脱トレーニングを起こした細胞の緩みを締め直してくれるからである。しかし、1ヵ月以上も休業してしまうと、持久力の見地からはゼロからやり直すことになる。

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「トレーニング→強化」に直結しないことはこれまで何度もお話してきました。トレーニングプログラムの作り方についてもお話しましたが、トレーニングプログラムを立てて実行すること、休息することも重要ですが、「◆プロサッカー選手になるために適した身体とは?」でもお話したとおり、選手はそれぞれ遺伝的に異なる要素を持っています。同じトレーニングでも選手に与える負荷、効果は全く異なるため、選手をモニタリングする監督者、そして選手自らがこうした最低限の情報を心得ることがトレーニングを何倍も効果的にする一つの方法です。

年間を通したトレーニングプログラムも、一日のトレーニング、また一つ一つのトレーニングについて、監督者が何を目的にトレーニングを行うのかを選手に伝達したり、それを選手が理解した上で自分の状態を伝えるという「対話」も大事にしてほしいと考えます。


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